猫に多い病気と発症年齢は?猫の病気は小さな変化を見逃さないことが大切!

猫に多い病気と発症年齢は?猫の病気は小さな変化を見逃さないことが大切!

猫も人間と同じように自己免疫疾患、感染症、寄生虫、老化による疾患など、さまざまな病気に罹患する可能性があります。これらの病気は、猫の生活の質を低下させ、時には命に関わることもあります。そのなかでも、猫に多い病気はどのような病気か、ご存じでしょうか。

本記事では猫に多い病気について以下の点を中心にご紹介します。

  • 猫の病気の特徴
  • 猫が多くかかりやすい病気
  • 年齢別の猫が多くかかりやすい病気・症状

猫に多い病気を理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

猫の病気の特徴

猫の病気は種類が多く、病気の兆候は体の状態や行動に現れます。猫の異変に気付いたら、早期発見・早期治療が重要です。なかでも、以下の5つの行動には注意が必要です。

  1. 1. 自力で立てない・痙攣:意識が低下し、立てない、痙攣している場合は生命の危機です。脳疾患、代謝性疾患、心臓や腎臓の疾患、感染症、中毒などが考えられます。すぐに獣医師の診察を受けることが必要です。
  2. 元気がない:運動を嫌がる、疲れやすい、普段通りの行動ができない場合は、呼吸器や循環器、内臓疾患、貧血などが疑われます。
  3. 頭が傾いている:頭が傾き、まっすぐ歩けない場合は、前庭性運動失調症などの神経バランスの異常が考えられます。内耳の障害や脳疾患、中毒、感染症などが原因となることがあります。
  4. 歩き方がおかしい:歩き方に異常がある場合、骨折、脱臼、外傷などが考えられます。なかでも外出する猫や未去勢の雄猫では、交通事故やケンカによる外傷のリスクが高いです。
  5. 声がおかしい:夜中に異常な声で鳴く場合は発情期、食事中の奇声は歯周病や口内炎が疑われます。猫伝染性鼻気管炎などで声がかすれることもあります。
  6. 食欲不振、嘔吐、下痢:多くの疾患で見られます。消化器疾患、感染症、内臓疾患、ストレスなどが原因となることがあります。

猫の健康状態は普段からよく観察し、気になる症状があれば早めに対処することが大切です。

猫が多くかかりやすい病気

次に、猫が多くかかりやすい病気を分類して紹介します。まずは、感染症についてです。

感染症

猫は感染症にかかりやすいとされており、感染症の種類もさまざまです。以下で、代表的な感染症を5つ解説します。

上部気道炎

猫の上部気道炎は、鼻から喉にかけての気道が炎症を起こす病気です。人間の風邪に似た症状が現れ、発熱、くしゃみ、鼻水などが見られるため猫風邪とも呼ばれます。

上部気道炎の主な原因は、猫ヘルペスウイルスⅠ型や猫カリシウイルスの感染です。一部のケースでは、猫クラミジアやボルデテラという細菌が関与することもあります。

感染経路は、感染した猫の鼻水や唾液などの分泌物が鼻、お口、目の粘膜に接触することです。潜伏期間は通常2日〜10日程度です。

症状は多岐にわたり、くしゃみや鼻水、発熱、食欲不振などです。鼻水や鼻詰まりにより食欲が低下することが多く、長引く場合は慢性的な鼻炎となることもあります。
また、結膜炎による涙目や目やにも頻繁に見られ、重度の場合は目が開かなくなることもあります。猫カリシウイルス感染の場合では、口腔内や舌に潰瘍ができることや、肺炎や関節炎が見られることもあります。

治療の主な方法は対症療法と支持療法です。インターフェロン療法や抗ウイルス薬、抗生剤の投与が行われることもありますが、基本的には症状を緩和し、体力や抵抗力を維持することが重視されます。

猫パルボウイルス感染症

猫パルボウイルス感染症は、猫に広く見られるウイルス性の病気で、汎白血球減少症とも呼ばれます。感染すると白血球が減少し、免疫力が低下します。
主な症状は、食欲不振、嘔吐、下痢、発熱が挙げられます。なかでも子猫が感染すると重症化しやすく、数ヵ月齢の子猫では致死率が高いです。

猫パルボウイルス感染症の原因は、パルボウイルスというとても感染力の強いウイルスです。感染経路は主に経口感染で、感染した猫の排泄物や嘔吐物を介して広がります。

家に来たばかりの子猫などで症状が見られ、ワクチン接種歴が不明な場合は、早急に動物病院で診察を受けることが推奨されます。

治療は主に入院しての静脈点滴が中心です。点滴により水分や電解質を補給し、吐き気止めや抗生剤を使用して二次感染を防ぎます。生後数ヵ月の子猫では治療を行っても死亡するケースが多いとされますが、回復することもあります。

猫伝染性腹膜炎(FIP)

