犬の椎間板ヘルニアの初期症状は?進行別の症状や治療法なども併せて解説します

犬の椎間板ヘルニアの初期症状は?進行別の症状や治療法なども併せて解説します

犬の椎間板ヘルニアは早期発見が重要です。初期症状に気付かず放置してしまうと、進行するにつれて歩行困難や痛みが増し、場合によっては命に関わる可能性もあるようです。

本記事では犬のヘルニアの初期症状について以下の点を中心にご紹介します。

  • 犬の椎間板ヘルニアとは
  • 犬の椎間板ヘルニアの初期症状と進行とは
  • 犬の椎間板ヘルニアの治療

犬のヘルニアの初期症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

犬の椎間板ヘルニアについて

犬の椎間板ヘルニアとはどのような病気なのでしょうか。以下に詳しく解説します。

犬の椎間板ヘルニアとは

犬の椎間板ヘルニアは、背骨間の椎間板が損傷して神経や脊髄を圧迫する疾患です。椎間板は背骨の動きを助けるクッションの役割を果たしますが、衝撃や負荷で位置がずれ、神経に影響を及ぼす場合があります。胴が長い犬種や首や腰に負担がかかりやすい犬種、特にミニチュアダックスフンドなどで発症しやすいとされています。

初期症状として痛みや震えが見られ、進行すると四肢が動かしにくくなり、最悪の場合は麻痺に至ることもあります。脊髄の圧迫が神経の機能を妨げ、歩行困難や臓器不全を引き起こす可能性もあるため、最初の症状が見られてから約12~24時間以内を目安に、早期発見と治療が重要です。

急なジャンプや無理な運動が要因となるため、生活環境や運動量に配慮し、予防に努めることが必要です。

犬の椎間板ヘルニアの種類

ハンセン1型

ハンセン1型椎間板ヘルニアは、椎間板のなかにある髄核が椎間板の破裂により脊柱管内に飛び出し、脊髄を圧迫して発症する病気です。一部の犬種が若い年齢から発症することがあり、症状は突然現れるケースが多いようです。

特にミニチュア・ダックスフンドは、この病気にかかりやすい犬種といわれています。軟骨異栄養性犬種と呼ばれる犬種に見られることが多いとされる特徴で、椎間板の変性が早く進行し、若い時期から椎間板の弾力性が失われやすいためです。

このような椎間板の状態では、衝撃や負荷がかかった際に髄核が椎間板外に飛び出してしまうリスクが高まります。

軟骨異栄養性犬種には、ミニチュア・ダックスフンド以外にもトイ・プードル、フレンチ・ブルドッグ、ウェルシュ・コーギー、ビーグルなどが含まれます。これらの犬種では、椎間板ヘルニアへの注意が必要で、日常生活でジャンプや急激な動きの制限が重要です。

ハンセン1型の椎間板ヘルニアは、突然の強い痛みや麻痺を伴うことがあるため、飼い主が気付いた段階で早急に動物病院の受診が求められます。

ハンセン2型

ハンセン2型は、中年から高齢の犬に見られる椎間板ヘルニアの一種で、加齢による椎間板の変性が主な原因とされています。椎間板の外側にある線維輪が徐々に厚みを増し、結果、椎間板が盛り上がり、脊柱管内に押し出されることで神経を圧迫します。

ハンセン1型と異なり、ハンセン2型は進行がゆっくりで、症状が徐々に現れるのが特徴です。長期間にわたる圧迫が神経機能に影響を及ぼし、運動機能の低下や痛みなどの神経症状が次第に見られるようになります。

このタイプの椎間板ヘルニアは、特に大型犬や非軟骨異栄養性犬種で発症しやすい傾向があり、柴犬、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバーなどがリスクの高い犬種です。

加齢による自然な変化として起こることがあるため、すべての犬種が影響を受ける可能性があります。ハンセン2型の進行は緩やかですが、早期発見と適切な治療が犬の生活の質を維持するために重要です。

犬の椎間板ヘルニアの初期症状と進行

犬の椎間板ヘルニアの初期症状や進行状態を、以下に詳しく解説します。

【グレード1】初期症状は痛みのみ

椎間板ヘルニアの初期段階であるグレード1は、脊髄への圧迫が軽度なため、神経機能には異常が見られず、主に痛みだけが現れる状態です。麻痺などの深刻な症状はありませんが、愛犬が以下のような様子を示すことがあります。

  • 抱き上げた際に痛みを感じ”キャン”と鳴く
  • 段差を登ったり降りたりする動作を嫌がる
  • 背中を丸めるような仕草をする

上記の症状は、背中や腰に不快感や痛みがあるサインで、普段の動きに変化が見られるのが特徴です。適切なケアや治療を行うことで、症状の進行を防ぐことが可能とされています。

