動物病院の緊急外来とは?受診目安や選び方、診療の流れも解説

動物病院の緊急外来とは?受診目安や選び方、診療の流れも解説

ペットが突然体調を崩したりケガをしたりしたとき、すぐに受診できる緊急外来をご存知でしょうか?人間には夜間救急外来がありますが、夜間対応の動物病院は限られており、いざというとき飼い主さんは不安になりますよね。本記事では、動物病院の緊急外来について基礎知識や通常診療との違い、緊急性の高い症状の具体例、緊急外来の探し方や選び方、そして受診の流れや費用目安まで解説します。

動物病院の緊急外来の基礎知識

動物病院の緊急外来の基礎知識

ペットにも人間と同様に急病や事故に対応する緊急外来があります。まずは緊急外来の定義と役割について確認し、通常の診療や夜間診療との違いを理解しましょう。

緊急外来の定義

動物病院の緊急外来とは、急に容体が悪化したり大ケガを負ったりしたペットに対し、通常の診療時間外でも緊急で対応する診療体制のことです。多くの動物病院では緊急外来ではなく、救急外来と呼ばれることが多い傾向です。

人の救急外来のように24時間体制で急患を受け入れる動物病院が存在します。飼い主さんのかかりつけ医が診療時間外の場合でも、提携の夜間救急センターや当番制の救急病院が利用できます。緊急外来では予約なしでも急患を優先的に診療し、命に関わる症状の迅速な治療や応急処置を行います。ただし犬猫以外(ウサギや小鳥、爬虫類など)の診察可否は病院によって異なるため、事前に対応可能な動物種を確認しておく必要があります。

通常診療と緊急外来の違い

通常の診療は予約制や受付順で行われ、予防接種や健康診断、軽い症状の治療など計画的な診療が中心です。それに対し緊急外来では待ち時間や順番に関係なく、緊急性の高い動物を最優先で対応します。また、通常診療では主治医が詳しく説明して治療方針を決めますが、緊急外来では飼い主さんへの事前説明は最低限に留め、まず命を救う処置を優先することもあります。処置後に症状や今後の見通しについて説明が行われ、必要に応じて入院やかかりつけ医への紹介が検討されます。費用面でも違いがあり、緊急外来では夜間や時間外対応の追加料金や高度な検査、処置費用が別途かかることがあります。

夜間診療と緊急外来の違い

夜間診療とは、その名のとおり夜間に診察を行うサービスです。多くの動物病院は夜間対応していないため、都市部を中心に獣医師会や有志グループが夜間救急病院を設置しています。夜間診療は緊急外来の一種ですが、時間帯に特化したものといえます。緊急外来そのものは昼夜問わず急患対応する概念ですが、実際には夜間診療は通常病院が閉まっている時間帯に利用されることが多いでしょう。なお、夜間でも必ず受診できるとは限らず、症例の重症度によっては診療の順番が前後することもあります。夜間救急を利用する際は事前連絡が必須であり、症状を電話で伝えてから受診する流れが一般的です。

すぐに動物病院に連れて行くべき症状

すぐに動物病院に連れて行くべき症状

ペットは言葉で不調を訴えられないため、飼い主さんが緊急性の高いサインを見逃さないことが大切です。

犬・猫の緊急性が高い症状

犬や猫は一般的なペットですが、以下のような重篤な症状が見られる場合はすぐに受診が必要です。大きく分けて、重篤な感染症や内臓の機能不全などによるケースと、事故やケガなど外傷によるケースに分類できます。

重篤な感染症や内臓の機能不全などによるケース

嘔吐や下痢が止まらず脱水症状になっている、元気がなく横たわったまま動かない呼吸が荒くて苦しそうにしている、高熱または低体温でぐったりしている、これらは犬猫に共通する危険な状態です。

例えば、激しい嘔吐や下痢は胃腸炎やウイルス感染症による可能性があり、なかには腸閉塞など緊急手術を要する病気も含まれます。呼吸困難がある場合、心臓の病気や肺炎、気管支炎などが疑われ、酸素吸入など早急な処置が必要なこともあります。そのほか、けいれん発作(全身の痙攣)、歯茎や舌の色が紫色になる状態も緊急度が高いサインです。このような場合は迷わず緊急外来を受診してください。

