犬にはどんな感染症があるの?予防するには?犬から人に感染する感染症についても解説!

犬にはどんな感染症があるの?予防するには?犬から人に感染する感染症についても解説!

犬はさまざまな感染症にかかるリスクがありますが、感染症は犬の健康だけでなく、人間への感染の可能性も含めて重要な問題です。
例えば、ジステンパー、犬パルボウイルス、犬伝染性肝炎などが犬によく見られる感染症です。また、犬から人へ感染する病気としては、狂犬病やパスツレラ症、エキノコックス症などがあります。

本記事では、犬の感染症とその予防方法について詳しく解説します。

  • 犬の感染症とは
  • 犬から人へ感染する病気(ズーノーシス)
  • ズーノーシスの予防方法

犬の感染症について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。

ぜひ最後までお読みください。

犬の感染症とは

犬の感染症は多岐にわたり、ウイルスや細菌、寄生虫などさまざまな病原体が原因となり発症します。
代表的なものには、犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬コロナウイルス感染症、犬アデノウイルス2型感染症、犬パラインフルエンザウイルス感染症などがあります。

犬から人に感染する病気も存在し、その一つがブルセラ症です。
ブルセラ症はブルセラ属の細菌による感染症で、犬の流産物(妊娠中に胎児や胎盤などが子宮から排出されたもの)などから人に感染することがあります。

このように犬から人間へ感染すると発熱や倦怠感などの症状が現れるため、犬と接触した後にはしっかりと手洗いすることが重要です。

犬ジステンパー

犬ジステンパーは、犬の中枢神経系、呼吸器系、消化器系に影響を与えるウイルス性感染症です。以下で、症状や治療法、予防法について詳しく見ていきましょう。

症状

犬ジステンパーの病気の症状は多岐にわたりますが、主な症状として、「発熱」「咳」「鼻水」「食欲不振」「下痢」「嘔吐」などが挙げられます。
また、進行すると、神経症状が現れ、痙攣や運動調整障害(らつきや不安定な歩行、過度なつまずきなど)が見られることがあります。特に、子犬や免疫が低下している犬が発症すると重症化しやすいとされています。

治療法・予防法

犬ジステンパーの治療法には特効薬が存在しないため、主に対症療法が行われます。
具体的には、二次感染を防ぐための抗生物質の投与、脱水症状の管理のための輸液治療、嘔吐や下痢に対する支持療法が含まれます。
また、神経系の症状が現れた場合は、抗痙攣薬を用いることもあります。

犬ジステンパーは進行が早く、治療開始が遅れると重篤な症状や後遺症が残ることがあるため、ワクチンの接種が重要です。生後数週間の子犬の場合、基礎ワクチン接種を何度か行い、その後は定期的に接種するのが推奨されています。

また、犬を新たに迎え入れた際やほかの犬との接触がある環境にいる場合は、ワクチン接種を受けることで、感染のリスクを低減できます。

犬パルボウイルス感染症

犬パルボウイルス感染症は、特に子犬に感染しやすく、致命的な病気とされています。
ここでは、犬パルボウイルス感染症の症状や治療法、予防法について解説します。

症状

犬パルボウイルス感染症のウイルスは犬の消化器系に重大な影響を与え、主に激しい下痢や嘔吐を引き起こします。
感染した犬は脱水症状や重度の体重減少を経験することが多く、ときには心筋の問題を引き起こすこともあります。
犬パルボウイルス感染症は、高い致死率を持ち、特に未治療の場合はその危険性が高まるため注意が必要です。

治療法・予防法

犬パルボウイルス感染症の治療法には特定の抗ウイルス薬がないため、主に対症療法で行われます。
治療には輸液療法、抗生物質、抗炎症薬、胃腸薬の使用が含まれます。また、タミフルが使用されることもあります。
犬パルボウイルス感染症の重症化や死亡のリスクを大幅に減少させるためには、早期発見と迅速な治療開始が重要になります。

犬コロナウイルス感染症

犬コロナウイルス感染症は主に犬の消化器系を攻撃するウイルスで、感染すると多くの犬が軽度から中度の消化器症状を示します。以下で、症状や治療法、予防法について解説します。

症状

犬コロナウイルス感染症の具体的な症状としては、急性の水様性下痢があります。これには悪臭が伴うことがあるので、症状に気付きやすいとされています。
また、嘔吐、食欲不振、発熱も見られることがあります。

これらの症状は特に子犬に見られやすく、未成熟な免疫系のために症状が重く出ることもあります。しかし、ある程度成長した犬では症状が現れず気付きにくいこともあります。

感染した犬は、通常数日で回復することが少なくないですが、重症化すると脱水症状や電解質不均衡(体内の電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル)のバランスが乱れる状態)が生じる可能性があるため、注意が必要です。

治療法・予防法

現状、犬コロナウイルス感染症の治療法には、特効薬が存在しないため、主に対症療法に焦点を当てた治療が行われます。

具体的には、脱水状態の管理のために輸液療法が用いられ、二次的な細菌感染を防ぐために必要に応じて抗生物質が投与されることがあります。
また、消化器系の症状が強い場合には、消化を助ける薬や胃腸を保護する薬が使用されることもあります。

