犬や猫の健康を守るために動物病院へ連れて行きたいものの、キャリーバッグを見ただけで逃げたり、待合室で震えたりする様子に悩んでいる飼い主さんもいるのではないでしょうか。
犬や猫にとって動物病院は、慣れないにおいや音、ほかの動物との接触など、普段の生活とは異なる刺激が多い場所です。
また、過去に動物病院で感じた不安や緊張が、その後の行動に影響することも考えられます。
動物病院でのストレスをできるだけ軽減するには、怖がっているときのサインを把握し、移動時や待ち時間の過ごし方を工夫することが大切です。
この記事では、犬や猫が動物病院を怖がる主な理由やサイン、受診時のストレスを軽減する工夫、普段からできる対策などを解説します。
動物病院を利用する際のマナーについても紹介するため、愛犬・愛猫との受診に不安がある方は参考にしてください。
犬や猫が動物病院を怖がる理由

犬や猫が動物病院を怖がる理由は、それぞれの性格や過去の経験などによって異なります。
動物病院には普段とは異なるにおいや音があり、ほかの動物と接する可能性もあります。
そのため、慣れない環境に緊張し、強いストレスを感じる犬や猫もいます。
ここでは、犬や猫が動物病院を怖がる主な理由を解説します。
慣れない場所への不安
犬や猫にとって、普段過ごしている自宅とは環境が大きく異なる動物病院は、不安や緊張を感じやすい場所のひとつです。
動物病院では、知らない人や動物の姿、鳴き声、さまざまなにおいなど、多くの刺激にさらされます。特に環境の変化に敏感な場合、慣れない場所へ移動するだけでもストレスにつながる可能性があります。
普段とは異なる環境や刺激が重なることで、動物病院に到着する前から緊張が高まることもあります。
怖がっている様子が見られる場合は無理に落ち着かせようとせず、できるだけ刺激を少なくして過ごせるよう配慮することが大切です。
以前受診した際のマイナスな記憶

過去に動物病院を訪れた際の経験が、その後の反応に影響することもあります。
獣医師やスタッフさんに身体を触られたり、検査のために一定の姿勢を保ったりする場合があります。
犬や猫にとって不快感や恐怖を伴う経験があると、動物病院そのものだけでなく、移動に使うキャリーバッグや車などに対しても不安を感じる可能性があります。
その結果、キャリーバッグを見ただけで隠れる、動物病院の入口で立ち止まるなど、受診する前から嫌がる様子が見られることもあるでしょう。
過去の経験から、動物病院に対して不安や恐怖を感じるようになる犬や猫もいます。
以前の受診で強く怖がった経験がある場合は、そのときの様子を獣医師やスタッフさんへ伝えておくことも大切です。
ほかのペットがいることへのストレス
動物病院の待合室には、さまざまな犬や猫が訪れます。そのため、ほかの動物の存在がストレスにつながる場合もあります。
特にほかの動物が苦手な犬や猫は、近くにいる動物の姿だけでなく、鳴き声やにおい、気配などにも反応することがあります。
自分から距離を取ろうとしたり、落ち着かなくなったりすることもあるでしょう。
また、犬と猫ではほかの動物への反応が異なる場合があります。
猫の場合はキャリーバッグのなかにいても、周囲に犬がいることで緊張が高まる可能性があります。
ほかの動物を怖がる場合は、できるだけ距離を確保し視線や接触を避けながら待つことが大切です。
待合室で落ち着いて過ごすことが難しい場合は、受付で事情を伝え、車内や別の場所で待つことが可能か確認してみましょう。
犬や猫が動物病院を怖がっているサイン

犬や猫は言葉で不安を伝えられないため、行動や身体の変化から気持ちを読み取ることが大切です。
動物病院へ向かう途中や待合室、診察室などで普段と異なる様子が見られた場合は、緊張や恐怖を感じている可能性があります。
ここでは、犬や猫が動物病院を怖がっているときに見られる主なサインを紹介します。
飼い主やほかのペットへ攻撃的になる
不安や恐怖が強くなると、普段は穏やかな犬や猫でも、飼い主さんや周囲の動物に対して攻撃的な行動を見せることがあります。
例えば、うなる、歯を見せる、かみつこうとする、引っかこうとするなどの行動です。
自分の身を守ろうとして、このような行動につながる場合があります。
特に診察や検査の際は身体に触れられるため、緊張がさらに高まり、飼い主さんに対しても普段とは異なる反応を示すことがあります。
攻撃的な様子が見られたときは、無理に抱き上げたり押さえつけたりせず、犬や猫が落ち着ける距離を保つことが大切です。
過去の受診時に攻撃的な行動が見られた場合は、あらかじめ動物病院へ伝えておくとよいでしょう。
震えたり動けなくなる