ケガなどの外傷があるケース

交通事故高所からの落下誤って踏んでしまったなど、明らかな外傷がある場合は一刻を争います。出血が止まらない深い傷、骨が折れている疑いなどがあれば、できるだけ早く救急病院へ連れて行きましょう。室内事故でも、家具に挟まれたり高所から飛び降りたりした後に歩き方がおかしい場合は骨折や捻挫を疑い、緊急時はレントゲン検査など専門的な判断が必要です。また、事故などによって頭部への強い衝撃を受けた場合、見た目に異常がなくても脳出血などの危険があります。特に、ぐったりして反応が鈍い、意識がもうろうとしているといった場合には脳へのダメージも考えられるので急いで受診してください。外傷の場合、痛みやショックでペットが暴れることもあるので、安全に保定して迅速に動物病院へ向かいましょう。

小動物や鳥類、は虫類の緊急性が高い症状

小動物や鳥類、は虫類も、種類ごとに特有の緊急のサインがあります。これらエキゾチックアニマルは体が小さく症状の進行が速いことがあるため、「おかしいな」と感じたら早めに対応しましょう。

小動物(ウサギ、モルモット、ハムスターなど)

ウサギやモルモット、ハムスターなどの小動物は、捕食される立場の生き物であるため、体調不良を隠す傾向があり、飼い主さんが気付いたときにはすでに症状が進行しているケースが少なくありません。特に、以下のような症状が見られた場合は注意が必要です。

  • 丸一日以上エサを食べない
  • 呼吸が荒く速い
  • 血尿が出る
  • ぐったりして反応がない
  • けいれん発作がある

これらは命に関わる可能性が高いサインであり、放置すると急速に悪化するおそれがあります。小さな変化でも見逃さず、異常を感じたらできるだけ早く動物病院を受診しましょう。

鳥類(インコ、文鳥、オウムなど)

インコや文鳥、オウムなどの鳥類も、体調不良を隠す習性があり、飼い主さんが異変に気付いたときにはすでに重症化していることが少なくありません。特に以下のような症状は緊急性が高く、注意が必要です。

  • 元気、食欲がない
  • 羽毛をふくらませてじっとふくらんでいる
  • 目を閉じて動かない
  • 呼吸が荒い、速い
  • 羽根や爪から出血している
  • 嘔吐を繰り返す

こうした症状は急速に悪化することがあり、放置すると命に関わります。普段と違う様子に気付いたら、できるだけ早く鳥類に対応できる動物病院を受診しましょう。

は虫類(カメ、トカゲ、ヘビなど)

爬虫類や両生類も症状がわかりづらく、飼い主さんが異変を察知したときにはすでに病状が進んでいることがあります。次のような症状が見られた場合は特に注意が必要です。

  • 明らかに動かない、反応が鈍い
  • 呼吸音がゼーゼーする、口を開けて呼吸している
  • 甲羅にひび割れや出血がある
  • けいれん発作がある

体が小さいため、症状が進行すると短時間で命に関わる状態に陥ります。少しでも異変を感じたら、迷わず早めに動物病院で診察を受けましょう。

緊急外来で対応できる疾患やケガ

緊急外来で対応できる疾患やケガ

緊急外来ではどのような病気や怪我に対応してもらえるのでしょうか。基本的に命に直結する急性疾患や外傷であれば幅広く診てもらえますが、ここでは緊急外来で対応可能な主な疾患と対処できる主なケガをわけて説明します。

緊急外来で対応できる主な疾患

動物の救急外来ではあらゆる急性疾患に対処します。その例としては以下のようなものがあります。

  • 呼吸器系・循環器系の疾患:急性の心不全や不整脈、肺水腫、喘息発作など
  • 消化器系の疾患:胃捻転や腸閉塞、急性胃腸炎、膵炎など
  • 中毒や誤食:中毒性の植物・薬品、異物など
  • 神経系の疾患:てんかん発作などの痙攣、意識消失、重度の頭部外傷による脳圧亢進など
  • 泌尿器系の疾患:尿道閉塞や急性腎不全など

このほかにも熱中症や重篤な感染症など、多岐にわたる疾患に緊急外来は対応しています。放置すれば命に危険が及ぶ状態であれば原則として救急診療の対象となると考えてよいでしょう。

緊急外来で対応できる主なケガ

事故やケガも緊急外来の主要な対応分野です。以下に代表的なケースを挙げます。

  • 交通事故による外傷
  • 高所からの落下、転倒事故
  • 咬み傷や裂傷
  • 熱傷や火傷
  • 目の外傷
  • 骨折や脱臼
  • 異物の誤嚥、窒息(呼吸困難)

以上のように、緊急外来では応急処置が可能な範囲であれば大抵のケガに対応してくれます。ただし、病院の規模によっては手術設備がなく、応急手当のみ行って二次医療施設へ転送する場合もあります。そのため、事前に対応可能か電話で問い合わせておくとよいでしょう。

