動物は自分の不調を言葉にできません。だからこそ、飼い主さんの日々の気付きを受け止める問診票が、診察の確かな入口になります。この記事では、問診票にまとめたい内容を、通院前の準備から当日の流れまでやさしくたどります。思い出しやすい順番で書くコツ、迷いやすい項目の考え方も少しだけ添えます。肩の力を抜いて、いつものようすをそのまま届けられるよう、一緒に準備を整えていきましょう。
初診時に問診票で確認される主な内容

ここでは初診の問診票で確認される主な項目を、書く順番のヒントと一緒にやさしくたどります。
- 初診時の問診票にはどのような項目がありますか?
- 初診の問診票では、次のような項目がよく確認されます。
・基本情報(名前・年齢・性別・体重・品種)
・主訴と発症時期、きっかけ
・症状の経過と頻度、出る場面(運動後・夜間など)
・咳や呼吸のようす(音・持続・悪化要因)
・食欲・飲水・体重の変化
・排便排尿、活動量、睡眠
・生活環境(室温・湿度・喫煙・粉じん・花粉)
・同居動物、外出習慣
・既往歴、ワクチン・予防歴
・使用中の薬やサプリ、アレルギー
・過去の受診歴と検査結果の持参有無
・避妊手術・去勢手術が済んでいるかどうか(いつ手術したのか)
・動画やメモなど記録の有無
わからない所は空欄で構いません。思い出しやすい順にまとめ、気になる点は余白に一言添えましょう。
- 過去の診察や治療内容はどこまで記入する必要がありますか?
- 過去の診察の内容は、推測を避けて事実を簡潔にまとめ次の点を判り易く伝えるようにします。
・直近の受診日と診断名(疑い含む)
・実施検査名と主な結果値
・薬名、用量、回数、期間、副作用の発生有無
・手術や入院の有無、日付と経過
・効果の手応え、途中中止の理由
・紹介状の有無、画像や結果の持参可否
・関係しそうな基礎疾患や予防歴
通院が長い場合は直近3〜6ヶ月を中心に時系列で示しましょう。薬は商品名または一般名、濃度と規格、残薬数も添え、不明なら薬袋や写真で補いましょう。以前の指示が残っていれば、用量変更の履歴や再診時のコメントも写して構いません。
- ペットの食事・生活習慣に関する質問はなぜ必要なのですか?
- 食事と生活習慣は、症状の原因や悪化要因を見極め、治療計画を組み立てる手がかりになるからです。体重推移、食餌の種類・量・与え方、間食、飲水量、早食いの有無。また、給餌姿勢や器の高さは、咳や逆くしゃみ、誤嚥の起こりやすさに影響します。運動量や散歩の時間帯・コース、寝所の温湿度、喫煙や芳香剤、粉じんや花粉、掃除頻度、留守番時間やストレスも関連します。日常の変化点を把握すると、薬の量や在宅ケア、再診間隔の調整が的確になります。季節の変わり目や冷暖房、空気清浄機の設定も共有しましょう。
- 問診票の内容は診察時間や検査内容に影響しますか?
- 問診票が具体的に書かれている程、診察は早く深く進みます。主訴や発症時期、頻度、悪化する場面が整理されていると、医師は鑑別を素早く絞り、必要な検査を優先順位づけできます。過去の検査結果や薬歴、動画の提示があれば、重複検査を避けやすく、鎮静や麻酔が関わる検査の可否判断も速くなります。結果として、追加説明の省略、待ち時間の短縮、見通しの共有がしやすくなります。逆に情報が不足すると、聴取に時間を要し、検査が段階的になり、再来や日程調整が必要になることがあります。
問診票の記入方法と注意点
ここでは、問診票の記入の流れと迷いやすい点を、準備から提出までやさしくご案内します。書き漏れを防ぐコツも整理します。
- 問診票を記入する際のポイントを教えてください
- 主訴は一文で、いつから・どのような場面で・どれくらい続くかを添えましょう。経過は時系列に、良くなった日と悪化した日を分けて記します。薬や検査は正式名と日付、効き目や副作用の実感も。動画やメモは日付を入れ、安静時呼吸数や咳の回数、体温など測定値もあると役立ちます。食事・飲水・体重、生活環境の変化も忘れずに。わからない所は推測せず空欄で。迷った点や伝えたい一言は余白に。薬袋や検査結果のコピー、画像の持参も用意すると話が早いです。最後に文章を再点検して提出しましょう。
- 正確な情報を記入するために気をつけることはありますか?
