愛犬や愛猫が動物病院への入院が必要になると、飼い主として不安を感じることは当然です。
入院中の過ごし方や注意点を事前に理解しておくことで、ペットにとって快適な入院生活を送ることができます。
本記事では、入院が必要なケースや準備すべきこと、費用目安まで詳しく解説します。ペットの健康を守るために必要な知識を身につけ、安心感を持って入院に臨めるよう準備を進めましょう。
動物病院への入院が必要なケース

動物病院への入院が必要となる状況は、大きく分けて経過観察が必要な場合と、継続的な治療が必要な場合があります。
入院の目的を正確に理解することで、適切な準備や心構えができるでしょう。
獣医師は動物の状態を総合的に見て、入院の必要性を判断します。飼い主としては獣医師の説明をよく聞き、疑問点があれば遠慮なく質問することが大切です。
動物病院への入院が必要な場合
全身麻酔後の経過観察が入院の代表的な理由で、麻酔後は神経症状や出血などのリスクがあるので、継続的な観察が必要です。
麻酔薬の影響で体温調節機能が低下するため、体温管理も重要な観察項目です。また、持続的な点滴や酸素吸入が必要な状態では、通院での対応が困難なため入院管理が推奨されます。
重症例ではICU入院室での集中管理が必要になることもあり、24時間体制での観察と処置が行われます。
特別入院室では専用の医療機器を用いて、より高度なモニタリングが可能です。飼い主の都合による入院もありますが、ペットのストレスを考慮しましょう。
入院環境は動物にとって慣れない場所であり、精神的な負担がかかることを理解しておく必要があります。
動物病院で入院を必要とする主な手術

避妊手術や去勢手術では、全身麻酔後の経過観察のために入院が推奨される場合があります。
特にメスの避妊手術は開腹手術となるため、術後管理が重要です。オスの去勢手術は侵襲が少ないため、日帰りでの対応も可能ですが、動物の性格や体調によって入院が選択されます。
消化器系手術では胃切開後や腸閉塞の解除後に、適切な術後管理と回復を促すため入院が必要です。消化管の手術後は食事の再開タイミングが重要で、専門的な栄養管理が求められます。
整形外科手術として骨折の整復や椎間板ヘルニアの手術では、術後のケアとリハビリのため入院管理が必要です。手術後の安静期間と適切な疼痛管理により、回復の質が大きく変わります。
腫瘍摘出手術後は、術後の経過観察と感染症予防の観点から入院が推奨されることがあります。
腫瘍の種類や摘出範囲によって入院期間は違いますが、術後の状態を慎重に観察することで合併症を早期に発見できるでしょう。
動物病院に入院するときの注意点

入院をスムーズに進めるためには、事前の準備と動物病院との情報共有が欠かせません。
動物病院によって入院に関するルールや持ち物の規定が異なるため、事前に確認することをおすすめします。
入院前の準備を丁寧に行うことで、ペットのストレスを軽減し、治療に専念できる環境を整えることができます。以下の点に注意して準備を進めましょう。
持参するもの
診察券とペット保険証は持参しましょう。ペット保険証があれば、退院時の精算がスムーズです。
普段使用しているフードを持参すると、食べ慣れた食事で安心感を持てるでしょう。入院中の食欲不振は珍しくないため、普段のフードであれば食べてくれる可能性が高まります。
ワクチン証明書や健康診断書など、健康に関する書類も可能な限り準備しましょう。過去の病歴や投薬歴が記載された資料があれば、より適切な治療計画を立てることができます。
家のにおいがついたタオルやクッションは、慣れない環境でもリラックスできる効果があります。飼い主のにおいがすることで、ペットの不安を和らげることができるでしょう。
お気に入りのおもちゃを持参すると、ケージ内での退屈なストレスを軽減できる可能性があります。
ただし、衛生管理の観点から動物病院によっては制限されている場合もあるため、事前確認が必要です。猫の場合は使い慣れたトイレ砂を持参することで、排泄のストレスを軽減できることもあります。
食事について

入院中の食事は病状やライフステージに合わせた療法食が提供されます。心臓病や腎臓病などの慢性疾患がある場合、専用の療法食が給餌されることがあります。
病気に影響がない限り、普段食べ慣れているフードを持参して与えてもらうことも可能です。食べ慣れたフードであれば、入院中も食欲を維持しやすいでしょう。
通常は1日2回の給餌ですが、病状によって回数や内容が調整されます。子犬や子猫の場合は成長期であるため、給餌回数を増やす必要があり、偏食がある動物も入院環境では与えられたフードを食べることが多くあります。
自宅とは異なる環境でおやつがもらえないため、メインのフードを食べざるを得ない状況になるためです。
術後の栄養管理では、動物の状態に応じて少量から開始し、段階的に給餌量を増やしていく方法が推奨されています。
急激に給餌量を増やすと消化器系に負担をかけるため、慎重な管理が必要です。食欲不振が続く場合は、強制給餌や経鼻カテーテルなどの方法で栄養補給が行われることもあります。
面会について

