動物病院の整形外科は、犬や猫をはじめとする動物の骨や関節、筋肉に関する疾患やけがを専門に診療する分野です。
本記事では動物病院の整形外科について以下の点を中心にご紹介します。
- 動物病院の整形外科について
- 動物病院の整形外科で扱う疾患
- 動物病院の整形外科での診療と治療
動物病院の整形外科について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
動物病院の整形外科について
- 動物病院の整形外科はどのような診療科ですか?
- 動物病院の整形外科は、骨や関節、靭帯、腱などの疾患や損傷を専門的に診療する診療科です。具体的には、骨折や関節疾患、歩行や立ち方の異常、足腰の痛みなど、ペットの運動機能に関わる問題を診断し、適切な治療を提供します。
また、必要に応じて外科専門の獣医師が治療に加わり、精密な手術を行うこともあります。さらに、手術後の早期回復を目指し、リハビリテーション科と連携した治療プランを提案し、ペットの健康と生活の質を支えています。
- 動物病院の整形外科を受診した方がよい症状を教えてください
- 動物病院の整形外科を受診した方がよい主な症状は以下のとおりです。
歩き方の異常
片足を浮かせたケンケンのような歩き方や、歩幅が小さくなる場合は、関節や筋肉の問題が疑われます。
座り方や立ち方の異常
お座り時に後ろ足が「あぐら」のようになる、立ち姿勢で足が内側または外側に傾く場合は、骨や関節に負担がかかっている可能性があります。
日常行動の変化
散歩を喜ばなくなったり、階段を避けたりする行動は、痛みや違和感を訴えているサインです。
痛みや腫れの兆候
手足が腫れている、抱っこ時に痛がる、立ち上がれないなどの症状が見られる場合は、早急な受診が必要です。
これらの症状は骨や関節、筋肉に異常がある可能性を示しており、早期発見・治療が重要となります。そのため、これらの兆候が見られた場合は速やかに動物病院の整形外科を受診してください。
動物病院の整形外科で扱う疾患
- 動物病院で対応できる骨折にはどのようなものがありますか?
- 動物病院で対応できる骨折には、以下のとおりです。
橈尺骨骨折
前腕部分の骨折で、小型犬や超小型犬に多く、落下事故が原因となります。特に遠位端(手首付近)の骨折は癒合不全のリスクが高く、正確な手術が求められます。
上腕骨骨折
前肢の上腕部分の骨折で、交通事故や衝突が主な原因です。骨の太さや周囲の筋肉の影響で治療の難易度が高く、プレート固定などの手術が行われます。
脛骨骨折
後ろ足のすねにあたる部分の骨折で、転倒や衝撃によるものが多いとされています。治療にはプレート固定や髄内ピンなどの手術が行われることがあります。
大腿骨骨折
後肢の太もも部分の骨折で、骨折全体のなかでも多いとされる部位です。交通事故による粉砕骨折も見られ、適切な手術を行わないと癒合不全や感染症のリスクがあります。
骨盤骨折
骨盤の骨折は重度の外傷や交通事故が原因となります。場合によっては内臓への影響を考慮した複合的な治療が必要です。
中足骨/中手骨骨折
前肢や後肢の指にあたる部分の骨折で、飛び降りや衝撃が主な原因です。治療には小型のプレートやピンを使用します。
成長板骨折
成長期の動物特有の骨折で、骨が伸びる部分に損傷が起きます。早期に手術を行うことで正常な骨の成長が可能になります。
これらの骨折には、骨の癒合を助けるための影響が少ない手術などの技術も活用されており、ペットの早期回復を目指した治療が行われます。
- 動物病院で対応できる関節疾患にはどのようなものがありますか?
- 動物病院で対応できる関節疾患は、以下のとおりです。
前十字靭帯断裂/損傷
膝関節の靭帯が切れたり損傷する疾患で、大型犬に多く見られます。外科手術が主な治療法で、TPLO(脛骨高平部骨切り術)などが用いられます。
膝蓋骨内方脱臼(外方脱臼)
膝のお皿(膝蓋骨)が正常な位置からずれる疾患で、小型犬に多いとされています。進行すると関節炎を引き起こすため、外科的治療が推奨されます。
肘関節疾患(肘関節異形成など)
肘関節疾患は、大型犬で見られ、歩行時に前脚をかばう症状が現れます。CTや関節鏡での診断が必要で、病態に応じた外科的治療が行われます。
大腿骨頭無菌性壊死症(レッグペルテス)
小型犬に発生しやすい進行性の疾患で、股関節の骨が壊死します。早期の診断と手術が重要で、人工股関節置換術が選択肢となる場合もあります。
股関節形成不全症
大型犬に見られる疾患で、股関節が緩むことで痛みや関節炎を引き起こします。保存療法や人工股関節置換術が適用されます。
アキレス腱断裂/浅趾屈筋腱脱臼
アキレス腱断裂/浅趾屈筋腱脱臼は、後ろ足の腱に関わる疾患で、足を引きずる、歩行に異常が見られます。手術での修復が必要です。
免疫介在性関節炎/多発性関節炎
免疫系の異常による関節の炎症で、さまざまな関節に症状が現れることがあります。抗炎症薬や免疫抑制療法が行われます。
関節疾患は、適切な診断と治療により、ペットの生活の質を大きく改善できます。
- 動物病院で対応できるその他の疾患にはどのようなものがありますか?
