フィラリア症は、蚊が媒介する寄生虫であるフィラリアが引き起こす病気です。心臓や肺の血管に寄生して肺疾患や心不全などをもたらし、治療が遅れると命に関わる恐れもあるため、しっかりと予防することが欠かせません。フィラリアは飲み薬や動物病院での注射によって予防しますが、どちらを選ぶとよいのでしょうか。今回はフィラリア注射に焦点を当て、飲み薬との違いや注射を受ける場合のメリット、注意点などについて詳しく解説を加えます。
フィラリア予防注射の基本知識

まずは、フィラリア予防注射の基本知識をまとめます。フィラリア予防注射の概要を押さえることで、その必要性について理解を深め、大切なペットの健康管理に役立てていきましょう。
- フィラリアの予防注射が必要な理由を教えてください
- 冒頭でもお伝えしたとおり、フィラリア症は治療が遅れるとペットの命に関わるケースもある病気です。一方で、初期段階の症状は目立ちづらいため、飼い主が気付きにくい病気といえるでしょう。症状が出る頃には、すでに感染から数年経っているというケースも見受けられます。初期症状を見逃して症状が深刻化し、ペットの命が危険にさらされるといった状況に陥らないためにも、フィラリアの予防注射を受けることが重要です。
- フィラリアの予防注射の効果や持続期間を教えてください
- フィラリア予防の注射薬には、フィラリアを駆虫する成分であるモキシデクチンが小さな粒子状になって含まれています。この成分が皮下投与後に少しずつ放出され、溶解していく仕組みになっているため、1回の注射によってフィラリア予防の効果が1年間も持続します。
フィラリアの予防注射の方法
次に、フィラリア注射と飲み薬の違いを具体的に確認しましょう。気になる料金相場なども含め、両者の違いを掘り下げて理解しておくと、注射の方法を迷ったときにも納得感のある判断が下せます。
- フィラリア注射と飲み薬の違いはなんですか?
- フィラリア注射と飲み薬の特徴は、まったく異なります。まず、フィラリア注射の駆除対象がフィラリアのみであるのに対して、飲み薬はフィラリア以外にも対応しています。一方、フィラリア注射の効果は1年間も持続しますが、飲み薬の場合は1ヶ月だけとなっており、毎月投薬する必要があります。このような違いを理解したうえで、自身とペットに合った方法を選択することが重要です。
- フィラリア注射と飲み薬の料金相場の違いを教えてください
- 動物病院でフィラリア予防を受けるときに必要な費用は、使用する薬の種類や投与方法、動物の体重、病院の料金設定などによって大きく異なります。例えば、月1回の飲み薬であれば1回あたり1,000円から2,500円程度が料金相場となり、これをフィラリアが媒介する蚊の活動時期に合わせて半年から8ヶ月間継続します。一方、年に1回のフィラリア注射は1万円から2万円程度かかる場合もあります。さらに、予防開始前には感染の有無を確認するための血液検査を実施する必要があり、その際にも1,000円から3,000円程度かかります。合計すると、1シーズン1万円から2万5,000円前後の出費になると理解しておきましょう。
動物病院のフィラリア注射について
このパートでは、動物病院でのフィラリア注射について解説します。フィラリア注射に向いているケースや、逆に注射できない状況を押さえて、フィラリア注射を受けるかどうか検討する一助としてください。
- フィラリア注射を受ける時期や年齢に制限はありますか?
- フィラリア注射はペットの体重によって注射する量が変化することや、副作用の危険性がはっきりしていないことなどから、成長期や妊娠中のペットには使用できません。子犬の場合は1歳以上になってから注射するとよいでしょう。また、体重減少が顕著な老犬なども注射を控えてください。
- フィラリアの予防注射ができない犬種はありますか?
- フィラリア注射の安全性は高いとされていますが、一部の犬に副作用が見られるケースもあるため、不安に感じることがあれば、あらかじめ獣医師に確認しておくとよいでしょう。ちなみに、飲み薬の成分であるイベルメクチンには、ボーダーコリーなどのコリー系品種が反応しやすく、副作用が認められる可能性も高いといわれています。
- 飲み薬ではなくてフィラリア注射を選ぶメリットを教えてください
- 1回の注射で毎月薬を飲む必要がなくなるのは、手間もかからず、フィラリア注射を選ぶ大きなメリットといえるでしょう。投薬忘れや吐き戻しといったリスクも軽減することができます。その他のメリットとしては、フィラリア予防時期の5月頃からは動物病院が混雑します。注射であれば、1年に1回打てばよいので比較的動物病院が空いている冬期に打てば飼い犬と飼い主さんの負担が減ります。また、獣医師が直接投与するため確実な予防効果が期待できる点も挙げられます。
- どのようなペットにフィラリア注射が向いていますか?
- フィラリア注射は飲み薬が苦手なペットに向いています。また、毎月の投薬が面倒、投薬忘れが心配という飼い主の方にもおすすめです。
動物病院でフィラリア注射を受ける際の注意点

終わりに、動物病院でフィラリア注射を受ける際の注意点についてもチェックしましょう。さまざまなメリットがあるフィラリア注射ですが、副作用などのリスクを無視することはできません。
- フィラリア注射による主な副作用やリスクを教えてください
- フィラリア注射の安全性は高いとされているものの、急にぐったりするなどのアナフィラキシーショックや発熱、嘔吐、顔の腫れ、食欲不振といった副作用が報告されています。また、副作用の危険性がはっきりしていない面があるのも実情です。年に1回の注射で済み、料金も割安になるケースが少なくありませんが、フィラリア注射はフィラリア症のみにしか対応していないため、ノミやダニの駆除については別途対策が必要という手間もかかります。とはいえ、飲み薬にも同様に副作用などのリスクはあります。どちらが完全に優れているとはいえないので、それぞれのメリットとデメリットを正しく理解して、状況に応じた予防注射の方法を選択しましょう。
- 持病や高齢のペットでもフィラリア注射を受けることはできますか?
- 高齢のペットにおける副反応の発生率については、はっきりしていない面もありますが、フィラリア注射を注射するのは控えた方がよいでしょう。小型犬では12歳以降、大型犬であれば8歳以降が注射を控える目安です。特に、体重減少や衰弱が顕著なペットについては、慎重な対応を心がけてください。持病がある場合も含めて不明な点があれば、前もって獣医師に相談してみましょう。
- フィラリア注射でアレルギー反応が出た際の対処法を教えてください
- アレルギー反応として急に虚脱するなどのアナフィラキシーショックや発疹、呼吸困難などの症状が出た場合には、すぐに動物病院へ連絡を入れて、獣医師の指示を仰ぎましょう。アレルギー反応に限らず、フィラリアの予防注射後に普段と違う様子が見られたら、そのまま放置することなく、できるだけ早いタイミングで動物病院を受診してください。安易に自己判断を下して、対策を講じないのはとても危険です。
編集部まとめ
治療が遅れると命に関わる恐れもあるフィラリア症を予防することは、飼い主の大切な責務といえます。しかし、一口に予防といってもさまざまな方法があるため、メリットとデメリットを見極めて、自身やペットの状況に合った対応を取りましょう。判断に迷ったときや不安を抱えているときには、早めに動物病院を受診して、獣医師のサポートを受けることも大切です。また、普段からペットの健康状態に気を配り、副反応などの異変を敏感に察知できるよう心がけましょう。