定期的な動物病院の受診は、ペットの健康維持に欠かせません。健康維持は、病気になってから動物病院を受診するのではなく、若くて元気なうちから定期的に健康診断を受けることが大切です。この記事では、定期検診の重要性、検診の内容、費用の目安について詳しく解説します。ペットが健康で幸せに過ごせるよう、適切なタイミングでの受診を心がけましょう。
動物病院で定期検診を受ける重要性
ペットの健康を守るには、定期的な健康チェックが欠かせません。定期検診は、見逃しがちな身体の不調を早期に発見して、予防するための重要な手段です。特に、病歴のあるペットや、高齢のペットは定期検診が大切です。
検診では予防接種の確認や寄生虫の検査も行われます。重大な感染症にかからないよう、定期的に動物病院での診察を受けましょう。
以下に、定期検診の必要性を詳しくご説明します。
定期検診が必要な理由
ペットは言葉で体調を伝えられないため、飼い主は普段の行動をよく観察して健康状態をチェックするしかありません。しかし、元気に見えても外見からはわからない健康問題が発生している可能性があります。
そもそも動物は、不調があっても外部から悟られないようにふるまうという本能が備わっています。弱みを見せて敵から狙われないようにする防衛本能のひとつです。そのため、体調不良が外見にまで現れていると、病状はかなり進行しているケースも少なくありません。
また、高齢になると身体機能が低下してくるため、病気のサインがわかりにくくなります。高齢のペットは人間と同じように、肝臓や腎臓、心臓の病気、がん、糖尿病などを罹病してしまいます。これらの病気は、初期段階では自覚症状がほとんど見られないため、飼い主でも気付くのが難しいとされています。
病気が進行してからでは、治療費用も高額になります。病気の初期症状を見逃さないようにするには、定期的な検診が大切です。
定期検診を早くから受けるメリット
若い頃から定期検診を受けることで、成長段階に応じた健康管理が可能になります。
心拍数や体重、血液検査や尿検査の数値も、健康状態のデータを見ながら経過を追うことができるので、異常があれば早期に気付き適切な処置が受けられます。病気が重症化する前に治療ができるのもメリットです。
例えば、重症化した場合は薬物療法や手術が必要になる病気でも、早期発見したことにより食事療法や生活習慣の改善で対処できるケースもあります。
肥満気味や血糖値が高めなどの傾向をあらかじめ把握しておくことで、食事内容や運動の頻度などの生活習慣を見直すことができ、将来の病気のリスクを減少させることができます。獣医師との信頼関係を築くこともできるため、いざというときの対応もスムーズです。
動物病院で定期検診を受ける際のポイント
動物病院での定期検診を効果的に受けるためには、犬・猫の年齢や種類に応じた適切な頻度や内容が大切です。
年齢別の検診頻度
年齢別の検診頻度は以下の基準を目安にするとよいでしょう。
- 年齢が若いうちは年に1回を目安に検診
- 中高年期では半年に1回以上の検診が推奨
犬や猫は、人間の約4倍ものスピードで年を取るため、想像よりも早く老化していきます。そのため、犬・猫の年齢に応じた検診頻度を守ることが重要です。
犬や猫は、7歳を超えるとシニア期として扱われることが一般的で、高齢になるとより綿密な健康管理が必要です。
高齢化に伴い、内臓の機能や免疫力が低下しやすくなります。血液検査や尿検査で腎臓や肝臓の状態を確認するほか、ホルモン検査や超音波検査などの詳細な検査を受けることも検討しましょう。
高齢の犬や猫は、心臓病や関節疾患、視力や聴力の低下、肥満や歯周病、認知機能の変化にも注意が必要です。検診時には、普段の生活や様子について獣医師に詳しく説明し、生活習慣全般についてアドバイスを受けましょう。必要な食事内容や運動の頻度なども年齢に応じて変化していきます。年齢に合わせて、適切なケアを施すことが犬・猫の健康維持につながります。
特定の犬種や猫種に必要な検診
特定の犬種や猫種でかかりやすい病気があります。
遺伝的な問題が原因とされており、病気の種類は腎臓病や心臓病、皮膚炎、糖尿病などさまざまです。飼っている犬種や猫種の特有の病気や状態に注意して、検診を行うことが大切です。
例えば、心臓が弱い種類の犬・猫は、心電図やエコー検査の定期的な実施がおすすめです。キャバリアやシーズー、チワワ、ポメラニアン、ペキニーズ、パピヨンなどの小型犬は僧帽弁閉鎖不全症の好発犬種であることがわかっています。
猫の場合はアメリカンショートヘア、ラグドール、メインクーン、ノルウェージャンフォレストキャット、ブリティッシュショートヘア、スコティッシュフォールドなどに肥大型心筋症が好発します。
このように、犬種や猫種によって心配な病気がある場合は、遺伝子検査をしてこれらの病気の素因があるかどうかを調べることができます。犬・猫によって推奨される検査内容も変わってきますので、検査項目については獣医師に相談しましょう。
飼い主が事前に準備しておくべきこと
受診前には犬・猫の行動や食欲、排泄の様子などをメモしておくと診察がスムーズに進みます。足を引きずって歩く、下痢をしている、便の様子がおかしいなど、気になる症状があるときは、動画や画像に残しておきましょう。
また、過去の病歴やワクチン接種歴もまとめておくのもよいでしょう。より正確な診断を行う手助けになります。レントゲンや超音波検査を予定しているときには朝ごはんを食べない方がよいので、事前に獣医師の指示に従い準備をしておきましょう。
検診の待ち時間に犬・猫がストレスを感じないよう、キャリーバッグやおもちゃなど、普段から慣れ親しんでいるものを持参するのもおすすめです。
