犬や猫の健康状態を調べるため、動物病院では尿検査を行うことがあります。
腎臓や尿路などの異常を見つける手がかりになる検査ですが、「尿はどうやって採ればいい?」「自宅でうまく採尿できるか不安」と思う方は多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、動物病院で尿検査を受ける際の採尿方法を解説します。また、自宅で採尿するときのポイントやよくある失敗例、尿検査で確認する項目も併せて紹介します。
この記事を読めば、尿検査に必要な採尿の基本や注意点を理解できるので、愛犬や愛猫の尿検査を予定している方はぜひ参考にしてみてください。
動物病院で行う主な尿検査

動物病院で行う尿検査は、犬や猫の健康状態を確認するための重要な検査です。尿の濃さや含まれる成分、細胞などを調べることで、腎臓や膀胱をはじめとした尿路の異常を見つける手がかりになります。
動物病院で行われる主な尿検査は、以下の3つです。
- 尿比重
- 尿定性検査
- 尿沈渣検査
尿検査は1つの検査結果だけで判断するのではなく、複数の結果や症状などを踏まえて総合的に評価することが大切です。次項では、尿比重・尿定性検査・尿沈渣検査について、それぞれ何を調べる検査なのか詳しく解説します。
尿比重
尿比重検査とは、尿に含まれる水分と成分の割合から、尿の濃さを数値で示す検査です。主に腎臓がどの程度尿を濃縮できているかを確認するために行われます。
腎臓には、体内の水分量に応じて尿を濃くしたり薄くしたりする働きがあります。そのため、尿比重は腎臓の機能を評価する重要な指標の1つです。
ただし、尿比重は飲水量や食事、脱水の有無などによっても変動します。数値が高い・低いという理由だけで病気を判断することはできません。同じ犬や猫でも、そのときの水分摂取量や体の状態によって数値が変わることがあります。
そのため、測定したときの状態も考慮しながら結果を確認することが重要です。動物病院では、犬や猫の症状、血液検査などの結果も確認しながら腎臓の状態を総合的に評価します。
尿定性検査

尿定性検査とは、尿にどのような成分が含まれているかを調べる検査です。複数の試薬が付いた尿試験紙を使用し、色の変化などから各成分の有無や程度を確認するのが一般的です。
主な検査項目には、尿蛋白・ブドウ糖・潜血・ケトン体・ビリルビン・pHなどがあります。尿蛋白や潜血などが検出された場合は、腎臓や尿路の異常を調べる手がかりになります。
このように複数の項目を確認することで、見た目だけではわからない尿の変化を捉え、犬や猫の健康状態を評価するための情報を得ることが可能です。
ただし、尿定性検査だけで特定の病気を確定できるわけではありません。異常が認められた場合は、尿比重や尿沈渣検査、血液検査などの結果も踏まえて獣医師が総合的に判断します。
尿沈渣検査
尿沈渣検査とは、尿に含まれる細胞や結晶などの固形成分を顕微鏡で詳しく観察する検査です。尿を遠心分離して沈殿した成分を調べる方法などが用いられます。
尿沈渣検査では赤血球や白血球、上皮細胞や細菌、結晶などの有無や量を確認します。これらを調べることで、膀胱炎などの尿路の炎症や感染、尿路結石などを疑う手がかりを得ることが可能です。
例えば、尿中に多くの白血球や細菌が確認された場合は、尿路感染症などが疑われます。ただし、観察された細胞や結晶などの種類や量だけで病気を判断するのではなく、犬や猫の症状やほかの検査結果も確認する必要があります。
尿定性検査と組み合わせることで、尿や尿路の状態をより詳しく評価できる点が特徴です。
動物病院の尿検査の採尿はどこで行うのか

動物病院で尿検査を受ける場合、検査に使用する尿は必ずしも病院内で採るとは限りません。犬や猫の性格や体調、検査の目的などに応じて、適した採尿方法が選択されます。
採尿する場所は、大きく以下の2つに分けられます。
- 自宅
- 動物病院
自宅では普段の排尿時に尿を採取するのが基本ですが、動物病院ではカテーテルや膀胱穿刺などを用いて採尿する場合もあります。
必要な尿の状態や検査内容によって適した方法は異なるため、自己判断で採尿するのではなく、事前に獣医師へ確認しておくことが大切です。次項から、自宅と動物病院で採尿するケースについて、それぞれ詳しく解説します。
自宅で行うケース
自宅での採尿は、犬や猫が普段どおり排尿したタイミングで尿を採取する方法です。動物病院へ連れて行く前に採尿できるため、慣れた環境で排尿できる点が特徴です。
特に、病院では緊張して排尿できない犬や猫の場合、自宅での採尿が選択肢となります。採取するときは、清潔な容器や動物病院から渡された採尿キットなどを使用しましょう。
自宅で採尿するときは、採尿した時刻だけでなく、尿の色や排尿時の様子なども確認しておくと、受診した際に獣医師へ状況を伝えやすくなります。
ただし、床やペットシーツ、猫砂などに触れた尿には汚れや異物が混入する可能性があります。検査結果に影響する場合があるため、できるだけ尿へ直接触れずに採取しましょう。
採尿方法や必要な量、保存方法は、事前に動物病院へ確認しておくことが大切です。
動物病院で行うケース