動物病院に到着すると、身体が小刻みに震えたり、その場から動かなくなったりする犬や猫もいます。
特に、キャリーバッグの奥から出てこない、飼い主さんから離れようとしない、診察台の上で身体を低くしたまま動かないなどの様子が見られる場合は、緊張している可能性があります。
ただし、震えや動けない状態が必ずしも恐怖によるものとは限りません。
体調不良や痛みなどによって似た様子が見られることもあります。
普段とは異なる状態が続いている場合や、動物病院へ向かう前から震えなどが見られる場合は、その様子を獣医師へ伝えましょう。
粗相をする
普段は決められた場所で排泄できる犬や猫でも、動物病院への移動中や待合室などで粗相をすることがあります。
慣れない環境で強い緊張を感じると、普段とは異なる場所で排尿や排便をする可能性があります。
粗相をした際に強く叱ると、犬や猫の不安がさらに高まる可能性があります。
落ち着いて片付け、必要に応じてスタッフさんへ声をかけましょう。
また、排泄の変化には体調不良が関係している場合もあります。
排尿や排便の回数、量、色などに気になる変化がある場合は、獣医師へ伝えることが大切です。
その場から逃げようとする
動物病院への恐怖や不安から、その場を離れようとする犬や猫もいます。
特に猫は、わずかな隙間から逃げようとする場合もあるため注意が必要です。
怖がっている犬や猫を無理に追いかけたり捕まえたりすると、さらに興奮する可能性があります。
受診時は犬にリードを装着し、猫はキャリーバッグに入れるなど、逃走を防げる状態で移動することが重要です。
動物病院に到着した後も、診察の順番が来るまで不用意にリードを外したり、キャリーバッグを開けたりしないようにしましょう。
犬や猫の動物病院受診のストレスを軽減する工夫や対処法

動物病院を怖がる犬や猫にとって、移動から受診が終わるまでの時間は負担になる場合があります。
ストレスを完全になくすことは難しいものの、待ち時間や周囲から受ける刺激を減らすなどの工夫によって、負担を抑えられる可能性があります。
ここでは、動物病院を受診する際に飼い主さんが取り入れやすい工夫や対処法を紹介します。
事前予約などで待ち時間を減らす
待合室で過ごす時間が長くなるほど、ほかの動物の鳴き声やにおい、人の出入りなどに触れる時間も長くなります。
周囲の刺激に敏感な犬や猫の場合、待っている間に緊張が高まることもあるでしょう。
予約制の動物病院であれば、事前に予約してから向かうことで待ち時間を減らせる可能性があります。
また、混雑しやすい時間帯を避けられるか、受付後に車内などで待機できるかについて、事前に確認しておくとよいでしょう。
待ち時間や周囲から受ける刺激を減らすことは、犬や猫の負担に配慮するための工夫の一つです。
お気に入りのおもちゃや毛布を持参する
慣れない動物病院には、犬や猫が普段の生活で接することのないにおいが存在します。
そのような環境に、日頃から使っている物を持ち込むことで、自宅のにおいを感じられる状態をつくれます。
毛布やタオルはキャリーバッグのなかに敷くなど、移動中から使用することもできます。
普段から使い慣れている物を活用し、できるだけ落ち着いて過ごせる環境を整えることがポイントです。
キャリーバッグを覆う

猫や小型犬をキャリーバッグで連れて行く場合は、タオルや布などでキャリーバッグを覆う方法があります。
待合室には人やほかの動物が出入りするため、キャリーバッグの中から周囲が見えることで緊張する犬や猫もいます。
バッグを覆って視界を遮ることで、外から受ける刺激を減らせる可能性があります。
ただし、キャリーバッグ全体を隙間なく覆うと、内部の通気性が悪くなるおそれがあります。
通気口をふさがないように注意し、犬や猫の様子を確認しながら使用しましょう。
可能であればほかのペットと離れて待機する
ほかの犬や猫の姿や鳴き声、においなどが刺激となり、緊張が高まる場合があります。
特に、普段からほかの動物を苦手としている場合は、できるだけ距離を取って待つことが大切です。
待合室に十分なスペースがある場合は、ほかのペットから離れた場所を選びましょう。
犬と猫で待合スペースが分かれている動物病院では、それぞれ指定された場所を利用します。
待合室で距離を確保することが難しい場合は、受付で事情を伝え、車内や別の場所で待機できるか確認する方法もあります。
ほかの動物との距離を確保することで、周囲から受ける刺激を少なくできる可能性があります。
飼い主自身もリラックスして接するように心がける
愛犬や愛猫が動物病院を怖がっていると、飼い主さんも不安になったり、早く落ち着かせようと焦ったりすることがあるでしょう。
しかし、慌てて何度も声をかけたり、必要以上に身体を触ったりすると、犬や猫が落ち着きにくくなる場合があります。
受診時は犬や猫の様子を確認しながら、普段と大きく変わらない態度で接するよう心がけましょう。
飼い主さんが落ち着いて接することを意識し、犬や猫の様子に合わせて対応しましょう。
犬や猫が動物病院を怖がらないための対策

