初めて動物病院を受診する際には、飼い主さんにも動物にも不安がつきものです。予約は必要なのか、事前準備は必要か、何を持参したらよいのかなど多くの疑問が生じることでしょう。
動物病院の診療には予約が必要なのでしょうか。また、予約方法や通院時のマナーはどのような点に注意すべきでしょうか。
この記事では動物病院の予約方法や診察手続きについて解説します。
動物病院の診療には予約が必要?
動物病院によって、予約が必須の場合と不要な場合があります。また、一部の動物病院では、予約を一切受け付けていないこともあります。
大学病院では、かかりつけの動物病院を通しての予約のみを受け付けていることも少なくありません。細かい時間指定の可否や獣医師指名の可否は動物病院によってそれぞれです。
予約が任意でも、待ち時間が変わることがあります。事前のフォームの記入やWeb問診が必要になる場合もあるでしょう。
動物病院の予約についてはそれぞれの経営方針によってシステムが異なります。事前に動物病院の予約システムをチェックしましょう。
予約可能な動物病院のメリット
動物病院を予約することにはいくつかのメリットがあります。待ち時間を減らせるため、飼い主さんの予定を優先することができるでしょう。事前準備ができることは、動物病院と飼い主の双方にとってメリットがあります。
ほかの動物たちと接触する可能性を減らすことは、飼い主さんのペットを守ると同時にほかの方々へのマナーでもあります。
予約可能な動物病院のメリットについて解説しましょう。
待ち時間が少なくなる
動物病院の予約を入れることによって、待ち時間を短くできます。飼い主さんが事前に予約を入れることにより、動物病院側はほかの飼い主さんとの予定を調整することができます。
そのため予約が任意となっている動物病院でも、予約者の診察を優先していることが少なくありません。事前予約を入れておくことによって時間のロスを減らすことが可能です。
またユニークな予約制度としては順番待ち予約があります。順番だけを予約しておいて、その順番まで待機するという方法です。
順番待ち予約の場合、待ち時間の間に買い物を済ませるといった、時間の有効活用ができるでしょう。
事前に準備をしてもらえる
事前予約は動物病院にとって、事前準備がしやすい点がメリットとなります。予約をする際に動物病院は、飼い主さんから動物の症状を聞き出すことができるでしょう。
また動物病院側は飼い主さんと相談して、ほかの診察が少ない時間帯の診察を提案することができます。動物病院と飼い主さんの双方の都合に合わせた予約ができるでしょう。
事前予約は飼い主さんにとっても準備ができるという点で便利です。動物の血液検査や麻酔の際には、動物が事前に絶食しなければならないこともあります。
動物の下痢や嘔吐が見られるときには、便や嘔吐物の提示が求められることもあります。飼い主さんとしても診察の準備を計画して行うことができる点がメリットです。
ほかのペットとの接触を避けやすい
動物病院の診察を予約することにより、待ち時間を減らすことが可能です。これにより、ほかの動物との接触を減らすことが可能です。
動物病院の待合室で、動物同士のトラブルが起きることは少なくありません。伝染病の感染はもちろん、ほかの動物に噛みついたり威嚇したりすることにより相手の動物にストレスを与えます。
またほかの動物からの被害に遭遇することもあるでしょう。待ち時間が長いとこれらのリスクが高まります。
動物病院の予約方法
動物病院の予約方法は、Web予約と電話予約が一般的です。近年はWeb予約が主流ですが、電話予約にもメリットがあります。
動物病院の予約方法について解説します。
Web予約
動物病院のWeb予約は、飼い主さんにとってとても便利な手段です。必要事項をフォームに記入するだけで、24時間いつでも予約が可能なため、忙しい日常のなかでもスムーズに通院の予定を立てることができます。
フォームには飼い主さんの名前や住所、電話番号やメールアドレスといった基本情報のほか、動物の名前や症状を記入する欄があります。
これにより、病院側は事前に動物の状態を把握でき、より的確な診療準備が可能です。飼い主さんとしても、当日の診察がスムーズに進むことで、待ち時間の短縮や安心感につながります。
また、Web予約を活用することで電話がつながらないストレスを避けられ、ほかの予定と照らし合わせながら自分のタイミングで予約を完了できます。
一方で、初めて利用する場合や機械操作に不慣れな飼い主さんにとっては、入力項目の多さや操作に戸惑うことがあるかもしれません。
そのため、動物病院側には、わかりやすい画面設計や入力サポートが求められます。
電話予約
