猫の寄生虫は人間にうつる?猫の寄生虫の種類や治療法・予防法なども併せて解説します!

猫の寄生虫は人間にうつる?猫の寄生虫の種類や治療法・予防法なども併せて解説します!

愛猫の健康を守るうえで、寄生虫対策は避けて通れない重要な課題です。室内飼いの猫であっても、寄生虫感染のリスクがあることをご存知でしょうか。猫の寄生虫は、外部寄生虫と内部寄生虫に大別され、それぞれが猫の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、猫の寄生虫について以下の点を中心にご紹介します。

  • 猫の寄生虫とは
  • 猫の寄生虫は人間にうつるのか
  • 猫の寄生虫の予防法

猫の寄生虫について理解するためにもご参考いただけると幸いです。

ぜひ最後までお読みください。

猫の寄生虫とは

猫に関する寄生虫にはどのような種類があるのでしょうか。

外部寄生虫

猫の外部寄生虫は、皮膚や被毛に寄生し、さまざまな健康問題を引き起こす小さな生物です。代表的なものとして、ノミ、ダニ、シラミ、ハジラミなどが挙げられます。

ノミは、猫の血液を吸うことで痒みや皮膚炎を引き起こし、重度の寄生では貧血を招くこともあります。また、ノミはほかの病原体を媒介するため、二次感染のリスクも高まります。ダニによる疥癬のほか、マダニは吸血により痒みや炎症をもたらすだけでなく、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)などの深刻な感染症を媒介します。 

シラミやハジラミは、被毛や皮膚の表面に寄生し、フケや脱毛、皮膚の炎症を引き起こします。これらの寄生虫は、主に感染した猫との直接接触によって広がります。屋外に出る猫や保護猫、免疫力が低下した高齢の猫は感染リスクが高いとされています。 

内部寄生虫

内部寄生虫とは、猫の体内に寄生する寄生虫のことです。消化管内や内臓内に生息し、猫の健康にさまざまな影響を与える可能性があります。

猫回虫(ねこかいちゅう)

猫回虫(ねこかいちゅう)は、猫の小腸に寄生する白く細長い内部寄生虫で、成虫は10cm〜20cmに成長します。 感染経路は主に3つあります。
1つ目は、感染猫の糞便なかに排出された虫卵が環境中で成熟し、それを猫が経口摂取することによる感染です。2つ目は、母猫から子猫への母乳を介した感染で、子猫に多く見られます。3つ目は、ネズミなどの待機宿主を捕食することによる感染です。 

成猫では、感染しても無症状で経過しますが、子猫が感染すると、下痢や嘔吐、お腹の膨れ、発育不良などの症状が現れることがあります。これは、回虫が栄養を奪うことで成長に影響を及ぼすためです。また、重度の感染では、嘔吐物や便のなかに成虫が混じって排出されることもあります。

瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)

瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)は、猫の小腸に寄生する扁平な寄生虫で、成虫は数十cmに達することもあります。この寄生虫は、ネコノミを介して感染が広がります。
具体的には、感染した動物の糞便中に排出された瓜実条虫の片節(卵を含む部分)が環境中で乾燥し、ネコノミの幼虫がこれを摂取します。その後、ネコノミが成虫となり猫に寄生し、猫が自身の被毛をグルーミングする際に誤ってそのネコノミを飲み込むことで、瓜実条虫が猫の体内に侵入します。 

感染した猫の多くは無症状で過ごすことが多いとされていますが、重度の感染では下痢や嘔吐などの消化器症状が現れることがあります。

また、瓜実条虫は片節を切り離して排出する習性があり、これが肛門周辺に付着すると痒みを引き起こすため、猫が頻繁にお尻を舐めたり、床にこすりつける行動が見られることがあります。さらに、乾燥した片節は白いゴマ粒のように見えるため、寝床や排泄物のなかにこれらを発見することで感染に気付くこともあります。

猫鉤虫(ねここうちゅう)

猫鉤虫(ねここうちゅう)は、猫の小腸に寄生する体長約1cmの寄生虫で、主に吸血によって猫の健康に影響を及ぼします。感染経路は主に3つあります。1つ目は、感染した猫の糞便中に排出された虫卵が環境中で幼虫に成長し、これを猫が経口摂取することによる経口感染です。2つ目は、環境中の幼虫が猫の皮膚や粘膜を通じて体内に侵入する経皮感染です。3つ目は、母猫から胎盤や乳汁を介して子猫に感染する母子感染です。 

感染した猫は、小腸の粘膜に鉤虫が噛みつき吸血するため、下痢や血便、貧血などの症状を呈することがあります。子猫では、重度の貧血や脱水症状を引き起こし、最悪の場合、命に関わることもあります。成猫では無症状の場合もありますが、体重減少や食欲不振、元気消失などが見られることもあります。

猫の寄生虫は人間にうつる?

