ポメラニアンを家族に迎え入れた場合、トリミングの必要性が気になる方は少なくありません。
ポメラニアンは基本的にはカットが必要ない犬種とされていますが、体調管理や清潔感を保つためには、トリミングが必要です。
そして、まんまるカットやたぬきカットなどカットによって印象が変わり、愛犬の魅力が増すでしょう。
本記事では、ポメラニアンのトリミングの必要性を詳しく解説します。また、頻度や人気のカット方法、注意点にも触れます。
ポメラニアンのトリミングについて知りたい方の参考になれば、幸いです。
ポメラニアンのトリミングは必要?
トリミングとは毛をカットし、毛並みを整えることです。毛並みを整えることで、毛玉を予防したり、体温調節をすることができます。つまり体調管理のためにトリミングは必要です。
それに対して、毛のカットや爪切り、耳掃除や肛門腺絞り、ブラッシングやシャンプーなど全身のお手入れはグルーミングといいます。
ポメラニアンは毛が一定の長さ以上には伸びない犬種のため、カットが不要という考えがあります。
しかし、定期的なトリミングは、ポメラニアンの皮膚状態をチェックし皮膚疾患の早期発見に効果的です。
以下でポメラニアンの被毛の構造とお手入れのポイントを解説します。
ポメラニアンの被毛の構造
被毛の種類には、シングルコートとダブルコートがあります。ポメラニアンの被毛は、ダブルコートに分類されます。
被毛は犬の身体の覆う毛のことで、体温調節のほか、紫外線や雨、病原体など外部の刺激から皮膚を保護する役割を持っています。基本的に被毛は、暑い夏に抜け、寒い冬には生えてきます。
ダブルコートは太くて硬めの上毛(オーバーコート)と、やわらかめの下毛(アンダーコート)の二重構造になっていて、短毛種に多い傾向があります。
春と秋の換毛期に下毛が抜けるのが特徴です。ポメラニアンは、お顔の周りや胸元の毛が特に長く、全体的に被毛のボリュームがある犬種です。
それに対し、シングルコートは被毛が一重構造で、抜け毛が少なく生えかわる換毛期がありません。主に、プードルやパピヨンなどがシングルコートです。
シングルコートは毛並みを美しく整えるだけではなく、毛玉や悪臭を防ぐために、こまめな手入れが必要です。
ポメラニアンの被毛のお手入れのポイント
アニコム損害保険株式会社の調査によると、ポメラニアンの保険請求割合は皮膚疾患が16.7%で、ほかの疾患よりも高いです。
犬全体の皮膚疾患平均よりは低いものの、ポメラニアンは皮膚炎や脱毛などの皮膚疾患に気を付ける必要があります。
換毛期にお手入れを怠ると通気性が悪くなり、皮膚病の原因になる毛玉ができる恐れがあります。
ふわふわな被毛は絡まってしまうことが多いため、理想としては毎日、少なくとも週3回のこまめなブラッシングが理想的です。
特に3~4月の春と9~10月の秋の2回ある換毛期では、お手入れを適切に行い、愛犬の健康を守りましょう。
ポメラニアンのトリミングの頻度
長毛種のポメラニアンは、1ヶ月〜1ヶ月半に1回のトリミングが理想です。
トリミングを行わないと、愛犬の健康と生活に悪影響を及ぼす可能性があるため、定期的なトリミングが重要です。
毎日のこまめな自宅でのケアと月1回程度のトリミングで、ポメラニアンと少しでも長く暮らせるでしょう。
トリミングでは、おしゃれにカットするほか、健康チェックも行う場合があります。
トリミングサロンを選ぶ際は、トリミングの内容を確認し、飼い主さんと愛犬の希望に合うかを確認しましょう。トリミングサロンを選ぶポイントは、以下のとおりです。
- 通いやすさ
- 清潔感のある施設・設備
- トリマーの技術・雰囲気
- 料金とサービス内容のバランス
- 予約のとりやすさ
また、1年以内にワクチン接種を受けていることが条件になる場合が多いため、事前にトリミングを受ける際の注意点についても確認することが重要です。
ポメラニアンの人気カット5選
ポメラニアンの人気カットは、以下のとおりです。
- まんまるカット
- たぬきカット
- 柴犬カット
- 子熊カット
- 桃尻カット
ポメラニアンは以下のようなさまざまな毛色がある犬種です。
- レッド
- ブラウン
- オレンジ
- ホワイト
- クリーム
- ブラック
- ウルフセーブル
毛色やカットによって変わる愛犬の印象を楽しむことができます。
飼い主さんの希望とトリマーのイメージにズレが生じないように、依頼する際は希望するカットの写真やイメージをトリマーに提示することが重要です。
まんまるカット
お顔をタンポポの綿毛のように、まんまるにカットするスタイルです。身体や足の毛の長さは、お顔だけの場合と全体的にまんまるにカットする場合があります。
