ペットが病気や怪我をしたとき、どこの動物病院に行くべきか悩むことがあるでしょう。どの動物病院に行っても同じ検査や治療を受けられると思われがちですが、実際には一次診療や二次診療のように種類がわかれており、使い分けるとスムーズな診療につながります。こちらの記事では、動物病院の主な種類とその特徴、かかりつけ病院の選び方やセカンドオピニオンの活用方法を解説します。
動物病院の主な種類と特徴

動物病院には一次診療と二次診療の二段階あり、それぞれ対応している診察や治療の範囲、設備や診療体制が異なります。
ここでは、一次診療と二次診療それぞれの特徴と違いについて解説します。
一次診療(かかりつけ医)
日本獣医師会では一次診療施設を総合診療の窓口と位置づけ、ワクチンから緊急初期対応まで広く担うと定義しています。
一次診療では、病気や怪我の軽症から重症まで幅広い範囲を診療します。また、病気や怪我をしていなくても、ワクチン接種、しつけやフードの相談、去勢・避妊手術なども受けられる点が特徴的です。町にある動物病院の大半が一次診療を受け付けており、かかりつけ医としての役割を担います。定期的に通院することでペットの健康状態を把握でき、必要に応じて二次診療施設の紹介をしてもらえるため、スムーズな治療が可能です。
動物病院によっては犬と猫のほか、エキゾチックアニマル(ウサギ、ハムスター、フェレット、インコ、爬虫類など)のような多様なペットの診療を受け付けています。ただし、一人の獣医がすべての動物の知識を持つことは困難なため、飼い主さんとペットにとって適切なかかりつけ医を見つける必要があります。
二次診療(紹介制の専門病院)
二次診療では、一次診療よりも高度な医療設備を用いて、専門性の高い知識や技術を備えた獣医が診療します。精密検査や外科手術、腫瘍治療などを実施するため、MRIやCT、内視鏡など先端医療機器を揃えている環境が特徴的です。
かかりつけ医から専門的な検査や治療が必要だと判断されれば、二次診療を受けるための紹介状をもらいます。紹介制にすることで、正確に病気や怪我の状態や治療内容が伝達され、治療方針の選択ミスを防止できます。また、普段から通院しているかかりつけ医と連携していることで、飼い主さんからの理解も得やすいです。病気や怪我が重症化した場合、より精密な検査と専門性の高い治療や手術が必要になるため、二次診療施設への受診がよいでしょう。
一次診療と二次診療の違い
一次診療と二次診療は、いくつかの違いがあります。
一次診療 | 二次診療 | |
---|---|---|
役割 | 幅広く診療するための窓口 | 専門性の高い検査や治療をするための窓口 |
診療内容 | ワクチン接種しつけやフードの相談去勢・避妊手術病気や怪我の検査と治療 | 精密検査難易度の高い治療や手術 |
診療対象 | 基本的には総合診療 | 皮膚科、眼科、内科、産科、循環器科、呼吸器科、整形外科、腫瘍科など動物病院によって異なる |
紹介 | 不要 | 必要 |
ペットが病気や怪我をした際、専門的な診療を受けようと二次診療施設を受診してしまうと、緊急で精密検査や専門性の高い治療や手術が必要な動物が、スムーズな診療を受けられなくなる恐れがあります。このような背景を理由に、二次診療を受けるためには、まずは一次診療を受けるように棲み分けされているのが現状です。
病気・症状別の動物病院の使い分け

