「猫の爪から血が出てる!」そんな場面に出くわすと、飼い主さんは驚きや不安でいっぱいになりますよね。猫の爪には血管が通っているため、深爪をすると出血しますし、遊んでいて爪が折れたり抜けたりすることも珍しくありません。ただし、感染症や病気が隠れている場合もあるため注意が必要です。この記事では、猫の爪から血が出る原因や受診の目安、日頃のケア方法をわかりやすく解説します。
猫の爪から血が出る原因

ここではまず、猫の爪から血が出る原因について、詳しく解説します。
- 猫の爪から血が出る原因にはどのようなものがありますか?
- 特に多いのは、深爪やケガ、巻き爪、毛づくろい中に爪を引っ張ってしまうことなど外傷性の原因です。
特に巻き爪はシニア期で起こりやすく、伸びすぎた爪が肉球に刺さって出血することがあります。高齢になると爪が太く、もろく、伸びやすくなりやすいので、早めのケアが大切です。
また、猫は古い爪のさやが自然に剥がれるため、これ自体で大量出血することはまれです。ただし、引っかけて爪が割れたり欠けたりすると出血することがあります。
- 爪切りでの出血と病気による出血の見分け方を教えてください
- 直前に爪切りやひっかけた場合で、さらに1本だけ軽く血がにじむ程度なら多くは外傷性です。
一方で、外傷がないのに爪がよく割れる、複数の爪から繰り返し出血する、爪の根元が赤く腫れる、膿む、悪臭がある、出血がなかなか止まらないなどの場合は、爪周囲の感染(爪周囲炎)や真菌症、腫瘍、全身性の病気が隠れている可能性があります。
- 外傷以外で爪から血が出るケースはありますか?
- あります。代表的なのは爪周囲炎と呼ばれる感染症で、爪の根元や周囲に細菌や真菌(カビ)が入り込んで炎症を起こすものです。また、爪が伸びすぎて肉球に食い込み、傷をつくって出血することもあります。
爪周囲炎になると、爪の付け根が赤く腫れて痛がり、膿や独特のにおいを伴うことがあります。真菌が関わる場合もあり、自然に治ることは少ないため、早めの受診が必要です。
さらに、外傷がないのに出血がなかなか止まらないときは、血液の凝固異常といった全身的な病気や腫瘍などが隠れていることもあります。こうした場合は爪だけの問題ではなく、血液検査や画像検査などで詳しく調べる必要があります。
猫の爪から血が出てる場合の対処法
実際に愛猫の爪から血が出ているのを見つけたときに、飼い主さんができる応急処置や注意点を紹介します。
- 猫の爪から血が出てるのを見つけた場合の応急処置の方法を教えてください
- まずは落ち着いて、出血の程度を確認しましょう。
少量の出血で、猫もあまり嫌がらないときは、ぬるま湯でやさしく洗って清潔にしてください。その際に、爪が折れていないか、欠けていないかも一緒に見ておきましょう。
出血が続くようなら、清潔なガーゼやティッシュをあてて軽く押さえます。しばらくして止まり、猫が普段どおりに歩けるなら、大きな心配はいりません。数日間は爪や足先の様子を見てあげてください。
それでも止まらない場合は、止血パウダーを使うか、小麦粉を爪に当てて圧迫してみましょう。粉が固まって、血を止めてくれます。
- 出血が止まらない場合はどのように対処すべきですか?
- 10分以上押さえても血が止まらない、血の量が多い場合は、できるだけ早く動物病院へ連れていきましょう。
自宅でできるのは、ガーゼやタオルで圧迫することまでです。それでも出血が続く場合や、猫が強く痛がっているときは、すぐに受診してください。放置すると感染や炎症につながることがあります。
可能なら、移動中も出血している部位を圧迫したままがよいでしょう。
- 消毒や包帯で処置を行う際の注意点を教えてください
- 人間用の消毒液は使わないでください。イソジンやアルコールなど、人にとっては安全性の高い薬でも猫にとっては刺激が強く、場合によっては有害になります。消毒が必要なときは、必ず獣医師に相談してから使用しましょう。
動物病院での診断と治療

ここでは、猫の爪から血が出ているときに動物病院でどのような診察や治療が行われるのか、また治るまでの目安について解説します。
- 爪から血が出てる場合は、動物病院を受診すべきですか?
