犬の胃腸炎は、胃や腸の炎症によって引き起こされる消化器の疾患です。嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こし、食欲不振や元気の低下をもたらすことがあります。
本記事では、犬の胃腸炎について以下の点を中心にご紹介します!
- 犬の胃腸炎とは
- 犬の胃腸炎の検査
- 犬の胃腸炎の治療
犬の胃腸炎について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
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犬の胃腸炎とは
- 犬の胃腸炎の症状について教えてください。
- 犬の胃腸炎の症状が愛犬に当てはまるのか確認し、適切に対応することが、愛犬の健康を守る上で重要です。具体的には、以下の症状があります。
嘔吐:嘔吐は犬が食べた物や黄色がかった胆汁、透明から白い泡を含む胃液など、さまざまなものを吐き出します。ときには血液が混じることもあり、大量の血液を含む嘔吐物は迅速な治療が必要です。
下痢:下痢の形状は多岐にわたり、マヨネーズ状の軟便から水のような水様便、血便、タール便まで観察されます。なかでも、血便やタール便は病状の重さを示す指標となり得ます。
食欲不振:胃腸の不調はしばしば食欲の低下を招きます。犬が普段の食事に興味を示さない場合、何らかの問題がある可能性があります。
落ち着かない様子:通常活発なはずの犬が元気を失い、落ち着かない様子を見せることがあります。これは痛みや不快感のサインです。
腹痛:犬がお腹をかがめた姿勢を取る、触れると嫌がるなど、腹部に痛みがあることを示します。
吐血/血便:嘔吐物や便に血が混じることは、内部出血や重度の炎症を示唆しており、緊急の治療が必要な場合があります。
- 犬の胃腸炎の原因について教えてください。
- 犬の胃腸炎はさまざまな原因によって引き起こされます。具体的な原因は、以下の通りです。
食物関連:犬は好奇心旺盛なので、腐敗した食物や不適切なものを食べることがあります。これには生ゴミを漁ることや食物アレルギー、急な食事の変更も含まれます。
細菌感染:カンピロバクターやクロストリジウムといった細菌が原因で引き起こされることがあります。これらの細菌は、不適切に保存された食物などを通じて犬に影響を及ぼすことがあります。
ウイルス感染:軽症から重症にかけて、コロナウイルス、パルボウイルス、ジステンパーウイルスなどのウイルスが胃腸炎を引き起こすことがあります。
寄生虫:回虫、コクシジウム、ジアルジア、トリコモナスなどの寄生虫が原因で発症することがあります。寄生虫は幼犬に見られることが多いとされています。
薬物:非ステロイド性抗炎症剤などの薬物が胃腸炎を引き起こすことがあります。これは薬物の副作用によるものです。
中毒:有害な植物や薬剤による中毒も胃腸炎を引き起こすことがあります。
ストレスや環境変化:ペットホテルへの預け入れなど、ストレスや環境の急激な変化も胃腸炎を引き起こす原因になり得ます。
犬の胃腸炎の検査
- 犬の胃腸炎を疑った際に受ける可能性がある検査を教えてください。
- 以下で、胃腸炎の疑いがある犬に対して行われる検査方法について詳しく説明します。
触診
獣医師は、犬の腹部を触診することで、痛みの有無、腫瘍、膨満などの異常を探ります。触診は基本的な診察方法の一つです。
糞便検査
下痢をしている場合、糞便検査が行われます。これにより、寄生虫、細菌、ウイルスの有無を調べられます。可能であれば、獣医師の診察前に新しい糞便サンプルを提供することが推奨されます。
血液検査
全身の健康状態を把握し、脱水症状や感染症、内臓器官の機能障害などを確認します。
ウイルス検査
パルボウイルスやジステンパーウイルスなど、特定のウイルス感染が疑われる場合に行われます。
超音波検査
超音波検査は、肝臓、膵臓、脾臓などの腹腔内臓器の状態を確認するために使用されます。超音波検査では炎症、腫瘍、異物などの有無を確認できるとされています。
X線検査
腹部のX線検査を通じて、腸閉塞、腫瘍、腹部内の異物などを確認します。
内視鏡検査
食道、胃、小腸、大腸の内部を直接観察し、異物の摘出や病変の生検を行います。
腹腔鏡検査
慢性肝疾患や膵疾患の診断に利用され、開腹手術よりも負担が少なく、回復が早いというメリットがあります。
これらの検査は、犬の全身状態、症状の程度、疑われる疾患に基づいて選択されます。獣医師は上記のような検査の結果を確認し、適切な治療法を決定します。
- 動物病院に行くべき症状について教えてください。
- 犬に特定の症状が現れたときには、迅速に動物病院を受診することが重要です。ここでは、犬を獣医師に連れて行くべき緊急性が高い症状について解説します。
【緊急性が高い症状】
