猫の鼻が黒い?黒くなる理由と対処方法、予防方法を解説

猫の鼻が黒い?黒くなる理由と対処方法、予防方法を解説

猫には、白や黒、グレー、三毛などさまざまな毛色があるように、鼻の色にも違いがあります。生まれつき鼻が黒い場合や模様のように入っている場合は個性のひとつといえるでしょう。しかし、今まではなかったのに急に鼻が黒くなる場合もあります。そのような場合、重大な病気が潜んでいるケースもあるので注意が必要です。猫の鼻が黒くなる原因にはどのようなものがあるのでしょうか。猫の鼻が黒くなる理由と対処方法、予防のポイントを解説します。

猫の鼻が黒い理由

猫の鼻が黒い理由

猫の鼻が黒くなる理由はさまざまです。主な要因と病気によって鼻が黒くなる可能性を解説します。

鼻が黒くなる主な要因

猫の鼻が黒くなる主な要因としては、ほくろやシミがあります。体が毛で覆われているため目立ちませんが、猫にも人間と同じようにほくろやシミができることがあります。特に鼻は粘膜部であるため、黒くなった部分が目に付きやすくなります。

ほくろは色素細胞母斑といい、メラミン細胞が変化したものが集まりできる良性の腫瘍です。シミは細胞がメラミン色素を生み出して発生するものです。太陽光を浴びた後や皮膚炎が治った後にできやすいのが特徴です。通常は皮膚が新しい細胞へとターンオーバーする際に剥がれますが、ターンオーバーがうまく行われなかったときにシミができます。皮膚を掻くとできやすくなるシミもあります。

ほくろやシミの場合は、一般的には猫の体への悪い影響はありませんが、ほくろによく似た症状が現れる病気もあります。黒い部分が変形したり大きくなったりした場合には、早めに動物病院を受診しましょう。 

鼻に汚れやかさぶたが付いて黒く見える場合もあります。猫は臭いを嗅ぐ習性があるため、土や泥、ゴミなどが鼻に付着してしまうことも少なくありません。鼻水と混ざってこびりついて取れなくなっているケースもあるでしょう。

付着物を取り除いてもまた付いてしまう場合は、カビが原因である可能性もあります。気になったとしても、あまり触りすぎないようにしましょう。

かさぶたの場合は自然に治ることがほとんどですが、時間がたってももとに戻らない場合や黒い部分が広がる場合には別の病気の可能性も考えられます。気になる点があれば、動物病院で検査をしてもらいましょう。

よくある病気と症状

鼻が黒い原因としてよくあるのが、皮膚糸状菌症です。糸状菌とはカビのことを指します。

カビが皮膚に感染すると鼻や耳、足の先に脱毛やフケ、かさぶたができます。皮膚糸状菌症の原因は、すでに病気に感染しているほかの動物との接触です。猫の免疫力が低下していると罹患しやすくなるといわれています。特に子猫や体調不良などで免疫力が下がっている場合には注意しましょう。

皮膚糸状菌症ではかゆみはほぼありませんが、細菌に二次感染してしまうとかゆみが発生し、搔いてしまうことで患部が広がる可能性もあります。皮膚糸状菌症は人間にも感染するため、飼い主との接触には注意しましょう。

虫刺されによるアレルギーの過敏症が原因で、鼻にかさぶたができることがあります。アレルギーはかさぶたのほかに脱毛症状も見られます。蚊やノミに刺されることでアレルギーが起きるので、夏場などは虫よけ対策をしっかり行いましょう。

重大な病気の可能性

猫の鼻が黒くなる重大な病気として、メラノーマがあります。メラノーマは悪性黒色腫といい、メラミン細胞に発生する悪性腫瘍のひとつです。一見、ほくろやシミのように見えますが、徐々に大きくなったりいびつに変形したりする特徴があります。

メラノーマは猫にはまれな病気ですが、発症した場合のほとんどが悪性です。悪性のメラノーマは進行すると、肺や肝臓などのほかの臓器へと転移してしまいます。大きくなると赤みが現れ、出血や潰瘍が起こります。鼻のほかに眼球や口腔内に発生することもある病期です。良性の場合はメラノサイトーマといい、ほかの臓器への転移はありません。

