愛犬や愛猫が頻繁に耳をかいたり、頭を振ったりしていませんか?もしかすると耳の病気のサインかもしれません。耳の疾患には外耳炎や中耳炎から寄生虫感染、腫瘍などさまざまな病気があり、ペットに応じた適切な診断と治療が重要です。
一般の動物病院でも耳の治療は可能ですが、慢性化したケースや高度な治療が必要な場合は、耳専門の動物病院の受診が推奨されます。 この記事では、耳専門病院で受けられる治療と一般病院との違いについて詳しく解説します。
耳専門の動物病院で受けられる主な治療

耳のトラブルが繰り返される場合、単なる耳だけの問題ではなく、耳以外での基礎疾患が原因となっていることがあります。そのため難治性の耳の病気は一時的な対症療法だけでなく、原因を見極めた根本的な診断と治療が重要です。
耳専門の動物病院では、主な皮膚検査や血液検査に加え、アレルギーが疑われる場合はアレルギー検査も実施するなど、細かく検査をしたうえで治療を行います。内服薬での痒みや炎症を抑えたり、必要に応じてビデオオトスコープという機械を用いて耳のなかを洗浄するなど、治療方法はさまざまです。
耳専門の動物病院では資格を持つ獣医師による診察が中心となり、より専門的な診断を受けることができます。
外耳炎・中耳炎・内耳炎の診断と治療
耳の病気の診断は、主に耳鏡を用いて観察する視診と、耳垢などを染色して顕微鏡で観察する検査によって行います。それに加え、細菌感染を疑う場合は細菌培養検査を実施したり、アレルギー疾患やホルモン疾患の可能性がある場合は血液検査も並行して行います。耳の診察でよく遭遇する外耳炎は、症状が軽度で単回の治療で改善する場合があります。しかし、耳の奥深くの中耳炎や内耳炎まで進んでしまう場合は、慢性的な耳の痒みだけでなく、顔が傾いたり耳の中が腫れて耳道が閉塞するといった重篤な症状が現れます。そのような場合、耳専門の動物病院では、ビデオオトスコープという特殊な機械を用いて検査、治療を行います。ビデオオトスコープとは、耳の中を詳しく調べるための小型カメラ付きの医療機器です。細長い管の先にカメラとライトが付いていて、耳の奥まで拡大して映し出すことができるため、耳の中の状態をしっかり確認できます。このような特殊な機械なども用いながら、検査や診断を進めていきます。
慢性的な耳のかゆみや炎症のケア
慢性的な耳のかゆみや炎症は、体全体での病気が関与している可能性があるため、原因を特定し適切な治療を行うことが重要です。特に長期間繰り返すような難治性の耳の病気は長期的なスパンで治療を行う必要があります。定期的な耳のなかの洗浄を行いながら、抗生物質や抗炎症薬、痒み止めなどを使い、徐々に症状を押さえていきます。症状の経過をみながら薬の内容や投薬頻度を変更していくなど、細かな調整が必要です。
耳ダニ・細菌・真菌感染の治療
耳の感染症のなかには、耳ダニ・細菌・カビによるものがあります。耳ダニは野良猫などに多く、耳垢の増加と強いかゆみを伴います。細菌やカビも悪臭や耳垢の異常を引き起こします。感染の種類によって治療法が異なるため、原因に応じて治療を行います。耳ダニの場合は専用の駆虫薬を使用します。
細菌感染には有効な抗菌薬を使用し、カビの感染には抗真菌薬などを使用します。また、ビデオオトスコープを使い、耳道内の洗浄を行うことで炎症の悪化を防ぐこともあります。耳の感染症は適切な治療を行えば改善が期待できるため、異常を感じたら早めに診察を受けましょう。
耳の腫瘍やポリープの検査と処置
耳のなかの腫瘍やポリープは放置すると慢性炎症や聴力障害を引き起こすため、早期の検査と適切な処置が必要です。耳専門の動物病院では、ビデオオトスコープを用いた低侵襲の処置が行われます。ビデオオトスコープを使用することで、小さなポリープや腫瘍を確認し、その場で除去することが可能です。また中耳炎や内耳炎を疑う場合は、CT検査やMRI検査を行い、病変部位の広がりや他臓器への影響を確認することもあります。
一般の動物病院との違い

一般の動物病院でも耳の診察や治療は可能ですが、症状が繰り返し発生したり、重度の炎症や感染が疑われる場合は、耳専門の動物病院での精密検査や専門的な治療が推奨されます。ここでは、耳専門の動物病院の特徴を解説します。
