愛犬のしつけが順調に進まないことは、珍しいことではありません。噛み癖や無駄吠えなど、しつけが難しい場合、飼い主の負担は大きくなってしまいがちです。
しつけの方法に悩んだり、効果的にしつけを行いたい場合には、しつけ教室の活用が効果的です。
本記事では、しつけ教室に通う効果やプロに任せるメリットとデメリット、利用した方がよいケースについて解説します。犬のしつけに悩む方の参考にしてもらえれば幸いです。
しつけ教室に通う効果とは
しつけ教室は犬への効果はもちろん、飼い主にもさまざまな効果があります。期待できる効果は次のとおりです。
- コマンド(指示語)の習得
- 社会化(ほかの犬や見慣れない環境への適応)
- 吠え癖や噛み癖など問題行動の予防と改善
- 精神的な安定が得られる
- 信頼関係が構築される
- 飼い主が犬の行動原理を理解できる
- 安全管理ができるようになる
- 飼い主が犬への正しい接し方を身に付けられる
- 飼い主の自信につながる
犬への効果は、社会化や基本的な生活習慣の獲得、そして問題行動の改善などさまざまです。飼い主の参加は、犬の行動原理の理解や一貫性のある対応を学べるほか、信頼関係の構築に役立ちます。
さらに犬とのコミュニケーション方法を習得すれば、日常生活のなかでの危険を回避する効果も得られます。犬自身も飼い主とのコミュニケーションがとれることで精神的に安定し、落ち着いた行動ができるようになるでしょう。
しつけ教室では、日常の些細な困りごとの相談も可能です。具体的な解決策の指導も受けられるため、悩んでいる方はぜひ活用を検討しましょう。
プロに任せるメリット
犬のしつけ教室の利用は、飼い主からのしつけとは異なるさまざまなメリットがあります。ここでは、しつけをプロに任せる4つのメリットを紹介します。
ほかの犬や人に触れあいながら社会を学べる
犬は社会的な動物であり、群れで暮らす特徴を持っています。ほかの犬とのコミュニケーションは、犬が社会性を学ぶために必要な経験です。
この経験を通して、ほかの犬や見慣れない環境へと順応する能力が育っていきます。適切に社会性を学ぶ機会がない場合、ほかの犬や人、見慣れない環境への対応ができなくなってしまうでしょう。
このような状況に対し、恐怖や不安、攻撃性が上昇することがわかっています。犬の社会性の向上は、むやみに吠えてしまったり、噛みついてしまったりという問題行動の軽減につながるとされています。
しつけ教室は、犬が安心感を抱いて少しずつこのような刺激に慣れることができる場です。
飼い主のライフバランスが崩れにくい
しつけ教室の目的は、犬と人が快適に暮らせるようにすることとされています。吠えや散歩の拒否などの問題行動は、飼い主の家庭生活への影響が少なくありません。
特に他人への迷惑やトラブルの対応は、時間を取られるだけでなく精神的な疲弊にもつながります。しつけによる問題行動の予防・改善は、結果として飼い主のライフバランスの安定を図ることができます。
正しいしつけが学べる
しつけ教室では、専門のドッグトレーナーによってトレーニングが行われます。トレーナーによって行われるトレーニングは、心理学で研究されている行動理論に則ったしつけ方法です。
しつけ教室では、飼い主がしつけによって犬の行動が変化するところを見ることで、その方法を学びます。そしてなぜ犬がその行動を覚えるのか、という仕組みについても学ぶことが可能です。
そのためしつけ教室は、犬と一緒に飼い主も正しいしつけについて学ぶ場として利用されています。
犬がしつけを理解しやすい環境に身を置ける
しつけ教室は、犬がしつけを理解することに集中できる環境が整っています。具体的には、しつけ教室では以下のような条件が揃っていることがほとんどです。
- 犬同士のトラブルや犬と人のトラブルが起こりにくい配慮
- 急な犬の逃亡に備えた安全面の注意
- カーペット敷の屋内環境
- シーズン中のメス犬が参加できない環境
しつけ中は、犬に過度なストレスが与えられないよう、刺激の調整が行われます。具体的には、大きな音やほかの犬や人間との過度な接触の防止が該当します。
さらに、教室中は犬が正しい行動ができたらすぐに褒め、おやつのご褒美を与えます。よい行動をとれば、腹を満たせるシンプルな仕組みは犬にとっても理解しやすいしつけ方法です。