そのため、ほくろのような黒いものができていた場合は、状態に変化がないかどうかを継続的によく観察してください。

ほかの重大な病気としては、扁平上皮がんがあります。扁平上皮がんは、皮膚や粘膜にできるがんで、鼻にできることもあります。初期には脱毛やかさぶたを繰り返し、徐々に盛り上がり広がっていきます。進行すると鼻全体が盛り上がって顔が変形してしまいます。鼻が欠けてしまうケースもあるため、早急な対応が必要です。

原因は紫外線の影響との関連が指摘されています。そのため、白い毛色の外に出ている猫に発症するといわれており、10歳以上の老齢猫に好発します。

猫の鼻が黒くなった変化を見逃さないために

猫の鼻が黒くなった変化を見逃さないために

猫の鼻が黒くなった場合、ほくろやシミのように心配はいらないケースもありますが、なかには重大な病気が隠れていることもあります。どのようなポイントを見極めればよいのかを解説します。

 色や形状の変化を見極めるポイント

猫の鼻の黒い部分について、メラノーマなどの重大な病気である場合には、色や形状の変化が見られるのがポイントです。

メラノーマとほくろとの違いは、

  • きれいな円形ではない
  • 皮膚との境界がはっきりしていない
  • 徐々に大きくなる
  • いびつに盛り上がる
  • 赤み・出血・潰瘍が見られる

これらの違いがあります。

見た目の変化のほかにも、猫が鼻を気にする仕草をしている場合にも注意が必要です。脱毛や体調不良、普段と様子が違うなどの異変も見逃さないようにしてください。少しでも気になる点が見られたら、一度動物病院で検査を受けましょう。

健康状態を把握しておく

日頃から愛猫の健康状態を把握しておくことは、異変の早期発見につながります。普段からよくスキンシップを取る、毎日顔や体の様子を見る、食事やトイレの回数などの生活習慣を把握するなどしておくと、ちょっとした変化も見逃しにくくなるでしょう。

猫の生活習慣を記録しておくこともおすすめです。動物病院に行った際にも、問診で正確に応えられます。定期的に写真を撮っておけば見た目の変化に気付きやすくなります。

猫の鼻が黒い場合の対処方法

猫の鼻が黒い場合の対処方法

猫の鼻が黒い場合にはどうしたらよいのでしょうか。自宅でできる対処方法と、動物病院での治療について紹介します。

こまめに汚れやカビの除去

自宅でできる対処方法は、こまめに汚れやカビを除去するなど、清潔な環境を整えることです。汚れやカビは皮膚糸状菌症などの病気の原因にもなります。猫が暮らす環境を常に清潔に保つことを心がけましょう。

飼育中の猫が皮膚糸状菌症に感染した場合は、隔離をして部屋や家具などを消毒する必要があります。飼い主への感染を防ぐためにも、猫に触った後には必ず手を洗いましょう。

 なかなか取れない場合は動物病院へ

傷によるかさぶたなら自然に治ることがほとんどです。しかし、なかなか取れない場合には動物病院で相談しましょう。特に黒い部分に形状などの変化が見られる場合は動物病院を受診してください。

診断結果が皮膚糸状菌症であった場合は、抗真菌薬を服用したり軟膏を塗る治療が行われます。抗真菌薬入りのシャンプーで薬浴することもあるでしょう。

アレルギーでは症状を抑えるためのステロイド薬の投与による治療が行われます。

メラノーマの場合は、広範囲にわたって腫瘍部分を切除する手術が行われます。放射線治療や抗がん剤治療が併用されることもありますが、メラノーマの抗がん剤治療は確立していないため完治は難しいとされています。腫瘍が大きくなると切除が難しくなるため、早期治療が重要です。