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、1歳未満の子猫に多く見られる致命的な疾患です。発症すると、食欲不振、活動性の低下、発熱、体重減少などの症状が現れ、約数日〜1ヵ月以内に死亡することが多いとされます。

FIPは猫腸コロナウイルス(FCoV)が病原性の高い猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)に突然変異することで引き起こされます。ストレスがこの変異の引き金とされる一因です。

FIPにはウェットタイプとドライタイプの2つの種類があります。ウェットタイプは腹水や胸水が溜まり、呼吸困難や消化器症状を引き起こし、進行が速く致死率が高いです。ドライタイプはさまざまな臓器に小さなしこりが発生し、眼や脳などに異常を引き起こします。

治療には、免疫抑制剤などが使われてきましたが、近年ではGS-441524などの新しい治療薬が有効とされています。

新しい治療薬の導入により、FIPは不治の病から治療可能な病気へと変わりつつありますが、日本ではまだ承認されていないため、治療には高額な費用がかかることが多いようです。

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)は、野外で飼育されている猫に多く見られる重篤な感染症です。感染すると、貧血、リンパ腫、発熱、歯肉口内炎、白血病などを発症し、重篤な場合は死亡することもあります。

猫白血病ウイルスは白血病の原因になるだけでなく、免疫力の低下や腎臓病、流産などさまざまな病気を引き起こします。ほかの感染症と同様に、生まれたての子猫が感染すると持続感染しやすく、高い確率で発病・死亡します。

感染後1〜2ヵ月は発熱や食欲不振などのウイルス感染症状が現れますが、白血球や血小板の減少、貧血などの重症状も見られます。血液検査で陽性と判定されるのは感染後3〜4週間で、この時期に輸血やインターフェロン治療が行われることがあります。

持続感染になるとウイルスが消える可能性は低く、感染猫はほかの猫にとって感染源となるため注意が必要です。

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)は猫エイズとも呼ばれ、野外で生活する猫の約3割が感染しています。室内飼育の猫に比べ、感染率は20倍高く、オスはメスの2倍以上感染する割合が高いです。

FIVは、感染猫に咬まれることで唾液を介して広がり、長期間にわたり免疫不全を引き起こします。感染初期の急性期には一時的な発熱、下痢、リンパ節の腫れなどが見られます。

その後、無症状キャリア期に移行し、免疫力の低下に伴い、口内炎や鼻炎などの慢性感染症が現れ、最終的にはエイズを発症します。エイズを発症すると、貧血や腫瘍、体重減少などの症状が出て、数ヵ月以内に死亡する可能性が高まります。

治療には抗ウイルス薬やインターフェロンの投与が行われますが、根本的な治療法はまだ確立されていません。口内炎や慢性感染症には抗生物質や抗炎症剤を用いた対症療法が主に行われます。FIVに感染した猫は、定期的な健康管理と適切な治療を受けることが重要です。

猫下部尿路疾患

猫下部尿路疾患は、尿路結石、膀胱炎、尿道炎、尿路感染症、膀胱や尿道の腫瘍など、さまざまな症状を引き起こす疾患の総称です。特発性膀胱炎が約60%を占め、結晶(結石)による膀胱炎も多く見られます。

主な症状には頻尿、排尿困難、血尿、不適切な場所での排尿、排尿時の痛みがあります。オス猫は特に結石が詰まりやすく、重症化するリスクが高いため、迅速な治療が必要です。

治療は注射や内服薬、カテーテルの使用、場合によっては陰茎切除が必要となることもあります。再発防止には食事療法や継続的な尿検査が重要です。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモン(サイロキシン、トリヨードサイロニン)の過剰分泌により引き起こされる疾患で、高齢の猫に多く見られ、7歳以上の猫の10%以上が罹患しているとされています。

甲状腺ホルモンは全身の代謝を調整するため、過剰分泌は多くの臓器に負担をかけます。
主な症状には体重減少、食欲増加、多飲多尿、嘔吐、下痢、攻撃性の増加、落ち着きのなさ、毛艶の悪化などが含まれます。

原因は主に甲状腺の過形成や腫瘍によるもので、遺伝的要因や環境要因が関与していると考えられています。

治療法は、内科療法としての投薬、外科療法としての甲状腺の切除、または療法食の利用があります。治療には生涯にわたる管理が必要で、慢性腎臓病の併発が見られることもあります。

その他

そのほかにも猫に多い病気として、慢性腎臓病・腎不全、胃腸炎、心筋症などがあります。

猫の慢性腎臓病・腎不全は、高齢の猫で多く見られ、腎臓の機能が低下する病気です。腎臓病は4つのステージに分類され、進行すると命に関わる危険性が高くなります。治療は進行を進行を緩やかにする食事管理や投薬、輸液などです。

