ペットのトリミングは見た目を整えるイメージが強いかもしれませんが、毛や皮膚の状態をチェックする健康管理の機会としても重要です。最近では美容院型のトリミングサロンだけでなく、動物病院併設型のトリミングサロンを利用する飼い主さんも増えてきました。なぜ動物病院に併設されたトリミングサロンが選ばれるのか、本記事では一般的なサロンとの違いやメリット、利用すべきペットの特徴、サロンの選び方、費用の目安や事前準備について解説します。
動物病院併設型トリミングサロンの特徴

まずは動物病院併設型トリミングサロンの基本的な特徴を押さえておきましょう。一般的なペットサロンとの違いも理解することで、適切なトリミング環境を選ぶ判断材料になります。
動物病院併設のトリミングサロンの特徴
動物病院に併設されたトリミングサロンでは、美容面だけでなく健康面にも配慮したサービスが提供されます。施術前後での健康状態の確認、また施術中に万が一体調に異変があれば獣医師や動物看護師がそばにいるため、すぐに医療対応が可能です。例えば、皮膚病やアレルギー疾患などの持病のある子には必要に応じて薬用シャンプーを使ったり、体力が心配な子には施術前後に酸素室を利用したりと、トリミングだけでなく医療的配慮も行えるのが大きな特徴です。このようにトリマーだけでなく獣医療スタッフも関わることで、美容と健康管理を両立したトリミングが受けられます。
一般的なトリミングサロンと動物病院併設サロンの違い
一般的なペットサロンと動物病院併設サロンには、それぞれ異なる特徴や強みがあります。一般的なトリミングサロンは主にペットの被毛を美しく整えることが目的で、リボンやフォトサービスなど美容面のオプションが充実していたり、リラックスできる雰囲気づくりに注力していたりするサロンもあります。またペットが楽しく過ごせるよう工夫されたサービスを提供してるサロンもあります。
これに対して動物病院併設のサロンは先述のとおり、ペットの健康に配慮した施術やチェック体制が整っているのが大きな違いです。また、設備面でも動物病院内にサロンがある場合は、医療用の設備や衛生管理が徹底されているため、感染症予防や万一の緊急処置の備えが一般サロン以上に充実しています。
このように両者には違いがありますが、どちらがよいかはペットの体調や性格、年齢によって変わります。それぞれのメリットを理解したうえで、ペットに合った施設を選ぶことが大切です。
動物病院併設型トリミングサロンが選ばれる理由

動物病院併設のトリミングサロンが支持される背景には、ペットの健康と安心を第一に考えたときのメリットが大きく関係しています。
トラブル発生時は迅速に医療対応が可能
万が一トリミング中に体調不良やケガなどのトラブルが起きた場合でも、すぐに獣医師の診察や処置が受けられるのは大きな安心材料です。動物病院併設サロンでは常に獣医師が近くに控えているため、ペットに急変があってもすぐに適切な対応が可能です。
また、トリミング後に自宅へ帰った後で様子が気になる場合でも、動物病院併設サロンならトリマーと獣医師が連携して状況を把握できるため相談しやすく、速やかに対処してもらえます。このように緊急時のバックアップ体制が整っていることが、動物病院併設サロンが選ばれる大きな理由の一つです。
シニア犬や持病のある犬でも断られにくい
心臓病やてんかんなどの持病があるペット、あるいは高齢のペットは、一般のトリミングサロンでは万一のリスクを考慮して施術を断られてしまうケースがあります。特に、高齢になると体力が低下し長時間のトリミングが負担になるため、年齢制限を設けるサロンもあります。しかし、動物病院併設サロンでは獣医師の指示のもと医療知識を持ったスタッフが細心の注意を払いながら施術してくれるため、持病があったり高齢の子であったりしても受け入れてもらえるでしょう。実際、動物病院併設サロンには他店で年齢や病気を理由に断られてしまった犬猫が多く訪れており、寝たきりの子や心臓病を抱えた子のトリミングも対応している病院もあります。このようにシニアや持病があるペットでも安心して利用できるのは、飼い主さんにとって大きな魅力でしょう。
皮膚トラブルなどを相談しやすい
ペットの皮膚はデリケートで、湿疹やアレルギーなどのトラブルが起きることもあります。動物病院併設のサロンなら、皮膚の専門的ケアや相談がしやすい点も選ばれる理由です。例えば、皮膚病がある子や皮膚が敏感な子には、その状態に合わせた薬用シャンプーでの薬浴を行ったり、アレルギー対策のシャンプー剤を使ったりといった対応が可能です。施術前に獣医師が皮膚の状態をチェックして、飼い主さんに今後のホームケアのアドバイスをしてくれることもあります。一般のサロンでは美容面の対応が中心ですが、併設サロンなら美容と同時に健康状態の相談もできる点で、より総合的なケアを求める飼い主さんに適しているといえるでしょう。
ワクチン接種や病歴の共有による連携が可能
動物病院併設サロンでは、ペットのワクチン接種状況やこれまでの病歴などの医療情報が院内で共有されているため、トリマーと獣医師が一体となってペットの状態に合わせたケアを提供できます。特に、普段からその病院で診察を受けている場合、健康状態や性格までスタッフが把握しているため、個々のペットに合ったトリミング対応が可能です。初めて利用する場合でも事前に診察を受けておけば、病気や体調に配慮した安全なトリミングを提供してもらえるのでよいでしょう。
動物病院併設型サロンを選んだ方がよいペットの特徴

