子犬を新しく迎え入れたら、その健康を守るために早めに動物病院へ連れて行くことが大切です。
初めての動物病院は飼い主さんにとっても不安が多いイベントでしょう。しかし、ポイントを押さえて準備すれば、子犬の動物病院デビューをスムーズに乗り切ることができます。
本記事では、子犬を初めて動物病院に連れて行くときの理由やタイミング、動物病院の選び方、初診の内容、必要な持ち物、移動時の注意点、病院内でのマナー、そして帰宅後のケアまで解説します。
子犬を飼い始めたら動物病院に行くべき理由

新しく子犬を家族に迎えたら、できるだけ早く動物病院で健康診断を受けましょう。子犬の初めての受診には、以下のような重要な意味やメリットがあります。
- 健康状態の把握
- 病気の早期発見・治療
- 予防接種や寄生虫対策の計画
- 今後の飼育相談ができる
- かかりつけ医と関係が構築できる
このように、子犬の初めての動物病院受診は今後の健康管理の第一歩です。元気に見えていても油断せず、将来のことを考えて早めに受診しましょう。
子犬を初めて動物病院に連れて行くタイミング

子犬を迎えたら、できるだけ早く動物病院へ連れて行くとよいでしょう。早期に診察を受けることで、先述したような健康チェックや予防計画の開始がスムーズに行えます。
ただし、子犬にとって環境が変わった直後はストレスが大きい時期でもあります。新しいおうちに来てすぐは緊張して食欲が落ちたり疲れて眠ってばかりいたりする場合もあります。そのため、「迎えてから数日間、子犬の様子をみてから」受診するという考え方もあります。
まずは子犬がご飯をきちんと食べているか、ゆっくり休めているか、排泄の状態は正常かを確認し、新しい環境に慣れさせてあげましょう。子犬が落ち着いてきたら初診を予約すると、移動や診察時の負担を多少軽減できます。ただし、食欲不振や元気消失、下痢・嘔吐など少しでも体調不良の兆候が見られた場合は、遠慮せずすぐに受診してください。子犬は体調の変化が急に悪化することもあるため、安易に様子見しないようにしましょう。
初めての動物病院の選び方

子犬を迎えた際には、信頼できるかかりつけの動物病院を選ぶことも重要です。ペットショップで子犬を購入した場合、提携の動物病院を紹介されることがあります。しかし、提携病院は初期ケアに特化している場合もあり、成長に伴う治療や長期的な疾患対応まで含めて安心できるとは限りません。子犬はこれから長い一生を通してさまざまな医療ケアが必要になる可能性があります。一生付き合うかもしれない動物病院だからこそ、飼い主さん自身が納得して選んだ病院を持つことが大切です。
動物病院を選ぶ際の主なポイントは次のとおりです。
- 場所が自宅から近いか
- 診療時間や休診日が自分の生活に合うか
- 院内の雰囲気や清潔さ
- スタッフや獣医師の対応
- 診療内容や設備の充実度
これらを踏まえ、「この病院なら任せられる」という納得感を持てる動物病院を見つけてください。
重要なのは飼い主さん自身が信頼できる病院を選ぶことです。そうすれば今後どのような相談や治療でも安心して任せることができます。
子犬が初めて動物病院に行く際の診察内容

初めて動物病院に行ったとき、具体的にどのような診察をするのか気になりますよね。一般的に子犬の初診では、問診と身体検査、そして今後の予防スケジュールの相談が行われます。子犬にとっては初めての環境で緊張するかもしれませんが、獣医師は子犬が安全かつ負担少なく診察できるよう配慮して進めてくれます。
ここでは初診時の主な診察内容を解説します。
問診
まずは問診です。問診では、獣医師や愛玩動物看護師が子犬の基本情報や普段の様子について下記のようなことを飼い主さんに質問します。
- 生まれた日や現在の月齢・体重
- 入手先(ペットショップやブリーダー)でもらった健康状態の情報
- 今までに受けたワクチンや検査の有無
- 食事内容(フードの種類や1日の回数)
- 排泄の状態(便や尿の様子、回数)
- 普段の活動レベルや性格
- 気になる症状や気付いたこと
スムーズに問診を受けるポイントは、聞かれた情報を正確に伝えられるよう事前に整理しておくことです。
動物病院では初診時に問診票を用意していることが多いので、来院したらまずその用紙に基本情報を記入します。
身体検査
問診が一通り終わると、次に身体検査を行います。これは獣医師が子犬の身体を直接触診・検査して健康状態を確認する工程です。全身の健康チェックとも呼ばれ、以下のような項目が含まれます。
- 体重測定・体温測定
- 心臓や肺の聴診
- 目・耳・口腔の検査
- 皮膚・被毛のチェック
- 触診(腹部やリンパ節など)
- 便検査
このように子犬の全身をくまなくチェックすることで、小さな異常も見逃さないようにします。すべての検査が終わったら、獣医師が総合的に健康状態を評価し、気になる点があれば教えてくれます。
今後のワクチン接種などのスケジュール確認
身体検査までで現在の健康チェックは一通り完了です。続いて、今後の予防・ケアのスケジュール相談に移ります。
子犬期には定期的なワクチン接種やさまざまな予防措置が必要になるため、獣医師と今後の計画を立てていきます。
混合ワクチン接種のスケジュールについては、子犬の年齢に応じて開始時期が決まります。一般的に生後6~8週齢で最初の混合ワクチンを接種し、その後3~4週間ごとに追加接種を繰り返し、生後16週齢頃までに計3回程度の接種を完了させます。もしペットショップなどですでに1回目のワクチン接種が済んでいる子犬であれば、その証明書をもとに次回の接種日を決めることになります。
参照:『犬と猫のワクチネーションガイドライン』(世界小動物獣医師会)
子犬を初めて動物病院に連れて行く際に持っていくもの