面会が可能な動物病院はありますが、事前連絡と動物病院指定の時間帯での訪問が必要です。
面会時間は診療時間と重ならないよう、午前や午後の特定の時間帯に設定されていることが一般的です。ペットの状態や手術直後など、治療に差し支える場合は面会を制限されることがあります。
全身状態が不安定な時期は、面会による興奮が病状を悪化させる可能性があるためです。
興奮しすぎるペットの場合、直接の面会ではなく天井カメラを通したモニター面会で対応する動物病院もあります。
このシステムにより、ペットを興奮させずに様子を確認できます。面会時はほかの入院動物への配慮も必要です。
大きな声を出したり、ほかのケージに近づいたりしないよう注意しましょう。頻繁な面会がかえってストレスになる場合もあるため、獣医師と相談しながら適切な頻度を決めましょう。
面会後に飼い主が帰ると、再び寂しさを感じて鳴き続けることもあります。ペットの性格を考慮した面会計画が大切です。
生活習慣の共有

普段の食事内容やアレルギーの有無は、診察や治療をスムーズに進めるため詳しく伝えましょう。
食物アレルギーがある場合、入院中の食事選択に大きく影響します。以前の病歴や服用中の薬についても、飲み合わせの確認のため報告しましょう。
複数の薬を同時に服用させると、相互作用により効果が減弱したり副作用が出たりする可能性があります。特に気になる症状や行動があれば、事前に記録しておくと診察時に共有が可能です。
いつから症状が始まったのか、どのような状況で症状が悪化するのかなど、具体的な情報が診断の手がかりです。
性格や行動の特徴を共有することで、スタッフがペットに適した接し方ができます。臆病な性格であれば優しく声をかけながら処置を行い、攻撃的な性格であれば安全に配慮した対応が取られます。
排泄の習慣やトイレの好みを伝え、使い慣れた砂を持参する許可が得られれば、ストレス軽減につながるでしょう。
犬の場合も、散歩時にしか排泄しない習慣があれば、その旨を伝えることで適切な対応が可能です。
動物病院の入院にかかる費用の目安

入院費用は動物のサイズや病状、入院期間によって大きく変動します。
小型犬や猫では1日あたり約4,000円(税込)、中型犬では4,500円(税込)前後、大型犬では6,000円(税込)程度が一般的な目安です。
これらは基本的な入院管理費であり、診察料や治療費、薬剤費、検査費用などは別途必要です。
血液検査やレントゲン検査、超音波検査などを実施すると、1回あたり5,000円〜10,000円(税込)程度の費用が加算されます。
手術が必要な場合、小型・中型犬では約200,000円(税込)前後、大型犬では約300,000円(税込)前後が目安です。
手術内容によっては500,000円(税込)を超えることもあり、飼い主にとって大きな負担になるでしょう。ICU入院や特別なケアが必要な場合は、さらに費用が高額です。
ICUでは常時モニタリングや高度な医療機器を使用するため、通常の入院費の2〜3倍の費用がかかることもあります。
動物病院では自由診療のため、動物病院ごとに料金設定が異なる点に注意が必要です。事前に見積もりを依頼し、予算の範囲内で治療方針を決めることをおすすめします。
ペット保険に加入している場合は、補償内容を確認して請求手続きを進めましょう。
動物病院で入院して手術を受ける場合の準備

手術を伴う入院では、事前の準備と術後の管理が回復に大きく影響します。手術は動物にとって大きなストレスとなるため、飼い主が冷静に対応することが重要です。
不安な気持ちは動物にも伝わるため、落ち着いて対応することを心がけ、以下のポイントを押さえて準備しましょう。
手術の予約と手続き
予定手術は平日のみの受付となる動物病院が多く、日程調整は余裕を持って行いましょう。緊急手術以外は、数週間から1ヶ月程度先の予約となることもあります。
手術前には獣医師との十分な相談が必要で、手術内容やリスク、費用について詳しく説明を受けましょう。
インフォームドコンセントとして、手術の必要性や方法、予後について書面で説明を受けてから同意書にサインします。
入院に必要なワクチン接種が済んでいない場合、感染症予防の観点から入院を断られることがあるでしょう。
入院施設では多くの動物が共同生活を送るため、感染症の蔓延を防ぐ必要があるのです。犬ではパルボウイルスとジステンパーの2種類のワクチン接種が求められます。
猫では3種混合ワクチンの接種が推奨されます。ワクチン未接種の場合は隔離入院室での対応になることもあるため、事前確認が重要です。
隔離入院室では別料金が発生することもあるため、費用面でも確認が必要です。手術予約時には、持病や現在服用中の薬についても詳しく伝えましょう。
術前準備