愛犬がこのような兆候を示した場合は、早めに動物病院を受診し、専門的な診断を受けることをおすすめします。

【グレード2】軽度の麻痺やふらつき

軽度の麻痺やふらつきが見られる場合、主に投薬治療が検討されます。プレドニゾロンなどのステロイド薬を使用して、症状の進行を抑えられるとされています。ふらつきや足先を引きずるような動作があるものの、自力で4本足による歩行が可能とされています。

薬物治療を続けても改善が見られない場合には、さらに詳しい診断や手術の選択肢が考慮されることがあります。症状が悪化する前に適切な治療を受けることで、さらなる進行を防ぐことが期待されます。早期の対応が重要な段階といえるでしょう。

【グレード3】後ろ足を引きずっている

グレード3以上は重度の状態とされ、麻痺が現れる段階です。後肢または全肢の自由な動きが失われ、自力での歩行が困難になります。

後肢を引きずりながら前肢だけで移動する姿勢が見られる場合もあり、神経障害が顕著です。

【グレード4〜5】歩けず痛みを感じなくなる

脊髄への圧迫が進行すると、症状がさらに悪化し、グレード4〜5の段階に至ります。

グレード4では、排尿や排便を自身でコントロールすることが難しくなり、尿を出せない、便を漏らしてしまうといった症状が現れます。感覚は一部残っており、強い刺激に対して反応を示すことがありますが、歩行能力は失われることが多いようです。

グレード5は椎間板ヘルニアにおける重篤な状態です。麻痺した足で痛みを感じることができなくなり、足先を強く挟んでも無反応となります。神経へのダメージが著しく、回復の見込みが低いとされています。

グレード5まで進行してしまうと、神経の損傷が時間とともに悪化するため、迅速な外科手術が必要です。早期に適切な診断と治療を受けることで、症状の進行を食い止めることが望まれます。

犬の椎間板ヘルニアの診断方法

椎間板ヘルニアの診断では、まず飼い主への聞き取りを行い、痛みの開始時期や日常生活の変化を確認します。次に、触診で痛みの部位を特定し、神経の影響を推測します。歩行状態の観察により、足を引きずる動作や階段の上り下りの困難さを確認し、麻痺の進行度を評価します。

神経学的検査では、反射や痛覚反応を調べて、病変部位や麻痺の重症度を判断します。レントゲン検査で骨の異常を確認しつつ、確定診断にはMRIやCTが必要となることが多いとされ、これにより脊髄の圧迫や他疾患を詳しく調べます。

全身麻酔を伴う画像検査前には、神経学的検査や触診で病変部位を絞り込み、緊急性を評価することが重要です。

犬の椎間板ヘルニアの治療法

犬の椎間板ヘルニアの治療法には、どのような治療があるのでしょうか。

以下に詳しく解説します。

内科治療

椎間板ヘルニアの症状が軽度の場合や、脊髄の圧迫が軽いと判断された場合には、内科治療が選択されます。ただし、ダックスフンドのような軟骨異栄養犬種では、外見上の症状が軽くても、CTやMRI検査で脊髄への圧迫が強いことが判明する場合があります。

現在の状態だけで安心せず、治療中も症状の進行には注意が必要です。

また、内科治療で重要なポイントは安静にすることです。散歩を控える程度ではなく、動きを制限し、専用のケージ内で過ごさせる”ケージレスト”が求められます。トイレのためにケージの外に出る時以外は、4~6週間程度動きを制限します。

この期間は、椎間板が安定し、脊髄への圧迫がこれ以上進行しないようにするために必要になります。

その他、以下のような治療があります。

  • 薬物療法
    痛みや炎症を抑えるために薬物療法が取り入れられる可能性があるようです。ただし、これらはあくまで補助的な治療法であり、ケージレストが治療の中心です。薬の効果に頼りすぎて安静を怠ると、症状が悪化して永続的な麻痺につながる可能性もあるようです。
  • 補助器具の活用
    運動制限を補助するために、動物用コルセットの使用もおすすめです。動きたがる性格の犬や、飼い主が目を離す時間が長い場合に役立ちます。コルセットを装着すると、頸部や腰が安定し、さらなる脊髄損傷を防ぐことが期待されます。

【治療費用】
基本診察料は5,000円程、薬の処方(2~4週間分)は1万~3万円程、レーザー治療は3万~5万円程、画像検査(レントゲンやCTなど)は1万~3万円程です。

合計すると、治療費用の目安は5万〜12万円程となります。費用は病院によって異なる場合がありますので、詳細は事前に確認するとよいでしょう。

【再発リスク】
内科治療は有効な手段ですが、外科治療と比較すると再発率が高いとされています。そのため、グレード3以上の症状では外科治療を検討するのがおすすめです。

内科治療を選択した場合、飼い主がケージレストを徹底し、犬の症状の変化に注意を払うことが重要です。適切な治療を行うことで、症状の進行を抑え、回復を目指すことが可能とされています。

外科治療

外科治療とは、椎間板ヘルニアの原因となる脊髄の圧迫を直接解消する手術です。外科治療ではまず、問題のある椎間板の位置を正確に特定します。誤った部位を手術してしまうと、症状の改善にはつながりません。