初めての動物病院に行くときは、事前に持ち物をしっかり準備しておくことが大切です。必要なものを揃えておけば、受付から診察までスムーズに進み、万一の時も落ち着いて対処できます。
ここでは子犬の初診時に持参すべき主なものを解説します。
ペットショップで発行された書類
子犬を購入あるいは譲り受けた際にペットショップやブリーダーから渡された書類は必ず持参しましょう。書類には子犬の基本情報やこれまで受けた処置が記載されています。獣医師はそれらをみながら問診や検査を進めることで、より正確に子犬の状態を把握できます。
特に、健康診断書や保証書のようなものがある場合、そこに記載された内容は獣医師に共有しましょう。ペットショップ提携の病院で初期健診を受けているケースもありますが、念のため自分で選んだ病院でも再度チェックしてもらうこととよいでしょう。その際、前の健診で指摘事項があれば伝えると獣医師も留意して診てくれます。
ワクチンの証明書
ワクチン接種の証明書も重要な持ち物です。子犬によっては、新しい飼い主さんのもとに来る前にブリーダーやショップで最初の混合ワクチンが済んでいることがあります。その場合、何種混合のワクチンをいつ接種したかが記載された証明書や母子手帳を受け取っているはずです。それを提示すれば、獣医師は次回のワクチン時期を適切に判断できます。
また、狂犬病予防接種に関しては、生後91日以降に受ける法律上の義務があります。子犬が生後3ヶ月を超えて引き取った場合は、前の飼育者が狂犬病ワクチンを接種済みかどうか確認しましょう。未接種なら、生後3ヶ月を迎えた後できるだけ早く受ける必要があります。この点も動物病院で相談できますので、証明書類を持って行けば話がスムーズです。
薬やサプリメント(服用している場合)
もし現在子犬が何らかの薬やサプリメントを服用している場合、現物もしくは内容がわかるメモを持参しましょう。獣医師はそれを確認して、今後の処方や健康管理に活かします。特に他院で処方された薬や、ブリーダーから渡されたサプリなどがあるなら必ず伝えてください。
市販のサプリメントやビタミン剤を与えている場合も同様です。銘柄や成分がわかるパッケージを見せるか、名前を伝えましょう。場合によってはそれらを一時中止したほうがよいケースや、逆に継続したほうがよいケースもあります。子犬に与えているものはすべて正直に伝えることが大切です。
便や嘔吐物(体調不良の場合)
子犬の体調が優れず下痢や嘔吐が見られる場合は、その便や嘔吐物を可能な範囲で持参すると診断の助けになります。便は新鮮なものをフン袋などに入れて、乾燥しないようラップで包むなどして持って行きます。嘔吐物も同様に、可能であれば少量をビニール袋などに入れて持って行くとよいでしょう。難しい場合は、スマートフォンで写真を撮って見せるだけでも役立ちます。
動物病院に移動する際の注意点

