猫の習性として噛むという行動がみられます。もともと狩猟動物である猫は獲物を捕えるために噛みつくことが本能的に身についているのです。
子猫の頃は甘噛みが多くみられますが、次第に大人になると甘噛み・本噛みを使い分けて何かしらのメッセージを伝えてくるようになります。
しかし噛み癖がついてしまうと人に噛みついて怪我をさせてしまったり、猫自体もストレスを溜めこんでしまったりする可能性が高いため、対処が必要です。
本記事では、猫が噛む理由について、甘噛み・本噛みの違い・しつけ方・対処法を解説します。
飼い猫の噛み癖に困っている方や、どのようにしつければ良いのか悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
猫が噛む理由
猫は人間のように話せないため、行動を通じて気分や身体の不調などを伝えてきます。
猫が噛むという行動を起こすのは、下記の5つの理由が主に考えられます。
- 甘えたい
- 狩猟本能が刺激された
- ストレスを感じている
- 歯が生え変わっている
- 病気・怪我をしている
それぞれの理由について、詳しくみていきましょう。
甘えたい
猫は飼い主などに甘えたい気分のときに噛んでくることがあります。子猫の頃によくみられ、猫同士でも甘えたいときには甘噛みして気持ちを表現します。
しかし、甘噛みをそのまま許してしまうと甘えたい気持ちが湧くたびに噛む癖がつき、常に甘噛みしてくる可能性があるでしょう。
そのため、子猫のうちから手や足に甘噛みされたときに良くない行動であるとしつけをする必要があります。
また、スキンシップ不足で甘えてきていることもあるので、甘噛みに注意しながら撫でてあげると良いでしょう。
狩猟本能が刺激された
猫は狩猟本能が刺激されると噛む習性がある動物です。もともと猫が飼われるきっかけとなったのが、ねずみの駆除のために飼育されるようになったといわれています。
猫は目の前で何か動いているものがあると、本能的に捕まえて噛んでしまいます。そのため、手を動かして遊んでしまうと、手は噛んでもいいものと勘違いしてしまうのです。
飼い主などと一緒に遊んでいるときに、手や足などに戯れてつい噛みついてしまうケースがよくみられます。
猫に噛み癖がつく前に、人の手や足は噛んではいけないものであると認識させましょう。
ストレスを感じている
猫はストレスを感じると噛みついてくることがあるため、注意が必要です。
外で過ごすことが多い野生の猫に比べ、室内で飼育されている飼い猫は運動不足や環境の変化などでストレスを感じやすい状態になります。
すると、物や人に噛みついてストレスを解消しようとするでしょう。その場合は甘噛みではなく、力強く本噛みしてくるケースがよくみられます。
ときに噛んで物を破壊したり、怪我をさせてしまったりすることもあるので、飼い主としては気が抜けない状況です。
猫がどのようなことでストレスを感じているのか、理由を探し当てて取り除いてあげると噛むことが少なくなるでしょう。
歯が生え変わっている
猫は歯が生え変わる段階で、噛む行動が増えることがあります。
子猫は生後3ヶ月〜5ヶ月の頃になると歯が生え変わる時期にさしかかります。すると口内がむず痒くなり、甘噛みすることで解消しようとするでしょう。
以前よりも甘噛みの回数が増え、歯が抜け落ちている場合は歯の生え替わりが噛む原因と考えられます。
全ての歯が生え変わるとそれまで感じていたむず痒さが落ち着き、甘噛みしてくる回数も落ち着いてきます。
歯が生えそろってもなお、甘噛みしてくる場合は癖になってしまっている可能性があるため、対策が必要です。
病気・怪我をしている
猫は病気・怪我をしている場合に、痛みを感じる部分に触れられるとつい噛みついてしまうことがあります。
大人や高齢の猫であれば、足回りの関節炎・内臓の病気・腫瘍などの身体になんらかの不調が現れやすくなります。
だっこしようとしたり、撫でてあげたりする際に痛い部分に触れてしまうと、痛みを避けるために噛む行動がみられるでしょう。
以前よりも噛む回数が増えたり、猫の体の状態に異変がみられたりする場合はまず獣医師に診てもらいましょう。
治療を受けて痛みが解消されると、触られても痛みを感じなくなるため、次第に噛む回数も減少します。
猫の甘噛み・本噛みの違い
