動物病院でのワクチン接種|犬や猫は毎年接種すべき?ワクチンの種類や費用についても解説

動物病院でのワクチン接種|犬や猫は毎年接種すべき?ワクチンの種類や費用についても解説

大切な愛犬や愛猫を病気から守るために、動物病院でのワクチン接種は重要な予防策の一つです。しかし、「毎年必ず接種する必要があるの?」「どのような種類のワクチンがあるの?」「費用はどのくらいかかるの?」といった疑問を持つ飼い主さんもいるのではないでしょうか。

本記事では動物病院でのワクチン接種について以下の点を中心にご紹介します。

  • 犬のワクチンについて
  • 猫のワクチンについて
  • 犬と猫で予防すべきこと

動物病院でのワクチン接種について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

犬のワクチンについて

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犬のワクチンには種類や費用などが異なります。以下で副反応や注意点も併せて解説します。

犬のワクチンの種類

犬のワクチンは主に2種類あります。

狂犬病ワクチン

狂犬病ワクチンは、狂犬病予防法に基づき、すべての犬に年1回の接種が求められています。このワクチンは生後91日齢以上の犬に接種が義務付けられており、接種後は市町村から“狂犬病予防注射済票”が交付されます。

接種は毎年4月1日〜6月30日の間に行われ、期間外の接種でもその年の接種として認められます。接種後には、登録された犬に鑑札を首輪に付けることが義務付けられており、未登録や接種していない場合は罰金が科せられることもあります。

狂犬病は致死率がとても高く、人間にも感染する危険な病気です。狂犬病の予防は飼い主にとって重要な責任です。市町村による集団接種も利用でき、動物病院での接種も選択肢となります。予防接種を受けた犬は、狂犬病予防法に基づいて安全に飼育できます。

混合ワクチン

混合ワクチンは、複数の犬の感染症を予防するために使用されるワクチンです。日本では主に“コアワクチン”と“ノンコアワクチン”の2つに分類され、コアワクチンには犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルスなど、致死率が高いとされている感染力の強い病気が含まれています。ノンコアワクチンは、地域や生活環境に応じて必要なワクチンが選ばれます。

例えば、犬レプトスピラ症や犬パラインフルエンザ、犬コロナウイルスなどが該当します。これらのワクチンは、犬の健康を守るために事前に免疫をつけることが重要で、危険な感染症から愛犬を守る役割を果たします。

混合ワクチンは、5種や9種など、接種する病気の種類に応じて呼び名が異なり、犬の生活環境に合わせてワクチンを獣医師と相談して決めることが大切です。

ワクチンの費用

犬の予防接種にかかる費用は、地域や病院によって異なりますが、相場としては狂犬病ワクチンが3,000円〜4,000円程度です。自治体が関与している場合、集団接種を受けることでさらに安くなることもあります。

また、混合ワクチンの費用は種類により異なり、5種や6種ワクチンで6,500円前後、8〜10種ワクチンでは7,500円前後が相場です。

さらに、フィラリアやノミ・ダニの予防薬も併せて接種する傾向があり、これらの費用を加えると、1歳以降の小型犬や中型犬は年間約3~5万円、大型犬や特大犬は約4~6万円の医療費がかかることが予想されます。予防接種の費用は初期費用の一部に過ぎないため、飼い始める前にかかりつけの動物病院で全体の費用を確認しておくことが重要です。

副反応について

犬がワクチンを接種した後には、副反応が出ることがあります。副反応は、接種後すぐに現れるアナフィラキシーショックや、数日以内に現れるアレルギー症状、注射部位の痛みやしこりが代表的です。

ワクチンアレルギーは、なかでもミニチュア・ダックスフンドなどの犬種で発生しやすい傾向があります。顔の腫れやかゆみ、紅斑などが見られる場合がありますが、これらは命に関わるものではないとされています。

一方、アナフィラキシーショックは命に関わる可能性もある副反応で、接種後数分以内に発症することがあります。呼吸困難や血圧低下、意識障害が見られる場合は、速やかに動物病院に連れて行く必要があります。

これらの副反応を予防するために、ワクチン接種後は十分に観察し、異常があればすぐに対応することが重要です。

接種の際の注意点

ワクチン接種を行う際には、犬の体調に十分注意を払うことが大切です。特に接種後の数時間は副反応が出やすいため、ワクチン接種を予定していない日に行うことをおすすめします。

また、接種後の犬の体調を観察し、食欲や元気があるかどうか、消化器症状がないかを確認します。

接種後は激しい運動やシャンプーを控え、安静にさせることも大切です。万が一、副反応が現れた場合はすぐに動物病院に連絡し、適切な対処を行いましょう。ワクチン接種後の経過観察を行い、異常が見られた場合にはすぐに病院での受診を検討するようにしましょう。

犬のワクチン接種は毎年した方がいい?