このようにしつけ教室では、犬がしつけを学ぶことに集中できる環境作りが整っているのです。
プロにお願いするデメリット
犬のしつけ教室の利用は、メリットだけでなくデメリットもあります。ここではしつけ教室の利用で起こりうる3つのデメリットを解説します。
ドッグトレーナーの相性が悪いと逆効果
選んだしつけ教室のドッグトレーナーとの相性が悪い場合、思ったような効果が得られないことがあります。
これは、ドッグトレーナーと犬の相性だけでなく、飼い主との関係もしかりです。トレーナーとの性格的不一致は、回避しにくい問題です。しかし、しつけ教室の参加前の顔合わせや教室の雰囲気を事前に確認することで、ある程度予防できます。
費用が高くなりやすい
しつけ教室の料金は一定ではなく、トレーナーやプランによって異なります。1回の参加費用はおよそ数千円の教室がほとんどです。
しかし、効果を得られるまで複数回参加すると、その金額は高額になる場合があります。しつけ教室で受けられるクラスは複数あり、どれも魅力的な内容であることが少なくありません。
費用を抑えたい場合は、愛犬に合った内容を確認してクラスを選択しましょう。
家族のいうことを聞かなくなる可能性がある
犬は、自身や周囲の人間の上下関係の位置付けを行う傾向があります。また、集団の中からリーダーを決めて指示に従うケースが基本です。
そのため、トレーナーをリーダーと判断した場合、飼い主である家族のいうことを聞かなくなる可能性があります。これは本来飼い主が結ぶべき主従関係を、トレーナーと結んでいる状態です。
犬がいうことを聞かなくなる原因の一つに、しつけ方法に一貫性がないことが挙げられます。しつけ教室の開催中は、飼い主も犬との一貫性のある関わり方を学びましょう。
犬に効果的なしつけ方法
犬のしつけを効果的に行うには、いくつかのポイントがあります。ここからは、4つの効果的なしつけのポイントについて詳しく説明します。
名前を呼んでアイコンタクトを図る
犬とのアイコンタクトは、しつけを教える基礎的な技術として欠かせません。そのポイントは犬に注目させることです。
飼い主から名前を呼ばれたときに目を合わせることで、犬はその後の命令を聞く準備が整います。そのため、アイコンタクトの次のコマンドは成功率が上がるといわれています。
また、このスキルは、吠えかかりそうなときや危険な場所に飛び出しそうなときにも有用です。安全管理としつけの基礎作りとして、アイコンタクトは早期に学ぶことがおすすめです。
指示語を使ってしつけを行う
犬のしつけにおける指示語(コマンド)とは、犬に行動を伝えるための短い合図のことです。一般的に「おすわり」「まて」などが、よく知られています。
コマンドには、コミュニケーションの円滑化や危険回避、信頼関係の構築に役立つといった効果があります。
コマンドは、犬にとって飼い主の希望を理解させやすいシンプルな指示です。期待する要望が的確に伝わることにより、飼い主と犬両方に安心感が生まれます。
また、犬が道路へ飛び出してしまいそうなときやほかの犬に飛びかかりそうなときでも、コマンドが伝わればトラブルを防ぎやすいです。このようにコマンドを使うと犬の行動をコントロールしやすくなるため、散歩や家庭内での管理に活用しましょう。
接する態度は一貫性を持たせる
犬は、飼い主の姿勢や行動を敏感に感じとります。そのため、犬と飼い主との日々のコミュニケーションこそ、信頼関係を構築する基盤です。
日頃から接する態度に一貫性を持たせることで、犬は飼い主に対し信頼感を抱くのです。逆に飼い主の態度や家庭内のしつけルールにブレがあると犬は混乱し、しつけが成立しにくくなるといいます。
曖昧な態度を避け、状況に左右されずに接することを心がけましょう。
褒めながら根気強く取り組む
多くのトレーナーや専門家が推奨しているのは、褒めながら根気強く取り組むしつけ方です。この方法では、犬がよい行動をとったときにおやつをあげたり、褒めたりなどのご褒美を与えます。
犬はご褒美をもらえることで、その行動がよいと学習していきます。問題行動の改善には、時間がかかることが少なくありません。すぐに結果を求めず、小さな成長を認識していくことが大切です。