電話予約は、普段からそれほど混雑しない動物病院やWeb予約システムを導入していない動物病院を利用する飼い主さんにとって、すぐに予約が取れるという手軽さがメリットです。
インターネットに不慣れな飼い主さんにとっても、電話で直接予約できるため利用しやすいでしょう。
予約時にスタッフと直接話すことで、些細な不安や質問もその場で確認できるため、安心感につながります。
ただし、インターネット予約が主流となった現代では、電話予約に対応していない病院もあるため、事前に確認が必要です。
動物病院の受診の流れ
動物病院を受診する際、予約が必要な場合は事前に行います。予約時に獣医師から指示があることもあるでしょう。絶食など、受診前に準備が必要になることもあります。
予約した場合、時間に遅れないように動物病院に行きましょう。その際には、診察券やペット保険証などの提出が必要です。診察までは待ち時間があるかもしれません。
診察では動物の飼育環境や食べ物、症状などの質問があります。これらを正確に答えられる方が同行するとスムーズです。事前に要点を整理しておくとよいでしょう。
検査は聴診や検温、体重測定など、動物の状態を把握する基本的なものから行われるのが一般的です。必要に応じて、レントゲンやエコー、血液検査などの追加検査が行われます。
これらの検査の結果を踏まえ、獣医師から症状の説明が行われます。その場で結果が出ないこともあり、その場合は通院する必要があるかもしれません。
会計の際に、必要な薬が処方されます。必要であれば、診断明細をもらうこともできます。次の予約が必要な場合、その場で予定を入れると次回の受診がスムーズです。
動物病院受診の際の持ち物
動物病院の診察を受けるときには、必要な持ち物があります。診察時に必要な持ち物として以下が挙げられます。
- ワクチン証明書
- ペット保険の保険証
- 普段使用している薬
- 便・嘔吐物など
- ペットシーツやビニール袋
- 首輪・リード
- キャリーバッグ
- おやつ
ワクチン証明書や保険証などは最新のものを持参しましょう。下痢・吐物などは、いつどれくらい、いつから、きっかけなどの経過がわかるものを持参するのがおすすめです。
またいつものご飯の種類と成分がわかるものや、おやつをパッケージごと持参することもおすすめします。それぞれの持ち物について留意すべき点がありますので、以下で解説します。
ワクチン証明書
日本の法律では、犬の狂犬病ワクチン接種が年1回義務付けられています。狂犬病は、発症すると助かる確率が低い疫病です。そのため、発症自体を防がなければなりません。
犬に対する狂犬病の予防接種は市区町村の集団予防接種、もしくは動物病院で受けることが可能です。予防接種を完了すると、接種済を証明する書類が配布されます。
この証明書は、動物病院の診察時に必要です。万が一書類を紛失してしまった場合、再発行を受けられる場合もあります。
犬や猫には、狂犬病ワクチンのほかに混合ワクチンもあります。混合ワクチンの接種は義務ではありませんが、診察時に求められることもあるでしょう。
この場合、混合ワクチンの接種証明の提示が必要となることもあります。
ペット保険の保険証
日本では人間と異なり、動物用の公的保険が存在しません。人間が身体の治療を受ける際には、医療費の通常30%は公的保険によって負担されます。
しかし動物の治療の場合、それ以外の保険に加入しなければ全額負担となります。
近年は医学の進歩により、動物たちが受けられる治療にも選択肢が増えるようになりました。
しかしそれらの治療は高額なものもあるため、全額負担となると医療費がかさみます。やむをえず、必要な治療を断念する必要があるかもしれません。
しかし、ペット保険に加入していれば、医療費の全額負担を避けられます。
使用できる動物用医療保険は、動物病院によって種類が決まっている場合があるため、事前に確認しましょう。
普段使用している薬
動物病院の診察を受ける場合、動物が常用している薬を持参するよう指示を受けることがあるでしょう。処方する薬によっては、相性が合わないこともあるからです。
ほかに愛用のサプリメントやドッグフード、キャットフードがあれば、銘柄や内容物がわかるように持参すると診察の際に役立ちます。画像のみでもよいので、成分のわかる箇所を写真に撮り提示しましょう。
ほかには、動物の症状や普段の様子を動画で記録することも、診察の際にとても役立ちます。
便・嘔吐物など
動物病院の診察の際に、便や嘔吐物の提示を求められることがあります。便や嘔吐物が、疾患の診断に役立つからです。
動物の下痢や嘔吐のおもな原因としては、アレルギーや細菌、寄生虫やウイルスなどが考えられます。異物の混入が原因により下痢や嘔吐が発生していることもあるでしょう。