ペットの病気や怪我の症状に応じて、受診するべき動物病院の種類は異なります。一次診療で解決するケースがある一方で、早急に二次診療が必要とされるケースもあります。
ここでは、症状別に適切とされる受診先を解説します。
一般的な感染症、軽度の外傷
くしゃみや鼻水、下痢、皮膚の痒みなど一般的な感染症、切り傷やかぶれなど軽度の外傷の場合、まずは一次診療に相談しましょう。血液検査やレントゲンなど基本的な検査、応急処置、点滴、内服薬の処方など基本的な診療を受けて、自宅で安静に経過観察すれば回復につながるでしょう。
ワクチン接種
狂犬病や混合ワクチンなど定期的なワクチン接種は、一次診療の動物病院が受け付けています。ワクチン接種は、ペットと飼い主さんの健康を守るために重要な医療行為の一種であり、ワクチンタイプによって推奨される接種頻度が決められています。
体調不良や基礎疾患のある状態でワクチン接種を受けると、副反応やアナフィラキシーショックにつながる恐れがあるため注意が必要です。ワクチン接種のタイミングで定期検診を受けることができます。信頼できるかかりつけ医をみつけることで、ワクチン接種のたびに定期検診を受けておくと、その記録を保存できるため小さな体調の変化にも気付きやすくなります。
慢性疾患の長期管理
アトピー性皮膚炎や慢性腎臓病、糖尿などの慢性疾患には、根治できない病気も含まれます。長期的な治療と経過観察を必要とし、継続的に通院しながら管理しなければならないのため、一次診療の動物病院を利用します。
定期検診の結果に応じて、投薬や生活習慣の見直し(運動量、食事のバランス、室温管理など)でペットの痒みや痛みを緩和してあげられるよう管理します。状態が悪化して、精密検査や専門性の高い治療や手術が必要になれば、かかりつけ医から二次診療施設を紹介してもらいましょう。定期検査を受けることで、迅速に二次診療施設の必要性を判断できるため、効果的な治療が期待できるでしょう。
専門的な治療が必要な腫瘍や整形外科疾患
動物の腫瘍は皮膚、乳腺、リンパ、血管、膀胱など、整形外科疾患は骨、関節、筋肉、靭帯、腱などの運動器官によくみられます。腫瘍摘出や整形外科の手術が必要となれば、専門知識と高性能な医療機器が揃っている二次診療施設が対応するのが基本です。
二次診療施設であれば、CTやMRIのような特殊な検査機器や手術器具が揃っており、診療科目ごとに専門的な知識と技術を習得した専門医たちが在籍しています。放射線治療や化学療法剤(抗がん剤治療など)を使った治療を受けられるのは、大学病院のような二次診療施設です。
緊急を要する事故や発作
交通事故や突然の発作など緊急性の高い症状が出た際には、まずかかりつけ医(一次診療の動物病院)に連絡をして対応してもらえるかどうかを確認しましょう。動物病院によって診察時間が異なるため、夜間や休日を含めて救急対応してもらえる施設を確認しておくことが大切です。
一次診療で緊急性が高いと判断されれば、二次診療施設に搬送されて精密検査や手術などをする場合もあります。命に関わる状態であれば、時間との勝負になります。あらかじめ緊急時に対応してもらえる動物病院や施設を把握しておくことで、飼い主さんも迅速な対応が可能となるでしょう。
かかりつけ動物病院の選び方

かかりつけの動物病院は、日常的な健康管理と緊急を要する事態に陥った際の相談先として欠かせない存在です。動物病院によって、診療対象や対応している動物の種類、診療時間、アクセスなどが異なります。
ここでは、信頼できる動物病院を見つけるために押さえるべきポイントを解説します。
診療時間内に通えるか
動物病院を選ぶ際には、飼い主さんのライフスタイルと診療時間がマッチしているかどうかが重要です。病気や怪我をしていなくても、ペットの健康を守るためにはワクチン接種や定期検診が欠かせません。また、ペットが高齢になると、慢性疾患により通院が必要になる場合があります。定期的に通うことになれば、仕事を休まずにスケジュール調整できる動物病院である程、飼い主さんの負担を軽減できます。
夜間救急に対応しているか
ペットの体調不良や事故は、夜間や休日にも起こりえるからこそ、緊急時の対応をしてもらえるかどうかを確認しておきましょう。動物病院のホームページに、夜間専用の電話窓口、診療時間外の緊急連絡先の記載があれば冷静に対応できるでしょう。救急対応についてわからない場合、直接獣医に確認しておき、万が一のトラブルに備える必要があります。
獣医とコミュニケーションが取りやすいか
言葉を話さないペットの健康を守るためには、獣医との信頼関係が重要です。病気や怪我の症状をわかりやすく説明し、治療方針を明確に提示してもらえれば、飼い主さんも納得して治療をはじめられます。知識量や技術力に加えて、不安に思っていることを気軽に質問できるかを意識して、動物病院選びをしてみてください。
診療対象動物と医療設備がペットに合っているか
動物病院によっては、犬と猫以外のエキゾチックアニマル(ウサギ、鳥、フェレット、爬虫類など)の診療を受け付けていない場合があります。特殊な動物を飼っているのであれば、その動物の知識を持った獣医が在籍しているかの確認が必要です。また、基礎疾患や高齢のペットを飼っているのであれば、心電図や血液検査など定期検査で必要な医療機器や設備の有無も確認しておきましょう。
立地や駐車場の利便性が確保されているか
動物病院の通いやすさは、ペットの健康管理に大きく影響します。緊急時にすぐ来院できるように自宅と動物病院の距離は近い程、迅速な対応が可能です。車を使うのであれば駐車場の有無、公共交通機関を使うのであれば混雑状況を確認しておくと、ペットのストレスを軽減できます。将来的に通院が必要になるケースもあるため、通いやすい立地かどうかも判断材料として欠かせません。
診療費用は明確か
動物病院は、人の医療とは異なり自由診療です。そのため、診察料は動物病院ごとの裁量によって決められており、地域や診療内容によって大きな差があります。初診料、再診料、検査費、薬代など何に対していくらかかっているのか、料金の内訳を明確に提示されていると納得しやすいです。
動物病院の二次診療施設を受診するタイミング