- はい。次のような状態が見られるときは、できるだけ早く動物病院へ行きましょう。
・出血がなかなか止まらない
・出血量が多く、ぽたぽた落ちる程出ている
・爪の根元が赤く腫れている、膿や悪臭がある
・猫が痛がって歩けない、足を上げて歩く、触られるのを嫌がる
こうした症状は、ただの深爪や軽いケガではなく、感染症や体内の病気が関わっている可能性もあります。早めに受診することをおすすめします。
- 動物病院ではどのような検査や治療を行いますか?
- まずは出血の原因を突き止めるために、爪や足先の状態をよく観察し、必要に応じて血液検査やレントゲン、超音波検査などで全身のチェックを行います。その結果に応じて治療内容が変わってきます。
感染や炎症が原因であれば抗生剤や消炎薬を使い、爪が大きく損傷している場合には、爪の一部を処置することもあります。
血が固まりにくい体質や病気が見つかったときには、ビタミンKを投与したり、免疫抑制剤やステロイドを使うこともあります。
爪周囲の腫瘍や肺の腫瘍が指に転移する肺指症候群などもあり、病理組織検査や細胞診、画像検査、臨床症状から診断します。原因により疼痛の緩和、抗がん剤、外科手術などが検討されることがあります。
また、猫が傷口をなめて悪化しないように、エリザベスカラーや包帯で保護するといったケアもあわせて行われます。
- 治療期間や完治までの目安を教えてください
- 治るまでの期間は、原因や症状の重さによって大きく変わります。
ただの深爪や軽いケガであれば、出血は数分から1時間程で止まり、数日で落ち着くことが多いでしょう。
一方で、細菌や真菌による感染が起きている場合には、薬を使いながら数週間程の治療が必要になることがあります。
さらに、血液の病気など全身の異常が関わっていると、治療が長期にわたることも少なくなく、なかには数ヵ月から数年かかった例も報告されています。このため、軽い症状のように見えても油断せず、きちんと獣医師に診てもらうことが大切です。
再発防止と日頃のケア方法
ここでは、猫の爪からの出血を防ぐために日常的にできるケア方法や、適切な爪切りの頻度について解説します。
- 爪からの出血を予防するためのケア方法を教えてください
- 普段から猫の爪をチェックし、伸びすぎたり尖りすぎたりしていないか確かめることがまず第一歩です。
室内飼いの猫は爪を自然に削ることが少ないため、定期的に飼い主さん自身で確認し、尖った先端をやさしく整えてあげるとよいでしょう。爪とぎをしていても、爪全体が短くなるわけではないため、必要に応じて爪切りや爪やすりで調整してあげてください。
また、猫がリラックスしているときに爪に触られることに慣れさせるのも大切です。例えば、普段から足先や肉球をやさしく触れる習慣をつけておくと、いざというときに動じず爪ケアがしやすくなります。
さらに、生活環境を整えて猫が自然に爪を使う機会を増やすことも助けになります。キャットタワーや爪とぎボードなど、遊びながら爪を使う道具を設置するとよいでしょう。
- 出血を予防するための適切な爪切り頻度はどのぐらいですか?
- 猫の年齢や生活環境によって違いはありますが、成猫であればおおよそ3週間から1ヵ月に一度のペースで爪を切ってあげるのが目安になります。 活発に遊び爪とぎをよくする猫は自然に爪が削れるため、このペースでも十分なことが多いでしょう。
一方で、シニア猫や爪とぎをあまりしない猫は、爪が伸びやすく太くなる傾向があります。その場合はもう少し短い間隔でチェックし、必要に応じてケアしてあげることが大切です。
また、一度にすべての爪を切ろうとすると猫が嫌がることもあるため、数回に分けて少しずつ切る方法もおすすめです。どうしても難しい場合は、無理せず動物病院で爪切りをお願いする方法も検討しましょう。
編集部まとめ
猫の爪からの出血は、深爪や軽いケガのこともあれば、感染や病気のサインであることもあります。少量の出血であれば家庭での応急処置で落ち着くことが多いですが、出血が止まらない、腫れや膿がある、猫が痛がっているといった場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
日頃から定期的に爪をチェックし、適切な頻度で爪切りを行うことが、出血予防と健康管理につながります。
