犬がふらつくのはなぜ?考えられる原因や治療法、対処法について解説

犬がふらつくのはなぜ?考えられる原因や治療法、対処法について解説

愛犬が歩行中にふらついたり、体のバランスを崩したりする様子を見ると、飼い主は不安を感じるものです。

ふらつきは、脳神経系の異常から骨や関節の疾患、心臓病や貧血まで、さまざまな原因によって引き起こされます。

軽度のふらつきであっても、重大な病気のサインである可能性があるため、早期発見と適切な対応が重要です。

本記事では、犬のふらつきについて考えられる原因や動物病院での検査・治療法、家庭でできる対処法について詳しく解説します。

ふらつきの症状とは

マルプー_退屈

ふらつきとは、犬が歩行時に左右に揺れたり、まっすぐ歩けなくなったりする状態を指します。医学的には運動失調と呼ばれ、体のバランスを保つ機能に問題が生じている状態です。

症状の現れ方は原因によって異なり、突然発症する場合もあれば、徐々に悪化していく場合もあります。

運動失調は、四肢全体がふらつく全身性と、特定の足に症状が出る局所性に分類されます。

ふらつきに加えて頭を傾けるや眼球が揺れる、嘔吐するなどの症状を伴うこともあり、これらは原因を特定する重要な手がかりです。

歩行時に足を引きずる、同じ場所を旋回する、立ち上がれないなどの症状が見られることもあります。

犬がふらつく原因

飼い主のお腹の上で寝るトイプードル

犬のふらつきは単一の原因ではなく、複数の疾患や身体状態によって生じます。神経系の異常や運動器の障害、循環器疾患など多岐にわたる要因が関与しています。

原因によって治療法や予後が大きく異なるため、正確な診断が欠かせません。ふらつきの背景には命に関わる重篤な疾患が隠れている可能性もあり、軽視できない症状といえます。

以下では、犬がふらつく主な原因を項目別に解説します。それぞれの原因を理解することで、愛犬の症状を正しく把握し、適切な対応につなげることができるでしょう。

脳の病気

脳腫瘍や脳炎、脳血管障害などの脳の病気は、ふらつきを引き起こす代表的な原因です。

脳のなかでもバランスを司る小脳や前庭神経系に異常が生じると、運動失調が顕著に現れます。特に高齢犬では脳腫瘍の発生率が高く、ふらつきに加えて旋回運動や意識障害を伴うことがあるでしょう。

水頭症も脳内の脳脊髄液が過剰に貯留する疾患で、若齢犬や特定の犬種に多く見られます。

感染や炎症による脳炎では急激にふらつきが悪化するケースも報告され、脳疾患は早期診断と治療開始が予後を左右するため、注意深い観察が必要です。

骨や関節の病気

ドッグラン

椎間板ヘルニアや変形性関節症などの骨や関節の病気も、ふらつきの原因です。特に椎間板ヘルニアは、脊髄を圧迫することで後肢の運動機能に障害をもたらし、歩行時のふらつきや麻痺を引き起こします。

ダックスフンドやコーギーなどの軟骨異栄養性犬種は発症リスクが高く、注意が必要です。変形性関節症は加齢に伴い進行し、関節痛や可動域制限によって正常な歩行が困難になります。

前肢や後肢の関節に問題がある場合、体重を支えきれずにふらついて見えることがあります。これらの整形外科的疾患では、痛みの管理と機能回復が治療の中心です。

心臓の病気

僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症などの心臓病は、全身への血液供給の低下により、ふらつきを引き起こします。

心臓のポンプ機能が低下すると、脳への酸素供給が減少し、めまいや失神を伴うふらつきが生じます。小型犬によくある僧帽弁閉鎖不全症では、咳や呼吸困難とともに運動不耐性が見られ、散歩中にふらつくことがあるでしょう。

大型犬によくある拡張型心筋症では、急激な症状悪化により突然のふらつきや虚脱を起こす危険性があります。

不整脈も脳への血流を一時的に低下させるため、ふらつきの原因として重要です。心臓病が疑われる場合は、早急な循環器専門の診察が推奨されます。

貧血

白い木目の背景にチワワとドッグフード

貧血は赤血球数や血中ヘモグロビン濃度の低下により、組織への酸素供給が不足する状態です。貧血が進行すると、脳への酸素供給も減少し、ふらつきや虚弱感が現れるでしょう。