術前の絶飲食は重要な準備の一つです。手術当日の深夜0時以降は食事を与えず、当日朝6時以降は水も控えましょう。
これは誤嚥性肺炎を防ぐためであり、麻酔により消化管機能が低下すると、胃の内容物が逆流して気管や肺に入るリスクが高まります。
誤嚥性肺炎は重篤な合併症となるため、絶食の指示は守る必要があり、飼育状況により絶食が困難な場合は事前に獣医師へ相談してしましょう。
多頭飼育の場合は、手術を受ける動物だけを別室に隔離するなどの工夫が必要です。
排尿排便はできるだけ済ませてから動物病院へ行き、散歩は軽めに留めましょう。
術前の過度な運動は体力を消耗させるため避けましょう。術前検査として血液検査やレントゲン検査が実施され、全身状態の把握が行われます。
血液検査では肝臓や腎臓の機能、貧血の有無などを確認し、麻酔のリスクを評価します。高齢動物や持病がある場合は、心電図検査や超音波検査などの追加検査が必要になることもあるでしょう。
検査結果によっては手術延期や治療方針の変更が検討されます。
術後の経過
術後は、3〜6時間後から少量の給餌を開始することが推奨されています。
早期の栄養給与により術後の回復が促進されることが研究で示されており、初日は1日必要エネルギー量の1/4〜1/3を1日3〜4回に分けて与えます。
2日目は1/2〜2/3、3日目は3/4〜フルカロリーへと段階的に増やしましょう。
この段階的な給餌により、消化器系への負担を抑えながら栄養補給が可能です。術後の栄養管理は回復に重要な役割を果たし、適切な栄養給与により早期回復が期待できるでしょう。
栄養不足の状態では創傷治癒が遅れ、感染症のリスクも高まります。入院期間は手術内容や動物の状態によって違いますが、体重やボディコンディションスコアの変化をチェックしながら管理されます。
体重が急激に減少している場合は、栄養管理方法の見直しが必要です。退院時期は獣医師が総合的に判断します。
創部の治癒状態、食欲の回復、排泄の正常化などを総合的に評価して退院が決定され、退院時には自宅でのケア方法や注意点について詳しい説明を受けましょう。
動物病院から退院後の過ごし方のポイント

退院後の自宅でのケアは、完全な回復のために欠かせません。術部の舐めを防ぐためエリザベスカラーの装着が必要な場合があります。
入院中は大人しくしていても、自宅に戻ると興奮して傷口を舐めてしまうためです。傷口を舐めることで感染症や縫合部の離開が起こり、再手術が必要になることもあります。
安静が必要な期間は激しい運動を避け、獣医師の指示に従った生活を心がけましょう。散歩は短時間にとどめ、ほかの犬との接触は避けます。
処方された薬は指示通りに与え、途中で中止しないことが重要です。抗生剤を途中で中止すると、耐性菌が発生するリスクがあります。
痛み止めも指示通りに与えることで、ペットの苦痛を軽減できます。症状の変化があれば速やかに動物病院へ連絡し、適切な対応を受けましょう。
食欲不振が続く、嘔吐や下痢がある、元気がないなどの症状は、合併症のサインかもしれません。退院後も定期的な診察で経過を確認し、完全な回復を目指しましょう。
抜糸が必要な場合は、指定された日時に通院しましょう。傷の治癒状態を確認し、問題がなければ抜糸が行われます。
自宅での生活環境も見直しが必要です。段差の上り下りが負担になる場合は、ペット用スロープを設置するなどの工夫をしましょう。
まとめ

動物病院への入院は、ペットの命を守り健康を取り戻すために必要な医療行為です。入院が必要なケースを理解し、持ち物や生活習慣を事前に共有することで、ペットのストレスを軽減できます。
費用面での不安は事前の見積もり確認で解消し、術前準備では絶飲食を徹底しましょう。術後の栄養管理は回復の鍵を握る重要な要素であり、段階的な給餌により早期回復が期待できます。
退院後も適切なケアを継続することで、完全な回復を目指すことができます。不安な点は遠慮なく獣医師やスタッフに相談し、信頼関係を築きながら治療を進めていきましょう。
ペットの健康を守るためには、飼い主と獣医療チームの連携が不可欠です。
参考文献
