猫が老衰してきたときに見られる症状とは?日常生活でのケアや介護方法についても解説

猫が老衰してきたときに見られる症状とは?日常生活でのケアや介護方法についても解説

猫の寿命や老化を知ることは、愛猫が年を取ったときに適切なケアを提供するためにとても大切なことです。この記事では、猫の年齢と人間の年齢を比較しながら、老化の進行についてわかりやすく解説します。また、老衰してきた猫に見られる具体的な症状や、日常生活でのケア方法、最期の看取り方も詳しくお伝えします。愛猫が健やかに老後を過ごせるよう、一緒に学んでいきましょう。

猫の寿命

猫の寿命

猫の寿命を理解することは、老衰による変化やケアを適切に行うために重要です。ここでは、猫の寿命についてさまざまな角度から解説します。

 猫の年齢と人間の年齢の比較

猫は7歳を過ぎるとシニア期に入るとされています。老衰の始まりは個体差がありますが、一般的には7歳頃から始まることが多いです。

【猫の年齢】……【人間の年齢】

1歳……18歳
2歳……20歳
3歳……28歳
4歳……32歳
5歳……36歳
6歳……40歳
7歳……44歳
8歳……48歳
9歳……52歳
10歳……56歳
11歳……60歳
12歳……64歳
13歳……68歳
14歳……72歳
15歳……76歳
16歳……80歳

上記のとおり、猫は人間に比べてとても速いスピードで年を取ります。例えば、猫の16歳は人間の80歳に相当します。一般的に、猫がシニア(老猫)と呼ばれるのは7歳からであり、人間の年齢に換算すると約44歳にあたります。

猫の平均寿命

2023年の一般社団法人ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査によると、猫の平均寿命は15.79歳でした。また平均年齢は、完全室内飼育か屋内外を行き来するかによって異なります。室内保育の猫は16.25歳、屋内外を行き来する猫は14.18歳でした。

一般的に、猫は15歳から16歳になると老衰を迎える可能性があります。

猫の種類、性別による寿命の差

猫の平均寿命は種類によって異なります。特に平均寿命が長いとされるのは、混血種(ミックス)、日本猫、スコティッシュフォールド、アメリカンショートヘア、ペルシャです。逆にマンチカンやメインクーンは寿命が短い傾向にあります。また、短毛種は毛球症のリスクが低く、長生きしやすいとされています。

また、メス猫の方がオス猫よりも寿命が長い傾向があります。

もちろん個体差があるため、これらはあくまで目安です。

老衰してきた猫に見られる症状

老衰してきた猫に見られる症状

老衰が進んでいる猫には、いくつかの症状が現れます。以下では、具体的にどのような症状が見られるかを説明します。

毛並みや食欲の変化

栄養不足、とくにたんぱく質の不足により、毛並みがボサボサになったり毛艶が悪くなったりします。また、頻繁に行っていた毛づくろいの回数が減ることも、毛並みが悪くなる原因です。老猫の毛艶が悪くなってきた場合、それは老衰のサインかもしれません。

老化に伴い運動量が減るため、食事の量も減少し、それに伴って筋肉量が減ります。食欲が低下すると、必要な栄養素が不足し、筋肉や免疫力が低下します。その結果、身体のさまざまな機能が衰え、痩せてしまうこともあります。

運動能力の低下

猫は高い柔軟性と反射神経を持ち、高い場所や細い道も難なく移動します。しかし、老衰が進むと筋力の低下や関節の炎症が起こり、高い場所に登れなくなったり、不安定な場所を避けたりするようになります。

高齢の猫には、ステップ付きのキャットタワーや段差の少ない場所を用意して、足腰への負担を軽減してあげるとよいでしょう。

飼い主の呼びかけに対する反応の変化

老猫は老化によって聴力や視力が低下し、周囲への反応が鈍くなることがあります。特に、「飼い主の呼びかけに反応しない」「反応が遅れる」などはよく見られる症状です。

また、視力や聴力の低下により、環境の変化に対する適応力も低下し、突然の音や動きに驚きやすくなることもあります。このような変化に気付いたら、猫の生活環境を見直し、静かで安全性の高い場所を提供することが大切です。

粗相や夜鳴きの増加

老猫は老衰によって脳の機能が低下し、認知症を発症することも珍しくありません。

認知症になると、トイレの場所がわからなくなり粗相をする回数が増えることがあります。また、夜中に大きな声で鳴き続ける夜鳴きも見られます。

認知症は完治する病気ではありませんが、早期に獣医師に相談することで、状況を改善するための対策を取ることができます。愛猫の異常な行動に気付いたら、早めの対応を心がけましょう。