貧血の原因には、外傷や腫瘍による出血性貧血、免疫介在性溶血性貧血などの溶血性貧血、慢性疾患や栄養不良による非再生性貧血があります。

特に免疫介在性溶血性貧血は急速に進行し、粘膜の蒼白や黄疸を伴いながらふらつきが悪化するでしょう。

寄生虫感染や腎不全も貧血を引き起こす要因であり、ふらつきとともに食欲不振や体重減少が見られることがあります。血液検査による早期発見が重要です。

老化

老化に伴う身体機能の低下は、犬のふらつきの一般的な原因です。高齢になると筋力が衰え、関節の柔軟性が失われることで、バランスを保つ能力が低下します。

前庭系の機能低下により、平衡感覚が鈍くなることもあります。視力や聴力の衰えも、環境認識能力を低下させ、歩行時のふらつきにつながるでしょう。

認知機能障害を発症した犬は、見当識障害により壁にぶつかったり、方向感覚を失ってふらつくことがあったりします。

老化によるふらつきは徐々に進行することが多く、急激な悪化が見られる場合はほかの病気の併発を疑う必要があります。

定期的な健康診断で老化に伴う変化を把握しておくことが大切です。

外傷

犬を飼う飼い主

交通事故や高所からの落下、ほかの動物との喧嘩などによる外傷は、ふらつきを引き起こす急性の原因です。頭部外傷では脳震盪や頭蓋内出血が生じ、意識障害とともに重度のふらつきが現れるでしょう。

脊椎や骨盤の骨折は神経を損傷し、後肢の麻痺や運動失調を引き起こします。四肢の骨折や脱臼も、痛みと機能障害により正常な歩行ができなくなり、ふらつきとして観察されています。

外傷直後は症状が軽微でも、時間経過とともに内出血や浮腫が進行し、ふらつきが悪化することがあるでしょう。

外傷が疑われる場合は、受傷後すぐに動物病院を受診し、詳細な検査を受けることが重要です。

感染症

ジステンパーウイルス感染症や細菌性髄膜炎などの感染症は、中枢神経系に影響を及ぼしてふらつきを引き起こします。

ジステンパーは若齢犬に多く、呼吸器症状や消化器症状に続いて神経症状が現れ、運動失調や痙攣を伴います。

ワクチン未接種の犬は感染リスクが高く、重篤化しやすいため注意が必要です。トキソプラズマ症やクリプトコッカス症などの原虫や真菌による感染症も、脳や脊髄に病変を形成し、ふらつきの原因です。

中耳炎や内耳炎などの前庭系感染症では、頭部の傾斜や眼振とともにふらつきが顕著に見られます。

感染症によるふらつきは発熱や食欲不振を伴うことが多く、早期治療が必要です。

遺伝性の病気

特定の犬種には遺伝性の神経疾患が存在し、若齢期からふらつきが現れることがあるでしょう。

ボーダーコリーやオーストラリアン・シェパードに見られる小脳性運動失調は、小脳の発育不全により生後まもなくふらつきや協調運動障害が観察されます。

ダルメシアンでは前庭疾患の遺伝的素因があり、突然の平衡感覚喪失とふらつきを発症します。変性性脊髄症はジャーマン・シェパードなどの大型犬に多く、進行性の後肢麻痺とふらつきが特徴です。

これらの遺伝性疾患は完治が困難なものが多く、症状の進行を遅らせるための支持療法が中心です。犬種特有の遺伝的リスクを理解し、早期発見に努めることが重要になるでしょう。

犬にふらつきが見られたときの対処法

診察を受ける犬

愛犬にふらつきが見られたら、慌てずに冷静に対応することが大切です。飼い主による適切な初期対応は、症状の悪化を防ぎ、獣医師の診断を助ける重要な役割を果たします。

ふらつきの程度や随伴症状を正確に観察し、記録することで、原因の特定がスムーズにできます。同時に、ふらつきのある犬が怪我をしないよう、生活環境を安全に整えることも必要です。

ここでは家庭でできる観察のポイントと、安全を守るための具体的な方法について解説します。適切な対処を行うことで、愛犬の不安を軽減し、回復への道筋をつけることができます。

観察ポイント

愛犬にふらつきが見られたら、まず症状の詳細を観察することが重要です。

ふらつきが四肢全体に及ぶのか、特定の足に限られているのかを確認します。頭を傾ける、眼球が左右に揺れる、同じ場所を旋回するなどの前庭症状の有無もチェックしましょう。

ふらつきの頻度や持続時間、悪化しているか改善傾向にあるかを記録しておくと、獣医師への情報提供に役立ちます。

食欲や排泄の状態、意識レベルの変化も併せて観察します。動画撮影は症状を正確に伝える有効な手段であり、診察時に獣医師が状態を把握しやすいです。

観察した内容はメモに残し、受診時に漏れなく伝えられるよう準備しましょう。

安全性を高めるための方法

ふらつきのある犬は転倒や衝突による二次的な外傷のリスクが高いため、生活環境を整えることが必要です。階段やソファへの昇降は制限し、段差のない平坦な場所で過ごさせます。

床には滑り止めマットを敷き、歩行時の転倒を防ぎます。家具の角にはクッション材を取り付け、ぶつかった際の衝撃を軽減させましょう。

散歩は無理をせず、短時間にとどめ、ハーネスやサポートベルトで体を支えながら歩かせます。単独での外出は避け、常に飼い主が付き添って安全性を確保することが大切です。

水や食事の容器は低い位置に置き、無理な姿勢を取らせないよう配慮します。

犬のふらつきで動物病院を受診するタイミング

犬に聴診器を当てる獣医さん

ふらつきの症状が見られた場合、どのタイミングで動物病院を受診すべきか判断に迷うことがあります。

早期受診が予後を左右する疾患も多く、適切な判断が重要です。緊急性の高い症状を見極め、必要に応じて迅速に行動することで、愛犬の命を守ることができます。

一方で、軽度のふらつきであっても放置せず、経過観察しながら適切なタイミングで相談することが大切です。ここでは具体的な受診のタイミング、受診前の準備、動物病院で伝えるべき情報について詳しく解説します。