子犬を動物病院へ連れて行くための移動手段も事前に考えておきましょう。子犬にとっては外出自体が初めての経験かもしれませんので、安全かつ安心できる環境を整えてあげることが大切です。ここでは移動手段別に注意点を解説します。
自家用車の場合
車で動物病院へ行く際は、子犬をキャリーケースに入れ、車内でしっかり固定しましょう。膝の上や座席で自由にさせると、急な動きでハンドル操作を誤ったり足元に入り込んだりして大変危険です。キャリーはシートベルトで固定するか、動かないよう床に置くのが安全です。車内の温度管理にも注意し、直射日光を避けて快適な環境を保ちましょう。走行中は小さな声で話しかけて安心させると効果的です。移動中に鳴いたり暴れたりしたら安全な場所で停車し、落ち着かせます。休憩中も決して子犬を車内に残さないようにしてください。
公共交通機関を使う場合
電車やバスなど公共交通で動物病院へ行く際は、利用する交通機関のペット同伴ルールを必ず確認しましょう。多くは小型ペットをキャリーに入れ、密閉してほかの乗客に迷惑をかけないことが条件です。抱っこでの乗車はマナー違反なので、子犬は必ずキャリーに入れて移動します。混雑を避け、静かな時間帯を選ぶとストレスが軽減されます。電車内ではキャリーを膝の上や足元で支え、カバーをかけて外の刺激を減らします。バスでは安定した場所に置き、揺れに注意をします。周囲への配慮を忘れず、状況に応じてタクシー利用も検討しましょう。
徒歩の場合
動物病院へ徒歩で行く場合は、子犬の体力と安全を最優先に考えましょう。小型犬や子犬はキャリーバッグやペットカートの利用がおすすめで、外の刺激に慣れていない子でも安心できます。抱っこの場合も必ずリードを付け、飛び出し防止を徹底します。人や車の多い道は避け、気温が高い日や寒い日は無理をせずキャリーやタクシーを利用してください。ワクチンが未完了の子犬は地面を歩かせないのが安全です。短距離でも疲れることがあるため、休憩や水分補給をこまめに行い、無理のない計画で移動しましょう。
動物病院での基本マナーと注意点

動物病院はさまざまな動物たちが集まる場所です。飼い主さん同士、ペット同士がお互いに安心して過ごせるよう、守るべきマナーがあります。ここでは待合室と診察室それぞれでのマナーや注意点を確認しておきましょう。
待合室でのマナーと安全対策
動物病院の待合室では、ほかの動物や飼い主さんへの配慮が何より大切です。同じ空間に犬・猫・小動物などいろいろな動物がいるため、飼い主さんは自分のペットをしっかり管理しましょう。
- リードまたはキャリーを使う
- ほかの動物との距離を保つ
- 静かに待つ
- 排泄の始末をする
- おやつを与えない
待合室では、飼い主さんが自分のペットから目を離さないことが大切です。スマートフォンに夢中になっている隙にリードが緩んでほかの犬と接触してしまった、なんてことのないよう注意してください。呼ばれるまでは子犬の様子に気を配り、落ち着いて順番を待ちましょう。
診察室での注意点
名前を呼ばれて診察室に入ったら、次は診察中のマナーと注意点です。診察室では獣医師や愛玩動物看護師と直接対面しますので、よりスムーズな診察・治療のために協力すべきことがあります。
- スタッフの指示に従う
- 子犬を安心させる
- 正直かつ簡潔に情報提供
- メモを取る
- その場で疑問を解消する
診察室では基本的に獣医師と二人三脚で子犬のケアを行うつもりで協力することがポイントです。お互いに気持ちよく診察を終えられるよう、上記のことを守り診察に臨みましょう。
問診のポイント
問診についてはすでに触れましたが、最後に飼い主さん側の問診での心構えをまとめます。問診は単なる質問応答ではなく、飼い主さんと獣医師の大切なコミュニケーションの場です。以下のポイントを意識すると、より有意義な問診になるでしょう。
- 伝えたいことは事前に整理しておく
- 食事量や水の飲み具合・排泄の頻度など生活全般を報告する
- おやつの量など嘘をつかない
- 質問をためらわない
- 獣医師の話をよく聞く
このように問診を双方向の情報交換ととらえることで、より精度の高い診察・アドバイスが受けられます。飼い主さんが積極的に関わることで、獣医師との信頼関係も築きやすくなるでしょう。
動物病院から帰宅した後の注意点

初めての動物病院での診察を無事終えて帰宅したら、子犬も飼い主さんもほっと一息ですね。ただ、帰宅直後の過ごし方にもいくつか注意点があります。子犬は環境の変化や診察で疲れている可能性がありますので、安静と体調チェックを心がけましょう。
- まずは子犬を休ませる
- 帰宅後しばらく子犬の様子を注意深く観察する
- 激しい運動やシャンプーを避ける
- 「よく頑張ったね」「お利口だったね」とたくさん褒める
- 獣医師からの指示の実行と次回予約
通院後は上記のことに注意しましょう。子犬にとって動物病院は非日常の体験なので、帰宅後もいつも以上に愛情を持って接してあげてください。そうすることで「病院に行ってもおうちに帰れば安心」と子犬が感じられるようになり、次回の通院もスムーズになるでしょう。
まとめ

子犬を初めて動物病院に連れて行く際のポイントについて解説しました。子犬の健康を守る第一歩として、早めに動物病院で健康診断を受けることはとても重要です。初めての動物病院は飼い主さんも緊張するかもしれませんが、しっかり準備しておけば不安を和らげられます。子犬にとっても飼い主さんにとっても、動物病院での経験がよいものになるよう、本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。
参考文献
