犬や猫がやたらと耳や顔を掻いたり、そわそわして落ち着きがない場合、ペットが何らかのアレルギー症状により痒みを訴えている場合があります。ペットは言葉で不調を訴えられない分、飼い主さんたちがより詳細にアレルギーについて知識を深め、ちょっとした変化にも気付いてあげられると安心です。
本記事では、動物病院で受けられるアレルギー検査をテーマに、動物のアレルギーについて見ていきます。アレルギー症状にはどのようなものがあるのか、検査方法や対処法について見ていきましょう。
犬や猫のアレルギー症状

ペットにアレルギー症状が出てくると一定の症状が見られます。ペットの場合、全身が被毛に覆われているためアレルギー症状が出ていても人間ほど明確にわかりません。アレルギー症状が疑わしい場合は、次の4つの症状が出ていないかどうかをチェックしてください。
目やお口の周りに赤みが出る
ペットにアレルギー症状が出ると、目やお口の周りに赤みが出る場合があります。実際のところペットの全身は被毛に覆われているため、一目見ただけで赤みがあるかどうかはわかりづらいでしょう。目やお口のように毛が薄くなっている部分だと、皮膚の色味がわかりやすいので観察してみてください。
特定の部位や全身を痒がる
ペットにアレルギー症状が出ている場合は、全身を痒がる動作も見られるでしょう。痒がっているといっても、ペットは人間のように手や足を使って身体を搔きむしったりはできません。しきりに同じ部位を舐めたり、噛んだりしていればペットなりに痒みを訴えていると考えていいでしょう。
下痢や嘔吐がある
下痢や嘔吐は、アレルギー症状以外にもさまざまな病気が原因で起こる場合があります。風邪でもひいてしまったかなと自己判断で様子を見てしまうケースも多く、はじめのうちは気付かない可能性が高い症状といえるでしょう。下痢や嘔吐が何日も続く場合は、いつからどのくらいの頻度で起こっているかを記録し、受診の際に獣医に相談してみてください。
くしゃみや鼻水が出る
ペットも人間と同じように、アレルギー症状でくしゃみや鼻水が出る場合があります。通常、動物の鼻は湿っており、最初のうちはくしゃみや鼻水が出る原因がアレルギーにあると気付く可能性は低いです。しかし、それらの症状がいつまでたっても長引く場合、ダニやカビといった環境アレルギーが原因になっている場合があります。
犬や猫がアレルギーを発症する原因

犬や猫がアレルギーを発症する原因は大きく分けて4つあります。どのアレルギーも、犬や猫が生活する環境にありふれているものばかりです。アレルギーを発症してしまう原因について把握し、ペットに症状が出た際はスムーズに対処できるようにしましょう。
食物アレルギー
食物アレルギーはその名のとおり、特定の食材を口にした際に出てくるアレルギー症状です。原因となる食材の多くはタンパク質が関係しており、ペットフードの原材料にもよく使われる牛肉や乳製品、鶏肉や卵、大豆に小麦といった食材になります。
食物アレルギーは主に、消化器官系や皮膚に痒みを呈するケースが多数です。ドッグフートやおやつなど、何かしらの食べ物を口にした後に必要以上に同じ場所を舐めたり噛んだりしていれば食物アレルギーの可能性があるでしょう。
犬アトピー性皮膚炎や環境アレルギー
犬アトピー性皮膚炎は、遺伝的な要因が強いアレルギーです。肌のバリア機能が損なわれてしまうため、一度なってしまうと根治するのが難しいアレルギーだといわれています。
一方、環境アレルギーは、ペットが生活する環境のなかに潜むアレルギー物質が原因で起こります。犬アトピー性皮膚炎も環境アレルギーも、花粉であったりペット、ハウスダストであったりと、私たちの生活空間にごくあたり前にあるものが原因です。
ノミアレルギー
ペットがかかりやすいアレルギーには、ノミが原因になるアレルギーがあります。ノミアレルギーとは、ノミが血を吸う際に注入してくるノミの唾液が原因です。人間でいうところの蚊による虫刺されと同じ原理で起こります。
ノミの厄介なところは繁殖力があり、一度発生してしまうとペットからペットへと拡散して家じゅうに広がってしまう可能性がある点です。散歩などでほかの家のペットと触れ合う機会があったり、多頭飼育していたりする場合は、ノミをもらわない、移さないよう注意してください。
疥癬(かいせん)
疥癬とは、ヒゼンダニと呼ばれる小さな寄生虫が原因でおこるアレルギー症状です。ヒゼンダニの厄介な点は、小さすぎてノミのように目で見て確認できない点にあります。ヒゼンダニの生態は、皮膚のなかにトンネルを形成してそのなかに潜むため、ここでも寄生に気付きづらいといえるでしょう。
皮膚内に潜伏する際、分泌する液がアレルゲン物質になりますが、とても強いかゆみを伴うため、ペットによっては掻きむしって傷を作ってしまう場合があります。
疥癬は感染力が強く、人にも移ってしまう場合があるので放置は厳禁です。疥癬の症状が出たら寄生虫を駆除する薬を使い、肌を健やかに保ち、ペットの生活空間を清潔にする必要があります。
動物病院でできるアレルギー検査