カットを依頼する際には、トリマーによって仕上がりが異なる可能性があることを理解し、飼い主さんのイメージを具体的に伝えることが大切です。
たぬきカット
ポメラニアンをたぬきのように全体的に丸くふんわりと仕上げるスタイルが、たぬきカットです。
ポメラニアンのモフモフ感が強調され、鼻が短いポメラニアンに似合うカットとされています。
あまりにも短くカットするとたぬき感がなくなってしまうため、カットのし過ぎには注意が必要です。ポメラニアンの毛量が少ない場合もたぬきカットは難しいでしょう。
柴犬カット
柴犬の特徴の三角耳や丸いお顔をポイントに、首回りや身体は短めにカットするスタイルです。
大きな眼が強調される柴犬カットは、ポメラニアンの可愛さが引き立つとされています。
飼い主さんの好みに合わせて決める毛の長さによって印象が変わります。一方で、イメージとは異なるカットになってしまう可能性があるため、トリマーとの相談が大切です。
子熊カット
子熊カットは、お顔にふんわりと丸みを持たせたスタイルで、子熊のぬいぐるみのように魅力的です。
ただし、愛犬の顔つきやトリマーによって、たぬきカットに見える可能性があります。子熊カットを依頼する場合は、希望をしっかりとトリマーに伝えることが必要です。
桃尻カット
おしり周りを短くまるくカットするスタイルが桃尻カットです。汚れやすいおしりを清潔に保ちつつ、ポメラニアンの魅力アップにつながるスタイルです。
ただし、桃尻カットは難易度が高いため、デザインカット料がかかる場合があります。
このようなはずではなかったと後悔しないためには、信頼のできるトリマーを選ぶことやイメージ写真を持参することが大切です。
ポメラニアンのトリミングの注意点
ポメラニアンには豊富なカットアレンジがあるため、さまざまなカットを楽しみたいという方も少なくありません。
しかし、ポメラニアンのトリミングには注意点があります。それは、以下のとおりです。
- ポメラニアン特有の脱毛や毛質の変化
- サマーカットの注意点
- トリミング前のワクチン接種の必要性
ただ可愛いという理由だけでカットすると、後悔することになるかもしれません。注意事項を理解し、トリミングを行うことが大切です。
ポメラニアン特有の脱毛や毛質の変化
ポメラニアンは、脱毛症(毛周期停止)になりやすい犬種です。
トリミングで全身の毛を半分以下にすると、毛質の低下でパサパサになったり脱毛を引き起こしたりするため注意が必要です。
体質的に脱毛になる場合、脱毛に至るまでには時間がかかります。その際、脱毛になる前に皮膚が黒ずむことがあります。定期的にトリミングを行うことで、ポメラニアンの皮膚の状態が確認できるため、脱毛症の早期発見が可能です。
一度脱毛症を発症すると、治療には時間がかかります。主な治療方法は、投薬やスキンケア、食事療法です。
また、ポメラニアンやトイプードルなどの犬種に特有に認められるアロペシアXという進行性の脱毛症もあります。
アロペシアXは、毛の生え変わりのサイクルが止まってしまう脱毛症で、いまだ特効薬はありません。トリミングをした後に発症することはありますが、トリミングが原因ではありません。
主に背中や頚部、胸部や大腿部に発症し、痒みや痛みは少ないことが特徴です。ポメラニアンの皮膚に気になる症状がある場合は、動物病院で相談することが重要です。
サマーカットの注意点
長毛だと日々の手入れが大変なため、バリカンで短く刈るサマーカットを好む飼い主さんがいるかもしれません。
しかし、本来被毛は強い夏の紫外線から皮膚を保護する役割があるため、サマーカットによって皮膚に悪影響を与える可能性があります。
ポメラニアンの被毛が元の長さに戻るまでには、半年~3年かかるとされているため、カットのし過ぎには注意が必要です。デメリットを考慮し、サマーカットを行っていないトリミングサロンもあります。
ポメラニアンに悪影響を与える可能性を理解したうえでサマーカットを希望する場合は、バリカンではなくハサミを使用することで刈りすぎることを防ぐことが可能です。
いずれにしても、お手入れの手間ではなく、愛犬のことを考えたカットを選びましょう。
トリミング前のワクチン接種の必要性
トリミングを行う場合、ワクチン接種証明書の提示を求められることが多いです。サロンには、不特定多数の動物が訪れるので、さまざまな感染症のリスクがあるためです。
接種義務のある狂犬病ワクチンと任意の混合ワクチンがあります。感染症予防のために、トリミング前に両方のワクチン接種をしましょう。
また、トリミングは犬に負担がかかるため、ワクチン接種後2~3日はトリミングを控えることが重要です。
