「傷ついている鳩を見かけたらどうしたらよいのかわからない」という方は少なくありません。鳥インフルエンザが流行している時期は、人間に感染しないかも気になることでしょう。
基本的に、鳩は動物病院では診察できないとされています。ワクチン接種をしていない野鳥の場合、どのような病原菌を保有しているかわかりません。場合によっては、人間が感染する病原菌を保有している可能性もあります。
本記事では、動物病院で鳩が診察できない理由や対処法について詳しく解説します。
傷ついた鳩を見かけたときに焦らず対処できるように、本記事が参考になれば幸いです。
鳩の飼育について
- 鳩のような野鳥は放鳥まで飼育してもよいでしょうか?
- 基本的に鳩のような野鳥は飼育できません。
たとえけがをした鳩やヒナを見つけても保護をしてはいけないことが、法律で定められています。野生のヒナの場合は特に、人間が保護をすることで親に見放され野生復帰できなくなる恐れがあるため、安易な行動は控えましょう。また、鳩の糞や羽毛は、感染症を引き起こすウイルスや病原菌を運ぶとされています。鳩による主な感染症は、以下のとおりです。- クリプトコックス症
- 鳥インフルエンザ
クリプトコックス症の原因であるクリプトコックス属真菌は、鳩だけではなく猫を媒介としても感染する場合があり、珍しい菌ではありません。例えば風で舞い上がった乾燥した鳩の糞が誤って人間のお口に入ると、経口感染を引き起こします。感染後は主に肺のなかで増殖しますが、健康な大人が感染するケースは少ないとされています。ただし、免疫力が低下している方は感染リスクが高く、重症化しやすいため注意が必要です。鳥インフルエンザは人間に感染することはあまりないとされています。
しかし、過去に鳥から人間に感染したケースが報告されたことがあるため、油断は禁物です。鳥インフルエンザは、A型インフルエンザウイルスが原因の感染症です。感染力が強く、鶏・アヒル・七面鳥など家禽が感染することが少なくありません。感染した家禽が殺処分となったニュースを見る機会もあるのではないでしょうか。野鳥は発症することが少ないとされていますが、鳩に近づかないことで感染を防ぐことができます。
- 鳩を飼うには許可が必要ですか?
- 野生の鳩を許可なく飼うことはできません。鳥獣保護管理法(鳥獣の保護および狩猟の適正化に関する法律)により、野鳥の捕獲・殺傷・飼育は基本的に禁止されています。万が一違反すると、1年以下の懲役あるいは1,000,000円以下の罰金を課されます。鳩ではなく、鳩の卵についても同様です。卵を勝手に処分したり、孵化させたりすることも禁じられているため、注意しましょう。鳩を飼いたい方は、以下の方法があります。
- ペットショップで購入する
- 都道府県知事・市町村長に飼育許可を申請する
飼育許可の申請をしても必ずしも許可されるわけではありません。野生の鳩は寄生虫やウイルスなど病原菌を保有している可能性があります。人間やペットなどに悪影響を及ぼさないように、ルールが決められています。飼育許可が出る例外は、以下のとおりです。
- 学術研究目的
- 生活環境調査
- 生態系に関わる被害防止目的
上記のように飼育許可が出るのは愛玩目的ではないため、期限付きの飼育となります。鳩を飼いたい場合は、ペットショップで購入することがよいでしょう。
動物病院で鳩は診察できない理由
- 動物病院で鳩を診察できない理由を教えてください。
- 野生の鳩は、ウイルスや寄生虫などの病原菌を保有している可能性が考えられます。ほかの動物や鳥への感染対策として、基本的には診察ができない動物病院が少なくありません。
また、もともと鳥の診療に対応できる動物病院は限られています。けがや病気の鳩を連絡せずに直接動物病院へ持ち込むことは止めましょう。まずは、都道府県や市町村などの行政機関へ連絡をすることが必要です。連絡し相談した結果治療が必要な場合は、傷病鳥獣指定獣医師の動物病院で治療を行うことになります。
しかし、野生の鳩は飼育することができません。治療後は獣医師の指示に従うことが重要です。基本的には野生に放鳥することになるでしょう。
- 鳥専門動物病院に事前連絡すれば診てもらえますか?