動物病院で行われるアレルギー検査には、大きく5つの種類があります。アレルギーを特定するような検査から、アレルギーの種類を特定できるようなものまであります。必要な検査については獣医の診断によって確定されるでしょう。
アレルゲン特異的IgE検査
アレルゲン特異的IgE検査は、もっともポピュラーな検査方法です。アレルギーを引き起こす原因を特定するために行います。検査のやり方は、採血した血を利用します。
血中に含まれているIgE抗体に対して、どのアレルゲンに対して反応が出るかを調べるのです。
ただし、この検査方法はアレルギーの種類や検査するやり方によっては、アレルギーがなくとも反応が出てしまって陽性と判断されるケースがあります。病気やアレルギーの診断結果の判断材料に使うなら、ほかの検査を併用したり、日頃の生活スタイルを観察したりして得られる情報をもとに総合的に判断するといいでしょう。
リンパ球反応試験
リンパ球反応試験とは、ペットの食物アレルギーの有無を調べるための検査方法です。具体的には、採血した血液中のリンパ球を分離し、アレルゲンと混ぜて培養して、リンパ球がどういった反応を示すかを調べて検査します。
実は、食物アレルギーの7割はIgE検査を使っても調べられません。また、IgE検査を行ったものの、原因の特定に至らなかった場合でも、リンパ球反応試験が実施されます。
皮内反応試験
皮内反応試験(ひないはんのうしけん)は、アレルギーの有無を調べる試験になります。疑わしきアレルギーの原因物質をペットに直接注射して、皮膚が腫れたりしないか、赤くなったりしないかを見て検査する方法です。
アレルギー物質に反応して皮膚が変化するため、何のアレルゲンに反応するのか、反応した場合にアレルギー症状がどのくらい出るかといった反応の度合いもわかります。
アレルギー強度検査
アレルギー強度検査は、血液を採取し、リンパ球の値を測定してどのくらいアレルギーが出ているかを調べる検査方法です。アレルギーが原因なのかどうかわかりづらい皮膚炎の原因特定や、薬をどのくらい投与すればいいかの判断、治療の経過が良好かどうかを見極めるために行われます。
また、検査結果からリンパ球が活発に動く=アレルギーを呈する可能性があると判断できるため、食物を除去する際の判断材料にも使われているのです。
除去食試験
除去食試験とは、食べ物にまつわるアレルギーを特定するためのもっとも基本的な検査方法です。やり方は、約2ヶ月間、獣医師が指定する食事のみを摂り続けるところからスタートします。このとき、アレルギー症状が緩和されれば食物アレルギーの可能性が高くなり、そうでなければ原因はほかにあると推察できるのです。
ほかのアレルギー検査方法とは異なり、食事内容を変えながら、ペットの状態を見て判断しながら検査するため、調べるのにかなりの期間を必要とします。アレルギー症状がどのようにして出るのかを観察する必要があるため、食事のたびにペットを見守らなければならず、飼い主さんにとっても骨の折れる検査方法です。
動物病院でアレルギー検査をする前に準備すること