犬や猫が動物病院に感じる不安を軽減するためには、受診当日だけでなく、普段から準備しておくことも大切です。
動物病院へ行くことや移動に必要な道具に少しずつ慣れさせることで、受診時の負担を抑えられる可能性があります。
ここでは、日頃から取り入れられる対策を紹介します。
病院に行くことに慣れさせる
動物病院へ行く機会が体調不良のときだけだと、犬や猫が病院への移動と不快な経験を結びつける場合があります。
健康診断や予防接種など、必要に応じて動物病院を利用する機会をつくることも、病院の環境に触れる経験につながります。
ただし、無理に動物病院へ連れて行く回数を増やせばよいわけではありません。
犬や猫の性格や怖がり方には個体差があるため、強い恐怖を示す場合は獣医師へ相談しながら対応しましょう。
犬や猫の様子に合わせて少しずつ慣らすことが大切です。
クレートやキャリーバッグに慣れておく
クレートやキャリーバッグを受診するときだけ使用していると、それらを見ただけで動物病院へ連れて行かれると察し、逃げたり隠れたりする場合があります。
普段から室内の犬や猫が過ごす場所に置き、自由に出入りできる状態にしておく方法があります。
なかに普段使用している毛布を敷いたり、おやつやお気に入りのおもちゃを入れたりして、落ち着いて過ごせる場所として慣れておきましょう。
最初から無理に中へ入れたり、長時間扉を閉めたりする必要はありません。
自分から近づく、においを嗅ぐ、中へ入るなど、犬や猫のペースに合わせて段階的に慣らします。
また、キャリーバッグは身体の大きさに合った物を選ぶことも大切です。
受診当日に初めて使用するのではなく、普段から触れる機会をつくっておきましょう。
病院が終わったらご褒美を与える

受診が終わった後に、犬や猫が喜ぶことを取り入れる方法もあります。
例えば、普段食べ慣れているおやつを与える、お気に入りのおもちゃで遊ぶ、落ち着ける場所でゆっくり過ごさせるなどが挙げられます。
ただし、体調や検査の内容によっては、受診後すぐに食べ物を与えないほうがよい場合もあります。
食事やおやつを与えてよいか判断に迷う場合は、獣医師へ確認しましょう。
犬や猫が動物病院で受診する際のマナー

動物病院には、さまざまな性格や体調の犬や猫が訪れます。
なかには、ほかの動物に強い不安を感じる犬や猫もいるため、待合室では周囲への配慮が必要です。
また、普段は落ち着いている犬や猫でも、慣れない環境によって予想外の行動を取る可能性があります。
ここでは、動物病院を受診する際に意識したいマナーを紹介します。
待合室で待つ際のマナー
待合室では、犬にはリードを装着し、猫はキャリーバッグに入れた状態で待つことが大切です。
犬のリードは長く伸ばさず、飼い主さんの近くで過ごせる長さに調整しましょう。
ほかの犬や猫が気になって近づこうとする場合もありますが、飼い主さん同士の了承なく接触させることは避けます。
動物病院に来ている犬や猫は、体調不良や緊張などによって普段と異なる反応を示す可能性があります。
ほかの動物との距離を保ち、不用意に接触させないよう配慮しましょう。
また、猫のキャリーバッグも待合室でむやみに開けないことが大切です。
驚いた猫が飛び出す可能性があるため、診察の順番が来るまでは扉を閉めておきます。
愛犬や愛猫がほかの動物を強く怖がる場合や、待合室で落ち着いて過ごすことが難しい場合は、スタッフさんへ相談しましょう。
排泄に関するマナー
移動中や待ち時間に排泄する可能性を考え、必要な物を準備して受診しましょう。
犬の場合は、可能であれば来院前に排泄を済ませておくとよいでしょう。
ただし、尿や便の検査を予定している場合は、事前に動物病院へ確認することが大切です。
猫の場合は、緊張によってキャリーバッグのなかで排泄する可能性もあります。
ペットシーツを敷いておくほか、交換用のシーツやビニール袋などを用意しておくと対応しやすいです。
院内で排泄してしまった場合はそのままにせず、スタッフさんへ伝えるようにしましょう。
排泄物を適切に処理することは、ほかの犬や猫、飼い主さんが利用する環境への配慮にもつながります。
動物病院によって利用時のルールが異なる場合もあるため、院内の案内やスタッフさんの指示を確認して受診しましょう。
まとめ

犬や猫が動物病院を怖がる背景には、慣れない環境への不安や過去の経験、ほかの動物から受ける刺激などが関係している場合があります。
震える、動けなくなる、逃げようとするなどの様子が見られたら、犬や猫の状態に合わせた対応を心がけましょう。
受診時は、待ち時間を減らしたり、キャリーバッグを覆ったりすることで、周囲から受ける刺激を少なくできる可能性があります。また、普段からキャリーバッグに慣れさせておくことも対策の一つです。
怖がっている犬や猫を無理に慣れさせようとせず、それぞれのペースに合わせることが大切です。
受診時の不安や対応に困っている場合は、あらかじめ動物病院へ相談しておくとよいでしょう。
参考文献

