犬や猫に寄生するノミは、ペットのかゆみや皮膚炎の原因になるだけでなく、人にも被害を及ぼすことがあります。ノミに刺されると赤い発疹や強いかゆみが出て、まれに感染症を媒介することもあります。室内飼育でも予防を怠れば、窓や衣服から侵入したノミが繁殖しやすく、被害は拡大します。この記事では、ノミの影響や感染経路、予防と対処法を、動物病院の視点から解説します。
動物病院でのノミ感染

まずはノミの基礎知識と感染経路、人やペットの症状と危険性を整理していきましょう。
- ノミに感染しやすいペットの特徴はありますか?
- ノミが寄生しやすいのは、屋外に出る機会が多いペットで、草むらや公園、河川敷を散歩する習慣がある場合です。被毛が長く密で被毛の手入れの頻度が低い、子犬・子猫や高齢で体調が不安定、予防薬を未使用・投与間隔が空いている、多頭飼育やワクチンや駆虫が済んでいない動物との接触がある、といった条件もリスクを高めます。室内飼育でも衣服や来客を介して持ち込まれることがあります。湿度が高い季節、カーペットや寝具が多く掃除が行き届かない環境、庭に野良猫や野生動物が出入りする場合も要注意です。ノミ取り首輪や、首の後ろに垂らすタイプの予防薬(スポット型)の中断、体重変化で用量が合わない場合も効果が不十分になり、寄生のリスクが高まります。
- 動物病院でペットにノミがうつることはありますか?
- 動物病院でほかの動物からノミがうつる可能性はゼロではありませんが、多くの病院は清掃・消毒や動線分離を徹底し、院内での蔓延はまれです。動物病院の来院直後にノミに感染していたペットから落ちた成虫や卵が床に残っていた場合に、まれに寄生のきっかけになります。飼い主さんは通院時にキャリーを閉じて床に置かず、距離を取り、清潔な敷物を用意することでリスクを下げられます。診察後に被毛の手入れを行い、定期的な予防薬を続けることも有効です。多頭飼いの場合は、共有ブラシを使用しないことや待合での膝抱っこも避け、必要に応じて受付で隔離席があれば希望しましょう。混雑時は待機場所の指示に従いましょう。
- 動物病院でノミがうつった場合、すぐに行うべきことは何ですか?
- 帰宅したら玄関など限られた場所でペットを落ち着かせ、ノミ取りコームで全身をとかして成虫や卵を除去します。捕まえたノミは潰さず、石けん水や熱湯に沈めて処分し、使用したタオルは60℃以上のお湯で10分以上かけて洗濯・高温乾燥しましょう。キャリーや敷物はお湯で洗濯・高温乾燥し、床やカーペットは掃除機をかけ、集めたごみは密封して廃棄します。また、同居動物にも予防薬を同日に投与し、数日間は皮膚の赤みや掻きこわしを確認してください。ノミの感染を発見したらすぐに動物病院に行き、駆除剤を使用するようにしましょう。
- 自宅に帰ってからノミが広がらないようにする方法はありますか?
- 自宅に戻ったら、まずペットを玄関や洗面所など限られた場所でケアします。専用のノミ取りノミ取りコームで毛並みに沿って全身をとかし、成虫や卵を取り除きます。捕まえたノミは熱湯に沈めて処分し、櫛も消毒します。使用したタオルやキャリー内の敷物はただちに60℃のお湯で10分以上かけて洗濯し、高温乾燥で仕上げます。カーペットやソファなど隠れ場所になりやすい箇所に掃除機を重点的にかけたり、塩や殺虫剤を散布したり、バルサンなどのくん煙剤を使用するなどの対策を施しましょう。さらに、定期的な予防薬を続け、環境とペット双方から寄生を防ぎましょう。
- ほかのペットからノミがうつる可能性や、同居しているペットや人間への影響はありますか?
- ノミは動物同士でうつることがあります。同居ペットは症状がなくても寄生している場合があるため、同時に予防と駆除を行うのが基本です。人も刺されると発疹や強いかゆみが出て、まれに病原体を媒介することがあります。犬猫ではノミを誤食すると瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)に感染する例もあります。ノミは卵やさなぎが寝具やカーペットに残りやすく、再寄生の原因になります。帰宅後の掃除機や高温乾燥、ノミ駆除剤の散布やくん煙剤の使用、寝具の洗濯を継続し、共用ブラシは避け、病院の指示を仰いで飼育環境の対策も並行して行いましょう。
動物病院で受けられるノミの治療方法
動物病院では、ペットの状態に合わせたノミ治療が行われます。ここでは主な治療内容や薬の種類、併発症への対応について紹介します。
- ペットにノミがいた場合、動物病院ではどのような治療を受けられますか?
