「飼っている猫の眼に腫瘍のようなものができている」
「猫の眼球腫瘍を治す方法や飼い主ができる適切な処置を理解したい」
猫を飼っている方、あるいは飼っている猫の眼に違和感を感じた方のなかには、このような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では猫の眼球腫瘍について、以下の点を中心にご紹介します。
- 猫の眼球腫瘍の特徴
- 猫の眼球腫瘍の治療方法
- 猫の眼球腫瘍に対して飼い主ができること
猫の眼球腫瘍について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
猫の眼球の腫瘍とは?
まずはじめに、猫の眼球腫瘍を簡潔にご紹介します。
猫の眼球腫瘍とは、眼球や目の周辺に異常な細胞増殖が起こる病気です。
猫の眼球に腫瘍のようなものができた場合、その正体が悪性黒色腫、あるいはリンパ腫であることが可能性として挙げられます。
別名メラノーマとも呼ばれている悪性黒色腫は、皮膚がんの一種で、猫の眼に腫瘍ができた場合はまず悪性黒色腫を疑うべきといえるでしょう。
悪性黒色腫は、眼球の表面や周囲に発生する腫瘍であり、外から見ても明らかな変化がわかります。(眼球だけでなく、体の表面にもできる場合があります)
一方でリンパ腫とは、血液に関わるがんで、白血球の一種であるリンパ球ががんと化したものです。
リンパ腫の場合も、必ずしも眼球に症状があらわれる訳ではなく、顔のほかの部分や体にできる場合もあります。
いずれにせよ、悪性黒色腫やリンパ腫などの腫瘍が確認できた場合、あるいは腫瘍と疑わしきものが確認できた場合は、すぐに獣医に相談することが重要です。
猫の眼球の腫瘍の特徴
本項目では、猫の眼球腫瘍の特徴を、以下の3つに分けてご紹介します。
- 眼球腫瘍による症状
- 眼球腫瘍が発生する原因
- 猫が感じる痛み
眼球の腫瘍による症状
眼球腫瘍によって猫が感じる症状はさまざまで、腫瘍の進行度によっても異なります。
眼球腫瘍によって猫が感じる症状も、悪性黒色腫(メラノーマ)とリンパ腫に分けてご紹介します。
まずは、悪性黒色腫のケースです。
悪性黒色腫の場合は、ただれや出血など、外から見てもえぐれているような見た目のできものがあらわれます。
ただ、その見た目も猫によってさまざまであり、成長する速度も異なります。
悪性黒色腫は、成長速度が早い腫瘍ではあるものの、猫は初期の状態ではあまり痛みや違和感を感じないのも特徴です。
また、猫の眼球の悪性黒色腫の場合は、ほかの臓器に転移したり、痒みや違和感によって眼球を傷付けてしまう可能性もあります。
次に、リンパ腫のケースです。
前述したように、リンパ腫は悪性黒色腫と比較して発生する確率は低いですが、眼球に症状が出ることもあれば、体に豆のようなものができる場合もあります。
また、悪性リンパ腫の場合は、猫の体内の免疫細胞にも影響が及ぶため、以下のような健康面に関わる症状が現れることがあります。
- 痩せる
- 食欲がなくなる
- 嘔吐や下痢
- 呼吸がスムーズにできなくなる
呼吸ができなくなった場合は、胸部の異常が関係しているため、大変深刻な状態です。
眼球の腫瘍が発生する原因
結論から述べると、悪性黒色腫の場合もリンパ腫の場合も、具体的かつ根本的な理由が明確にわかっていないのが現状です。
とはいえ、どのような背景によって腫瘍が発生するのかは部分的に明確になっている部分があり、悪性黒色腫の場合はメラニン細胞が腫瘍化したものと言われています。
本来は、メラニン産生細胞(メラノサイト)は紫外線などから身体を守る重要な役割を果たしていますが、これらの細胞が制御不能に増殖し始めると、悪性黒色腫となってしまいます。
一方で、リンパ腫の場合は、遺伝や環境による要因が大きいと考えられています。
また、猫のリンパ腫のほかの原因には、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)の感染が挙げられます。
猫白血病ウイルスは、主に唾液や鼻汁を介して感染し、母猫から子猫への垂直感染も考えられます。
猫免疫不全ウイルスは、主に血液を介して感染するとされており、免疫機能の低下がリンパ腫のリスクを高めてしまいます。