そのため、脊髄造影やCT、MRIなどの画像検査を活用して、正確な診断を行います。CT検査やMRIは、脊髄造影よりも詳細な情報がわかるといわれています。

手術では、椎間板ヘルニアの原因となる脱出した椎間板物質を摘出し、脊髄への圧迫を取り除きます。術後のケージレストは必要がないとされています。

内科治療では十分な効果が得られない場合や、痛みや麻痺が重度である場合には外科治療が選択されます。また、歩行不能や症状が進行している場合にも、脊髄への圧迫を緩和するために選ばれる場合があります。

【術後のリハビリテーション】
手術後はリハビリが大切です。麻痺によって衰えた筋肉や関節の動きを取り戻すことを目的に、屈伸運動やマッサージ、サイクルトレーニングなどを行います。

さらに、症状の改善が進んだ段階では、水中トレッドミルやプールを用いた水中リハビリもおすすめです。水中での運動は関節や筋肉への負担を軽減しながら筋力を強化が可能とされています。

【治療費用】
手術にかかる費用は、動物病院や手術の内容、発症部位によって異なりますが、15~20万程が目安となります。入院費用や検査費用、薬の費用を含めると、全体で30~50万円程度になる場合が多いようです。

さらに術後のリハビリを含めると、総額としてかなりの費用が必要となるため、事前に詳細を確認し、計画を立てておくことが必要です。

外科治療は高額であるものの、適切に行うことで回復が期待できる治療法となります。

犬の椎間板ヘルニアの予防法

椎間板ヘルニアを防ぐことは難しいですが、発症リスクを減らすためにはいくつかの注意点があります。以下に詳しく解説します。

  • 体重管理
    体重が増えすぎると、椎間板に過剰な負担がかかり、ヘルニアのリスクを高める要因となります。愛犬の体重を健康的な範囲内に保つことで、脊椎への圧力を軽減しましょう。
  • 適度な運動
    運動は筋肉を維持し、関節や椎間板への負担を軽減するために役立ちます。ただし、激しい運動は逆にリスクを増加させる可能性があるため注意が必要です。ジャンプや高速での走り回りなど、背骨に強い負担がかかる動作は避け、無理のない運動を心がけましょう。
  • 環境の工夫
    日常生活のなかで、背骨に負担をかけない環境を整えることも大切です。例えば、階段や高い家具への昇り降りを防ぐために、スロープを設置するのもよい方法です。

    また、犬を抱き上げる際には、上半身だけを支えて腰を浮かせるような不安定な姿勢を避け、背骨が地面と平行になるように全体をしっかり支えるようにしましょう。
  • ストレスを与えない環境作り
    狭い空間で長時間過ごさせることや、無理な体勢を強いることは避け、快適に過ごせる環境を作ることも重要です。
  • 定期的な健康診断
    獣医師による定期的な診断は、椎間板ヘルニアを早期に発見し、発症前の予防措置を取るために有効とされています。健康診断を習慣化すれば、愛犬の健康をしっかりと見守ることができるでしょう。

これらの対策はあくまで発症リスクを下げることが目的であり、椎間板ヘルニアの予防は保証できません。ヘルニアになりやすい犬種の場合は、安静にしていても発症する可能性があるため、麻痺や異常を感じた場合は早めに動物病院を受診するようにしましょう。

犬の椎間板ヘルニアは再発する?

椎間板ヘルニアは手術後に再発する可能性があるため、術後に歩行が可能になったとしても、定期的な検診は必要です。

再発を疑う兆候に以下のような行動が挙げられます。

  • 散歩を嫌がる
  • 段差を上り下りするのを避ける
  • 歩き方がふらついている
  • 首を下げたままで、頭を上げようとしない
  • 足を引きずる、またはびっこを引く

これらの異常が見られた場合は、早めに動物病院で診察を受けましょう。

まとめ

ここまで犬のヘルニアの初期症状についてお伝えしてきました。犬のヘルニアの初期症状の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 犬の椎間板ヘルニアは、背骨の骨と骨の間にある椎間板が損傷し、そのなかの組織が飛び出して神経や脊髄を圧迫することで起こる疾患を指す。何らかの負荷や衝撃によって椎間板が正常な位置から逸脱し、神経に影響を及ぼす可能性がある
  • 犬の椎間板ヘルニアは、初期段階(グレード1)では痛みのみ現れるが、進行するとふらつきや軽度の麻痺(グレード2)、後肢の麻痺(グレード3)、さらに歩行不能や感覚喪失(グレード4〜5)に至ることがある。重症化すると排尿困難や痛覚喪失が見られるため、早期診断と治療が重要である
  • 犬の椎間板ヘルニアの治療法には2種類がある。症状が軽度うの場合は内科治療が行われ、痛みや麻痺が重度の場合は外科治療が行われる

犬の異変に早めに気付き、適切な対処を行うことが、愛犬の健康を守る第一歩です。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献