動物病院併設のトリミングサロンはどのようなペットにも安心ですが、特に利用を検討したいペットとして挙げられるのが以下のようなケースです。ペットの年齢や健康状態、性格を踏まえて参考にしてみてください。
シニア犬・シニア猫
高齢の犬や猫は若い頃に比べて体力が低下し、長時間のトリミングは大きな負担になります。また、年齢とともに心臓や腎臓などに持病を抱える子も増えるため、一般のサロンでは年齢で受け入れを断られるケースもあります。その点、獣医師のサポートが受けられる動物病院併設サロンは高齢ペットに適した環境といえます。万一体調変化があってもすぐ対処できますし、高齢ペットのケアに慣れたスタッフが工夫しながら無理なく施術してくれます。
持病がある
心臓病や皮膚病など持病を持つペットも、動物病院併設サロンの利用がおすすめです。一般のサロンでは病気への対応が難しく断られる場合がありますが、併設サロンであれば獣医師がペットの病状を把握したうえで、無理のない範囲でトリミングしてくれるので安心して任せられます。持病がある子は体調変化のリスクも伴うため、医療体制が整った環境でのトリミングが望ましいです。ペットの健康第一で考えるなら、動物病院併設サロンの方が適切なケアを受けられるでしょう。
人見知りが強い
神経質な性格で人見知りが激しい犬や猫にも、動物病院併設のトリミングサロンは向いています。一般のサロンではほかのペットの存在や施術中の物音に敏感に反応して落ち着かない子もいます。しかし、動物病院併設のサロンは静かで落ち着いた環境が整えられていることも多く、余計な刺激が少ない分ストレスを最小限に抑えることができます。さらに、動物病院のスタッフはさまざまな性格のペットに日頃から接しているため、緊張しやすい子への配慮や扱いにも慣れているという利点があります。人見知りの子の場合、最初に獣医師の健康チェックを受けつつゆっくりと環境に慣らしてもらえます。
信頼できる動物病院併設型トリミングサロンの選び方

実際に動物病院併設のサロンを利用しようと思ったら、どのような点に注目して選べばよいのか。ここでは信頼してお任せできる併設サロン選びのポイントを解説します。
動物病院の敷地内や近隣に店舗があるか
まず確認したいのは、そのトリミングサロンが本当に動物病院に併設されているか、あるいは同じ敷地内、または隣接されているかどうかです。物理的に病院と隣接している店舗であれば、獣医師がすぐ近くに待機しているため緊急時の対応も迅速です。逆に、病院と提携とあっても、実際には離れた場所にある場合、いざというときに連携がうまくいかない場合があります。
また、設備が充実しているかも重要です。院内併設であればおのずと医療設備が利用できるはずですが、念のため万が一の救急対応が可能な設備が整っているかを事前に確認しましょう。こうした条件を満たすサロンなら、より安心して利用できます。
トリマーのスキルや経験が十分か
トリミングを担当するトリマーの技術や経験もサロン選びの重要なポイントです。国家資格のある獣医師とは異なり、トリマーには統一された国家資格が存在しないため(認定や公認の資格は存在します)、経歴や資格内容をチェックすることが信頼性の判断材料になります。
具体的には、どのくらいの実務経験があるか、ペット関連の公的資格やトリミング競技会の受賞歴があるかなどを確認するとよいでしょう。最近ではSNSに、施術した子の写真を投稿している場合もあります。
特に、動物病院併設サロンの場合、動物看護師の知識も持つトリマー(メディカルトリマー)など医療面の知識を有するスタッフが在籍していることがあります。病院の公式サイトやパンフレットにスタッフ紹介が掲載されていれば、トリマーの資格や経験欄をチェックしてみましょう。技術力はもちろん、医療への理解や対応力も備えたスタッフがいるサロンなら信頼度はぐっと高まります。
ワクチンや病歴などの情報が共有されているか
ペットの予防接種歴や病歴をきちんと管理、共有しているサロンかも見極めたいポイントです。動物病院併設サロンでは通常、初回利用時に狂犬病予防接種証明書や混合ワクチン接種証明書、過去の健康状態がわかるメモなどの提示を求められます。こうした情報を確認するサロンであれば、健康管理に配慮している証拠ですし、院内で診療データを共有する体制があると考えてよいでしょう。
逆に何も聞かれない場合は、こちらから必要な情報を積極的に伝えた方がよいでしょう。大切な愛犬や愛猫を預けるのですから、医療情報をきちんと扱ってくれるサロンを選ぶことが信頼につながります。
動物病院併設型トリミングサロンの費用目安と事前準備