猫の寄生虫のなかには、人間に感染するものが存在し、これらは人獣共通感染症と呼ばれます。注意が必要なのは、猫回虫(ねこかいちゅう)や猫鉤虫(ねここうちゅう)などの内部寄生虫です。

猫回虫の卵は、感染した猫の糞便を介して環境中に広がります。人間がこれらの卵を誤って摂取すると、体内で幼虫が孵化し、各種臓器を移動する”内臓幼虫移行症”を引き起こす可能性があります。肝臓や肺、さらには眼や脳に影響を及ぼし、視力障害や神経症状を呈することもあります。 

一方、猫鉤虫の幼虫は、汚染された土壌や砂場などで人間の皮膚に接触すると、皮膚から侵入し”皮膚幼虫移行症”を引き起こします。皮膚に痒みや炎症を伴う蛇行状の発疹が現れます。 
これらの感染を防ぐためには、猫の定期的な駆虫や糞便の適切な処理が重要です。
また、飼い主自身も手洗いを徹底し、子どもが砂場で遊んだ後などは注意するようにしましょう。猫の健康管理と人間の衛生対策を徹底することで、これらの寄生虫による感染リスクを減らします。 

猫の寄生虫の検査方法

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猫の寄生虫検査は、外部寄生虫と内部寄生虫の種類に応じて適切な方法で行われます。外部寄生虫であるノミやマダニは、肉眼で確認できるため、視診によって発見されます。
一方、ミミヒゼンダニやニキビダニなどの微小な寄生虫は、皮膚や被毛のサンプルを採取し、顕微鏡で観察することで診断されます。 

内部寄生虫の検査では、主に糞便検査が用いられます。新鮮な糞便を採取し、顕微鏡で寄生虫の卵や幼虫の有無を確認します。この方法により、回虫や条虫などの存在を特定できます。また、必要に応じて血液検査を行い、特定の寄生虫に対する抗体や抗原の有無を調べることもあります。

猫の寄生虫の治療法

猫の内部寄生虫に対する治療は、寄生虫の種類や感染の程度に応じて適切な駆虫薬を使用することが基本となります。猫回虫や猫鉤虫、瓜実条虫などの消化管内寄生虫に対しては、内服薬やスポットオンタイプの駆虫薬が用いられます。これらの薬剤は、寄生虫の種類に応じて選択され、1回の投与で効果を期待できるものから、数週間にわたり複数回の投与が必要なものまでさまざまです。 

治療の際には、寄生虫のライフサイクルを考慮し、成虫だけでなく卵や幼虫にも効果的な薬剤を選ぶことが重要です。また、感染の再発を防ぐため、生活環境の清掃やほかの動物との接触管理も併せて行う必要があります。多頭飼育の場合、すべての猫に対して同時に駆虫を行うことで、感染の連鎖を断ち切ります。 

さらに、定期的な糞便検査を実施し、寄生虫の有無を確認することが推奨されます。検査結果に基づき、必要に応じて追加の駆虫や治療を行うことで、猫の健康を維持できます。子猫や免疫力の低下した猫では、寄生虫感染が重篤な症状を引き起こす可能性があるため、早期発見と適切な治療が求められます。

猫の寄生虫の予防法

猫 尿路結石

猫の寄生虫を予防するために、どのような工夫ができるのでしょうか。

日頃のケアを怠らない

猫の寄生虫予防には、日常的なケアが重要です。なかでも、ブラッシングやシャンプーは効果的な手段とされています。
毎日のブラッシングを通じて、被毛に付着した寄生虫やその兆候を早期に発見できます。また、猫の体調や皮膚の異常にも気付きやすくなります。シャンプーに関しては、猫が嫌がらない場合、低刺激のノミ取りシャンプーを使用することで、寄生虫の除去に役立ちます。 

さらに、日頃から被毛の手入れや皮膚の状態をチェックすることも大切です。異常を早期に発見し、適切な対処ができます。外部寄生虫は早期発見が重症化防止につながります。

屋内の清潔さを保つ

猫の寄生虫予防には、室内環境の清潔さを保つことが重要です。ノミやダニは湿度の高い環境を好むため、定期的な掃除と換気を行い、湿度管理を徹底しましょう。
また、猫の寝床やおもちゃは寄生虫の温床になりやすいため、定期的に洗浄・消毒し、清潔な状態維持が求められます。