猫の噛みつきには甘噛みと本噛みがあります。甘噛みは歯を立てる程度の噛みつき方です。
顎を脱力させながら噛んでいるため、噛みつかれてもそれほど強く痛みを感じるほどではありません。
飼い主に対して甘えたいときや遊びの一環として甘噛みしてくるケースが多く、猫もリラックスした状態で甘噛みをするとみられます。
反対に本噛みは力一杯噛みつき、噛みついたものを離そうとしない噛みつき方です。
強い力でしっかり噛み締めるため、本噛みされた場合は歯が食い込み、負傷する可能性が高いでしょう。
また、本噛みの場合は興奮状態である場合が多く噛みつかれた箇所から離すのが難しいため、猫を落ち着かせながらゆっくり引き離します。
猫は急なアクシデントで驚いていたり、遊びが発展して興奮したりすると本噛みしてしまうことがあります。
過剰な興奮状態が続いている場合は、猫が落ち着くまで近づかないなどの対応が必要です。
噛みやすい猫の特徴
噛みやすい猫の特徴として、生後間もない頃から2歳前後くらいの子猫は遊びに夢中になる傾向があり、その一環で甘噛みしやすいです。
また、性格的に甘えたいタイプの猫も甘噛みすることが多く、愛情表現のひとつとして取り入れている可能性があります。
ただし、甘噛みといえども噛み癖がついてしまうと何度も繰り返し噛まないと落ち着かなくなってしまったり、怪我をさせてしまったりすることがあります。
噛むこと自体をやめさせるのは難しいですが、興奮して噛んでくる場合は落ち着かせましょう。また、遊んでいるときに甘噛みしてくる場合は一旦その場を離れるなどの対応が効果的です。
また、生後まもなく飼い始めた猫もしつけをあまり受けてきていないため、動いているものに対して何でも噛みついてしまいます。
おもちゃを使って遊ぶことで、何でも噛みついていい訳ではないと次第に理解し、噛みつきが落ち着いてくるでしょう。
猫に噛み癖をつけないためのしつけ方
猫に噛み癖がついてしまうと、噛まないようにしつけをするのはなかなか難しくなります。そのため、噛み癖がつく前にしつけをすることが重要になってきます。
しかし、猫に噛み癖をつけないためにはどのようなしつけ方を行えば良いのでしょうか。詳しくみていきましょう。
痛いことをはっきり伝える
猫が手や足を噛んできたときに痛いことをはっきりと伝えることが大切です。猫は遊んでもらう中で噛んでくることが多いため、噛まれると痛いことがわかっていません。
野生の猫であれば、家族や兄弟とのじゃれあいの中で噛む力加減など自然に体得し、噛み癖がつくことはないでしょう。
しかし、生まれてすぐ家族と離れ、飼い猫となった子猫は噛む力や頻度などの加減がわからないため、本噛みに近い噛みつきをしてくることもあります。
そのため、噛まれると痛いことを言葉や身振りなどの仕草で伝えて、教えてあげましょう。
噛まれた手を押す
噛まれた手を押して、噛まれたら痛いことを伝えるのも効果があります。猫の歯は鋭いため、噛まれてから無理に引き離そうとすると怪我をする恐れがあります。
また、猫は動くものに反応するため、噛んだことに怒って手を動かすとかえって遊んでくれていると勘違いしてしまう可能性もあるでしょう。
そのため、噛まれたら手を押しましょう。子猫の場合は何度も噛んでくるので、その都度押して痛いことを伝えると次第に覚えるようになります。
噛むおもちゃを与える
噛み癖をつけないためには噛むおもちゃを与えてあげましょう。猫は全く噛まないということはありません。
そのため、噛んでも大丈夫なおもちゃを用意してあげると手や足を噛むことなく、おもちゃを噛むことで噛み癖を解消できます。
おもちゃを適度に動かしたり、何種類か用意してあげたりすると飽きることなく遊びながらおもちゃを噛むことに楽しみを覚えるようになるでしょう。
猫が噛まないようにするための対処法
猫に噛み癖をつけないためのしつけとともに大切になってくるのが猫が噛まないようにするための対処法です。
猫が誤って噛んでしまうことがないよう、飼い主が対処法を施す必要があるでしょう。では、猫が噛まないようにするためにはどのようにすれば良いのでしょうか。詳しくみていきましょう。
長時間撫でない
噛み癖をつけないためには長時間撫でるのはやめましょう。猫は撫でられる行為は好きですが、長時間撫でられることは嫌がります。
