ペットを家族に迎えた後は、予防接種や定期的な健康管理が必要です。
なかでも健康診断は、ペットの健康を守るうえで欠かせない取り組みです。しかしペット保険に加入している方のなかには、健康診断の費用が補償対象になるのか気になる方も少なくないでしょう。
この記事では、動物病院での健康診断とペット保険の関係について解説します。
健康診断の具体的な内容や費用相場、事前準備についても紹介しているので、これからペットの健康診断を検討している方は参考となれば幸いです。
ペットの健康診断とは

ペットは人間と異なり、体調不良を言葉で訴えることができません。
また本能的に体調の悪さを隠す傾向があるため、飼い主が異変に気付いたときには病気が進行していることも少なくないでしょう。
そのため定期的な健康診断を受けることで、病気の早期発見や早期治療につなげることが重要です。
ここではペットの健康診断の意義や、何歳から受けるべきかについて解説します。
健康診断の意義
ペットの健康診断には複数の重要な意義があります。
第一に、病気の早期発見と早期治療につながる点です。
ペットは本能的に体調不良を隠す傾向があるため、飼い主が異変に気付いたときには病気がかなり進行していることも珍しくありません。
定期的な健康診断により、外見からはわかりにくい内臓の異常や数値の変化を発見できます。
第二に、ペットの健康時のデータを記録できる点が挙げられます。血液検査の数値や体重、心音など、健康なときの基準値を把握しておくことで異常が出た際の比較が可能になるでしょう。
個体によって正常値が異なるため、愛犬や愛猫の基準を知っておくことはとても重要です。
何歳から健康診断を受けるべきか
ペットの健康診断を始める時期には明確な決まりはないものの、一般的な目安があります。
最初の健康診断は生後6ヶ月頃に受けるのが望ましいでしょう。
この時期は心臓などに先天的な病気を持っている場合もあるため、早期発見によって治療を開始できる可能性があります。
その後の健康診断の頻度については、年齢に応じて調整を行うことが望ましいでしょう。
若くて元気な時期は年1回の健康診断を基本とします。シニア期の開始時期は小、中型犬で7歳頃、大型犬で5歳頃、猫で8歳頃からです。
この時期以降は病気のリスクが高まるため、半年に1回以上の健康診断を心がけるとよいでしょう。
健康診断は保険で受けられる?

ペット保険に加入している方にとって、健康診断の費用が補償対象になるかどうかは気になる点でしょう。
動物病院での健康診断には費用がかかるため、保険が適用されれば経済的な負担を軽減できます。
しかし、ペット保険の補償内容は病気やケガの治療費が中心であり、予防医療については対象外となるケースが一般的です。
ここでは健康診断とペット保険の関係について詳しく解説し、補償の対象となるものについても触れていきます。
健康診断はペット保険で受けられるか
結論から述べると、基本的に健康診断の費用はペット保険の補償対象外です。
ペット保険は、月々の保険料を支払うことで将来ペットが病気やケガをした際の治療費を補償するものです。
健康なペットが病気になっていないかを確認する健康診断は治療ではないため、補償の対象に含まれません。
ただし、健康診断で病気が見つかった場合の対応は異なります。
健康診断そのものの費用は補償されませんが、健康診断で異常が発見され追加で実施する検査や治療の費用については、ペット保険の補償対象となるケースがほとんどです。
また、一部の保険会社では、健康診断に関連する特典やサービスを設けていることがあります。加入している保険会社の内容を一度確認しておくとよいそうです。
ペット保険で補償の対象になるもの
ペット保険では、基本的に病気やケガに伴う治療費が補償の対象として補償されます。
通院時の診療費や薬の処方代、入院費、手術費用などが含まれるのが一般的です。また、治療のために必要と判断された検査費用も補償の対象です。
一方で、補償対象外となるものも明確に定められています。
健康診断のほか、予防接種やワクチン接種、去勢手術などは基本的に補償の対象外となります。
これらは予防や健康維持を目的としたものにあたるためです。
また、ペット保険に加入する前から発症していた病気も補償外となるため、健康なうちに契約しておくことが大切です。
動物病院で受けられる健康診断の内容