犬のワクチン接種は健康を守るために欠かせませんが、その頻度はワクチンの種類によって異なります。特に、狂犬病ワクチンは法律で毎年接種が義務づけられており、接種を怠ると最大で20万円の罰金が科せられます。

狂犬病は致死率が高く、人間にも感染する可能性があるため、毎年の接種は必須です。また狂犬病ワクチンはアンジュバントを含まない不活化ワクチンであり、有効免疫が獲得しづらいことも年一回以内に追加接種を行う理由の一つです。

一方、混合ワクチンはコアワクチンとノンコアワクチンに分かれており、コアワクチンは3年に1回程、ノンコアワクチンは1から1年半以内の追加接種が推奨されています。しかし、犬が多くの犬と接する機会が多かったり、施設に頻繁に通う場合は、年に1回の接種が安心にもつながります。

ワクチン接種の優先順位としては、狂犬病ワクチンを最優先に接種し、その後に混合ワクチンを接種するのが理想的です。狂犬病ワクチンの接種期間が過ぎている場合、すぐに接種することが大切です。ワクチン接種のタイミングや頻度について不安があれば、獣医師と相談し、愛犬のスケジュールを立てることをおすすめします。

猫のワクチンについて

猫のワクチンも犬と同様に種類によって異なります。以下で副反応や注意点も併せて解説します。

猫のワクチン接種は必要?

猫のワクチン接種は、感染症から愛猫を守るために重要です。室内飼いの猫でも、飼い主や来客、衣服や靴を通じて外部の病原菌が家に持ち込まれる可能性があります。そのため、外に出ない猫でもワクチン接種を行うことが推奨されています。

特に子猫は免疫力が弱いため、(初乳で得られた免疫の切れる免疫移行期間にウイルス感染のリスクが高まるため)早期にワクチン接種をすることで多くの感染症から守れるとされています。また、半年齢以下の幼齢犬猫は、免疫応答細胞が少なく、あるいは未成熟のため免疫が獲得しづらいため、1カ月ごとに2から3回の接種が必要とされています。

例えば、猫汎白血球減少症は一度感染すると治療法がなく、生涯管理が必要な病気ですが、ワクチン接種で予防できます。感染症によっては死亡する場合もあり、猫の健康や命を守るために定期的なワクチン接種は欠かせません。

猫のワクチンの種類

猫のワクチンは主に以下の2種類です。

コアワクチン

コアワクチンは、猫が感染リスクを持つ重症化しやすい病気に対する予防ワクチンです。これには、猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス感染症)、猫カリシウイルス感染症、猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)が含まれます。

これらの感染症は死亡する可能性もあり、重篤な症状を引き起こすリスクがあります。コアワクチンは外出の有無に関わらず、すべての猫に推奨されます。免疫は一度得られると、長期間維持されることが多く、抗体検査によりどの程度免疫があるかを確認できます。

コアワクチンは1〜3年ごとに再接種が推奨され、飼育環境によって適切な接種タイミングを獣医師と相談することが大切です。

ノンコアワクチン

ノンコアワクチンは、猫の生活環境や接触する猫によって接種が検討されるワクチンです。なかでも多頭飼いや外出する機会が多い猫は感染リスクが高いため、予防接種がおすすめです。

代表的なノンコアワクチンには、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫クラミジア感染症があります。猫白血病ウイルスは猫同士の接触で広がるため、外でほかの猫と接触する機会がある場合、接種を検討すべきです。

また、猫クラミジアは鼻水や目やにを引き起こし、伝染性が高いため、感染リスクがある猫には接種が推奨されます。これらのワクチンは生活環境に応じて、獣医師と相談して決めることが大切です。

ワクチンの費用

猫のワクチン接種の費用は、ワクチンの種類や病院によって異なります。相場として、3種混合ワクチンは約3,000〜5,000円、4〜5種混合ワクチンは約5,000〜7,000円です。

また、単独接種の猫免疫不全ウイルスや猫白血病ウイルスワクチンはそれぞれ約3,000〜6,000円が目安となっています。

ワクチンの接種は毎年または数年に一度の頻度で行われるため、年間の医療費として計画的に予算を立てることが大切です。ワクチン接種の費用は、病気にかかって治療を受ける費用と比較すると、予防のための費用の方が遥かに安価です。

猫の健康を守るためにも、ワクチン接種を忘れずに行いましょう。

副反応について

猫がワクチン接種後に副反応を示すことがありますが、ほとんどは軽度で数日以内に回復するとされています。重度な副反応であるアナフィラキシーショックは、接種後1時間以内に現れる傾向があり、嘔吐やけいれん、急激な血圧低下などの症状を引き起こします。