ペットの病気や怪我の症状がよくならないとき、獣医の診断に不安を感じているときなどは、二次診療施設の受診を検討するべきタイミングかもしれません。
ここでは、いつ二次診療施設を受診するべきか解説します。
セカンドオピニオンを受けたいとき
セカンドオピニオンとは、かかりつけの動物病院の診断や治療方針について不安を感じた場合、別の動物病院に意見を求めることを指します。言葉を話さない動物は、自分で身体の不調を訴えることが難しく、いつも一緒に過ごしている飼い主さんや専門知識を持つ獣医が不調の原因を追求してあげなければなりません。治療は、原因によって異なるからこそ、診断結果や治療方針に納得できない場合は、専門性や技術性の高い二次診療施設でセカンドオピニオンを検討しましょう。
治療継続しても病気が治らないとき
かかりつけの動物病院で継続的な治療をしているにも関わらず、期待される治療効果がみられない場合、二次診療施設で状態を確認してもらいましょう。精密検査を受けることで、一次診療で見つけられなかった異常を発見して、より適切な治療方法を見つけられる可能性があります。発症率の低い病気や難易度の高い疾患は、新しい技術や臨床実験を行っている二次診療施設に行くことで早期発見と回復につながる治療ができるかもしれません。
専門的な検査や外科手術が必要なとき
CTやMRI、高度画像診断、内視鏡検査、外科手術など専門的な医療機器や設備を使った検査や治療が必要な場合、二次診療施設の受診が必要になるでしょう。一次診療の動物病院では、精密検査の設備や先端医療機器が揃っていない可能性が高く、精密検査や整形外科手術、腫瘍摘出手術などが必要と判断されれば、二次診療施設を紹介してもらえます。適切なタイミングで二次診療施設を紹介してもらえるように、一次診療の動物病院で定期検診や診察を受けることが重要です。
動物病院でセカンドオピニオンを求めるときの注意点

セカンドオピニオンは、ペットの健康を守り寿命を伸ばすために大切な手段です。特に動物の病気や怪我は早期発見と早期治療が命に関わる可能性があるからこそ、円滑に進められるように体制を整えておきましょう。
ここでは、動物病院でセカンドオピニオンを求めるときの注意点を解説します。
疑問に感じることは獣医に質問する
診断結果や治療方針に疑問を抱いた際は、まずはその場で質問しましょう。獣医の説明が足りなかったり、飼い主さんの知識や理解不足だったり、双方間で誤解が生じることがあるからです。飼い主さんが正直に疑問や不安を打ち明けることで、誤解を解消して、納得した状態で治療をはじめられます。疑問があるからといって最初からセカンドオピニオンのためにほかの動物病院を受診すると、ペットの負担にもつながります。
マナーを守ってセカンドオピニオンを受ける
セカンドオピニオンの精度を高めるためには、これまでの診療記録が必要です。また、二次診療施設を利用するのであれば紹介状を用意してもらわなければなりません。突然、かかりつけの動物病院から切り替えるのではなく、事前にかかりつけの動物病院に相談したうえで紹介状を依頼するのがマナーです。
セカンドオピニオンに後ろめたさを感じる必要はない
セカンドオピニオンは、ペットにとって適切な治療方針を決めるための手段です。ほかの動物病院や二次診療施設を受診するからといって、元の動物病院を否定することになるわけではありません。長くお世話になっている動物病院に紹介状を依頼する際には、遠慮や後ろめたさを感じる必要はありません。「精密検査を受けたい」「多角的な視点から治療方針の選択肢を増やしたい」などセカンドオピニオンを受ける理由はさまざまです。
まとめ

動物病院には、一次診療と二次診療の2つの段階があり、ペットの症状や状態に応じて使い分けが必要です。日常的な健康管理や軽度の症状には、一次診療の動物病院(かかりつけ医)を利用し、精密検査や外科手術など専門性の高い診療には、二次診療施設を利用しましょう。また、診断内容に疑問や不安があればセカンドオピニオンを受けることも大切です。家族の一員であるペットの健康と寿命を守るため、飼い主さん自身も知識と判断力を身につけましょう。