年齢を重ねた愛犬のトリミングは「必要なのか?」「負担にならないか?」と悩む飼い主さんもいるのではないでしょうか。老犬でもトリミングは大切ですが、体力の低下や持病の影響でトリミングを断られるケースもあります。
本記事では老犬のトリミングについて以下の点を中心にご紹介します。
- 何歳から老犬と呼ばれるのか
- 老犬のトリミングについて
- 老犬がトリミングを断られる理由
老犬のトリミングについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
何歳から老犬と呼ばれるの?

犬の年齢は犬種や生活環境によって個体差がありますが、高齢期とされる目安は以下のとおりです。
- 小型犬・中型犬:11歳以上
- 大型犬:8歳以上
- 超大型犬:6歳以上
この年齢を迎えると、体力の低下や健康面のリスクが高まるため、初めて利用するトリミングサロンでは受け入れを断られるケースも増えてくることがあります。
また、犬の年齢を人間の年齢に換算すると、成長スピードに大きな違いがあることがわかります。1歳の犬は小型・中型犬では人間の15歳、大型犬では12歳に相当し、すでに成犬として成長しています。
その後、犬の年齢が進むにつれて人間の年齢との差が広がり、2歳の犬は小型・中型犬で24歳、大型犬で19歳となります。
3歳以降は、小型・中型犬では1年ごとに4歳、大型犬では7歳ずつ年を取る計算となります。
例えば、5歳の犬は小型・中型犬では人間の36歳、大型犬では40歳に相当し、そろそろシニア期に向かう準備が必要な時期です。
さらに、10歳になると小型・中型犬で人間の56歳、大型犬では75歳と高齢期に入り、健康管理がより重要になります。
11歳を迎えると、小型・中型犬は人間の60歳、大型犬は82歳となり、シニア犬としてのケアが必要になります。
12歳以降は、1年ごとに小型・中型犬は4歳、大型犬は7歳ずつ年齢を重ね、15歳になると小型・中型犬は76歳、大型犬では110歳に相当します。
このように、犬の年齢を人間の年齢に置き換えると、シニア期のケアがいかに大切かがよくわかります。特に、大型犬は小型・中型犬よりも早く高齢期を迎えるため、健康管理や生活環境の工夫が欠かせません。愛犬の年齢に合わせた適切なケアを心がけることが、長く健康で快適な生活につながります。
老犬のトリミングについて

老犬にトリミングは必要?
結論からいうと、老犬にもトリミングは必要です。「家で寝ている時間が長くなったし、以前のようにたくさん散歩をしたり外出したりする機会も減ったから、トリミングは必要ないのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、トリミングは単に見た目を整えるためだけでなく、健康を維持するためにも欠かせないケアのひとつです。
シニア期に入ると、皮膚の乾燥や脂っぽさが目立ちやすくなるため、適度な頻度でシャンプーやトリミングを行い、清潔な状態を保つことが大切です。また、被毛のケアだけでなく、爪切りや肛門腺のケアなども定期的に行う必要があります。これらのケアを怠ると、歩行の妨げになったり、皮膚炎を引き起こしたりするリスクが高まるようです。
また、老犬になると、排泄の失敗や免疫力の低下により、皮膚トラブルが発生しやすくなるため、より一層の衛生管理が重要になります。トリミングを行う際は、犬の体調や負担を考慮しながら、短時間で終えられるよう工夫することが重要です。
老犬のトリミングは、健康を維持し、快適な生活を送るために欠かせないケアです。愛犬の様子を見ながら、無理のない範囲で適切なお手入れを続けていきましょう。
老犬のトリミングの頻度
老犬にとってトリミングは、体に負担がかかる大切なケアでありながら、時には命に関わる作業となることもあります。寝たきりの犬や自力で動くのが難しい犬にとっては、長時間のトリミングは大きな負担となるため、こまめにドライシャンプーや濡れタオルで拭くなどして清潔を保つことが重要です。
ある程度動ける犬や、トリミングが可能な犬の場合は、3〜4週間に一度のペースでトリミングを行うのが理想的です。ただし、成犬の頃に比べると頻度を減らしても問題ありません。
また、足腰が弱い犬や持病を抱えている犬は、事前にトリマーにその旨を伝え、できるだけ負担を減らす方法を相談するのがおすすめです。無理なく短時間で終えられるよう、シンプルなカットにするなど工夫することもできます。
老犬がトリミングを断られる理由