また、24時間以内にムーンフェイス(顔が腫れる)やかゆみ、発熱などの症状が現れることもあります。これらの副反応は時間とともに改善するとされていますが、症状が続く場合や異常を感じた際には、早急に獣医師に相談することが重要です。ワクチン接種後の体調変化をよく観察し、異常があれば速やかに対処しましょう。

接種の際の注意点

ワクチン接種は猫にとって体への負担となることがあるため、接種の際は猫の健康状態が良好であることを確認することが重要です。病気の治療中や体調が悪い時は、接種を延期するか、獣医師に相談してから行うべきです。

また、接種前後の数日は猫の体調をしっかりと観察し、異常があればすぐに動物病院に連絡することが求められます。特に接種後は、アナフィラキシーショックなどの急な副反応が起こる可能性があるため、接種後30分以内は猫から目を離さないようにしましょう。

ワクチン接種は午前中に行うことをおすすめします。また、接種後は激しい運動やシャンプーを避け、安静に過ごさせることが大切です。

猫のワクチン接種は毎年した方がいい?

猫のワクチン接種は、感染症から愛猫を守るために重要です。室内飼いの猫でも、飼い主の靴や服に付いたウイルスや外の猫と間接的に接触することで、感染する可能性があります。

ワクチン接種により得られる免疫は時間とともに減少するとされており、免疫が低下することで感染リスクが高まります。なかでも猫汎白血球減少症などの感染症は、重篤な症状を引き起こすため、予防接種を欠かさず行うことが大切です。

室内飼いの猫でもワクチン接種を毎年行うことで、病気のリスクを抑えることにつながります。副反応が心配な場合は、抗体検査で免疫の残存量を確認し、接種間隔を調整できます。愛猫の健康を守るために、定期的なワクチン接種を心がけましょう。

犬猫共通ですべき予防

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ここまで犬と猫のワクチンについて解説しました。以下で共通で行うべき予防を紹介します。

ノミ・マダニ予防

ノミやマダニは、愛犬や愛猫の健康に深刻な影響を及ぼす外部寄生虫です。ノミは皮膚炎やアレルギーを引き起こし、猫ひっかき病などの病気を媒介することがあります。マダニは、吸血だけでなく、バベシア症やSFTSなどの重篤な感染症を引き起こすことがあります。

なかでもマダニは、ペットから人間にも感染を広げる可能性があるため、飼い主の健康にも影響を与えるリスクがあります。

ノミやマダニは、春から秋にかけて活発になりますが、暖房の効いた室内でも生存できるため、室内飼いのペットでも油断は禁物です。予防は、動物病院で処方される経口薬やスポットオン薬(皮膚に滴下するタイプ)で行います。

これらは毎月の予防を徹底することが推奨されており、ペットの健康を守るためには年間を通じた継続的な予防が重要です。愛犬や愛猫に合った予防薬を獣医師と相談して選び、定期的な予防を心がけましょう。

フィラリア予防

フィラリア症は蚊を媒介にする寄生虫病で、心不全や循環障害を引き起こす致死的な病気です。犬に多く見られる傾向がありますが、猫にもフィラリア症のリスクがあります。猫の場合、感染すると突然死を引き起こすこともあり、室内飼いの猫でも蚊に刺される可能性があるため予防が必要です。

フィラリア予防は、蚊が活動する期間(4月〜翌1月)に合わせて、毎月1回の予防薬投与が推奨されます。予防薬は、蚊が吸血して体内にフィラリアの幼虫が入ってきた際に、その成長を防ぐ効果が期待できます。

予防薬には、飲み薬や皮膚に垂らすスポットオン、注射タイプなどがあり、愛犬・愛猫の性格や生活環境に合わせて選べます。定期的な予防でフィラリア症を防ぎ、愛猫や愛犬の健康を守りましょう。

まとめ

ここまで動物病院でのワクチン接種についてお伝えしてきました。動物病院でのワクチン接種の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 犬のワクチンには、生後91日齢以上の犬に接種が義務付けられている狂犬病ワクチンと、複数の犬の感染症を予防するために使用される混合ワクチンがある
  • 猫のワクチンには、猫が感染リスクを持つ重症化しやすい病気を予防するコアワクチンと、猫の生活環境や接触する猫によって接種が検討されるノンコアワクチンがある
  • 犬と猫ともに、ノミ・マダニ予防とフィラリア予防は推奨されている

ワクチン接種で犬と猫との生活を守り、健康的な日々を送れるよう心がけましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献