犬がくしゃみをするのは、単に鼻がムズムズしているだけとは限りません。可愛い仕草に見えるくしゃみですが、実はさまざまな原因が隠れている場合があります。
本記事では犬がくしゃみをする原因について以下の点を中心にご紹介します。
- 日常生活でみられる犬のくしゃみとは
- 病気が影響している犬のくしゃみとは
- 犬のくしゃみへの対処法
犬がくしゃみをする原因について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
日常生活でみられる犬のくしゃみ
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- 犬がくしゃみをするのはなぜですか?
- 犬がくしゃみをする理由は、鼻の中の刺激を取り除くためだけではありません。実はカーミングシグナルと呼ばれる行動の一つで、犬が自身や相手を落ち着かせるための方法としてくしゃみをすることがあります。
例えば、遊んでいる最中や好きな方や犬に出会ったとき、興奮やうれしさでくしゃみをすることがあります。これは、感情が高ぶりすぎた自身を落ち着かせるための行動と考えられています。犬は、こうしたくしゃみを通じて相手に「リラックスしてね」といったメッセージを送っている可能性もあるようです。
くしゃみ以外にも、カーミングシグナルとしてよく見られる行動には、あくび、口を少し開ける、視線をそらす、鼻を舐めるなどがあります。この行動は、犬がストレスや不安を感じているときや、友好的な関係を築きたいときに自然と行うものです。
犬のこうしたサインを理解し、受け止めることで、愛犬とよりよいコミュニケーションを取ることができるでしょう。
- どのような刺激があると犬はくしゃみをしますか?
- 犬がくしゃみをするのは、鼻への刺激に対する反応です。
例えば、犬は散歩中や新しい場所でにおいを嗅ぎながら情報収集をするため、ホコリや砂、小さな草の破片などを吸い込むことがよくあります。異物が鼻に入ると、体は反射的にくしゃみを起こし、それを排出しようとします。
このような場合のくしゃみは自然な防御反応であり、心配する必要はありません。
一方で、犬は嗅覚が敏感なため、強いにおいや刺激的な物質にも反応します。例えば、香水、たばこの煙、お香、殺虫剤、または香辛料などが原因となることがあります。これらの刺激は、人にとってはさほど強く感じなくても、犬にとっては負担となる場合があるため、使用を控えたり、犬から遠ざけたりすることが大切です。
また、自宅内で犬が頻繁にくしゃみをする場合、空気中のホコリや微粒子が原因となっている可能性もあります。空気清浄機を設置するなどして、環境を整えましょう。
- 犬の逆くしゃみとは何ですか?
- 逆くしゃみとは、犬が鼻腔から空気を勢いよく吸い込むことで起こる、一種の発作的な呼吸現象のことです。逆くしゃみの明確な原因はわかっていませんが、いつものくしゃみとは異なる動作で、鼻の奥に何らかの刺激が加わることが引き金になると考えられています。
小型犬や短頭種に多くみられ、トイ・プードルやチワワ、フレンチ・ブルドッグ、パグなどの犬種でよくみられます。
逆くしゃみが起きると、犬は突然「フガフガ」「ブーブー」といった音を立てながら、何度も鼻から空気を吸い込むような動作を見せます。この行動は息苦しそうに見えることもありますが、数秒から数十秒程度で自然におさまり、犬自身に大きな苦痛を伴うものではありません。
ただし、頻度があまりにも高い場合や、長引く場合は、呼吸器系に別の異常が隠れている可能性もあるため、動物病院への相談を検討しましょう。
病気が影響している犬のくしゃみ
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- 鼻炎やアレルギーが原因で犬がくしゃみをすることがありますか?
- 犬がくしゃみをする原因として、鼻炎やアレルギーが関係している場合があります。アレルギーが原因の場合、くしゃみとともに透明で粘り気の少ない鼻水が見られることが特徴です。
アレルギーを引き起こす要因としては、ハウスダストや植物の花粉が挙げられます。ハウスダストが原因の場合は、室内にいる限り一年中症状が現れる可能性があるようです。一方で、花粉が原因であれば、春先などの季節にくしゃみが増える傾向があります。
鼻炎が原因でくしゃみが出る場合は、鼻腔内で炎症が起こっている場合があり、ウイルスや細菌、真菌(カビ)の感染、アレルギー反応、異物の侵入、歯周病、腫瘍など、さまざまな要因で引き起こされます。
鼻炎が進行すると、目ヤニや涙の増加、粘り気の強い鼻水が見られることもあります。また、炎症が副鼻腔にまで広がると副鼻腔炎に発展し、治療が難しくなる可能性があるようです。
鼻炎やアレルギーによるくしゃみは、症状が軽い段階であれば抗生剤や消炎剤を用いた治療で改善することが多いようですが、原因により症状が慢性化することもあります。
- 歯周病が原因で犬がくしゃみをすることがありますか?