動物病院でポメラニアンのトリミングをしてもらうメリット
動物病院でポメラニアンのトリミングをしてもらうメリットは、以下のとおりです。
- 病気の早期発見
- 適切なシャンプーの選択
- 病気への対応
動物病院でトリミングを行う場合、獣医師による聴診や視診、触診により体調を確認します。
毛を整えるだけではなく、明らかにわかる表面的な病気はもちろん、気付きにくい小さな違和感や異常も早期に発見できる可能性があります。
また犬種や皮膚の状態によって適切なシャンプーが異なるため、愛犬に合ったシャンプーの使用は、皮膚病の予防や治療が期待できるでしょう。
病気が発見された場合や持病のある犬の場合は、獣医師が常駐している動物病院でトリミングを行うことで、適切な対応が可能です。トリミングを行う際は、獣医師や信頼のできるトリマーがいる場所を選びましょう。
ポメラニアンのトリミングを自宅で行う方法
毎回動物病院でトリミングを行うには、時間もお金もかかるため、自宅でのお手入れ方法を理解することも必要です。
自宅でのトリミングは体調管理や清潔感を保つため、ノミやダニの寄生虫の確認のためだけではなく、愛犬とのコミュニケーションにも効果的です。
準備する道具
トリミングを行う際の道具は、以下のとおりです。
- スリッカーブラシ
- ピンブラシ
- コーム
- ブラッシング用スプレー・ローション
スリッカーブラシは、一度にたくさんの毛が取れるためアンダーコートの抜け毛除去に効果的です。
ただし一本一本が鋭く硬いスリッカーブラシを使用する際、力加減を誤ると愛犬を傷つけてしまう恐れがあるため、正しい使い方を教えてもらう必要があります。
ピンブラシは、体表の抜け毛や埃、フケの除去に効果的です。特に長毛のブラッシングに適しています。スリッカーブラシとは異なり先端が丸いため、皮膚を傷つける心配がありません。
コームは、トリミングの最初と最後に使用します。毛玉の有無を確認し、毛並みを整えるほか、カット時に毛を立たせるときに使用することがあります。
また、被毛のつやがよくなりブラッシングしやすくなるため、ブラッシング用スプレーやローションの使用もおすすめです。
足裏の毛のカット
基本的にはカットする必要がほとんどないといわれているポメラニアンですが、足裏の毛のカットは必要です。足裏に毛があると、滑る恐れがあります。
それにより、関節に負担がかかったり転倒しやすくなったりすることが考えられます。愛犬と触れ合う際に、足裏の毛が伸びていないかを確認しましょう。
おしり周辺の毛のカット
足裏と同様に、おしり周辺の毛にも注意が必要です。おしりは、排泄物が付着しやすいため、不潔になりやすい場所です。おしり周辺の毛のカットで、清潔感を保ちましょう。
自宅でトリミングを行う際の注意点
自宅でトリミングを行う際、道具の種類を理解し使い分けることが大切です。道具にはそれぞれ効果的な使い方があります。
無理にブラシを使用すると、皮膚を傷つけたり、毛を傷めたりする恐れがあります。ブラッシングの順番は、以下のとおりです。
- コームで根元から軽く毛をとかす
- 毛の流れに沿ってスリッカーブラシ・ピンブラシを使う
- コームで毛並みを整える
ブラッシング中に毛玉を発見したら、指でゆっくりと毛をほぐしながら取り除きましょう。
お顔や耳、足は嫌がることが多いため、背中や身体のサイド部分から丁寧にブラッシングすることが愛犬を怖がらせないポイントです。
ブラッシングのほか、丁寧にシャンプーも行いましょう。シャンプーは人間用ではなく犬専用のものを使用します。シャンプー後は、根元までしっかりと乾かすことで皮膚病の発症予防が可能です。
根元まで乾かさないと、地肌が蒸れてしまい、痒みや赤みを引き起こす可能性があります。
皮膚炎を発症すると、かきむしったり舐めたりして脱毛することにつながる恐れもあるため、愛犬の様子を観察してトリミングすることが重要です。
まとめ
ポメラニアンは、一定の長さ以上は毛が伸びないため、基本的にはカットが必要ない犬種とされています。
しかし、ダブルコートという被毛構造のポメラニアンは、特に換毛期に多くの下毛が抜けるのが特徴です。
こまめなお手入れをしないと、皮膚炎や脱毛などの皮膚疾患を生じる恐れがあります。
トリミングは1ヶ月〜1ヶ月半を目安とし、動物病院で行うのがおすすめです。動物病院なら、毛を整えると同時に健康チェックもできます。
愛犬の健康と生活のために、自宅でのこまめなお手入れと定期的なトリミングも欠かせません。
しっかりとお手入れやトリミングを行いながら、まんまるカットやたぬきカットなど、愛らしいポメラニアンを楽しみましょう。