これらの症状の特定には、便や嘔吐物を解析することが大きな鍵となります。嘔吐物には泡や胆汁、異物なども含まれていることがあります。
便や嘔吐物はジップロックに入れ、紙袋で覆うと持ち運びしやすいです。
便の採取がむずかしい場合、トイレシートをそのまま持参するという方法もあります。
ペットシーツやビニール袋
ペットシーツやビニール袋は、移動や待ち時間に排泄や嘔吐してしまった場合に役立ちます。動物病院で用意してもらえることもありますが、持参するとよいでしょう。
犬や猫がペットシーツを使いこなせるようにするには、トイレトレーニングが必要です。犬の場合、うまくペットシーツで排泄ができたらご褒美をあげることによって慣れさせるとよいでしょう。
猫の場合、本能から排泄物を隠そうとする傾向が見られます。これは自分の存在を明らかにする排泄物を敵に隠すためだと考えられています。
猫の場合は猫砂と併用することで、徐々にペットシーツの使い方を教育するとよいでしょう。うまくペットシーツが使えたらおやつをあげるという方法を取ります。
首輪・リード
首輪やリードは、待合室での不測の事態に役立ちます。動物病院の診察は動物にとってストレスとなりやすいので、脱走することが考えられるからです。
動物病院からの動物の脱走は交通事故につながる可能性もあります。
また、首輪やリードをしていないことによって、ほかの動物たちに迷惑をかける可能性もあります。
首輪やリードをしていないことで、ほかの動物に噛みつく、ほかの動物の餌を食べるといった行動につながる恐れがあるでしょう。
首輪やリードは装着するだけでなく、傷みや緩みがないように心がけなければなりません。犬や猫の負担になりすぎないよう、少しの余裕を設けて装着するのがポイントです。
キャリーバッグ
首輪やリードではなくキャリーバッグを用意すれば、ほかの動物との接触トラブルをさらに減らすことが可能です。ただしキャリーバッグに苦手意識を持つ犬や猫も見られます。
キャリーバッグへの苦手意識をなくすには、普段からキャリーバッグに慣れさせる生活をするとよいでしょう。
キャリーバッグのなかにお気に入りのペットシーツやおもちゃを入れておくのもよい方法です。また、キャリーバッグ内でおやつを与え、慣れさせるのもおすすめです。
おやつ
動物病院の待合室でおやつを与えてよいのか、疑問に感じる飼い主さんがいるかもしれません。ペットの健康状態によっては、病院へ苦手意識を持たないように、おやつを与えてもよいとしているところもあります。
動物病院の診察では、苦手意識を持っていると診察が困難になるからです。
おやつを与えることで、診察によい印象を持たせることの助けになります。
獣医師にとっても診察がしやすくなります。
動物病院の待合室でのマナー
動物病院のマナーとして、まず予約時間を厳守することが大切です。待合室で待つ場合は動物をリードやキャリーバッグで管理し、ほかの飼い主さんや動物に迷惑をかけないように心がけるとよいでしょう。
待合室でのおやつは禁止されていないことが多いですが、絶食中の動物がいる可能性があるため、おやつを与えてもよいか動物病院のスタッフに確認しましょう。
まとめ
動物病院の予約について解説しました。予約を受け付けている動物病院では、事前に予約をした方が受診がスムーズです。獣医師に指示を仰ぎ、診察に必要なものを準備しましょう。
動物病院の待合室では、ほかの飼い主さんや動物の迷惑にならないように心がけます。キャリーバッグやリードで動物を管理するとよいでしょう。
この記事が動物病院の診察を受ける飼い主さんにとって参考となれば幸いです。
参考文献
- 飼い主の皆さまへ 診察を受けるには|岐阜大学動物病院
- 飼い主の皆さまへ 受診時のお願い|岐阜大学動物病院
- 診療を受けるには 飼い主の皆様へ|山口大学動物医療センター
- ご予約から診療の流れ| 北海道大学動物医療センター
- 飼い主の皆さまへ 診療からお支払いについて|鹿児島大学共同獣医学附属動物病院
- 動物を飼育する方向けQ&A|厚生労働省
- 外来診療のご予約から診療の流れ|麻布大学付属動物病院
- 獣医臨床センターWEB予約システムのお知らせ|大阪公立大学獣医学部附属獣医臨床センター
- 初めて受診される方へのご案内
- 受診の流れ|日本獣医生命科学大学
- 予約から診療までの流れ|大阪公立大学獣医学部附属獣医臨床センター
- 犬の鑑札、注射済票について― 飼い犬の登録と狂犬病予防注射を忘れずに ―|厚生労働省
- 診察の予約と来院|日本大学動物病院 ANMEC
- 診療のご案内|北里大学獣医学部附属動物病院
- ネコの社会的知性はいかに研究するべきか
- 飼い主様へ(伴侶動物医療部門)|酪農学園大学附属動物医療センター