ペットの体調が悪そうなとき、すぐに動物病院に連れていくべきか、安静にして経過観察するべきか悩んだことはありませんか。インターネットで調べてみると「動物病院は行かない方がいい」という声も寄せられていますが、ペットの健康を守るためには、正しい判断が求められます。こちらの記事では、動物病院に行かない方がいいといわれている理由をお伝えしたうえで、連れていくべきケースと注意点なども解説します。
動物病院に行かない方がいいといわれる理由

「動物病院は行かない方がいい」といわれている理由には、いくつかの背景があります。もっとも大きな懸念点として、待合室での待機時間や診察での触診・治療がペットにとって大きなストレスになることが挙げられます。特に飼い主さん以外との交流が少ない猫や小動物は、環境の変化に敏感なため、動物病院に行くことで体調不良を悪化させるケースもあります。このような背景から「動物病院に行かずに安静にしたほうが安全」との声が寄せられているのが現状です。
動物病院へ連れていくべきケース

「動物病院は行かない方がいい」との声もありますが、実際には病気や怪我の早期発見・早期治療のためには飼い主さんに適切な判断が求められます。ここでは、動物病院へ連れていくべきケースを解説します。
食欲不振が続く
食欲と健康は強い結びつきがあるため、もしも食欲が極端に落ちている状態が続く場合は体調不良の可能性があります。普段とは異なるフードをあげたらよく食べて、嘔吐や下痢をしないのであれば、1〜2日ほど様子をみてもいいでしょう。一方で、食欲不振の症状が見られて3日以上経っても、回復する兆候が見られなければ、何かしらの異変が起きている可能性があるため動物病院への受診を推奨します。
外傷や出血がある
外傷や出血を放置すると患部から感染症を引き起こす恐れがあります。外を歩くペットは、虫やほかの動物に噛まれたり小枝などで擦り傷を負ったりするため、こまめに身体を触って傷や出血の確認が必要です。特に噛まれたときは、軽症にみえても清潔な水で洗い流して出血があれば止血してください。傷口を放置すると、そこから雑菌やほかの動物の持っている細菌が侵入して化膿、感染症につながる恐れがあるからです。
出血が止まらない場合、応急処置が必要になるためすぐに動物病院を受診してください。出血が止まったとしても、感染症のリスクや関節や神経を痛めている可能性があるため、早めに動物病院を受診したほうが安心です。
呼吸を苦しそうにしている
呼吸が普段と違い、苦しそうにしているのであれば、何かしらの異常や病気の可能性があるため、原因を特定する検査が必要です。激しい運動や体温調整など生理現象の1つとして呼吸が乱れることもあるため、必ずしも動物病院への受診が必要になるわけではありません。
一方、おもちゃや人間の食べ物などを誤飲して食道に詰まると、吐こうとしたり、苦しがったりする様子が見られます。誤飲が疑われる場合は、すぐに動物病院を受診して異物を除去してもらいましょう。また、呼吸器や心臓に異常が発生して酸素をうまく取り込めなくなった場合、肺水腫や脱水を引き起こした場合にも呼吸が乱れます。病気の発見が遅れると命に関わるため、不自然な呼吸が続くようであれば速やかに獣医へ相談しましょう。
下痢や嘔吐が続いている
下痢や嘔吐は、誤飲、寄生虫感染、食中毒、ウイルス感染、深刻な病気が隠れている可能性があるため、原因の特定が必要です。猫の場合は、毛繕いをしたときに胃に溜まった毛玉を吐き出すことがよくあります。そのため、吐いているからといって必ずしも深刻な病気にかかっているとは限りません。毛玉による吐きグセを治すためには、毛玉ケアのフードやおやつをあげてみて経過観察をしてもよいでしょう。また、気温の変化で一時的にお腹がゆるくなり下痢をするペットもいます。
1日4回以上、3日以上連続で嘔吐や下痢が続いているのであれば、誤飲や病気の疑いがあるため動物病院への受診を検討しましょう。そのまま放置すると脱水症状による体調不良にもつながるため緊急性が高まります。頻度や連続日数のほかにも、嘔吐の中身に異物があるか、嘔吐物や便に血が混ざっているかどうかをみて受診を検討する方法もあります。
普段と異なる行動をしている
いつもは甘えん坊な子が極端に距離を取ったり、穏やかな子が攻撃的な行動を取ったりする場合は、痛みを感じている可能性があります。痛みや苦しみがあるとリラックスできないため、イライラしたり不安や恐怖を感じたりして防衛本能が強く現れます。ペットによって性格や飼い主さんとのコミュニケーション方法は、さまざまです。日々、ペットの様子を丁寧に観察すると小さな変化を見落とさずに異常を察知できるようになります。
普段と異なる行動に病気や怪我の可能性があれば、早めに動物病院を受診するべきです。今まで撫でられることが好きだったのに、少し触れただけで噛みつこうとするような攻撃性は、疾患を患っている疑いがあり緊急性が高いため、動物病院への受診を推奨します。
皮膚や毛並みに変化がある
体調の変化は行動以外に、皮膚や毛並みから気付ける場合があります。例えば、病気の可能性が懸念される皮膚症状の特徴は、以下のとおりです。
- 皮膚の赤み、黒ずみが目立つ
- ベタベタ、カサカサなど皮膚の状態が悪い
- フケが急激に増えた
- ブツブツがでている
- 脱毛
- 艶がなくなった
外を散歩するペットは、害虫や植物によって感染症、アレルギー反応をみせる場合があります。自然に治る場合もありますが、傷口から細菌や真菌が侵入すると重症化につながります。動物病院を受診すれば害虫の駆除や投薬で早期回復が可能です。早く治せば、かゆみや痛みから解放されて精神的なストレスを避けられるため安心です。
動物病院に連れていく際の注意点

