ワクチン接種後のトリミングはいつから受けられる?適切な時期と理由を解説

ワクチン接種後のトリミングはいつから受けられる?適切な時期と理由を解説

犬を飼う場合、ワクチン接種は避けて通れません。では、ワクチン接種後いつからトリミングを受けられるのでしょうか? この記事では、ワクチン接種後のトリミングを再開する適切な時期とその理由を解説します。また、接種した後のトリミングの再開基準や、安静にするために自宅でできるケアの方法なども紹介しています。これから犬のワクチンを接種するという方や、接種した後のトリミングの時期に迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

ワクチン接種後すぐにトリミングを受けられる?

ワクチン接種後すぐにトリミングを受けられる?

まず、ワクチン接種後すぐにトリミングを受けることはできるのでしょうか。結論からいうと、ワクチン接種後すぐのトリミングは避けるようにしてください。また、ワクチンを接種する前日も控えた方がよいでしょう。ワクチン接種の前後は、安静にすることが大切です。特に接種後は、トリミングだけではなく、激しい運動や入浴、シャンプーなども控えた方がよいでしょう。

ワクチン接種後すぐにトリミングを受けられない理由

では、なぜワクチン接種後すぐにトリミングをしない方がよいのでしょうか。ここでは、その理由を三つご説明します。

体力や免疫力の低下

ワクチンとは、毒性を弱めた病原体の一部を身体に入れることで、免疫システムに取り入れ、重篤な感染症を予防するために接種するものです。弱めてあるとはいえ病原体を身体に入れることになるため、個体によって差はありますが、なかには体調が悪くなってしまう場合もあります。トリミングは、犬にとって負担のかかる行為です。ワクチン接種後の体力や免疫力が低下しているなかでトリミングを受けると、犬に大きな負荷をかけることになり、体調不良やアレルギーの原因となってしまうことがあります。そのため、ワクチンを接種してすぐは、トリミングや激しい運動などは控え、安静にする必要があります。

接種後の副反応を正確に判断する必要性

ワクチン接種後は、副反応が出る可能性もあります。主な副反応としては下記の症状が挙げられます。

  • ワクチン接種部位の腫れや痛み
  • 軽度の発熱
  • 遊びや運動を嫌がる
  • 食欲低下

ワクチン接種後にトリミングをした場合、上記のような症状がワクチンの副反応なのか、それともトリミングをしたことによる体調不良なのかの見極めが困難になります。そのため、副反応を正確に判断する必要性からも、ワクチン接種後すぐにトリミングをすることは望ましくないといえます。

なお、接種後すぐにお口の粘膜の色が青白くなる、青紫色になるチアノーゼや、嘔吐などのショック症状が出るアナフィラキシーショックは、大変重篤な副反応です。このような症状が出た場合は、ただちに病院を受診するようにしましょう。

トリミングサロンでの感染症リスク

ワクチンは接種後すぐに効果が現れるわけではなく、免疫が形成されるまで数週間の期間が必要といわれています。この期間中にトリミングサロンへ犬を連れていくと、免疫がまだしっかりと形成されておらず、ワクチン接種の効果が半減してしまう可能性があります。トリミングサロンは、多くの犬が集まる場所であるため、ほかの犬と接触する機会が多くなり、ウイルスや寄生虫などを介した感染症のリスクもゼロではありません

免疫が十分に形成されないまま感染症にかかってしまうことも考えられます。このような事態を防ぐためにも、ワクチンの接種後しっかりと免疫が形成されてから訪問することが望ましいといえます。なお、接種後一定期間を経た後にトリミングを受けた場合も、帰宅後は犬の様子をよく観察し、体調の変化に注意しましょう。また、犬の身体をブラッシングしたり、拭いたりして清潔に保つことも大切です。

ワクチン接種後にトリミングを受けられる時期

ワクチン接種後にトリミングを受けられる時期

前述したように、ワクチンの接種後しばらくはトリミングを控え、安静にしておく必要があります。では、ワクチンの接種後どのくらいが経過すればトリミングを受けられるようになるのでしょうか。