動物病院で行われる健康診断では、さまざまな検査が実施されます。
基本的な内容は、問診や身体検査、便検査などです。
より詳しいコースでは、レントゲン検査や超音波検査が含まれることもあります。
これらを組み合わせることで、外見からは判断しにくい体の異常を早期に発見し、ペットの健康状態を総合的に把握することが可能です。
ここでは、一般的な健康診断に含まれる主な検査項目を紹介します。
問診
問診は健康診断で特に重要な項目の一つです。
ペットは言葉を話すことができないため、飼い主が日常生活で気付いた些細な変化が重要な情報源です。
獣医師は飼い主から、ペットの元気や食欲などの一般状態はもちろん、皮膚、眼、耳、鼻、消化器系、呼吸器系、神経系などあらゆる事柄について聞き取りを行います。
問診では、食事量、飲水量の変化、排泄物の色や臭い、回数の変化、睡眠時間の変化などについて確認されます。
日頃から気になる点があればメモや動画を準備しておくと、獣医師に伝えやすくなるでしょう。
身体計測
身体計測では、体重測定や体温測定が行われます。
体重測定は健康状態を把握するうえでとても重要な項目です。
痩せすぎや太りすぎをチェックするだけでなく、前回の健康診断と比較して体重の変化を確認します。
ペットの場合、健康的な生活をしていれば体重が減ることはあまりないため、体重の減少は病気のサインの可能性があります。
体温測定は発熱の有無を確認するために実施され、感染症や炎症などの指標です。
視診・触診

視診、触診、聴診は、獣医師が直接ペットの体を観察し、異常の有無を確かめるための検査です。
視診では、肥満や脱水、リンパ節の腫れ、黄疸、充血などを確認し、全身の状態を総合的に評価します。
触診では、体に手を当ててしこりや腫れの有無を調べ、腹部に触れて内臓の状態を把握する検査です。
聴診では、心拍や心雑音、不整脈、呼吸の状態などを丁寧に確認し、全体のバランスを判断します。
さらに腹部の音を聴くことで、腸の働きが正常かどうかを判断できる仕組みです。
尿検査・便検査
尿検査は、糖尿病、腎臓病、尿路疾患、尿結石症などの異常を発見するために実施されます。
尿の色、濁り、pH、比重、タンパク質や糖の有無、血液の混入などを調べることで、泌尿器系の病気やホルモン疾患を早期に発見することが可能です。
尿検査のために、健康診断当日の朝に出た新鮮な尿を持参することが推奨されます。
便検査は、寄生虫の有無、腸内細菌のバランス、血便の有無などを確認する検査です。
特に外で暮らしている犬や猫、ペットショップやブリーダーから迎えたばかりのペットの場合、寄生虫に感染している可能性があるため重要です。
健康診断当日の朝に出た新鮮な便を持参するとよいでしょう。
血液検査
血液検査は、ペットの健康状態を詳しく把握するうえでとても重要な検査です。
前肢の静脈からシリンジ(注射器)を使って血液を採取し、その成分の分析を行うことで多くの情報が得られます。
血液検査には、主に血液一般検査(血球検査)と血液化学検査の2種類があり、それぞれ異なる目的を持っています。
血液一般検査では、赤血球、白血球、血小板などの数値を調べ、貧血の有無、炎症の程度、免疫機能の状態などを確認が可能です。
一方、血液化学検査では、血液中の代謝物質の濃度などをもとに肝臓、腎臓、すい臓など内臓の働きを推測します。
加えて、肝機能や腎機能の異常、脂質代謝や血糖値の異常なども見つけられる点が特徴です。
ペットの状態に応じて、甲状腺ホルモン検査や膵炎マーカーの測定を追加で行う場合もあります。
レントゲン検査・超音波検査
レントゲン検査は、X線を使って体の内部を画像化する検査です。
胸部のレントゲン検査では心臓の大きさ、形、肺の状態を確認でき、腹部のレントゲン検査では内臓の位置、大きさ、異物の有無などを調べることができます。
超音波検査(エコー検査)は、音波を使って体の内部を観察する検査です。レントゲン検査では見えにくい軟部組織の詳細な観察が可能で、特に腹部臓器の評価に優れています。
肝臓、腎臓、脾臓、膀胱などの臓器の大きさや形、内部構造の異常を確認できます。これらの画像検査は、より詳しい健康診断コースに含まれることが多く、シニア期のペットや特定の疾患が疑われる場合に特に有用です。
動物病院で受ける健康診断の費用相場

動物病院での健康診断費用は、検査内容や病院の規模によって大きく異なります。
日本獣医師会の調査によると、中央値は14,021円(税込)で、一般的な価格帯は5,000円(税込)から30,000円(税込)ほどとされています。
ペット医療は公的保険制度の対象外であり、自由診療として扱われるため、病院ごとに料金設定が異なるのが実情です。
健康診断を受ける際には、事前に検査項目や費用の詳細を確認しておくとよいそうです。
動物病院で健康診断を受けるための事前準備