耳科診断機器の充実度
耳専門の動物病院では、耳科に特化した診断機器を活用し、より正確な診断と治療が可能です。一般的には、耳の診察に手持ち耳鏡が使われることがありますが、耳鏡だけでは正確な診断をするには限界があります。そのため、耳専門の動物病院では主にビデオオトスコープ(耳内視鏡)を用いて耳の奥までカメラを挿入し、拡大した映像をリアルタイムで確認します。
ビデオオトスコープには、耳鏡では見えない鼓膜や耳道の奥にある炎症、異物、腫瘍の有無を確認し、治療や洗浄をしながら処置ができる特徴があります。また、ペットの症状によってはCT・MRI検査、聴力検査(BAER検査)などを活用し、耳の病気をさらに詳しく調べる場合もあります。診断機器が充実していることで、より正確な診断と効果的な治療が受けられるのが耳専門の動物病院の大きな強みです。
耳の病気の治療に特化した医師が在籍
耳疾患に特化した動物病院では、より専門性の高い診断や治療を受けられる場合があります。例えば、日本獣医皮膚科学会 獣医皮膚科認定医やアジア獣医皮膚科専門医協会 獣医皮膚科専門医などの資格を有する獣医師が在籍していることがあり、難治性の耳疾患を含めてより精密な検査や治療を実施できる可能性があります。
ただし、治療方針は動物の状態や病状により異なります。治療方法や費用については事前に確認し、かかりつけの獣医師と十分に相談したうえで適切な選択を行ってください。
難治性の耳疾患への治療
慢性外耳炎、中耳炎、耳腫瘍などの症例は、対症療法では完治が難しく、再発を繰り返すことも少なくありません。病気を診断したうえで、内服薬の投与や、耳の洗浄を定期的に行いながら症状の改善を測ります。
内科治療での改善が難しい場合は、ビデオオトスコープを用いた低侵襲の治療から、耳道切除などの外科的な治療を行っている病院もあります。治療の選択肢が広いため、ペットとご家族に沿った治療を提案できるのも、耳専門病院の強みです。
耳のトラブルに関する細かいアドバイス
耳科専門の動物病院では、病気の治療だけでなく、再発防止や日常のケア方法についての詳しいアドバイスも受けられます。耳の病気は再発しやすく、自宅での投薬やケアが何より重要です。しかし、自己流の耳掃除や市販薬の使用は、かえって症状を悪化させることがあります。
専門病院では、耳科に精通した獣医師がペットの耳の形状や体質に合った適切なケア方法を教えてくれたり、愛犬や愛猫の体質に合ったケア用品を探してくれる場合もあります。特にアレルギーが原因の耳の炎症には、自宅での食事療法や生活環境の改善が病気の改善に直結します。ぜひ耳に関する日頃の悩みや不安を相談してみてください。
耳専門の動物病院を選ぶ際のポイント
耳専門の動物病院を選ぶ際は、設備や診療内容、獣医師の専門性、費用や治療方針などをしっかり確認することが大切です。特に耳の疾患は慢性化しやすく、長期的な治療が必要になるケースも少なくないため、信頼できる病院を選ぶことがペットの健康に直結します。
ここでは、病院選びの重要なポイントについて詳しく解説します。
設備や診療内容を事前に確認する
耳の専門診療には高度な検査・治療機器が必要なため、事前に設備や診療内容を確認しましょう。特に、ビデオオトスコープがあると、耳道の奥まで確認しながら治療できるため、より精密な診断と処置が可能になります。まずは病院のホームページや事前の問い合わせで、必要な診療が受けられるかをチェックしましょう。
獣医師の専門性をチェックする
耳専門の動物病院を選ぶ際は、獣医師の専門性を確認することが重要です。特に、皮膚科の資格を有する先生が在籍しているかを確認してみるのを推奨します。また学会や研修への参加歴、セカンドオピニオンの受け入れを行っているかも参考になります。病院のホームページで獣医師の資格や経歴を確認したり、事前にホームページや問い合わせなどで専門的な診療が受けられるかをチェックすると安心です。
診察費用や治療方針を事前に確認する
耳の治療は長期にわたることが少なくないため、診察費用や治療方針を事前に確認しておくことが大切です。動物医療は自由診療のため、同じ治療でも病院によって費用が異なることがあります。 また、治療には複数の選択肢があるため、治療内容と費用について丁寧に説明してくれる病院を選びましょう。