- 中高齢の犬では、歯周病が原因でくしゃみが出るケースがあります。上顎の犬歯は、鼻腔に近い位置に歯根があるため、歯周病が悪化すると炎症が鼻腔まで広がることがあります。
くしゃみに加えて、膿が混じった鼻水が出る、強い口臭がする、さらには歯や口腔内の痛みから食欲が落ちるといった症状が見られることもあります。
歯周病による炎症が進行すると、鼻腔に細菌が侵入し、粘膜を刺激するため、くしゃみが頻繁に起こるようになります。このような症状を放置しておくと、病状が悪化し、治療には全身麻酔を伴う歯石除去や抜歯が必要になる場合もあります。
- 犬が風邪をひいてくしゃみをすることがありますか?
- 犬にも風邪に似た症状を引き起こす感染症があり、その代表例が犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)です。この病気は、犬アデノウイルスや犬パラインフルエンザウイルスが主な原因となり、乾いた咳やくしゃみがよく見られる症状です。
ケンネルコフは、免疫力が未熟な子犬やワクチン接種が不十分な犬が感染しやすいとされ、ウイルス感染の後に細菌の二次感染が起こると、粘り気のある鼻水や食欲不振、元気の喪失といった症状が現れることもあります。病気が進行すると肺炎を引き起こし、幼い犬にとっては命に関わる可能性があります。
この感染症は伝染力が高いため、多くの犬が集まる場所(ドッグランやペットホテル、ドッグショーなど)での感染リスクが高まります。予防には定期的な混合ワクチン接種がおすすめですが、感染を防ぐだけでなく重症化を抑える役割も果たします。
- 犬の鼻に異物がある場合にくしゃみをすることがありますか?
- ホコリや砂などの小さな異物であれば、数回のくしゃみで簡単に排出されることが多いようですが、より大きな異物が詰まっている場合や、ポリープや腫瘍ができている場合は、くしゃみが長期間続くことがあります。
ポリープや腫瘍は、異物を排出しようとするくしゃみを引き起こすだけでなく、進行すると鼻からの出血や顔の一部の変形といった深刻な症状を招くこともあります。これらの腫瘍は、鼻腔内という見えにくい場所にできるため、発見が遅れるケースが少なくありません。
もし愛犬がくしゃみを繰り返し、ほかにも鼻血や鼻の形の変化、顔に異常が見られる場合は、早急に動物病院を受診することが大切です。
犬のくしゃみへの対処法
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- 犬のくしゃみが止まらない場合の対処法を教えてください
- 鼻に一時的な刺激が加わって反射的にくしゃみが出る場合、数日以上続くことはありません。
しかし、くしゃみが長期間にわたって続いたり、1日のなかで頻繁にくしゃみをする場合、または以下のような症状が併発している場合は、速やかに動物病院に相談することをおすすめします。
・咳が出ている
・粘り気のある鼻水が見られる
・鼻水に血が混じる
・鼻が詰まっているように見える
・食欲が低下している
・いびきが以前より大きくなっている
・呼吸が苦しそうな様子がある
これらの症状は、単なるくしゃみ以上の問題が潜んでいる場合があります。早めの対応が大切です。
- 歯周病が原因で犬がくしゃみをしている場合の治療法を教えてください
- 犬の歯周病治療の基本は全身麻酔をかけて行う手術です。以下に治療の流れや術後のケアなどを説明します。
【治療の流れ】
1.手術前の準備
手術前に血液検査やレントゲン検査を行い、麻酔に耐えられる健康状態かどうかを確認します。また、歯の状態や炎症の進行具合を詳しく診断します。
2.歯周病の処置
手術では、歯石を丁寧に除去して歯の表面を清潔にした後、ぐらついている歯や深刻な状態の歯を抜歯し、歯周ポケット内の細菌や汚れを取り除きます。最後に歯の表面を研磨し、歯垢が再び付着しにくい状態に仕上げます。
【術後のケア】
手術は日帰りで行われることが多いようです。術後の食事に関しては、獣医師の指示にしたがって与えるようにしましょう。
【定期的な歯のケアの重要性】
歯周病は再発する可能性があるため、定期的に歯のケアを行うことが大切です。高齢犬や歯石がつきやすい犬種では、歯科検診を定期的に受けることで、健康維持とくしゃみなどの不快な症状を予防します。
編集部まとめ
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ここまで犬がくしゃみをする原因についてお伝えしてきました。犬がくしゃみをする原因の要点をまとめると以下のとおりです。
- 日常生活でみられる犬のくしゃみは、鼻の中の刺激を取り除くためのくしゃみ、カーミングシグナル、逆くしゃみなどがある
- 病気が影響している犬のくしゃみは、鼻炎やアレルギー、歯周病、風邪、鼻に異物がある場合などが考えられる
- 犬のくしゃみへの対処法は、くしゃみが長期間にわたって続いたり、頻繁にくしゃみをする場合などは速やかに動物病院に相談することが大切
犬はさまざまな要因でくしゃみをすることがわかりましたね。
長引くくしゃみは、病気が関係しているケースもあるため、早めに獣医師へ相談しましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。