睡眠時間の増加

猫はもともと睡眠時間が長い動物ですが、年齢を重ねるにつれてその時間がさらに増加します。

食事の時間以外ほとんど寝ている、飼い主が呼びかけてもなかなか起きないなど、明らかに睡眠時間が増えてきたら、それは老化が進んでいるサインです。最近、愛猫が以前よりも多く寝ていると感じたら、老衰が進行している可能性が高いでしょう。

巻き爪

老猫の爪は伸びやすく、巻き爪を起こしやすいです。巻き爪が肉球に食い込んでしまうと、猫は強い痛みを感じます。老猫の爪は小まめに確認して、伸びていたら切るように心がけましょう。

老衰してきた猫の日常生活でのケア

老衰してきた猫の日常生活でのケア

老衰が進行している猫に対する、日常生活のケアについて紹介します。

食事と水分補給の調整

・猫の年齢に合わせた餌を与える

老衰が進む猫には、今までの餌から総合栄養食に変えることが大切です。シニア向けのフードは、猫が必要とする栄養素をバランスよく含んでおり、健康維持に役立ちます。

パッケージに「一般食」と書かれたフードは、おかずとして与えられるフードのため、そればかり食べていると栄養が偏ってしまいます。

総合栄養食のなかでも「ヒューマングレード」と表記されているフードは、より安全性が高く健康的なものとして知られています。愛猫の食事ケアを考えるなら、ぜひ選択肢に入れたいフードです。

・水をしっかり与える

猫は慢性腎臓病にかかりやすく、その一因として水分不足が挙げられます。腎臓病を予防するためには、新鮮な水を常に摂取できる環境を整えることが大切です。家の中に複数の水飲み場を設置し、猫がどこにいても水を飲めるようにしましょう。

猫は流れる水を好む傾向があるため、流れる水しか飲まない猫には、自動循環する給水器の利用を検討してみてください。猫が興味を持つことにより、水を飲む頻度が増えることが期待できます。

また、猫の水分摂取量を増やす方法として、ドライフードからウェットフードへの切り替えが効果的です。ウェットフードには多くの水分が含まれており、食事を通じて自然に水分を摂取できます。

注意点として、ミネラルウォーターは避けるべきです。ミネラルウォーターにはミネラル分が多く含まれており、これが猫の腎臓に負担をかけ、結石の原因となることがあります。猫には、できるだけ軟水や純水を与えるようにしましょう。

安全な生活環境の整備

・段差や障害物を少なくする

老猫は若い頃のように高い段差を越えたり、ジャンプしたりすることが難しくなります。そのため、キャットタワーはあまり高くないものに交換し、トイレや寝床の段差を確認して、猫が無理なく移動できる環境を整えましょう。

また、部屋の中にある障害物を取り除き、歩きやすい通路を確保することも重要です。これにより、転倒やケガのリスクを減らすことができます。

・滑らない床にする

老猫の足腰を守るために、滑り止めマットを敷いたり、床材を見直したりして、滑りにくい環境を作ることが大切です。

フローリングなどの滑りやすい床は、猫が歩くたびに足腰に負担がかかりやすく、関節に問題を引き起こすことがあります。滑り止めマットを適所に配置し、猫が安定して歩けるようにしましょう。

また、滑りやすい床材を、カーペットやラグなどの滑りにくい素材に変えることも効果的です。

・行動できる範囲を狭くする

老化が進むと、階段や部屋の移動が負担になることがあります。猫が負担なく過ごせるように、行動範囲を狭くすることを検討しましょう。

例えば、危険な場所には柵を設置し、一部屋に食事や寝床、遊び場をまとめて配置することで、猫が無理なく過ごせる環境を作ります。これにより、猫のストレスを減らすことができます。

また、老猫が迷子になったり、危険な場所に入り込んだりするリスクも減らせます。

動物病院での定期的な受診

老猫の変化が老化によるものなのか、病気が原因なのかを判断するのは難しいことです。

素人判断をせず、動物病院で定期的に診断を受け、適切なケアを行うことで、穏やかな老後を過ごさせてあげることができるでしょう。

老猫してきた猫の介護の方法

老猫してきた猫の介護の方法

ここでは、老衰が進んだ猫の介護方法を紹介します。

排泄の介助

歳をとると足腰が弱り、トイレへの移動が困難になる場合があります。老猫の排泄介助には、以下の方法が効果的です。

・トイレの入口にスロープを取り付ける

・トイレまで連れて行ってあげる

・寝床からトイレまでの道を歩きやすく工夫する

猫は足腰が弱っても自力でトイレに行きたがる傾向があります。そのため、いつもいる場所からトイレまでの道には、滑り止めを敷いたり段差などの障害物を排除したりして、歩きやすい環境を整えましょう。