耳の病気が疑われるときの受診タイミング

耳の病気は初期の段階では見落とされることも多く、飼い主さんが気付かないうちに悪化してしまうことがあります。しかし、早期発見・早期治療を行うことで、重症化を防ぐことが可能です。 ここでは、耳の異常が疑われる主な症状と、受診のタイミングについて詳しく解説します。
耳を頻繁に掻く・頭を振る仕草が増えた場合
愛犬や愛猫が頻繁に耳を掻いたり、頭を振るようになったら、耳に違和感やかゆみを感じているサインです。耳のかゆみの原因には、外耳炎、耳ダニ、アレルギー、毛など異物の混入などさまざまなものがあります。耳のなかは皮膚と違い見えにくく、飼い主さんだけで判断するのは危険です。症状が悪化する前に早めに動物病院を受診してください。
耳から異臭がする・赤く腫れている場合
耳から強い臭いがする、赤く腫れている場合は、細菌や真菌感染、外耳炎の進行が疑われるため、早めの受診が必要です。健康な耳はほとんど臭いがありませんが、感染症や炎症が進行すると、独特の悪臭が発生することがあります。また、耳が赤く腫れている場合は、炎症が広がり、痛みを伴っている可能性が高いです。特に膿が出ている、耳を触ると嫌がる、痛がるといった症状が見られる場合は、早急な治療が必要になります。
耳垢の量が多く、色が変化している場合
耳垢の量が急に増えたり、通常とは異なる色になっている場合は、耳の病気の可能性があるため、注意が必要です。正常な耳垢は少量で、薄い茶色~黄褐色をしています。黒っぽい耳垢が大量に出る場合は耳ダニやマラセチア性の耳炎、黄色や緑色の耳垢が増えている場合は細菌感染が疑われます。耳垢の異常は、感染症や炎症のサインであることが少なくないため、異変に気付いたらすぐに動物病院で検査を受けましょう。
聞こえにくそうな様子や平衡感覚の異常が見られる場合
耳の病気が進行すると、聴力低下や平衡感覚の異常(ふらつき)が現れることがあるため、早めの受診が必要です。中耳炎や内耳炎に進行すると、音が聞こえにくくなったり、ふらつきや頭の傾きが見られることがあります。 また、高齢の犬猫では加齢に伴う難聴との区別がわかりにくく、加齢と勘違いしてしまう場合もあるため十分な注意が必要です。
耳の健康を維持するための予防策

耳の病気は一度発症すると治療に時間がかかることが多く、慢性化すると再発を繰り返すこともあります。そのため、耳の健康を維持するためには、日頃からの適切なケアと定期的な健康チェックが重要です。正しい耳掃除の方法を知り、適切な頻度でケアを行うことが病気の予防につながります。
定期的な耳掃除の方法と注意点
耳の健康を保つためには、適切な耳掃除を定期的に行うことが重要です。耳垢や汚れが溜まると、細菌や真菌が繁殖しやすくなり、外耳炎や感染症の原因となります。しかし誤った方法での耳掃除は逆に耳を傷つけ、炎症を悪化させることもあるため、注意が必要です。耳洗浄の際は専用のイヤークリーナーを使用し、綿棒を使わずにコットンやガーゼで耳の入口を優しく拭き取りましょう。点耳薬は獣医師の指導のもと、使い方を守って使用してください。
定期的な健康診断で耳の異常を早期発見する
耳の病気は目に見えにくい部分で進行するため、定期的な健康診断を受けることで早期発見が可能です。特に慢性外耳炎や中耳炎は、初期の段階では気付きにくいため、獣医師による定期チェックが有効です。症状がなくても年に数回は健康診断で耳の状態をチェックしたり、時々耳鏡やビデオオトスコープを用いて、見えない奥の診察もお願いしましょう。定期検診を受けることで、耳の病気を未然に防ぐことができます。
まとめ
耳の病気は慢性化しやすく、放置すると聴力低下や神経症状を引き起こすことがあります。 特に治りにくく再発を繰り返す場合は、耳専門の動物病院の受診を検討してみてください。耳専門の動物病院では、ビデオオトスコープを活用した精密な検査、耳科に精通した獣医師による診察を受けられます。病院を受診する前に、設備や獣医師の専門性、治療方針を事前に確認することが重要です。大切な家族に合った病院選びと日頃のケアを心がけ、健康的な耳を保ちましょう。