一般的な目安は接種後1~2週間

ワクチン接種後にトリミングを再開する目安は、接種後1〜2週間です。ワクチン接種後1週間までは免疫反応が続いたり、注射によるストレスから体調を崩したりしやすいため、激しい運動などは避け、安静に過ごした方がよいでしょう。また、身体のなかで免疫が形成されるまでに数週間かかるといわれているため、ワクチンの効果を半減させないためにも、接種後1〜2週間はトリミングサロンへの外出は避けることが望ましいとされています。体力の回復や抗体の形成などには個体差があるため、詳しく知りたい場合は、獣医師に相談するようにしましょう。

なお、トリミング後のワクチン接種も、なるべく数日開けるようにしましょう。トリミングによって体力が低下している状態でワクチンを打つと、通常よりも副反応が出やすくなったり、接種後の体調不良が起きやすくなったりすることが考えられます。ワクチン接種は、体調に問題のない状態で受けるようにしましょう。

若齢犬や高齢犬の場合

トリミングの再開はワクチン接種の1〜2週間後と前述しましたが、若齢犬や高齢犬の場合は、トリミングの再開にはさらに慎重になった方がよいでしょう。若齢犬や高齢犬は免疫力が下がっていたり、体力が低下していたりして、副反応が出やすい場合があります。

また、ワクチンは犬の身体の大きさに関係なく同じ量を打つことになるため、身体の小さな子犬などには影響が大きく出ることがあります。特に生後1歳未満の子犬や生後10歳以上の高齢犬へのワクチン接種には注意をする必要があります。さらに、シャンプーやトリミングは、犬にとって人間が思う以上に体力を消耗する行為です。犬への負担を避けるためにも、犬の健康状態をよく観察し、獣医師と相談をしながら、慎重にトリミングを再開するようにしましょう。

混合ワクチンの場合

犬のワクチンには、接種が義務付けられている狂犬病ワクチンのほかに、複数の病気を予防することができる混合ワクチンがあります。混合ワクチンには、犬ジステンパー、犬伝染性肝炎、犬伝染性喉頭気管炎、犬パラインフルエンザ、パルボウイルス感染症、犬コロナウイルス感染症を予防する6種混合ワクチンや、6種混合ワクチンに犬レプトスピラ感染症(イクテロヘモラジー、カニコーラ)を追加した8種混合ワクチンなどがあります。

その他にも、2種から10種までの混合ワクチンが存在します。混合ワクチンは弱毒化した複数の病原体を一度に身体のなかへ入れることになるため、狂犬病ワクチンなどの単体のワクチンと比べて副反応の可能性が高いといわれています。

このことから、通常のワクチンよりも、より慎重に副反応が出ていないかを確認する必要があります。トリミングの再開は、単体のワクチン接種後よりも、より慎重に犬の健康状態を見極めたうえで行うようにしましょう。

トリミング再開の判断基準

トリミング再開の判断基準

一般的には、ワクチン接種後1〜2週間すればトリミングを再開できるといわれていますが、個体によって差があります。実際にトリミングを再開する場合は、犬の体調をよく観察して判断しましょう。ここでは、トリミング再開の判断基準を解説します。

食欲や活動量を確認する

ワクチン接種後には、さまざまな副反応が出ることが予想されます。例えば、元気がなく、ぐったりしていたり、食欲が低下したりすることも少なくありません。通常は軽度で一時的なことが多く、1〜2日程度で自然に治る場合がほとんどですが、何日も続くようであればワクチン接種を受けた病院を受診することをおすすめします。食欲が通常どおりに戻り、活動量も増えてきているようであれば、体力が順調に回復しているということなので、トリミングの再開を検討してもよいでしょう。ただし、トリミングは犬にとって体力を消耗する行為であることに間違いはありません。トリミング後も注意深く体調を観察して、何か異常があれば早めに病院を受診するようにしましょう。

接種部位の腫れや痛みを確認する

ワクチンの副反応で、接種部位に腫れや痛みが生じる場合があります。これは身体がワクチンに反応し、免疫を獲得しようとしている証拠で、通常、数日以内に自然に治まります。ただし、腫れが広範囲に広がっている場合や、硬いしこりのようになっている場合は注意が必要です。