- 動物病院で対応できるその他の疾患には以下のようなものがあります。
足根・手根関節剪断損傷
手足の先端に広範囲の皮膚損傷と靭帯や骨の損傷を伴う外傷で、感染や組織壊死のリスクが高いため、創外固定器を用いた骨や関節の安定化とともに、湿潤療法や皮膚移植などで治療します。
骨の変形矯正
成長期に骨の不均衡から起こる変形疾患で、ダックスフンドやペキニーズなどの犬種に多く見られます。骨延長術や角度矯正を行い、関節にかかる負担を軽減します。
脊髄損傷性疾患
交通事故や落下による脊椎の骨折・脱臼が原因で発症します。神経症状や痛みを伴い、緊急対応が必要で、外科治療では椎弓切除術を行い、脊髄の圧迫を除去します。
椎間板ヘルニア
椎間板が神経を圧迫する疾患で、胸腰部や頸部に多いとされています。症状に応じて、内科治療(運動制限や薬物療法)や外科治療(片側椎弓切除術など)を選択しますが、重度の場合、早期手術が必要になります。
これらの疾患は早期発見と治療が回復の鍵となり、ペットの生活の質を向上させられます。
動物病院の整形外科での診療と治療
- 動物病院の整形外科での診療の流れを教えてください
- 動物病院の整形外科での診療の流れは以下のように進められます。
1. 問診
飼い主さんから発症時期、状況の変化、普段の行動との違いなどのペットの症状や経過について詳しくお聞きします。
2. 視診・歩行検査・触診
獣医師がペットの立ち姿勢、歩行、筋肉の付き方、重心の移動などを触診により、痛みの部位や異常の原因を探ります。
3. 検査
症状に応じて、血液検査やレントゲン検査、必要に応じて関節液検査を実施します。
4. 画像検査(必要に応じて)
詳細な診断が必要な場合には、CTやMRI検査をご提案し、神経疾患や骨折の詳細を把握します。
5. 診断と治療計画の提案
検査結果をもとに病状を診断し、適切な治療計画をご提案します。主に、治療内容、期間、費用、手術の必要性やリスクなどについて、わかりやすく説明します。
6. 治療開始
ペットの症状や病状に応じて、投薬、手術、リハビリなどの治療を行います。
7. 経過観察とアフターケア
治療後は、定期的に経過観察を行い、必要に応じて検査や治療の調整を実施します。また、自宅でのケアについても適切にアドバイスを提供します。
以上の手順を通じて、ペットがより快適に過ごせるようサポートします。
- 動物病院の整形外科ではどのような検査を行いますか?
- 動物病院の整形外科では、以下のような検査を行い、症状や疾患を診断します。
基本検査
・視診・触診: 立ち姿や歩行を観察し、患部の異常や痛みを確認します。
・血液検査: 全身状態を評価し、感染や炎症の有無を調べます。
歩様検査
跛行(びっこ)の有無や、前肢・後肢のどちらに異常があるかを特定します。
画像検査
・レントゲン検査: 骨折や関節の異常を診断します。
・CT検査: 骨や軟部組織の詳細を確認します。
・関節鏡検査: 関節内部を直接観察し、精密な診断を行います。
これらの検査を組み合わせて適切な治療計画を立てます。
- 動物病院の整形外科で診断がついた後はどのような治療をしますか?
- 動物病院の整形外科で診断がついた後の治療は、疾患や症状の重症度に応じて以下の方法が選択されます。
外科療法
骨折や靭帯断裂などの重度の疾患では外科手術が必要です。例えば、骨折では骨を固定するためにプレートやピンを使用する「骨折整復術」が行われます。また、椎間板ヘルニアや関節疾患では脊髄や関節の構造を改善する外科的技術が用いられます。
内科療法
軽度の症状や外科治療が適さない場合には、内服薬やサプリメントを使用して炎症や痛みを抑えます。リハビリや体重管理も治療の一環として推奨されます。
また、治療後も定期的な経過観察とリハビリを行い、ペットの快適な生活を支えます。
編集部まとめ
ここまで動物病院の整形外科についてお伝えしてきました。動物病院の整形外科の要点をまとめると以下のとおりです。
- 動物病院の整形外科は、骨や関節、靭帯、腱などの疾患や損傷を専門的に診療する診療科である
- 動物病院で対応できるその他の疾患には、足根・手根関節剪断損傷、骨の変形矯正、脊髄損傷性疾患、椎間板ヘルニアなどが挙げられる
- 動物病院の整形外科では、基本検査、歩様検査、画像検査が行われる
これらの情報が少しでも動物病院の整形外科について知りたい方のお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。