長期的な視点を持って取り組むことは、モチベーションの維持にも大いに効果があります。褒めながら焦らず根気強く取り組むことで、信頼関係が構築され、効果的なしつけにつながります。
犬のしつけ教室を利用した方がよいケース
犬のしつけにプロのトレーナーの力を借りるかは、意見が分かれることの少なくない問題です。プロに依頼するメリットやデメリットを確認したうえで、家庭内でしつけを済ませる方もいます。
しかし、犬に危険行動や主従関係の問題が生じている場合には、しつけ教室の利用がおすすめです。ここでは、しつけ教室を利用した方がよいケースについて解説します。
犬が危険行動をする
犬に吠え癖や噛み癖、飛び出しなどの危険な行動がみられる場合には、早急にしつけ方法の検討をする必要があります。これらの行動によって犬や飼い主の事故やケガにつながるリスクが高いためです。
また、ほかの犬への突進や吠えなどの攻撃的な行動がみられる場合も同様にしつけ方法の再検討がおすすめです。これらの行動が改善されると、飼い主だけでなく犬自身の散歩や生活によるストレスがコントロールされます。
しつけ教室での適切な指導は、大きなトラブルを回避し、快適な生活への一歩になるでしょう。
主従関係が逆になっている
飼い主と犬との関係には、信頼関係だけでなく正しい主従関係も必要です。犬には上下関係を決める習性があります。
人間と犬との主従関係が逆転してしまうと、マウンティングや無駄吠え、噛みつきなどの問題行動をとる可能性があります。また、名前を呼んでも反応がないことやコマンドの無視は、主従関係が逆転した場合にみられる行動の一部です。
飼い主の序列が上の立場であることで、犬は落ち着いて素直にしつけを受け入れられるのです。犬との主従関係が逆転してしまった場合には、しつけ教室の利用を検討してみるとよいでしょう。
犬のしつけ教室で効果が出やすい時期や犬種
犬のしつけ教室で学べることは多岐に渡り、生活に必要な基本的な指示やトイレトレーニングだけではありません。
生後から4ヶ月頃までの子犬は、しつけ教室で社会化トレーニングを受けるのにおすすめの時期です。この時期は社会化期と呼ばれ、本来であれば子犬が兄弟犬や母犬との生活のなかで社会性を学ぶ時期です。
しかし現代の日本では、早期に親元から離れ、新たな環境で飼育されるケースが少なくありません。そのため飼い主は、この時期に培われるべき社会性を成長させる機会を設ける必要があります。
その機会として、しつけ教室の活用を検討するとよいでしょう。また、しつけ教室の効果は「この犬種であれば効果が出やすい」とはいい切れません。しかし、犬種による行動の傾向はある程度みられるため、その一部を紹介します。
もともと作業犬や牧羊犬であったボーダーコリーやシェパードは、学習速度の早い犬種として挙げられます。これらの犬種は、人の指示を理解しようとする行動傾向があるため、しつけの効果が出やすいといわれているのです。
このほかに、しつけ教室の効果が出やすいとされているのは、プードルやパピヨンなどのコンパニオンドッグです。これらの犬種には、飼い主の注目を集めようとする傾向があります。そのため、飼い主からのご褒美を得られるポジティブトレーニングに適応しやすいとされています。
犬には個体差があるため、一概に犬種のみでしつけの効果を判断することはできません。しかし、愛犬の性格に合わせたしつけの方法を経験豊かなトレーナーと一緒に検討するのもよいでしょう。
まとめ
今回は、犬のしつけ教室に通う効果とプロに任せるメリット・デメリット、利用した方がよいケースについて解説しました。
しつけ教室は、社会性やコマンドなどの生活習慣を学ぶことができるだけでなく、問題行動の解決にも大いに役立ちます。
一方でトレーナーとの相性の不一致や費用面の負担、家族のいうことを聞かなくなるリスクも秘めています。
しかし、犬に危険行動や主従関係の逆転がある場合には、積極的に教室への参加をおすすめします。
正しいしつけを学んで愛犬との快適な生活を過ごせるよう、しつけ教室の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献