動物病院でペットのアレルギー検査を行う際は、飼い主さんが以下の情報を収集しておくとスムーズです。
日頃の生活パターンを記録する
アレルギー検査を受診するなら、飼い主さんがペットの日頃の生活パターンを記録しておくといいでしょう。ペットが健康なときの状態を把握しておけば、何か異変があった際にすぐ気付けます。
アレルギー症状についても同様で、早期発見と早期対策が可能となるでしょう。アレルギー症状が出た場合も即座に治療に移れる可能性が高まるため、ペットに負担をかけずに済みます。
アレルギー症状が出るタイミングを把握する
アレルギー検査をするなら、アレルギー症状が出るタイミングを把握しておきましょう。何か特定の食材を口にしたからなのか、散歩に出たらなのか、特定の季節が訪れるたびにアレルギー症状が出るのかでアレルゲンは特定しやすくなります。
また、アレルギー症状が出るタイミングを把握しておけば、体調の良し悪しがアレルギー症状の発現に影響する場合にも気付けるでしょう。なるべく俯瞰的にペットの生活を見つめ、症状が出た際はその経過も忘れず記録しておくのがおすすめです。
症状が出た際の写真や動画を準備する
アレルギー検査を受診する際は、獣医師によるアレルギー症状についての問診があります。
もちろん飼い主さんが見聞きしたものを口頭で伝えるだけでもかまいませんが、写真や動画があるとより詳細な状態が正確に伝えられるでしょう。
アレルギー症状が出てしんどそうなペットの姿は、見ているだけでも心が痛みます。気が動転する場面ではありますが、まずは冷静になり、ペットの状態を写真や動画に納めてください。
アレルギー症状が出た際の対処方法

ペットにアレルギー症状が出た場合は、症状から原因を特定して、適切な対処法を試みる必要があります。場合によっては重篤な症状に発展する可能性もあるため、放置してはなりません。
飲み薬と塗り薬を使う
アレルギー症状が出ているペットは、全身を痒がったり嘔吐したり、下痢が出たりします。それらの諸症状を緩和させたり、付随する脱水症状などの予防、対処のために飲み薬と塗り薬を使いましょう。抗炎症作用のあるステロイドや抗ヒスタミン薬といった薬は、ペットが感じている痒みを抑えたり、皮膚の炎症を抑えたりする効果があります。
場合によっては免疫抑制剤を使用して、重篤なアレルギー症状を落ち着かせるのも手段のひとつです。
嘔吐や下痢については吐き気を抑えてくれる薬や、腸に作用する薬を服用して症状が落ち着くのを待ちます。
散歩コースや生活環境の見直しを行う
環境アレルギーが原因の場合は、ペットの散歩コースや生活環境を変えてみましょう。アレルギー症状のなかには環境アレルギーといって、生活空間や日課をこなすなかでアレルゲンに接触して起こるものがあります。
例えば、ダニや花粉、ハウスダストなどが環境アレルギーの代表的な原因です。散歩コースに生えている雑草の花粉にやられているなら散歩コースを変えるのが有効であり、お気に入りの場所にダニが潜んでいそうなら掃除してあげる必要があります。
こういったケースの対処方法は、生活習慣を見直してアレルギーの原因物質からペットを遠ざけるといいでしょう。雑草がたくさん生えている場所に近づかない、茂みがたくさんある散歩コースを通らない、寝床を常に清潔に保つようにするだけでも、アレルギー症状が抑えられる可能性があります。
食事管理や二次感染対策を徹底する
食物アレルギーが疑われるなら、原因となる食材を摂らないようにしたり、アレルギーを起こしづらい療法食に切り替えるといった対処法があります。アレルギー症状が落ち着いた後でも、むやみに多様な食材を口にさせるのではなく、様子を見ながら食べ物を与えるようにしましょう。
また、痒みがあるのを放置していると、搔きむしった部位から細菌感染を引き起こし、皮膚炎などの症状が悪化する場合があります。身体を痒がったり必要以上に舐め続けるようにならないよう、症状が出たら早めに対処しましょう。
まとめ

動物病院で行われるアレルギー検査には、アレルゲン特異的IgE検査やリンパ球反応試験をはじめとしたやり方がいくつかあります。どの検査方法も、ペットの身体がどのアレルギー物質に反応しているのかを調べますが、やり方によってはいくつかの検査を併用する場合もあるでしょう。
また、検査方法によってはアレルゲンを特定するために採血したり、皮膚の状態をチェックしたりする場合があります。普段からペットの状態をよく観察しておけば、アレルギー症状をより早く見つけられたり、変化に気付きやすいでしょう。アレルギー症状が重症化する前に食い止められるため、日頃から観察する癖をつけておくのもおすすめです。