また、トイレの段差は老猫にとって負担となるため、スロープを取り付けることでジャンプせずに出入りできるようにします。

自分でトイレまで行くのが難しい場合は、猫がトイレに行くタイミングを把握し、定期的にトイレに連れて行ってあげると粗相の防止につながります。

食事の介助

老猫になると、食欲や飲水量の低下が見られることが多くなります。老猫の食事には以下の介助が必要です。

・フードを消化のよい内容にする

・食器の高さを調節する

・体勢を支えてあげる

・自分のペースで食事ができる環境を整える

老猫は消化器官の働きが衰えるため、消化のよい状態のフードを与えることが重要です。シニア用フードに切り替えたり、ぬるま湯でふやかしたり、ウェットタイプのフードにすることで、消化を助けることができます。

また、前傾姿勢が負担になることが多いため、食器の位置を少し高めに設定してあげると負担を軽減できます。必要に応じて、飼い主が手やスプーンで食べさせたり、身体を支えてあげたりするのもよいでしょう。

寝たきりへの対応

老猫になると眠って過ごす時間が増え、筋肉の衰えから寝たきりになることも少なくありません。寝たきりの老猫への介助は以下の方法で行います。

・厚みのあるクッションを敷く

・数時間おきに体位変換をする

・マッサージをしてあげる

寝たきりになると痩せてしまうので、硬い場所に骨が当たり、痛みを伴うことがあります。老猫の寝床には、骨が当たっても痛くないクッション性のある素材を用意しましょう。

同じ体勢で長時間寝ていると内臓に負担がかかったり、床ずれの原因になることがあります。これを予防するために、数時間おきに体の向きを変える体位変換を行いましょう。

身体を起こしたついでに、水分補給を行うと効率的です。また、老猫の身体全体を優しくマッサージしてあげましょう。痛みの軽減になりますし、スキンシップもできます。

 老衰してきた猫の看取りと飼い主の心構え

 老衰してきた猫の看取りと飼い主の心構え

人間と同じように、猫も年を取り、やがて息を引き取ります。そんな日を迎えるまでに、飼い主がしておきたい心構えをお伝えします。

猫の最期の看取り方

愛猫が生きているうちは考えたくないことですが、それでも看取り方を決めておくのは大切なことです。どのようなことを準備しておくべきなのか、見ていきましょう。

・どこで最期を迎えるのか

愛猫が最期を迎える場所について、病院で看取るのか、自宅で看取るのかを考えておくことはとても重要です。基礎疾患や延命治療の有無、愛猫の健康状態、家族の意思などを確認し、事前にかかりつけの獣医と相談しておきましょう。

・埋葬場所や方法を決めておく

愛猫が亡くなった後の埋葬場所や、方法をあらかじめ決めておくことも大切です。庭付きの一軒家では庭に埋葬することが可能ですが、賃貸やマンション住まいの場合は、ペット霊園やペット葬儀社に依頼して火葬し、お墓に埋葬するのが一般的です。

ペット霊園や葬儀社を利用する場合、事前に業者を決めておくことでスムーズに供養の準備ができます。

飼い主の心構え

老猫の老衰が始まると、余命はあまり長くないことを覚悟する必要があります。飼い主や家族は、愛猫の最期がいつ訪れてもおかしくないことを理解し、心の準備をしておきましょう。家族と愛猫が一緒に写った写真を残すこともおすすめです。

仕事や学校で家を留守にすることが多い場合、愛猫の最期に立ち会えない可能性もあります。そのため、残された愛猫との大切な時間を大切にし、できる限りの愛情とケアを注いであげてください。悔いが残らないよう、愛猫との時間を大切に過ごしましょう。

まとめ

猫の寿命や老衰の兆候、日常生活でのケア、介護方法、そして最期の看取り方について紹介しました。

猫の老化は避けられない現実です。心の準備をしておきましょう。適切なケアによって、穏やかな老後を過ごさせてあげることができます。

愛猫との大切な時間を悔いなく過ごすため、愛猫の変化に気づいたら、獣医師と相談しながら適切な対応を行いましょう。ぜひ、愛猫との素敵な時間を過ごしてください。

参考文献