動物病院を受診する際にはいくつかの共通したルールがあります。また、ペットが動物病院で過度なストレスを感じないためにも、飼い主さんとして事前に工夫する努力が必要です。ここでは、動物病院に連れて行く際の注意点を解説します。
首輪やリードにつないでおく
動物病院では、犬や猫、小動物(ウサギ、ハムスター、文鳥など)のようにさまざまな種類のペットたちが来院します。ペット同士でのトラブルを防ぐためにも、必ず首輪やリードにつないで、飼い主さんとして自分のペットを管理する義務があります。待合室では、好奇心や緊張からほかのペットに近づこうとしたり大きな声で吠えて威嚇したりすることもあるでしょう。
自分の飼っているペットが周りの空気に刺激されやすい性格をしているのであれば、あらかじめほかのペットとは適切な距離を取るように工夫するべきです。また、猫の場合は、暴れた隙に脱走する恐れもあるため、キャリーケースに入れていても首輪やリードは欠かせません。
全身が隠れるキャリーケースなどで落ち着かせる
猫や小動物のように家族以外との交流がほとんどないペットは、環境の変化に対して強いストレスを感じやすいです。特に動物病院の待合室は、薬品やほかのペットの匂いが混ざっているため、不安や恐怖を感じて身を隠そうとする傾向にあります。外が見えにくいタイプのキャリーケースを使用すると、身を隠しているという安心感を抱けます。外が見えるタイプのキャリーケースを使っている場合は、キャリーケースの上からブランケットやタオルを被せてあげるだけでも恐怖心を和らげる効果は十分あります。
匂いがついているおもちゃなどを用意する
キャリーケースのなかに普段から使用しているおもちゃやタオルなどを入れてあげると、自分の匂いに包まれるため安心できます。動物は、人間よりも遥かに嗅覚が優れているため、さまざまな匂いが充満している待合室や診療室はストレスの原因になりやすいです。そこで、自分の匂いのついているアイテムがあるだけで、不安や恐怖心を抱きやすいペットには効果的です。
また、ペットの匂いがついているアイテムのほかにも、飼い主さんが普段使っている服やハンカチなどを一緒に入れる方法も有効です。近くに大好きな飼い主さんがいる安心感を抱けるためストレスを軽減できます。
待ち時間や会計で車内に放置しない
動物病院に車で受診する飼い主さんもいますが、夏場・冬場などの季節を問わず、ペットの車内放置はリスクが高いため控えましょう。「お会計がすぐに終わるから」と車内で待ってもらおうとする飼い主さんもいます。しかし、車内温度は変動しやすく体調不良につながるおそれがあるためとても危険です。また、予防注射や治療をした場合は、少し目を離した隙にアナフィラキシーショックのような反応があっても気付かずに命を落としてしまうケースも懸念されます。
自宅で行いたい健康チェックのポイント