- 動物病院では、寄生状況と体調を確認したうえで、首の後ろに垂らすタイプの薬(スポット型)や内服薬など適切な駆除薬を処方します。皮膚炎があれば洗浄や外用薬、必要に応じて消炎薬や抗菌薬でかゆみや二次感染を抑えます。体重、年齢、妊娠・授乳、基礎疾患や併用薬を考慮して用量を設定し、投与後は入浴やシャンプーの可否、再投与間隔の指示を受けます。環境対策として卵・幼虫・さなぎの発育サイクルに配慮し、掃除機や高温乾燥、ノミ駆除剤・くん煙剤の活用についても指導を受けます。再診で効果や副反応を評価し、同居動物の同時投薬も並行します。
- ノミ駆除薬にはどのような種類があるのか教えてください
- ノミ駆除薬にはいくつかの種類があり、ペットの体調や生活環境に合わせて選ばれます。一般的なのは首筋に滴下するスポットタイプで、持続効果があり投与も簡単です。錠剤やチュアブルなどの経口薬は全身に作用し、シャンプーや水浴びの影響を受けにくい利点があります。シャンプーやスプレー、パウダーは即効性があり、部分的な駆除や補助的使用に適しています。近年は成長を抑える成分を含む製剤も登場し、卵や幼虫への繁殖抑制に有効です。どの薬も体重や年齢に応じた用量を守り、獣医師の指導を受けることが大切です。
- ノミアレルギー性皮膚炎の治療はどのように行いますか?
- ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミの唾液に含まれる成分への過敏反応で皮膚が赤くなり、激しいかゆみや脱毛が起こります。治療の基本は原因となるノミの駆除で、スポット薬や内服薬を用い、同居動物も含めて徹底的に寄生を断ちます。皮膚の炎症が強い場合には、抗炎症薬や抗ヒスタミン薬、外用薬でかゆみや赤みを抑えます。二次感染を防ぐため抗菌薬や薬用シャンプーを併用することもあります。さらに生活環境の中にいる卵や幼虫の除去も重要で、掃除や高温乾燥を徹底することが再発防止の鍵になります。
ノミ感染の予防方法

ここでは、日常ケアと環境対策、予防薬の継続を柱に、ノミ感染を防ぐための実践ポイントと注意点をわかりやすく解説します。
- 動物病院受診時にノミ感染を防ぐ方法はありますか?
- 受診前に予防薬を継続し、被毛をノミ取りコームで梳いてノミの有無を確認します。キャリーやリード、ブランケットは洗濯し、通院時は扉を閉めたまま持ち運びます。床への直置きや膝抱っこは避け、待合ではほかの動物と距離を取ることが大切です。寄生の疑いがあれば受付で申告し、隔離席や別室待機を依頼しましょう。保険証や過去の明細、皮膚の写真や動画を持参すると評価が速まります。帰宅後は掃除機と高温乾燥、触れていた物品を洗浄し再寄生を抑えることも重要です。キャリーに目の細いカバーをかけたり、子犬・子猫には保温性のあるお気に入りのブランケットを持参するのも有効です。
- 家庭でできるノミの予防対策を教えてください
- 家庭での予防は環境とペットの両輪が基本です。寝具や毛布、カーペットは週1回以上60℃以上のお湯で10分以上かけて洗濯し高温乾燥しましょう。晴れた日であれば天日干しも有効です。紫外線にはノミの卵や幼虫を駆除する効果もあります。床や隙間には定期的に掃除機をかけ、紙パックは密封して廃棄します。散歩時はノミがつかないように、ヒノキチオールや天然ハーブから作られた忌避剤をペットの体に噴霧することもおすすめです。帰宅後は身体を梳いて異物やノミの付着を確認し、捕獲したノミは熱湯処理。ソファや車内も重点清掃が必要です。同居動物は同時に予防薬を使用し、体重に合った用量を守ります。庭は草を短く保ち、野良猫や野生動物を寄せない工夫も有効です。庭でノミに感染した場合は、スミチオン乳剤などの屋外用のノミ駆除剤を散布することも考慮し、来客や外出後の持ち込みにも注意しましょう。洗濯前に粘着ローラーで卵を除去するとさらに効果的です。季節を問わず通年で管理することが再寄生の防止に役立ちます。
- 定期的なノミ予防薬の使用は効果的ですか?
- 定期的なノミ予防薬の継続は、発生前の段階で寄生を抑え、再寄生の連鎖を断つうえで大変効果的です。成虫だけでなく卵や幼虫のサイクルを意識し、体重に合う用量と間隔を守って投与します。同居動物には同日に実施し、入浴やシャンプーの可否、再投与時期、副反応の有無を事前に確認しておきましょう。室内飼育でも持ち込みは起こりうるため、通年管理を基本に寝具の洗濯や高温乾燥、掃除機がけを並行します。庭は草を短く保ち、外出後や来客時の持ち込みにも注意します。投与日はカレンダーやアプリで記録しておくと忘れにくく、服用忘れの防止につながります。
編集部まとめ
ノミはペットだけでなく人にも影響します。対策は、動物病院での駆除薬や定期チェックと、家庭での清掃や被毛の手入れを組み合わせることです。症状に気付いたら早めに相談し、同居動物も同日対応を徹底。寝具やカーペットは高温乾燥し、掃除機ごみは密封して処分します。外出時の持ち込みにも注意し、キャリーや毛布を清潔に保つことも大切です。庭の草丈管理や野良猫の侵入防止を行い、卵から成虫まで各段階に配慮することが再発防止につながります。