繰り返し長時間撫でられるようになると、撫でられること自体に嫌気がさしてしまい、しまいには撫でようとする度に噛んでくるようになるでしょう。
もともと猫は自由に行動することを好むため、長時間行動を制限されることを苦手とします。そのため、撫でるときは猫の様子をみながら嫌がらない程度に行うことをおすすめします。
遊ぶときはおもちゃを使う
猫と遊ぶときはおもちゃを使って遊んであげましょう。直に手を使って遊んでしまうと、猫は手を噛んでもいいと勘違いしてしまいます。
猫は動くものに対して本能的に噛んだり、手で引き寄せたりして捕まえようとする習性があります。そのため、遊ぶときは噛んでもいいぬいぐるみのおもちゃを使うと良いでしょう。
ほかにも猫じゃらしや柔らかいボールなども猫が噛んで遊ぶには適しているため、取り入れてみることをおすすめします。
猫が満足するまで遊んであげる
猫が噛まないようにする対処法として、満足するまで遊んであげるのも効果的です。猫は遊んでほしいときに甘噛みしてきます。
そのため、猫は満足するまで遊ぶとそれ以上噛もうとすることなく、疲れて寝てしまいます。遊ぶ際にはおもちゃを多用してさまざまな動きを取り入れると満足しやすいでしょう。
噛まれた傷を放置するのは危険
猫はじゃれたり、遊んだりして噛んでくることがありますが、手や足を噛まれたときに傷ができるほどの状態であればそのままにするのは危険です。
猫に噛まれたり、引っ掻かれたりすることで重症化する雑菌が存在し、早期に対処することで軽症で済むことがほとんどです。
では、猫に噛まれた傷により感染する可能性がある雑菌や噛まれた後の対処法について詳しくみていきましょう。
猫の口腔内は雑菌が多い
猫の口腔内には雑菌が多く、猫自体には問題ないものでも人にとっては感染すると重症化する可能性があるものも存在します。パスツレラ症は代表的な感染症のひとつです。
パスツレラ症とは、犬や猫に存在するパスツレラ菌が噛まれたり、引っ掻かれたりすることで人に感染し、稀に敗血症・肺炎・髄膜炎・心内膜炎などの全身感染症を引き起こします。
敗血症を発症した場合、死亡率が28%と高いことから重篤化しやすい糖尿病・呼吸器疾患・悪性疾患・肝硬変・ステロイド使用などの基礎疾患を有する場合は注意が必要です。
ほかにも猫引っ掻き病やカプノサイトファーガ感染症など、猫に噛まれたことで傷を負った際に感染の恐れがある感染症はいくつかあります。
猫に噛まれた傷から感染する雑菌は傷を負った時点で対処することで全身感染症を防ぐことが可能です。そのため、噛まれて傷を負ったら早期に対処するようにしましょう。
噛まれたらよく洗浄する
猫に噛まれたらまずは水道水で傷口をよく洗浄しましょう。水道水は流したままで洗浄することで雑菌を洗い流す効果があります。
傷口が化膿してきたり、腫れてきたりした場合は医療機関を受診しましょう。受傷後に体がだるくなってきたり、発熱があったりした場合も感染症の疑いがあります。
猫に噛まれないようにするのは難しいため、もしも傷を負ったときにすぐ対応することが大切です。
まとめ
本記事では、猫が噛む理由について、甘噛み・本噛みの違い・しつけ方・対処法を解説しました。
猫が噛む理由としては、甘えたい・狩猟本能が刺激された・ストレスを感じている・歯が生え変わっている・病気・怪我をしているなどが挙げられます。
子猫の場合は甘えたがったり、遊びたがったりして甘噛みすることが多いです。
大人や高齢の猫で普段噛まないが最近噛むようになった場合は病気や怪我をしている可能性があるため、本噛みしてくる危険性があります。
猫の体調があまり良くない様子であれば、一度獣医師に診てもらうと良いでしょう。
猫に噛み癖をつけさせないためのしつけ方としては、痛いことをはっきり伝える・噛まれた手を押す・噛むおもちゃを与えると噛み癖がつきにくくなります。
また猫が噛まないためには長時間撫でたりせず、おもちゃで猫が満足するまで遊んであげることがおすすめです。
もし猫に噛まれて傷を負った場合は雑菌で感染症を引き起こす可能性もあるので、すぐに洗浄しましょう。
猫は噛み癖がつく前にしつけや対策法を講じることで、猫にとっても飼い主にとっても快適に過ごせます。
これから猫を飼い始める方や飼い猫の噛み癖に悩んでいる方はぜひ試してみてください。
参考文献