事前の準備を整えておくことで、診察がスムーズに進み、正確な診断につながります。

受診するタイミング

突然の激しいふらつきや意識障害を伴う場合は、緊急性が高いためただちに動物病院を受診しましょう。

頭部を強く傾けるや眼球が激しく揺れる、嘔吐を繰り返すなどの症状がある場合も、前庭系の重篤な障害や脳疾患の可能性があります。

ふらつきが数日続いても改善しない、徐々に悪化している場合は早めの受診が推奨されます。呼吸困難や粘膜の蒼白、失神などを伴う場合は、心臓病や貧血などの全身性疾患が疑われ、緊急対応が必要です。

老齢犬で軽度のふらつきであっても、定期健診のタイミングで相談しておくことで、早期に原因を特定できる可能性があります。判断に迷う場合は、電話で動物病院に相談することも有効です。

受診するための準備

獣医に抱かれたヨークシャーテリア

動物病院を受診する前に、これまでの経過を整理しておくとスムーズです。ふらつきが始まった時期、きっかけとなる出来事の有無、症状の変化を時系列でまとめます。

既往歴や現在服用中の薬、ワクチン接種歴、食事内容なども確認しておきましょう。ふらつきの様子を撮影した動画があれば、スマートフォンやタブレットですぐに見せられるよう準備します。

移動中の揺れでふらつきが悪化する可能性があるため、キャリーケースや安定した容器に入れて運びます。車での移動が困難な場合は、往診を行っている動物病院を探すことも検討しましょう。

受診時には複数の質問をされることが予想されるため、落ち着いて対応できるよう心の準備も大切です。

動物病院で伝えること

動物病院では、観察した症状を正確に伝えることが診断の重要な手がかりです。

ふらつきの始まった時期、症状の程度、悪化のパターンを具体的に説明します。頭部の傾きや眼球の動き、旋回運動の有無など、前庭系に関連する症状も漏れなく報告しましょう。

食欲や排泄、水分摂取量の変化、ほかの症状の有無も重要な情報です。外傷や中毒の可能性がある場合は、事故の状況や接触した可能性のある物質について詳しく伝えます。

撮影した動画を見せることで、獣医師は症状の実際の様子を把握しやすいでしょう。質問されたことには正直に答え、不明な点は曖昧にせず、わからないと伝えることも大切です。

ふらつきの原因を調べるための検査

獣医さん

ふらつきの原因を特定するため、動物病院ではさまざまな検査が実施されるでしょう。まず身体検査で神経学的評価を行い、歩様や姿勢反射、脳神経機能をチェックします。

血液検査では貧血や感染症、電解質異常、肝臓や腎臓の機能を評価し全身性疾患の有無を調べます。

画像検査としてレントゲン検査で骨や関節の異常を確認し、必要に応じてCT検査やMRI検査で脳や脊髄の詳細な評価を行っていく流れです。

前庭系の障害が疑われる場合は眼振検査や頭位変換試験を実施するでしょう。心臓病が疑われる場合は心電図検査や心エコー検査で心機能を評価します。

場合によっては脳脊髄液検査で炎症や感染の有無を確認することもあり、総合的な検査結果もとに診断を確定することになるでしょう。

犬がふらつく場合に考えられる治療法

つまらない表情をする犬

ふらつきの治療は原因疾患によって大きくかわります。

脳腫瘍や脳炎に対しては、ステロイド剤や抗炎症薬による内科的治療、場合によっては外科的切除や放射線治療を選択するでしょう。

椎間板ヘルニアでは内科的治療として安静と鎮痛剤投与を行い、重症例では外科手術で脊髄の圧迫を解除していきます。

心臓病には強心薬や利尿薬などの循環器治療薬を用い、貧血には輸血や造血剤投与、原因疾患の治療を並行させることが必要です。

感染症には適切な抗菌薬や抗真菌薬を使用し、炎症を抑えることが重要です。

前庭疾患には抗めまい薬や制吐薬が有効で、老化や遺伝性疾患では完治は困難ですが、リハビリテーションや補助器具の使用で生活の質を維持できるでしょう。

鎮痛管理や栄養サポートも重要な治療の一環です。

まとめ

獣医さんと飼い主

犬のふらつきは脳神経系の異常や骨、関節の疾患や心臓病、貧血老化外傷感染症遺伝性疾患など多岐にわたる原因によって引き起こされます。

症状を丁寧に観察し記録することで、動物病院での正確な診断につながります。ふらつきが見られたら生活環境を整えて安全性を高め、適切なタイミングで受診しましょう。

検査によって原因を特定し、疾患に応じた治療を行うことで、症状の改善や進行抑制が期待できます。

愛犬の小さな変化を見逃さず、早期発見・早期治療に努めることが、健康で快適な生活を守る鍵です。

参考文献