最後に、動物病院併設サロンの利用料金の相場や、実際に利用する前に知っておきたい準備、注意点についてまとめます。費用面と当日の準備を把握して、安心してトリミングに臨みましょう。
動物病院併設型トリミングサロンの費用相場
「動物病院併設だから高額なのでは?」と心配になるかもしれませんが、基本的なトリミング料金の相場は一般的なサロンと大きくは変わりません。
種類 | 料金の目安 |
---|---|
小型犬〜中型犬 | 5,000円〜20,000円 |
大型犬 | 10,000~30,000円 |
短毛の猫 | 7,000~15,000円 |
長毛の猫 | 8,000~15,000 |
このように、病院によって費用は大きく異なりますので、まずは相談してみましょう。
なお、猫の場合は暴れたり嫌がったりする際に安全のため動物病院で鎮静下で行うケースもあり、その場合は別途麻酔料や検査費用などがかかります。
動物病院併設サロンだからといって極端に高い費用を請求されることは通常なく、料金設定はペットの大きさや毛量、その子にかかる時間や人数、オプションサービスの有無などによって決まります。事前にホームページや電話で料金体系を確認し、予算と照らし合わせておきましょう。また、毛玉が多い場合の追加料金や、薬用シャンプー使用料などが発生することもあるので、気になる点は予約時に問い合わせておくとよいでしょう。
トリミングサロンに行く前の準備
動物病院併設サロンを利用するにあたっては、事前の準備や心構えも大切です。まず予約は基本的に必要になりますので、電話やWebで早めに予約を入れましょう。当日に向けては、ペットの体調をしっかり確認してください。トリミング当日に体調が少しでも悪そうな様子であれば無理をせず相談、キャンセルすることも大切です。持病がある子や高齢の子であれば、いつも以上に注意深く様子を見てあげましょう。また、事前に食事を済ませておくことで、空腹や満腹による負担を避けられます。適度に排泄も済ませ、スッキリした状態で連れて行くとよいでしょう。
トリミングサロンに行く際の注意点
最後に、動物病院併設サロンを利用するうえでの注意点をいくつか挙げます。まず、ワクチン接種直後のトリミングは避けるようにしましょう。ワクチン接種後は1~2週間ほど間隔を空けてからトリミングを再開しましょう。接種後1週間程度は体調を崩しやすいこともあるため、激しい運動やシャンプーを含むトリミングは控え、安静に過ごさせてあげてください。
また、トリミング前後の体調管理にも気を配りましょう。トリミングはペットにとって体力を使う行為ですので、施術後は帰宅してからもしばらく愛犬、愛猫の様子を観察し、体調の変化に注意することが大切です。普段より疲れてぐったりしている、吐き気がある、痛がる様子があるなど、気になる症状が見られた場合は早めに動物病院に連絡、受診してください。
まとめ

動物病院併設のトリミングサロンは、美容サービスと獣医療の安心感を兼ね備えています。獣医師がそばにいることで万一のトラブルにも迅速に対応でき、健康チェックや専門的なケアを受けながらトリミングできる点に大きなメリットがあります。特に、高齢のペットや持病のあるペット、神経質なペットにとっては、安全に配慮した環境で美容ケアを受けられる貴重な選択肢といえるでしょう。大切な愛犬、愛猫の美しさと健康を両立させるトリミングのために、本記事の情報を役立てていただければ幸いです。
参考文献