頻繁な水様下痢:脱水や重度の感染を示唆する場合があり、持続する場合はすぐに対処が必要です。
嘔吐の発生:嘔吐が伴う場合は、脱水や重大な健康問題の可能性があるため、注意が必要です。
血便または黒色便:消化管内の出血を示す可能性があり、深刻な状態のサインです。
食欲不振や元気の低下:体調不良の兆候であり、ほかの症状と併せて見られる場合は要注意です。
体重の減少:長期間にわたる健康問題の可能性を示している場合があります。
下痢が3日以上続く場合: 持続する下痢は、脱水やほかの深刻な問題を引き起こす可能性があります。
【特定の状況における受診の必要性】
子犬や老犬:免疫力が弱い、または持病がある子犬や老犬は、脱水症状や急速な健康悪化のリスクが高いため、下痢が見られた場合でも早めに獣医師の診察を受けることが推奨されます。
異常な便:血が混じっている場合や、ジャムのような状態、または異常に黒い色をした便が観察された場合などは、胃腸に問題がある可能性が高く、獣医師の診断が求められます。
排便回数の増加:下痢で排便回数が増えている場合、脱水のリスクが高まります。なかでも水様下痢が見られる場合は、迅速な受診が推奨されます。
胃腸炎の症状は、軽度から重度まで様々で、緊急性も大きく異なります。
嘔吐や下痢を一日に何度も繰り返す場合や、食欲や元気の低下がみられる場合は速やかに受診されたほうがよいでしょう。
特に月齢の低い子犬や老犬、持病などで免疫低下がある犬では注意が必要です。
愛犬が上記のような症状を示した場合は、躊躇せずに速やかに動物病院を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
犬の胃腸炎の治療と予防
- 犬の胃腸炎の治療方法について教えてください。
- 犬の急性胃腸炎は、多くの場合自然に回復しますが、脱水や症状の緩和を目的とした治療が必要な場合もあります。治療は症状に応じて多岐にわたり、異物摂取などほかの原因がある場合には、その対応も行われます。
主な治療方法には、輸液療法をはじめ、制酸剤、消化管運動促進剤や抑制剤、抗生剤、制吐剤、止瀉薬、消化管保護剤、プロバイオティクスの使用などがあります。嘔吐が続くなど内服薬の摂取が難しい場合には、通院して皮下点滴や注射により治療が実施されることもあります。
改善が見られない場合、急性胃腸炎以外の疾患が疑われ、さらに詳細な検査や入院が必要になることもあります。食事に関しては、獣医師の指導に従うことが重要で、食事を再開するときは嘔吐や下痢が悪化しないよう慎重に進める必要があります。
治療の効果が期待できない場合や再発を繰り返す場合は、原因特定のための追加検査が行われます。若齢の犬や体力が落ちている犬では、低血糖や低体温のリスクも高まるので、注意が必要です。
- 犬の胃腸炎の治療費について教えてください。
- 犬の胃腸炎治療にかかる費用は症状や治療法により差がありますが、2日間の治療期間で合計約21,060円が目安となります。治療には診察料、血液検査、皮下点滴、注射、内用薬などが含まれ、一回の通院で約5,000円から16,000円の範囲で費用が発生します。
これらは過去の請求事例に基づく一例であり、実際の費用は動物の状態や受診する動物病院によって異なるため、具体的な料金を知りたい場合はかかりつけの病院に直接確認しましょう。
- 犬の胃腸炎の予防法について教えてください。
- 犬の急性胃腸炎予防には、誤食防止策を講じることが基本です。生ごみやゴミ箱に触れない環境を作り、散歩中の拾い食いにも注意しましょう。また、犬のストレスを抑え、快適な生活環境を整えることが重要です。
食事やおやつを変更するときには、徐々に切り替えて便の状態や体調を観察し、適切でない人間の食べ物を与えないようにしてください。なかでも子犬は、下痢や嘔吐が見られた場合、命を守るために迅速に獣医師の診察を受けることが大切です。食事の切り替えは急に行わず、新しい食べ物は少量から試し、お腹の弱い犬には低脂肪食を検討すると良いでしょう。
編集部まとめ
ここまで犬の胃腸炎についてお伝えしてきました。
犬の胃腸炎の要点をまとめると以下の通りです。
- 犬が嘔吐、下痢、食欲不振、落ち着かない様子、腹痛、吐血や血便などの症状を示す場合、胃腸炎の可能性があり、速やかに獣医師の診察が必要になる。
- 犬の胃腸炎が疑われた場合、触診、糞便・血液・ウイルス検査、超音波・X線・内視鏡・腹腔鏡検査が行われ、痛み、腫瘍、脱水、感染症などを確認し適切な治療を選択する。
- 急性胃腸炎の犬は輸液療法、制酸剤、抗生剤などで治療する。重症や改善がない場合、詳細検査や入院が必要。
犬の胃腸炎は、適切な治療と管理で改善が見込めます。原因の特定と早期治療が重要です。愛犬の健康を守るために、この情報が役立つことを願います。最後までご覧いただき、ありがとうございました。