自宅での採尿が難しい場合や、検査の目的によっては動物病院で採尿することがあります。病院では、動物の状態や必要な検査に合わせて獣医師が適切な採尿方法を選択します。
代表的な方法は、以下の3つです。
- 自然に排尿した尿を採る自然排尿
- 尿道からカテーテルを挿入するカテーテル採尿
- 膀胱へ針を刺して尿を採る膀胱穿刺
特に細菌感染の有無を詳しく調べる場合などは、外部からの細菌が混入しにくい膀胱穿刺が選択されることがあります。
どの方法が適しているかは、犬や猫の体調や検査目的によって異なります。採尿方法について不安がある場合は、事前に獣医師へ確認しておきましょう。
動物病院で尿検査を受けるときの自宅採尿のポイント

動物病院の尿検査に使用する尿を自宅で採る場合は、できるだけ異物を混ぜず、新鮮な状態で採取することが大切です。正しい方法を知っておけば、採り直しや検査への影響を防ぎやすくなります。
自宅で採尿するときに押さえておきたいポイントは、以下の3つです。
- 採尿のための準備
- 犬の採尿のポイント
- 猫の採尿のポイント
犬と猫では排尿する場所や姿勢、採りやすい方法が異なります。また、採尿前に必要な道具をそろえておくことも重要です。次項から、採尿前に準備するものと、犬・猫それぞれの採尿のポイントを詳しく解説します。
採尿のための準備
自宅で採尿する場合は、犬や猫が排尿してから慌てないように、必要な道具を事前に準備しておきましょう。動物病院から採尿用の容器やキットを渡されている場合は、指定されたものを使用します。
指定がなければ、尿を受ける清潔なトレーや紙コップ、尿を移すスポイトや密閉できる容器などを用意しておくと便利です。容器に汚れや洗剤などが残っていると、尿に異物が混ざり、検査結果に影響する可能性があります。
そのため、できるだけ清潔なものを使用しましょう。検査の目的によっては、採尿方法や動物病院へ持参するまでの時間について指示される場合もあります。
受診予定が決まった段階で必要な情報を把握しておけば、採尿したあとに対応に迷うことも少なくなるでしょう。必要な尿量や保存方法なども含め、事前に動物病院へ確認しておくことが大切です。
犬の採尿のポイント

犬の採尿は、散歩中など普段どおりに排尿するタイミングを利用すると行いやすくなります。犬が排尿を始めたら、清潔なトレーや紙コップなどを尿の流れに差し入れて採取しましょう。
散歩に出てすぐ排尿するなど、普段の排尿パターンがわかっている場合は、そのタイミングに合わせて採尿に必要な道具を準備しておくとスムーズです。
採尿するときは、犬が落ち着いて排尿できるよう、普段と同じ環境や流れを意識することが大切です。また、地面に落ちた尿には土や砂などが混入する可能性があります。検査に使用する尿は、できるだけ排尿中に直接受けて採取しましょう。
一度で採れなくても無理に排尿させる必要はありません。自宅での採尿が難しい場合は獣医師に相談し、動物病院での採尿も検討しましょう。
猫の採尿のポイント
猫の採尿では、トイレで排尿した尿を猫砂に吸収させずに回収する工夫が必要です。尿を吸収しない採尿用の砂や専用キットを使用すると、採取しやすくなります。
採尿前には猫用トイレを清潔にしておき、排尿後にたまった尿をスポイトなどで吸い取り、清潔な容器へ移しましょう。ただし、普段と違う猫砂やトイレの状態を警戒し、排尿を我慢してしまう猫もいます。
その場合は、無理に環境を変えて採尿しようとしないことが大切です。自宅での採尿が難しい場合は動物病院へ相談し、猫の性格や検査目的に適した方法を確認しましょう。
猫の性格や検査目的に合わせて、病院で採尿する方法を選択できる場合があります。
自宅での採尿でよくある失敗例と注意点