排泄物をこまめに掃除する

猫の寄生虫予防において、排泄物の迅速な処理は重要です。猫の糞便には、回虫や条虫、原虫類などの寄生虫の卵や一部が含まれていることがあります。これらを放置すると、環境中で孵化・成長し、再び猫やほかの動物、人間に感染するリスクが高まります。そのため、猫が排泄をしたら速やかに糞便を片付けましょう。 

また、糞便の処理後には、石鹸を使用して手をしっかり洗うことが大切です。手に付着した可能性のある寄生虫の卵や病原体を除去し、二次感染や人への感染を防ぎます。
食事前や調理前には念入りな手洗いを心がけましょう。 

さらに、猫の糞便を観察する習慣を持つことも重要です。異常な色や形状、寄生虫の存在を早期に発見することで、速やかに獣医師に相談できるでしょう。

感染源との接触を避ける

猫の寄生虫感染を防ぐためには、感染源との接触を避けることが重要です。感染の可能性がある猫との直接的な接触は、寄生虫の伝播リスクを高めます。外出自由な猫や野良猫との接触は、たとえ網戸越しであっても控えることが望ましいでしょう。新たに猫を迎え入れる際には、事前に寄生虫の有無を確認し、必要に応じて駆虫を行うことが大切です。 

また、飼い主自身も感染猫との接触を避けましょう。外で見かけた猫に触れた後、そのまま自宅の猫に接すると、衣服や手を介して寄生虫を持ち込む可能性があります。頭部や耳周辺にフケやかさぶたが見られる猫は、寄生虫感染の疑いがあるため、安易に触れないよう注意しましょう。 
以上のように、室内飼育の場合でも感染する可能性があるため、定期的な予防薬の使用もおすすめです。

野良猫を保護する場合の注意点

野良猫を保護する際、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

寄生虫の対策をする

野良猫を保護する際には、寄生虫対策が重要です。外部寄生虫にはノミやダニ、内部寄生虫には回虫や条虫などが挙げられます。これらは猫自身の健康を損なうだけでなく、人間やほかのペットへの感染リスクも伴います。そのため、保護後は速やかに動物病院で健康診断を受け、適切な駆虫処置を行うことが推奨されます。 

ノミやダニは猫の血を吸い、皮膚炎や貧血を引き起こす可能性があります。また、これらの外部寄生虫は家のなかで繁殖し、人間にも被害を及ぼすことがあります。内部寄生虫である回虫や条虫は、猫の消化管に寄生し、下痢や嘔吐、栄養不良の原因となります。さらに、これらの寄生虫は人間にも感染する可能性があり、小さな子どもや免疫力の低下した方にとっては注意が必要です。 

動物病院では、糞便検査や血液検査を通じて寄生虫の有無を確認し、必要に応じて駆虫薬の投与が行われます。また、ノミやダニの駆除には、スポットオンタイプの薬剤やシャンプーが使用されることがあります。これらの処置により、猫の健康を守るだけでなく、家庭内への寄生虫の拡散を防ぎます。 

さらに、保護した猫が迷い猫である可能性も考慮し、最寄りの警察署や動物愛護センターに連絡して、飼い主が探していないか確認することも重要です。また、保護した猫を自宅で飼育する場合は、先住猫やほかのペットへの感染を防ぐため、隔離期間を設けることが望ましいでしょう。

多頭飼の場合は注意する

野良猫を保護する際、多頭飼いの家庭では注意が必要です。新たに迎え入れた猫が寄生虫や感染症を持っている可能性があり、これが先住猫に伝播するリスクが高まるためです。そのため、保護直後は新しい猫を別の部屋に隔離し、速やかに動物病院で健康診断を受けさせることが推奨されます。この診断では、寄生虫の有無や感染症のチェックが行われ、必要に応じて適切な治療が施されます。 

隔離期間中は、新しい猫と先住猫が直接接触しないように注意し、使用する食器やトイレも分けることが望ましいでしょう。また、飼い主自身も新しい猫に触れた後は手洗いを徹底し、衣服の交換など衛生管理に努めることが重要です。間接的な感染拡大を防ぎます。  

まとめ

猫 がん

ここまで猫の寄生虫についてお伝えしてきました。

猫の寄生虫の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 猫の寄生虫には外部寄生虫と内部寄生虫がある
  • 猫の寄生虫のなかには人間に感染するものが存在し、内部寄生虫には注意が必要
  • 猫の寄生虫の予防するには、屋内の清潔さを保つ、排泄物をこまめに掃除する、感染源との接触を避けるなどの日々のケアが重要

猫の寄生虫対策は、愛猫の健康と幸せな生活を維持するために不可欠です。正しい知識と適切な対策で、猫と飼い主の双方が安心して暮らせる環境を作りましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献