当日に慌てないよう、あらかじめ必要な準備を整えておくようにします。まず予約制のため、事前に電話やWebサイトで予約を取りましょう。
検査内容によっては絶食の指示があり、当日の朝ごはんを抜いて通院するよう求められます。
尿検査や便検査を受ける場合は、当日の朝に出た新鮮な尿や便を持参しましょう。予約時に注意事項を確認しておくとよいそうです。
動物病院の健康診断受診の流れ

動物病院での健康診断は、一般的に次のような流れで進みます。まず予約を取り、当日は問診票の記入からスタートします。
続いて、獣医師による身体検査が行われ、選択したコースに応じて各種の検査を受ける形です。
検査内容によっては、ペットを半日ほど預ける場合もあり、結果の説明は当日または後日に行われます。
ここからは、それぞれのステップを順を追って解説していきます。
予約
健康診断を受ける際は、あらかじめ動物病院に予約を入れておくことが大切です。
電話やWebサイト、動物病院によっては専用アプリから予約が可能です。予約の際には、希望する健康診断のコース内容や検査項目について相談しましょう。
ペットの年齢や健康状態、気になる症状などを伝えることで、獣医師から適切なコースを提案してもらえます。予約時には健康診断当日の持ち物や注意事項についても確認しましょう。
絶食が必要な場合や尿、便の持参が必要な場合など、事前に把握しておくべき情報がいくつかあります。
多くの動物病院では、健康診断に2時間から半日ほどかかるため、朝に預けて夕方に迎えに行くスタイルが一般的です。
問診と診察

健康診断当日は、まず受付で問診票の記入を行います。
問診票には、ペットの日常の様子や気になる症状、食事内容、排泄の状態などを記入する形式です。
その後、獣医師や動物看護師が内容を確認し、飼い主から直接話を聞いて状況を把握します。
また、事前に準備しておいたメモや動画があれば提示しましょう。問診が終わると、獣医師による検査が始まります。
視診では目や耳、口の中、皮膚の状態などを観察し、触診では体に触れてしこりや異常の有無を確認します。
聴診では心音や呼吸音、腸の動きをチェックし、体重や体温の測定も行われる仕組みです。
これらの基本的な診察を通して、獣医師はペットの全体的な健康状態を把握することを目指しています。
計測や検査
検査後は、選択したコースに応じてさらに詳しい検査が行われることが少なくないそうです。
尿検査や便検査では、持参したサンプルを分析し、血液検査では前肢の静脈から採血を行ったうえで血球検査や生化学検査を実施します。
レントゲン検査では胸部や腹部のX線を撮影し、超音波検査では腹部の臓器や心臓の状態を詳しく確認する流れです。
検査の内容によっては、ペットを半日ほど預かることが少なくないでしょう。検査中はペットがストレスを感じないよう、動物病院が適切に対応してくれます。
すべての検査が終了したら、飼い主に連絡が入り、ペットを迎えに行くことができます。
検査結果の一部は当日に説明される場合もありますが、血液検査や詳しい分析が必要な項目については後日の説明となることが一般的です。
結果説明

健康診断の結果は、検査内容によって当日または後日に説明されます。
血液検査、尿検査、便検査など、詳しい分析が必要な項目については、通常1週間ほどで結果が出ることが少なくないそうです。
結果の伝え方は動物病院によって異なり、再度通院して獣医師から直接説明を受ける場合や、郵送で結果表が届くケースもあります。
説明の際には、各検査項目の数値や画像を見ながら、獣医師が丁寧に解説してくれる流れです。
異常が見つからなかった場合も、ペットの健康な状態を示す大切なデータとして記録に残ります。
もし異常が確認された場合は、追加検査の実施、治療の要否、経過観察の可否などについて、今後の方針を獣医師と相談します。
わからない点や不安な点があれば、遠慮せずに質問することが大切です。
まとめ

動物病院での健康診断について解説しました。健康診断の費用そのものはペット保険の補償対象外ですが、健康診断で発見された病気の治療費については補償を受けられます。
ペットは言葉で体調不良を訴えることができず、本能的に弱みを隠す傾向があるため、定期的な健康診断による早期発見、早期治療がとても重要です。
健康診断の内容は、問診、身体検査、血液検査、尿検査、便検査、画像検査など多岐にわたります。費用相場は5,000円(税込)から30,000円(税込)ほどで、中央値は14,000円(税込)ほどです。
生後6ヶ月頃から健康診断を開始し、若い時期は年1回、シニア期に入ったら年2回以上の頻度で受けることが推奨されています。
健康なときのデータを記録しておくことで、将来異常が出た際の比較基準として役立ちます。
大切な家族のペットと少しでも長く健康に過ごすために、定期的な健康診断とペット保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献