老犬がトリミングを断られる理由には以下のようなことが挙げられます。
慎重な施術が求められるから
老犬のトリミングが断られることがあるのは、施術に特別な配慮が必要になるためです。シニア犬になると体力が低下し、長時間立ち続けることが難しくなる子もいます。立てたとしても、すぐに疲れてしまい、長時間のトリミングは負担になる可能性があります。
さらに、視力や聴力が低下していることから、成犬の頃よりも周囲の刺激に敏感になる傾向があります。例えば、バリカンの音や長時間の施術など、ささいなことがストレスとなり、体調を崩してしまうこともあります。
こうした理由から、トリミングサロンでは老犬をより慎重に扱う必要があり、施術時間が長くなることがあります。サロン側の負担が増えるだけでなく、愛犬自身の健康を優先に考えてトリミングをお断りするケースもあります。
老犬への負担が大きいから
犬も年齢を重ねると、若い頃にできていたことが難しくなるのは人間と同じです。例えば、トリミングの際にはトリミング台の上で立ってもらう必要がありますが、関節や筋肉が衰えてしまうと立つことが困難になったり、立ち続けるのが負担になったりすることがあります。
また、視力や聴力が低下すると、体に触れられるだけでも驚きやすくなり、パニックを起こしてしまうこともあります。
シニア犬は肉体的にも精神的にもストレスを感じやすくなるため、トリミングが体調に影響を及ぼすこともあります。場合によっては、トリミングがきっかけで体調を崩し、深刻な状態に陥ることさえあります。
緊急時に対応できないから
シニア犬は、ストレスが原因で体調を崩すことが少なくありません。トリミングをきっかけに下痢や嘔吐をしたり、食欲が低下してごはんを食べなくなったりすることがあり、そのまま体調が悪化するケースもあります。また、ストレスによって持病が悪化してしまうことも珍しくありません。
トリミングサロンでは、施術中や施術後に犬の体調が急変した際、適切な対応を取るのが難しいことがあります。そのため、愛犬に持病がある場合や、加齢による体調変化が見られる場合は、かかりつけの獣医師と相談しながら、負担の少ないトリミング方法への切り替えを検討することが大切です。
老犬をトリミングするときのポイント

老犬をトリミングするときのポイントは以下のとおりです。
体調を確認しながら実施し無理をしない
老犬のトリミングでは、安全性と施術のスピードが重要です。年齢を重ねた犬にとって、長時間のトリミングは体への負担が大きく、リスクにつながることもあるため、できるだけ短時間で負担の少ない方法で仕上げることが大切です。
また、老犬は皮膚が敏感になり、視力や聴力などの感覚機能も低下しているため、トリミング中のわずかな変化にも気を配る必要があります。体調の変化に気付かず無理を続けてしまうと、ストレスや疲労によって体調を崩すこともあるため、こまめに様子を観察しながら慎重に進めることが大切です。
さらに、五感の衰えによって、突発的な行動を取ることもあるため、予期せぬ動きに素早く対応できるよう準備を整えておくことが求められます。トリミングの際は、愛犬の状態を常にチェックし、無理をさせないことを第一に考えながら、配慮した施術を心がけましょう。
シャンプーとカットは別日で行う
犬種によりますが、トリミングには2〜3時間程かかります。その間、犬はずっと立ち続けなければならず、さらに慣れない環境で体を触られることが大きなストレスとなります。結果、体調を崩してしまう犬も少なくありません。
体と心への負担を軽減するために、シャンプーとカットを別日に分けて行うとよいでしょう。また、以下のようなことに気をつける必要があります。
- 初日はシャンプーとドライのみを行い、1時間以内に終了
- その日はそこで終わり、2日後~1週間以内にカットを実施
上記の方法なら、シャンプー後の体調変化を確認してからカットに進められるため、無理なくトリミングを進められるでしょう。シニア犬や体力が落ちている犬には、1日以上間隔を空けるのが理想的です。
健康を重視したデザインにする
トリミングは、愛犬の可愛らしい見た目を維持するためにも大切ですが、シニア期に入ったら、できるだけ体に負担をかけない方法を優先しましょう。
例えば、時間のかかるハサミ仕上げではなく、バリカンを使って短時間でカットを終わらせる方法も、愛犬の負担を減らすための工夫のひとつです。バリカンなら施術時間を短縮できるだけでなく、安全にカットを進められます。
老犬に配慮したトリミングメニューを利用する
“高齢犬トリミング”や”シニア犬トリミング”といった専用メニューを設けているサロンでは、年齢を理由に断られる心配がありません。現在利用しているサロンがある場合は、シニア犬向けの対応が可能かどうかを事前に確認しておくとよいでしょう。
また、若い頃から同じサロンに通っていれば、トリマーが愛犬の性格や苦手なことを把握しやすく、高齢になってもその子に合った方法でトリミングを行ってもらえます。シニア期を迎える前に、安心して任せられるサロンを見つけておくことが大切です。
動物病院でトリミングをお願いする
シニア犬のトリミングをためらうのには、体調への影響が心配だからという理由があるかもしれません。高齢になると体力が落ち、持病を抱えている場合もあるため「トリミングが負担にならないか」「もし体調が急変したらどうしよう」と不安を感じる飼い主さんも少なくありません。
そうした不安を軽減するために、動物病院併設のサロンや、トリミングを実施している動物病院を利用するのがおすすめです。獣医師がすぐに対応できる環境なら、万が一の体調変化にも迅速な処置が可能とされますし、トリミング前の健康チェックを通じて、定期的に愛犬の体調を把握することもできます。
また、トリミング中に皮膚の異常や耳の汚れ、体重の変化などが見つかることもあり、早めの対応につながるメリットもあります。実際に、動物病院ではトリミング前のチェックで異常を発見し、飼い主さんの了承のもと獣医師による診察や治療を行うケースも多いようです。
脳の病気や持病があり、サロンで受け入れが難しい犬でも、動物病院でシャンプーやケアをしてもらえることがあります。例えば、月に1回や2ヵ月に1回のペースで、優しくマッサージしながらシャンプーを行い、ドライヤーでふんわり仕上げると、気持ちよさそうにリラックスする犬も多いようです。
自宅で行える出張トリミングもおすすめ