いずれにせよ、悪性黒色腫もリンパ腫も、根本的な原因がわかっていないのが現状です。
また、猫の眼球に腫瘍が見られる場合、原因の一つとして猫伝染性腹膜炎(FIP)を考慮する必要があります。FIPのドライタイプでは、さまざまな臓器に小さなしこりが発生する”肉芽腫性炎”という特殊な炎症が起こることがあります。
この炎症が眼に発生すると、目が濁ったように見えるぶどう膜炎や、虹彩が腫れたり、充血したりする虹彩炎などの症状を呈することがあります。これらの症状は、一見すると腫瘍のように見える場合があります。
FIPによる眼の異常は、単なる眼の問題ではなく、全身性の重篤な疾患の一症状である可能性があるため、早期発見と適切な診断が重要です。
猫の眼に異常が見られた場合、特に若齢猫では、FIPの可能性を念頭に置いて獣医師による詳細な検査を受けることが推奨されます。
FIPは従来、不治の病とされていましたが、近年では有効な治療法が開発されつつあるため、早期発見・早期治療が猫の生存率を大きく向上させる可能性があります。
猫が感じる痛み
眼球にできた腫瘍に対して猫が感じる痛みをご説明します。
結論から述べると、悪性黒色腫もリンパ腫も、初期の段階では痛みや違和感を感じないのが特徴です。
眼球に腫瘍ができた場合も、小さなものであれば違和感すら感じず、リンパ腫の場合は指で押すなどしても痛みを感じない場合もあります。
ただし、悪性黒色腫やリンパ腫に関わらず、眼球のできものが大きくなった場合は猫自身も違和感を感じられずにはいられないため、目を擦ろうとしたり腫瘍をいじったりすることがあります。
眼球にできた腫瘍の見た目はしっかりとした傷や膨れであるため、飼い主から見て形や色に違和感を感じた際はすぐに対処を行うことが重要です。
猫の眼球の腫瘍を治す方法
本項目では、猫の眼球腫瘍を治す方法をご紹介します。
猫の眼球腫瘍を治すには、大きく分けて以下の2つの方法が挙げられます。
- 手術を行う方法
- 薬を使用する方法
手術を行う方法
猫の眼球腫瘍を治す方法の1つ目は手術を行う方法です。
悪性黒色腫やリンパ腫の治療手術とは、主に眼球の摘出手術のことを指します。
前述したように、眼球にできた腫瘍の場合は、放置しておくと徐々にサイズが大きくなり、腫瘍のみをきれいに除去できないうえ、再発の可能性をなくすことが難しいです。
そのような場合は、眼球、および必要に応じて周りの皮膚を切除する必要があります。
また、眼球腫瘍は、単に眼の周りだけに現れる症状ではなく、それらが転移して臓器や体のほかの部分に影響する可能性が高いため、そのような事態を防ぐためにも眼球の摘出が適切である場合が多いようです。
猫の眼球の摘出手術は、腫瘍の大きさや位置、進行度、そして猫の臓器などの全身の状態を考慮して慎重に判断されます。
眼球の摘出手術は全身麻酔下で行われ、眼球周囲の組織を慎重に剥離し、眼球と関連する筋肉や神経、血管を切断します。
手術後は、猫の眼の痛みの管理と感染予防のための投薬が行われ、数週間〜1ヵ月程度で違和感などがなくなるとされています。
眼球摘出手術が無事完了すれば、痛みや痒みなどのストレスから解放され、従来どおりに生活できるようになります。
また、人間の場合は、片目がなくなると視野の幅が狭くなり、不自由を感じますが、猫の場合は適応能力が高く、すぐに問題なく生活できるようになることが多いです。
薬を使用する方法
2つ目は薬を使用する方法です。
眼球腫瘍に薬を使用するケースは、免疫を維持する際や術後の補助療法として使用されることが多いようです。
悪性黒色腫やリンパ腫に関わらず、眼球腫瘍を薬物療法のみで治す方法は見つかっていません。
悪性腫瘍が疑われる場合、初期であっても腫瘍のみの切除では腫瘍細胞を取り残す可能性が高くなるため、眼球摘出が勧められることが一般的です。
リンパ腫の場合は、抗がん剤が奏功する可能性が十分にあります。なかでも、抗がん剤は腫瘍の種類によって効果が異なるため、一律に期待が薄いとはいえません。
いずれにせよ、まずは腫瘍の切除や眼球の摘出が行われるため、その後の猫の状態によって適切な薬が獣医によってすすめられる流れになります。
猫の眼球の腫瘍を放置してしまうとどうなる?