また、接種部位を触ると嫌がる、鳴くなどの様子が見られる場合は、痛みがあると考えられます。このような状態が続くようであれば、早めに病院を受診するようにしましょう。接種部位に異常が続く間は、刺激を避けるためにも、症状が落ち着くまでトリミングは避けるようにしてください。トリミングを再開する場合は、接種部位に腫れもなく、痛みもないことを確認するようにしましょう。

獣医師に相談する

一般的にはワクチンを接種して1〜2週間後からトリミングを受けることができるとされていますが、なかには接種後数日でトリミングを受けることができるといわれたり、また反対に数週間トリミングを受けることができない場合もあります。ワクチン接種後の体調に関しては、個体による差も大きいため、万全を期すのであれば獣医師に相談するようにしましょう。

ワクチン接種を行った獣医師であれば、ワクチンの経過や犬の健康状態を適切に診断することが可能です。獣医師の助言をもとに、犬の状態に合わせて、トリミング再開のスケジュールを組むようにしましょう。なお、トリミングサロンによってはワクチン接種証明書が必要になる場合もあるため、事前にトリミングサロンへ確認することをおすすめします。

ワクチン接種からトリミング再開まで自宅でできるケア

ワクチン接種からトリミング再開まで自宅でできるケア

ワクチン接種後は安静にすることが求められます。では、愛犬を安静にさせるには、具体的にどのようにすればよいのでしょうか。ここからは、ワクチン接種後に自宅でできるケアをご紹介します。

十分な休息

まずは十分な休息が必要です。ワクチン接種後は、免疫機能が活発になるため、犬は普段よりも疲れやすい状態になっています。また、普段より長く眠ったり、ぐったりすることがあります。これは身体がワクチンに反応しているためです。静かで落ち着いた場所を用意し、ゆっくり休ませてあげましょう。ぐったりとした様子が長く続いたり、普段とあまりにも様子が違ったりする場合は、獣医師に相談しましょう。

負担の少ない運動

接種後数日は、激しい運動は身体の負担が大きすぎるため控えるようにしましょう。室内で軽く遊ぶ程度であれば問題はありませんが、あまり遊びすぎたり、興奮しすぎたりすると後で体力の低下にもつながりかねないため、接種後すぐの外出は避けた方がよいでしょう。接種後数日が経ったら軽い散歩程度から運動を再開しても構いませんが、散歩の時間を普段より短くし、犬の様子を見ながら行ってください。

問題がないようであれば、徐々に運動量を増やしていくようにしましょう。もし運動を嫌がるようであれば、無理に連れ出す必要はありません。必要以上に犬にストレスがかかることがないように、負担の少ない運動から始めるようにしましょう。

ブラッシングなどのケア

トリミングへ行けない間のケアとして、ブラッシングや身体を拭くなどのケアが有効です。ブラッシングには血行を促進する効果があります。また、ブラッシングは犬の皮膚の状態をチェックするよい機会でもあります。優しくブラッシングして、愛犬とのコミュニケーションを図りましょう。

接種部位に腫れや痛みがある場合は、その部分を避けてブラッシングしてください。ブラッシング以外のケアとして、蒸しタオルで身体を拭いてあげるのもおすすめです。身体を清潔に保つことで、皮膚トラブルを防ぎます。シャンプーは、トリミングと同じく犬への負担が大きいため、接種後1週間程度は控えた方がよいでしょう。このほかにも、愛犬の体調を毎日注意深く観察し、食欲や排泄、体温などをチェックしましょう。

まとめ

ワクチン接種後すぐは、副反応が出ることもあり、体力も低下しがちです。トリミングや激しい運動は避けて、まずは安静に過ごすことを心がけ、徐々に体力の回復を待ちましょう。トリミングは、接種後1〜2週間程して体調に問題がなく、食欲や活動量も普段どおりであることを確認して、慎重に再開するようにしてください。もし、ワクチン接種後の体調不良が長く続くようであれば、早めに接種を受けた病院で診てもらうようにしましょう。

参考文献