自宅での採尿は、犬や猫が慣れた環境で行える一方、思うように尿を採れないケースがあります。採尿方法を誤ると、十分な量を確保できなかったり、尿に異物が混ざったりする可能性があるため注意が必要です。
自宅での採尿では、ペットシーツや猫砂に尿が吸収される、採尿キットを警戒して排尿を途中でやめるなどの失敗があります。また、採取できた尿の量が少なかったり、採尿から検査までに時間が経ちすぎたりするケースにも注意が必要です。
正確な尿検査につなげるためには、こうした失敗が起こる原因を知り、適切な方法で採取することが大切です。次項から、それぞれの失敗例と採尿するときの注意点について詳しく解説します。
ペットシーツや猫砂に尿が吸われてしまう
採尿でよくある失敗の1つが、尿がペットシーツや猫砂に吸収されてしまうことです。尿が吸収されると、尿検査に必要な量を確保できない場合があります。
特に注意したいのが、使用済みのペットシーツを絞ったり、猫砂に残った尿を回収したりすることです。こうした方法では、尿以外の成分や汚れが混入し、検査結果に影響する可能性があります。
採尿を予定している場合は、排尿のタイミングを確認しやすい環境を整え、必要な道具をあらかじめ手の届く場所に準備しておくとよいでしょう。尿がシーツや猫砂に吸収されてしまった場合は、自己判断で回収せず、採り直したほうがよいか動物病院へ確認しましょう。
採尿キットに警戒して途中でやめてしまうことも

犬や猫によっては、見慣れない採尿キットや容器を警戒し、排尿を途中でやめてしまうことがあります。特に警戒心が強い犬や猫では、採尿しようとする行為そのものがストレスになる場合もあります。
一度失敗したあとに何度も採尿を試みると、採尿キットや排尿時の接近をさらに警戒する可能性があります。採れない状態が続く場合は無理に繰り返さず、動物病院へ相談しましょう。
自宅での採尿が難しいことを事前に伝えておけば、犬や猫の状態や検査目的に応じて、病院での採尿を検討してもらえます。
量が少なすぎる
尿を採取できても、量が少なすぎると予定していた尿検査を十分に行えない場合があります。必要な尿量は検査内容や動物病院によって異なるため、採尿前にどの程度必要なのか確認しておくことが大切です。
また、複数の検査を予定している場合などは、採取できた量によって実施できる検査が限られる可能性があります。そのため、必要量について事前に確認しておくと、採り直しを防ぎやすくなります。
十分な量を確保できなかった場合でも、自己判断で捨てる必要はありません。少量でも検査できる可能性があるため、採取できた量を動物病院へ伝え、持参してよいか確認しましょう。
外陰部の汚れや異物が混ざってしまった

自宅で採尿するときは、外陰部の汚れや被毛、砂などの異物が尿に混ざることがあります。採取した尿に本来含まれていないものが混入すると、尿の状態を正確に評価しにくくなる可能性があるため注意が必要です。
特に尿中の細胞や細菌などを確認する場合、採尿時に混入したものなのか、もともと尿に含まれていたものなのかを判断しにくくなることがあります。
採尿には清潔な容器を使用し、床や地面に落ちる前の尿をできるだけ直接採取しましょう。また、容器の内側を手で触ったり、使用済みの容器を使ったりすることも避けたほうがいいでしょう。
採取した尿に目立つ汚れや異物が混ざってしまった場合は、自己判断で取り除いて持参するのではなく、動物病院へ状況を伝えてください。採り直しが必要かどうか、獣医師の指示を確認しましょう。
採尿後に時間が経ちすぎて検査不可・再検査に
自宅で採尿できても、動物病院へ持参するまでに時間が経ちすぎると、尿に含まれる成分や細胞などが変化し、正確な状態を評価できなくなることがあります。尿の状態によっては検査に適さないと判断され、あらためて採尿して再検査が必要になる場合もあるため注意しましょう。
採尿後は時間の経過とともに、尿に含まれる成分や細胞などの状態が変化することがあります。そのため、採取してから検査までの時間も、尿の状態を適切に評価するうえで重要です。
採取した尿は清潔な容器に入れて密閉し、できるだけ早く動物病院へ持参することが大切です。すぐに持参できない場合は、保存方法について動物病院へ確認してみてください。
また、採尿した時刻を記録しておくと、受付時に尿を採ってからどの程度時間が経過しているか正確に伝えられます。持参できる時間の目安や保存方法は自己判断せず、検査を受ける動物病院の指示に従いましょう。
まとめ

動物病院の尿検査は、犬や猫の腎臓や尿路などの状態を確認するために役立つ検査です。主な検査には尿の濃さを調べる尿比重、尿に含まれる成分を調べる尿定性検査、細胞や結晶などを確認する尿沈渣検査があります。
尿検査に必要な尿は、自宅または動物病院で採取します。自宅で採尿する場合は、清潔な容器を用意し、ペットシーツや猫砂に吸収される前の尿をできるだけ直接採取することがポイントです。
採尿方法や必要な量、保存方法などに迷った場合は自己判断せず、事前に動物病院へ確認してみてください。適切に採尿することで、スムーズな尿検査につながります。
参考文献