扁平上皮がんの場合にも、腫瘍を切除する手術治療が行われます。放射線治療と組み合わせることもあり、早期治療で再発を抑えられるともいわれています。 

猫の鼻が黒くならないためにできる予防方法と日常のケア

猫の鼻が黒くならないためにできる予防方法と日常のケア

猫の鼻が黒くなるのを防ぐために、自宅でできる予防方法やケアについて紹介します。愛猫の健康のためにも、日頃から生活環境を整えることを心がけましょう。

 清潔を保つためのケア方法

顔に汚れが付いた場合でも、猫は毛づくろいをして自分で落とすことができます。自分で取れない汚れは飼い主が取ってあげましょう。鼻の辺りの汚れは、茶色く乾いた鼻くそが付くことがあります。これは涙が鼻へと流れて固まったものです。簡単に取れそうであれば、清潔なコットンか指で優しく拭き取ってください。なかなか取れない場合は無理やり擦らずに、動物病院で対処してもらいましょう。

室内飼いの猫は日常的にシャンプーは必要ありません。気になる場合は、ペット用の洗い流さないシャンプーとタオルを使って、マッサージをするように拭いてケアしてあげましょう。

カビや虫が原因の病気を防ぐためには、猫が生活する環境を清潔に保つことが大切です。猫自身のケアのほかにも、部屋やトイレ、寝床は常にきれいな状態にしておきましょう。虫よけ対策も忘れずに行ってください。

生活環境の改善を行う

猫の病気のなかには、皮膚糸状菌症のように免疫力の低下によってかかりやすくなるものもあります。免疫力は老化のほかにも、肥満やストレス、食事の内容など、生活習慣の影響もあります。健康的な生活をさせて免疫力を高められるように心がけましょう。

猫にとって快適な生活環境とはどのようなものでしょうか。健康的な環境づくりのポイントをいくつかご紹介します。

  • トイレは常に清潔にしておく
  • 日当たりがよく、くつろげげる場所を作る
  • 運動のできる高い場所を作る
  • 快適に過ごせる室温に設定
  • 同居動物との関係性に配慮
  • バランスの取れた食事内容にする

猫はきれい好きな生き物ですので、汚れたトイレでは用を足すのを嫌がることがあります。また、多頭飼いの場合はトイレを複数用意してあげてください。

部屋のなかでは、日当たりのよい場所や高い場所などに猫がくつろげるスペースを作ることも大切です。お気に入りのベッドやクッションなどを置いて、猫がストレスなく過ごせる場所を確保しましょう。爪とぎを置くのも大切です。猫は寝起きのストレッチやマーキングとして爪とぎを行います。

猫にストレスを感じさせない環境を作るには、同居動物との関係性や人の出入りにも気配りが必要です。物理的な環境以外にも、コミュニケーションの方法やストレスを感じる対象をできるだけ近づけないなど、行動面にも注意してあげるとよいでしょう。

猫が食べるフードは、栄養バランスが整ったものを選びましょう。年齢や体重に合ったもの、原材料の品質のよいもの、不要な添加物の入っていないものなど、それぞれの猫に適した質のよいフードを選びましょう。免疫力アップが期待できるフードやサプリも販売されていますので、取り入れてみるのもひとつの手です。

定期的な健康診断を受ける

定期的な健康診断を受けることは、愛猫の健康を守るうえでもとても大切です。症状として現れていなくても、健康診断をきっかけに病気が見つかることもあります。特に重い病気は、早期発見と早期治療が重要です。特に気になる点がなかったとしても、定期的に健康診断は受けるようにしましょう。

まとめ

猫の鼻が黒い理由としては、ほくろやシミのほか、汚れやかさぶたが付着していることが考えられます。よく見られる病気は皮膚糸状菌症やアレルギーですが、まれにメラノーマや扁平上皮がんなどの重大な病気にかかっている可能性もあります。黒い部分の形や大きさが変わっていたり赤みが出ていたりする場合には、早めに動物病院を受診しましょう。猫の健康のためには、日頃から様子をよく観察して異変に早く気付くことや、生活環境を清潔で快適に整えることが大切です。また、気になる点がなかったとしても、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。

参考文献