- 事前に連絡しても鳥専門動物病院で対応できないことが少なくありません。動物病院に直接持ち込むことで、ほかの鳥に病原菌をまき散らす恐れがあります。まずは、都道府県や市町村などの行政機関へ連絡するか、獣医師会傷病野生鳥獣指定病院へ相談するほうがよいでしょう。
- ペットとして飼っている場合は診察してもらえますか?
- ペットの鳩の場合は、動物病院で診察可能です。しかし、対応できる動物が限られている動物病院が少なくありません。動物病院に受診する前に、ペットの鳩が診療・治療可能かを確認することが重要です。
けがや病気の鳩を見つけたときの対処法
- けがや病気の鳩を見つけたときの注意点や対処法を教えてください
- けがや病気の鳩を見かけても、すぐに保護せずにそのまま様子を見ましょう。もともと厳しい自然環境のなかで生きている野鳥とペットの鳥では住む世界が異なります。
野鳥を保護する行為が、野鳥にストレスを与え衰弱させるような悪影響を与える恐れがあります。たとえ窓にぶつかって動けなくなる野鳥を目撃しても、ただ脳震盪を起こしているだけという可能性が高いでしょう。落ち着いたら飛び立つケースがあるため、慌てずにまずは様子を見ましょう。
- けがや病気の鳩を見つけた場合はどこに連絡すべきですか?
- けがや病気の鳩を見つけた場合は、都道府県や市町村役場に連絡し、指示を仰ぐことが必要です。万が一死んでいる鳩を見つけた場合も同様です。連絡するまでは、生きていても死んでいても素手で直接触らないようにしましょう。担当部署例は、以下のとおりです。
- 東京都:環境局自然環境部計画課鳥獣保護管理担当
- 千葉県:地域振興事務所あるいは自然保護課
- 神奈川県:環境農政局農政部自然環境保全課
地方自治体によって名称・担当部署が異なるため、都道府県や市町村役場に問い合わせることがよいでしょう。ただし東京都や神奈川県では、原則として鳩の受け入れをしていません。鳩はカラスと同様に、人間が気軽にえさを与えたりゴミ捨て場の生ごみを食べたりするため、人間の暮らしやほかの野生動物に悪影響を与える存在とされています。
保護施設にはけがや病気で保護された野生動物であふれていることも、野生の鳩を受け入れられない理由の1つです。野生動物は、必ず保護したり治療したりすべき対象ではありません。けがや病気の鳩を見つけても、人間が手を出さないことが重要です。
- 足輪が付いている場合はどうしたらよいですか?
- 足輪がついている鳩は、野鳥ではなくレース鳩(伝書鳩)です。レース鳩(伝書鳩)は保護し、関係機関に連絡しましょう。一羽ずつ異なる記号が足環に付けられているため、連絡すれば所有者に引き取ってもらうことができます。連絡先は、以下のとおりです。
- 足輪の記号がJPNから始まっている場合:日本ハトレース協会迷い鳩照会専用ダイヤル(0120-810118)
- 足輪の記号がNIPPONから始まっている場合:日本伝書鳩協会(03-3801-2789)
記号によって連絡先が異なるため、注意しましょう。もし保護した鳩にけがも病気もなくが元気であれば、放すと所有者のもとに帰るかもしれません。しかし保護したらひとまず、足輪の文字・記号・番号などを上記連絡先に伝え、指示を仰いだ方がよいでしょう。
編集部まとめ
けがや病気の鳩を見つけたら、保護して動物病院へ連れて行こうと考える方は少なくありません。しかし基本的に野鳥は、許可なく保護したり飼育したりしてはいけないと、鳥獣保護管理法で決められています。
けがや病気の鳩を見かけても基本的には手を出さずに見守ることが重要です。判断に迷った場合は鳩には触らずに、都道府県や市町村役場で相談し指示を仰ぎましょう。
野生の鳩はウイルスや寄生虫など病原菌を保有している可能性があります。人間へすぐに感染するわけではありませんが、できる限り近くに寄らないことが大切です。
ペットの鳩やレース鳩であれば動物病院で治療が可能です。ただし動物病院ならどこでも受け入れてくれるわけではありません。診療対象動物に鳩が含まれているか、事前に動物病院へ確認しましょう。
参考文献