ペットと長く健康に暮らすためには、小さな変化に気付けるかどうかが重要な鍵となります。ここでは、自宅で行いたい健康チェックのポイントについて解説します。
皮膚の状態
皮膚の状態をみると、皮膚炎、外傷、脱毛、しこりなど小さな変化から病気や怪我の可能性に気づけることがあります。全身を触られるのが苦手なペットもいるため、ブラッシングや撫でるなどのコミュニケーションを取り入れることで、リラックスしてもらいつつ皮膚の状態を確認できます。
外を散歩するペットは、ノミやマダニなどの寄生虫がくっつきやすいため、帰ってきたときに全身チェックする習慣をつけましょう。また、メスのペットの場合、乳腺のしこりが乳腺腫瘍の初期症状のサインになる可能性があります。頻繁に皮膚の状態をチェックすることで、小さな変化を見落とすリスクを軽減できます。
耳が熱くなっていないか
理由もなく耳が熱くなっている場合、アレルギーや細菌の感染症が疑われます。犬や猫は、人間と同じ恒温動物のため、気温に変化があっても一定の体温を保てるように調整します。しかし、人間とは異なり毛で覆われている動物は、人間のように汗をかくことがむずかしく、毛細血管が集合している耳を使って温度調節をすることがあります。
耳が熱いからといって、必ずしも緊急性が高いとは限りません。運動後、睡眠中、部屋の気温による影響などで、体温が上昇すれば耳も熱くなります。食欲があって元気にしているのであれば、しばらく経ってから耳の熱を確認して、体調不良の可能性を判断しましょう。
呼吸は正常か
不自然な呼吸は、誤飲や病気が疑われます。運動した後や飼い主さんと遊んで興奮すると一時的に呼吸が速くなることがありますが、理由が明確であれば問題ありません。しかし、前触れもなく突然ヒューヒューと音を立てて呼吸困難のような様子がみられる場合、緊急性が高いです。
また、ゼーゼーと音を立てて喘息のような呼吸をしている場合、肺や気管支に重度のアレルギー疾患、炎症などが疑われます。日頃からペットと近い距離で接することで、呼吸の変化に気付きやすくなるでしょう。
排尿・排便に変わりはないか
尿や便に血液が混ざっていたり、いつもと違う臭いがしたりする場合は、体調不良や病気が疑われます。また、寄生虫に感染していると、便に寄生虫の死骸が混じり、目視で確認できることもあるため、発見したらすぐに動物病院を受診しましょう。定期検診の際には、その日に採取した便を持っていくと、顕微鏡を使って寄生虫の有無を確認してもらえます。
迷った場合はオンライン診療の活用も
オンライン診療とは、ペットのことで動物病院を受診するほどではないけれど獣医に少し聞いてみたいなどと悩んだときに相談できる窓口です。対応している動物病院やサービスによって、在籍している獣医の専門、対応時間、費用などが異なります。24時間365日対応しているオンライン診療もあるため、緊急時にも助けを求められて安心です。
デバイスとマイクとカメラが使用できれば、直接ペットの状態を見せながら診断してもらえるため、オンラインゆえの不安も少ないです。動物病院が苦手なペットを飼っているのであれば、まずはオンライン診療で相談をして受診するべきかアドバイスをもらってもよいでしょう。ただし、ぐったりしている、呼吸が苦しそうなど、緊急性の高い症状がある場合は、ためらわずに直接動物病院を受診してください。
まとめ

「動物病院は行かない方がいい」と受診をためらう飼い主さんがいる背景には、待合室や診察が環境の変化に敏感な猫、小動物にとって大きなストレスになりうることが挙げられます。
軽い下痢や一時的な食欲不振など、元気がある場合は1〜2日経過観察としても問題ない場合があります。ただし、症状が3日以上続く場合は、病気や怪我の可能性が高いため速やかに獣医師に相談することが重要です。また、動物病院を受診するべきか迷う際には、オンライン診療の利用も検討するとよいでしょう。※自己判断に頼りすぎないことを注意喚起してください、迷ったらできるだけ早めに相談することが重要です。