本項目では、猫の眼球腫瘍を放置した場合に起こりうることをご紹介します。
前述したように、悪性黒色腫やリンパ腫などの眼球腫瘍は、猫にとっても初期症状がほとんどないと言われており、早期発見が難しい側面もあります。
そのため、気付かぬうちに腫瘍が肥大化し、飼い主が違和感を感じた場合にはすでに進行が進んでいるケースも少なくありません。
腫瘍の治療法に関する見出しでもご紹介したとおり、腫瘍がある程度大きくなった段階では、眼球と腫瘍を引き離して腫瘍のみを切除することは難しいため、眼球自体を摘出するほか方法がありません。
そのような場合は、先程ご説明したような施術を行う必要があり、摘出後は片目だけで生活するようになります。
また、悪性の眼球腫瘍は放置しておくと体のほかの部分や臓器にも転移するため、健康面の深刻な症状が出てきます。
痛みによる食欲の低下や元気がなくなる、あるいは呼吸困難となるケースも一定数存在し、仮にその時点で手術を行っても、後遺症が残ってしまう場合もあります。
特に悪性黒色腫は皮膚がんの一種であるため、人間のがんの進行として考えると、深刻度や影響を理解しやすいでしょう。
猫の眼球の腫瘍を見つける方法
次に、猫の眼球腫瘍を見つける方法をご紹介します。
ここまで、眼球腫瘍の正体や放置しておくことのリスクなどをご紹介しましたが、眼球に発生する腫瘍のなかでも、害がないようなものも一部存在します。
例えば、良性腫瘍の場合は、成長が遅く、周囲の組織に影響しないものもあります。
とはいえ、このようなケースはあくまで一時的に悪い影響がないだけの場合もあり、時間の経過とともに性質が変化するケースもあります。
そのため、実際に猫の眼に腫瘍を見つけた際には、すぐに獣医に相談し、診断を受けることが重要となります。
そんな眼球腫瘍は、見た目ではっきりとわかる場合もありますが、それ以前の段階では、以下のような症状によって確認できる場合もあります。
- 眼が正常な状態よりも赤い
- 普段よりも目ヤニが出ている
- 不自然に涙が出ている
- 目を気にする様子がある
- 眼の動きがおかしい
- 瞬きの回数が多い
- 目の形や大きさ、色調に左右差がある
上記の症状によって猫の眼球の症状に違和感を感じた際は、眼球腫瘍が発生している可能性があるため、一度獣医に相談することが重要です。
猫の飼い主ができること
最後に、猫の健康を守るために飼い主が日常的にできる対策を、以下の3つに厳選してご紹介します。
- 毎日猫の眼を確認する
- 違和感を感じたらすぐに獣医に相談する
- 適切な対処を行う
眼球腫瘍に限らず、そのほかのあらゆる病気や怪我を未然に防ぐためにも、猫の飼い主の方は上記の内容を意識しておくことをおすすめします。
毎日猫の眼を確認すること
猫の健康を守るために飼い主が日常的にできる対策の1つ目は毎日猫の眼を確認することです。
猫の眼は、健康状態を反映する重要な部分であり、定期的に確認/観察することが重要です。
本記事でご紹介した眼球腫瘍はもちろん、猫伝染性鼻気管炎や猫クラミジア感染症なども、症状として眼に異変が起こることがあります。
毎日のスキンシップの際に、猫の眼を注意して確認し、眼の色や形、大きさに変化がないか、あるいは充血や腫れはないかなど、しっかりとチェックすることが重要です。
違和感を感じたら、すぐに獣医に相談すること
2つ目は違和感を感じたら、すぐに獣医に相談することです。
飼っている猫に普段と違うような症状や様子が見られた場合は、躊躇せずに獣医に相談することが重要です。
猫の行動に違和感を感じた場合は、少しの間様子を見てみようと考えるケースが多いようですが、本記事でご紹介したような眼球腫瘍の場合、猫の行動や症状に違和感を感じた時にはすでに進行が進んでいるケースもあります。
無論、放置しておくことで自然治癒する場合もありますが、獣医への相談が遅れて手遅れとなってしまうリスクを考えると、早い段階で獣医の診断を受けるにこしたことはないでしょう。
適切な対処を行うこと
3つ目は適切な対処を行うことです。
獣医の診断を受けた後は、指示された治療法や予防策をよりしっかりと実行することが重要です。
薬の投与や食事制限、生活環境の改善など、獣医からのアドバイスを忠実に守り、素人の判断で独自の処置を行わないようにしましょう。
また、手術後の定期的な検査や経過観察も怠らず、猫の繊細な体をしっかりとケアすることが大切であり、疑問や不明点を抱えた場合は都度相談する姿勢も重要です。
まとめ
ここまで猫の眼球腫瘍についてお伝えしてきました。記事の要点をまとめると以下のとおりです。
- 猫の眼球腫瘍の正体には、主に悪性黒色腫(メラノーマ)とリンパ腫があり、それぞれ症状や原因が異なる
- 猫の眼球腫瘍の治療方法には、手術によって治す方法と、薬を使用する方法の2種類がある
- 猫の眼球腫瘍に対して飼い主ができることは、毎日猫の目を確認すること、違和感を感じたらすぐに獣医に相談すること、そして獣医の指示にしたがって適切な処置を行うこと
猫の眼球に腫瘍ができる原因ははっきりと解明されていないため、予防することは難しいのが現状です。腫瘍を早期発見し早期対応できるよう、この記事を読んで、猫の眼球腫瘍について参考にしていただけると幸いです。