- 正確に書くための基本は、推測を入れないことです。発症や受診、検査、投薬は日付を入れ、時間帯やきっかけも添えます。数値は単位つきで統一(体重、体温、回数、量)。薬は商品名または一般名、濃度と用量・回数・期間を薬袋で確認。症状は動画や写真で補足し、起きた場面を一言。わからない所は空欄のままにし、時系列で並べます。生活環境の変化や同居動物のことも忘れず、迷いは余白で質問として残すと伝わりやすくなります。記録を書くときは、毎回同じ言葉や形式にそろえると、見落としや勘違いが減らせます。
- 来院前に問診票を準備しておくとよい理由を教えてください
- 来院前に問診票を整えると、症状の経過や発症のきっかけを落ち着いて思い出せるため、当日の聞き取りが短く済み、診察の核心に早く到達できます。過去の検査結果や薬歴も整理され、重複検査を避けやすくなります。動画や測定値を添えれば鑑別が絞りやすく、鎮静や予約検査の要否も判断しやすくなります。忘れ物の防止にも役立ちます。受付での記入待ちを減らし、家族間で情報を共有でき、費用や通院計画の見通しも早く擦り合わせられます。医師側の準備が整い、当日の説明も端的になります。
- 問診票に書きづらい内容はどのように伝えればよいですか?
- 書きづらい内容程、診断の核心になります。叱ってしまった、投薬を忘れた、誤飲の可能性、喫煙や芳香剤、長時間の留守番などは、評価語を避けて事実だけを短く。小声で伝える、別紙やメモを封筒に入れる、受付では後で医師に直接相談と記すのも方法です。家族で認識が違うときは代表の記録に補足を添え、時系列と動画で補強します。個人情報はできるだけ控え、気になる点は質問として残しましょう。責めにつながる表現や推測は控え、起きた事実と日時を先に。迷いは不明と記し、心配している点を最後に一言添えると伝わりやすく、検査や説明の順序決めに役立ちます。
問診票に関する疑問

次に、事前提出の可否や手続きの流れをやさしく確認し、迷わず準備できるように案内します。
- 問診票はインターネットで事前に提出できますか?
- 動物病院によっては、公式サイトやLINEから問診票を事前に送ることができます。自宅でゆっくり記入でき、当日の受付もスムーズです。入力内容の控えは、スクリーンショットやPDFで保存しておきましょう。フォームの容量制限や送信エラー、通信環境の不安定さなどが起こることもあります。また、同意に関する項目を読み飛ばしていると、当日に再記入を求められる場合もあります。提出前に一とおりの入力項目と送信方法を確認しておくと、落ち着いて準備できます。
- 問診票の記入時間が取れない場合の対処法を教えてください
- 時間がなくても、診療は進められます。完璧に書こうと無理をせず、まずは口頭で主訴を一文、いつから・どのような場面で・どのくらい続くかだけ伝えましょう。症状がわかる写真や動画を見せ、服用中の薬やサプリ、直近の検査結果は現物か画像で提示すれば十分です。足りない背景は診察後や次回に追補すれば大丈夫です。受付には、今日は要点を口頭で伝え、後程追記したい旨をひと言添えてください。緊急度が高いと感じたら、まずは書類よりも状態の安定化を優先して構いません。
- 問診票の内容を後から修正することはできますか?
- はい、ほとんどの病院で後からの修正は可能です。診察中に口頭で訂正してカルテに反映してもらう、受付で追記欄に日付と署名を添えて記入する、Web提出なら再送や補足ファイルの提出で対応します。新しい情報が出たときは、時系列で短く書き足し、薬名や用量、検査結果は数字を確認してから示しましょう。どこを直したかがわかるように、元の記載は消さず二重線で訂正するのが基本です。再診の予定が先なら、控えを持参してその場で見比べながら直せます。送信済みのフォームは、送信日時とバージョンを控えておくと行き違いを防げます。
編集部まとめ
問診票は診察の入口です。小さな違和感に気付いたときは、すべてを完璧に書かなくても大丈夫。今わかることを少しずつ言葉にしていけば、診療の手がかりが見えてきます。症状がわかる動画、服用中の薬や検査結果があれば、第一歩として十分です。追記や修正をしながら、伝えたい内容を育てていく形で大丈夫です。通院前に少し準備を重ねるだけで、当日の会話がスムーズになります。今日の気付きを、受診に活かす準備のきっかけにしてみてください。