動物病院の定期検診の内容
動物病院の定期検診は主に以下の内容が行われます。
- 問診
- 体重測定
- 心拍数の検査
- 体温チェック
- 全身の触診
- 血液検査
- 尿・便検査
- X線や超音波を使った画像診断
一般的な健康チェックから精密な検査まで行われます。
犬・猫の体温と心拍数の正常値を把握することは飼い主にとっても重要です。いつもより体温が高い、心拍数が高いなどの異常に気が付きやすくなり、病気の早期発見の可能性が高まります。
血液検査には、甲状腺や副腎などの状態がわかるホルモン検査などがあり、項目を追加するごとに費用がかかります。年齢や遺伝的な問題が気になる項目をピックアップして検査してもらうことがおすすめです。
尿・便検査では、尿結石や細菌の有無、腎臓の機能、消化機能や寄生虫の有無が確認できます。画像診断では、心臓や肝臓などの内臓の大きさ、形、位置が正常かどうか、先天的な骨格異常や関節の炎症、脊椎の異常、腫瘍の有無などを詳しく確認できます。特に、超音波検査ではレントゲン検査よりも細かく内臓の状態や動きを検査できるので、高齢の場合やほかの項目で異常が認められた場合には、ぜひ受けておきましょう。
動物病院の定期検診にかかる費用
定期検診は、1年に1~2回の頻度で受けるため、費用の負担が大きいと感じる方もいるかもしれません。しかし、犬・猫の病気を早期に発見できれば、治療の負担が小さく済み、結果として治療費が抑えられることもあります。ここでは、定期検診費用の目安や、費用を抑えるための工夫についてご紹介します。
定期検診の費用の目安
定期検診の費用は、病院や検査項目数によって変動します
- 一般的に定期検診は、5,000円~30,000万円程度
- 血液検査や尿・便検査は、1,000円~3,000円程度
- レントゲンやエコーは、3,000円~5,000円程程度
眼科検診や心臓検診などのオプション検査を用意している病院もあります。気になる症状がある場合は獣医師と相談しましょう。オプションの検査は、検診に追加することで、単体で受けるよりもお得になる場合があります
血液検査とレントゲン検査など決まった内容をお得なセット価格で提供している動物病院もありますので、獣医師と相談しながら必要な検査を選択するようにしましょう。
ペット保険の活用で費用負担を軽減
ペット保険は毎月一定の額を支払うことで、治療費の一部をカバーできるものです。ただし、ペット保険はケガや病気により必要となった治療費にのみ適用されることがほとんどです。症状を伴わずに実施する健康診断などの検査や、疾病予防のための検査や投薬はペット保険の補償対象にならない点には注意しましょう。
しかし、定期検診で異常が見つかり、治療や手術が必要になった場合にはペット保険が役に立ちます。
2024年の犬と猫の年間診療費の統計データを見ると、年間の診療費は犬・猫の年齢が上がるにつれて上昇し、14歳をピークに1年間で平均24万9502円の診療費がかかるという統計があります。
生涯の平均治療費は大型犬の場合は約97万円、猫は約50万円かかる計算です。治療内容によってはこれ以上の費用がかかることも想定されるため、突然の支出に不安があったり、犬・猫に十分な治療を受けさせたいと考える場合は、保険の適用範囲や補償内容を確認し、適切な保険への加入を検討しましょう。
費用を抑えるための工夫
定期検診の費用を抑えるためには、複数の動物病院で見積もりを取ったり、健康診断のセット割引を利用するなどの方法があります。定期検診の費用は、動物病院によって異なります。特に都心部の動物病院では料金が高く設定されていることがあり、地方では費用が抑えられる場合もあります。
複数の動物病院で見積もりを取り、費用と検査内容を検討しましょう。動物病院によっては、検査項目をセット価格で提供している場合や、予防接種と同時に受ければ割引が適用されることもあります。
せっかく検診を受けるのだからと、あれもこれも検査項目を追加するとその分費用も高くなってしまいます。特に若い犬・猫の場合は、そこまで多くの検査が必要ない場合もあります。獣医師と相談し、犬・猫の年齢や犬種、病歴などを考慮したうえで必要な検査項目を選びましょう。
かかりつけの動物病院を見つけておくことが大切!
信頼できるかかりつけの動物病院を見つけておくことは、ペットの健康管理において重要です。普段の健康状態を把握してもらうことで、ささいなことでも相談がしやすく、緊急時にも迅速な対応が可能になります。
また、普段からかかりつけの病院で定期検診を受けていればペットも病院に慣れていきます。ペットが嫌がらずに動物病院に行くことができれば、受診の負担やストレスが少なく済み、飼い主とペットの双方にとってのメリットとなります。
かかりつけの動物病院は、できるだけ自宅から近い方がよいでしょう。まずはインターネットで近隣の動物病院を調べ、病院の診療方針や評価、金額などを確認するのがおすすめです。また、これから長く付き合っていくかかりつけの動物病院を決めるときには、獣医師との相性も大切です。実際に病院を訪れ、病院の雰囲気や対応を確認するのもよいでしょう。
まとめ
ペットの健康管理は飼い主の大切な役目であり、定期的な動物病院の受診は犬・猫の健康維持に必須の項目です。適切な診察とケアを受けることで、病気の早期発見と予防が可能になります。費用については、複数の動物病院で合い見積もりを取って比較をしてみましょう。また、検診をセットで受けることで割引が適用される場合もあります。ペットが健康で幸せに過ごせるよう、ぜひ定期検診を欠かさず受けましょう。