動物病院の緊急外来の探し方と選び方

動物病院の緊急外来の探し方と選び方

いざというときに備え、信頼できる緊急対応の動物病院を見つけておきましょう。ここでは緊急外来を受け付けてくれる病院の見つけ方と、どのようなポイントで選べばよいかを解説します。

緊急外来の探し方

では、どのように緊急外来を探せばよいのでしょうか。緊急外来を探す方法は主に3つあります。

まず普段通っている動物病院がある場合、まずはその病院の緊急対応について確認しましょう。病院のホームページに時間外対応可や急患優先などの記載があれば、診療時間内外を問わず緊急時対応をしてくれることが多いです。時間外診療を行わない病院でも、代わりに地域の夜間救急専門病院を紹介していることもあります。受付や定期健診の際に、夜間や救急の場合はどうすればよいか聞いておくとよいでしょう。

また、各都道府県や市区町村の獣医師会では、地域の夜間や休日診療可能な動物病院をリストアップしていることがあります。自治体によっては救急病院の紹介ページがないこともありますが、その場合でも役所の動物担当部署に問い合わせれば情報を得られることがあります。

そして、インターネットで地域名と夜間動物病院で検索するのも有効です。近年は全国の夜間救急動物病院を検索できるサイトも公開されています。また、大手ペット保険会社や動物関連企業のサイトで、地域別の救急対応病院リストが掲載されていることもあります。

信頼できる緊急外来の選び方

緊急外来を利用できる病院を見つけたら、次にどの病院を利用すべきか判断するポイントを押さえておきましょう。以下の点に注目するとよいでしょう。

  • 対応可能時間とスタッフ体制
  • 設備や対応できる疾患や処置範囲
  • 立地とアクセス
  • 料金体系の明確さ

このように、自分のペットにとっていざというときに一番頼りになる病院はどこかを普段から考えておくことが大切です。

緊急外来を利用する流れと事前準備

緊急外来を利用する流れと事前準備

いざ緊急事態が起きた際に、スムーズに受診するための準備緊急外来当日の流れを知っておきましょう。焦らず適切に対応するため、事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。

受診前の準備

ペットの容体が急変した際は、少しでも早く病院に向かうことが重要ですが、慌てて出発すると必要な情報や持ち物を忘れてしまい、診療がスムーズに進まないことがあります。落ち着いて次の点を準備しましょう。

  • 必ず事前に電話で症状を連絡をする
  • ペットの情報や検査資料など持ち物を確認し、用意する
  • リードやキャリーなど安全な移送の準備をする
  • ペットの種類(犬や猫、ウサギなど)、品種、年齢、性別、体重、症状の経過など病院へ連絡する情報を整理する

これらを事前に整えておくことで、病院到着後に診療がスムーズに始まり、不要な待ち時間やトラブルを減らすことができます。また、獣医師もより正確かつ迅速な判断がしやすくなります。

緊急外来の流れ

実際に夜間や休日などで緊急外来を受診した場合、診療は通常とは異なり、緊急度や症状の重さに応じて迅速に進められます。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 受付後に緊急度の確認
  2. 問診と身体検査
  3. 必要に応じて、血液検査、X線検査、超音波検査などの精密検査の実施
  4. 診断結果に基づいて緊急処置および治療
  5. 処置結果の説明
  6. 会計と必要に応じてかかりつけ医への引き継ぎ書類を受け取り

以上がおおまかな流れですが、症例によって順序が前後したり省略あるいは追加があったりします。特に重篤な場合、飼い主さんへの説明より先に処置を優先することがありますが、これは緊急の場合はやむをえない対応です。後で必ず説明してもらえますので、その場では処置に専念してもらいましょう。

緊急外来の費用目安

緊急外来を利用する際、費用は通常診療より高額になる傾向にあります。実際にどの程度の費用がかかるのか、いくつか目安を示します。

項目費用目安(円)
初診料、夜間診察料・4,000~10,000円程度
処置・検査料・診療内容によって大きく変動
・10,000~100,000円程度
手術費用・緊急手術は高額になりやすい
・5~50万円程度

以上のように費用はケースバイケースですが、夜間救急では数万円~十数万円の出費を覚悟しておいた方がよいでしょう。ペット貯金や保険加入など、平時から経済的備えをしておくことも大切です。

まとめ

まとめ

本記事で解説したように、緊急外来では通常診療とは異なる体制で急患に対応し、夜間であっても必要な処置を施してくれます。「いつもと様子が違う」「この症状は危ないかも」と感じたら、迷わず緊急外来に連絡して相談しましょう。また、日頃から健康管理や予防に努めることで緊急事態を減らすこともできます。いざというときに慌てず対応できるよう、ぜひ本記事の内容を参考に準備を進めてください。

参考文献