シニア犬には、トリミングサロンへの移動は大きな負担になることがあります。その点、自宅で行える出張トリミングは自宅で施術を受けられるため、移動のストレスがなく、体への負担を抑えられるのが大きなメリットです。
また、飼い主さんがそばにいることで、犬もリラックスして施術を受けやすくなります。トリマーによっては、飼い主さんに犬の保定を手伝ってもらいながらトリミングを行う場合もあり、よりよいケアを進められます。
老犬の場合、急な体調の変化が起こる可能性もあるため、不安を感じる場合は、動物看護師の資格を持つトリマーを指名するのも一つの方法です。万が一の体調変化にも適切に対応できるため、より安心してトリミングを受けられます。
出張トリミングは、愛犬にとって慣れた環境で行えるため、リラックスしやすく、施術中も落ち着いて過ごしやすいのが特徴です。さらに、長時間の移動や待ち時間がないため、疲労が少なく、体への負担も軽減できます。
ただし、出張トリミングサービスは対応エリアが決まっている場合が多いため、利用を検討する際はお住まいの地域が対応範囲に含まれているか事前に確認しておきましょう。
移動の負担を減らしつつ、安全にトリミングを行いたい方にとって、出張トリミングはおすすめの選択肢です。
セルフトリミングをするときの注意点

セルフトリミングをするときの注意点は以下のとおりです。
①細心の注意を払い施術する
初めてカットする場合は、顔周りのカットは避け、まずは足裏の毛を1本ずつカットすることから始めるのがおすすめです。また、トリミングの技術を学びたい方は、トリミングのやり方を学べる講座(後述)を活用するのもよい方法です。
セルフトリミングを行う際は、無理をせず、愛犬の様子を見ながら少しずつ進めることが大切です。安全に配慮しながら、愛犬にとって負担の少ないトリミングを心がけましょう。
②道具を揃える
セルフトリミングを行う際には、適切な道具を準備することが重要です。基本的に必要なアイテムは以下の4つです。
- バリカン(足裏や全身のカットに使用)
- ブラシ(毛玉やもつれを防ぐために使用)
- コーム(くし)(毛を整えながらカットしやすくする)
- はさみ(カット用・細かい部分用のミニタイプ)
普段からブラッシングを習慣にし、毛玉や絡まりを防ぐことが、スムーズなトリミングにつながります。日常的に被毛のケアをしておくことで、カットのしやすさが向上し、施術時間の短縮にもつながるため、愛犬の負担を軽減できます。
また、自宅でセルフトリミングをする場合は、全身のカットを無理に行うのではなく、できる範囲で部分的にケアするのがおすすめです。
例えば、足裏の毛やお尻周りなど、伸びやすい箇所をこまめに整えておくことで、サロンでのトリミング時間を短縮でき、シニア犬のストレス軽減につながります。
まとめ

ここまで老犬のトリミングについてお伝えしてきました。老犬のトリミングについての要点をまとめると以下のとおりです。
- 犬の年齢は犬種や生活環境によって個体差があるが、高齢期とされる目安は、小型犬・中型犬:11歳以上、大型犬:8歳以上、超大型犬:6歳以上とされている
- 老犬にもトリミングは必要である。トリミングは単に見た目を整えるためだけでなく、健康を維持するためにも欠かせないケアのひとつである
- 老犬がトリミングを断られる理由には、慎重な施術が求められたり老犬への負担が大きかったりすることなどが挙げられる
老犬のトリミングは、見た目を整えるだけでなく、健康を維持するためにも重要なケアのひとつです。しかし、年齢や体調によってはトリミングを断られることもあるため、愛犬の負担を抑えながら、安全に行うことが大切です。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。