猫の胃腸炎は、ストレスや感染症、誤飲などが原因で発症します。嘔吐や下痢、血尿、頻尿などの症状が見られた場合は早急に治療が必要です。

心筋症は猫の心臓病のなかで多く見られ、呼吸困難や心拍数の増加などが主な症状です。早期発見には健康診断が重要です。

年齢別での猫が多くかかりやすい病気や症状

年齢によってもかかりやすい病気は変わります。上記で挙げた病気も含め、年齢ごとのかかりやすい病気も紹介します。

0歳

0歳の赤ちゃん猫は、結膜炎、下痢、嘔吐、膀胱炎、外耳炎といった症状が見られます。0歳の猫は体力がまだ発達していないためです。0歳から年に1回の健康診断を受けることをおすすめします。健康診断では先天的な病気の発見が可能とされています。

1~6歳

1~6歳の年齢の猫は膀胱炎、結膜炎、下痢、嘔吐、皮膚炎といった症状が現れやすいです。なかでも泌尿器系の病気に注意が必要で、膀胱炎は頻発することがあります。頻繁な嘔吐や下痢、結膜炎も見逃さず、早期に動物病院で診察を受けることが重要です。

7~9歳

7~9歳の猫は、膀胱炎、嘔吐、結膜炎に加え、腎臓病や外耳炎も発症しやすくなります。シニア世代の手前となるため、年に2回の健康診断が推奨されています。定期的な検査で健康状態を把握し、病気の早期発見と治療に努めましょう。

10~12歳

10~12歳の猫はシニア(老猫)と呼ばれ、嘔吐、下痢、胃腸炎、慢性腎臓病に加え、腫瘍の発症率が増加します。これらの疾患は深刻な健康問題を引き起こす可能性があります。

13歳~

13歳以上の猫は高齢となり、免疫力や筋力が低下しやすくなります。嘔吐、膀胱炎に加え、慢性腎臓病、慢性腎不全、甲状腺機能亢進症といった疾患に罹患しやすい傾向があります。

猫の病気の予防法

最後に、猫に多い病気の予防法を紹介します。猫の病気は、予防が大切な場合も多いとされるため、猫を飼っている方はぜひ参考にして、愛猫の健康を守りましょう。

ワクチン接種

猫の病気の予防には、ワクチン接種が重要です。ワクチンにはコアワクチンとノンコアワクチンの2種類があります。コアワクチンは、すべての猫に接種が推奨され、感染力の強い病気に対応しています。

一方、ノンコアワクチンは飼育環境や地域のリスクに応じて接種が判断されます。また、定期的な健康診断も欠かせません。半年に1回の健康診断で、尿路結石や腎臓病、細菌や寄生虫の感染症を早期発見できる可能性があります。

食事管理

猫の健康を守るためには、適切な食事管理も大切です。
猫が欲しがるままにエサを与えると肥満になり、肝臓に負担がかかることがあります。

また、塩分の多い人間の食べ物を与えると腎臓に負担がかかります。日常的に健康チェックを行い、排泄物の状態や体を痒がっていないかなど確認し、下痢、血尿、血便、ノミやダニの付着などの異常を早期に発見しましょう。

ブラッシングやデンタルケア

猫の健康を維持するためには、定期的なブラッシングとデンタルケアも必須です。ブラッシングは毛球症の予防に役立ち、猫が毛を飲み込むリスクを減らします。また、部屋を清潔に保つことで、ノミやダニの繁殖を防ぎます。

デンタルケアは、適切な歯磨きを行うことで歯肉炎を予防し、猫の口腔内の健康を保ちます。

まとめ

ここまで猫に多い病気をお伝えしてきました。猫に多い病気の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 猫の病気は種類が多く、病気の兆候は体の状態や行動に現れる特徴があり、自力で立てなかったり、元気がなかったり、頭が傾いていたり、歩き方がおかしかったり、声がおかしいなどの症状に特に注意が必要とされる
  • 猫が多くかかりやすい病気は、上部気道炎、猫パルボウイルス感染症、猫伝染性腹膜炎(FIP)、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)、猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)、猫下部尿路疾患、甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病・腎不全、胃腸炎、心筋症などがある
  • 0歳の猫は、下痢、結膜炎、外耳炎、嘔吐、膀胱炎などが出やすく、1~6歳の猫は上記の病気に加えて皮膚炎などが出やすく、7~9歳の猫も上記の病気と腎臓病、外耳炎が発症しやすく、10~12歳の猫は上記の病気と胃腸炎、慢性腎臓病、腫瘍が出やすく、13歳以上の猫は慢性腎不全、慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症が発症しやすくなる

猫は年齢や生活環境によりさまざまな病気を発症します。感染症、尿路疾患、甲状腺機能亢進症などが多く見られ、どの病気でも早期発見と適切な治療が重要で、ワクチン接種、食事管理、ブラッシングやデンタルケアなどの予防も行うことが大切です。

愛猫の健康を守るために、これらの情報をぜひ参考にしてください。

参考文献