犬コロナウイルス感染症を予防するためには、ワクチン接種が推奨されており、ワクチンは犬の免疫システムを強化し、ウイルスによる重症化のリスクを減少させる効果が期待できます。

犬伝染性肝炎

犬伝染性肝炎は、犬アデノウイルス1型が原因で引き起こされる感染症です。
ここでは症状や治療法、予防法について解説します。

症状

犬伝染性肝炎は、感染してすぐには発熱、食欲不振、嘔吐などの症状が見られますが、感染が進行すると、より重篤な症状が現れることがあります。
特に、肝臓への影響が大きく、黄疸(皮膚や粘膜が黄色くなる症状)、腹水(お腹に水がたまる状態)、出血傾向などが報告されています。
これは、肝臓の機能が障害されるために起こる症状で、病状が進むと神経系症状を示すこともあります。

重症化すると、眼にも影響が出ることがあり、角膜の青白い濁り(角膜浸潤)が観察されることもあります。

治療法・予防法

犬伝染性肝炎の治療は主に対症療法に基づきます。これには、抗生物質の投与で二次的な細菌感染を防ぐこと、輸液療法により脱水を管理することが含まれます。

また、出血傾向が見られる場合は、止血剤やビタミンKの投与が行われることがあり、重症の場合には、入院して集中的なケアが必要となることもあります。

犬伝染性肝炎を予防するためには、犬伝染性肝炎のワクチンが投与されます。
このワクチンは、多価ワクチンの一部として提供され、犬アデノウイルスタイプ2(CAV-2)に対するワクチンが、アデノウイルスタイプ1(CAV-1)による病気も防ぐのに使われます。

子犬は生後数週間からワクチン接種を開始し、初年度に数回の追加接種を行い、その後は定期的に追加接種を受けることが推奨されます。

犬アデノウイルス2型感染症

犬アデノウイルス2型感染症(犬伝染性喉頭気管炎)は、犬の呼吸器感染症の一種です。主に犬の上部気道に影響を及ぼすとされています。
ここでは、症状や治療法、予防法について解説します。

症状

犬アデノウイルス2型感染症の症状として、発咳があります。この病気はケンネルコフとも呼ばれ、犬の風邪として知られています。感染力は強いものの、致命的な病気ではないため、適切なケアと環境管理で回復が見込まれます。

治療法・予防法

犬アデノウイルス2型感染症の治療には特効薬が存在しないため、対症療法で治療します。具体的には、感染によって引き起こされる呼吸器の症状を管理するために抗生物質を使用します。
また、症状が重い場合は、抗炎症剤や吸入療法が用いられることもあります。

犬アデノウイルス2型感染症を予防する方法としては、犬アデノウイルス2型に対するワクチン接種が選択されます。このワクチンは、ほかの病気を防ぐための複合ワクチンの一部として含まれています。
定期的に接種することで、犬アデノウイルス2型だけでなく、関連する犬伝染性肝炎(アデノウイルス1型による)も予防できます。

犬パラインフルエンザウイルス感染症

犬パラインフルエンザウイルス(CPIV)は、ウイルス性の呼吸器感染症です。
別名、「犬ケンネルコフ」や「犬風邪」とも呼ばれます。
以下で症状や治療法、予防法について解説します。

症状

犬パラインフルエンザウイルスに感染すると咳や鼻水、発熱や食欲不振などの風邪に似た症状が出現します。
この感染症の症状は軽いとされていますが、ほかのウイルスや細菌との混合感染が起こると深刻な呼吸困難や重度の肺炎に進展するリスクが高まるため、注意が必要です。

治療法・予防法

犬パラインフルエンザウイルス感染症の治療では、対症療法が行われます。
具体的には、ウイルスに対する治療薬が存在しないため、症状に合わせて点滴で体調を整えたり、咳止めを使用して咳による体力の消耗を抑えたりします。

また、細菌の同時感染がある場合は抗生剤が用いられることもあります。
予防法としては、ワクチン接種が選択されています。定期的に接種を行うことで、予防も可能になります。
さらに、清潔な環境を維持し、ほかの犬との不必要な接触を避けることも感染リスクを下げるのに効果が期待できます​。

犬から人へ感染する病気(ズーノーシス)

ズーノーシス(人獣共通感染症)は、動物から人へ感染する病気です。

これには多くの種類があり、バクテリア、ウイルス、寄生虫、真菌が原因となることがあります。以下で詳しく解説します。

狂犬病

狂犬病は、狂犬病ウイルスによる感染症で、感染動物による咬傷や引っかき傷により人間に伝染します。
初期症状には発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛があり、重症化すると興奮、不安、意識障害、恐水症が現れます。
一度発症すると致死率がとても高くなります。
感染の疑いがある場合は、創部をせっけんと流水で洗い、狂犬病ワクチンと抗狂犬病免疫グロブリンの投与を行います。
また、狂犬病のリスクがある地域への渡航前にはワクチン接種を推奨しています。

パスツレラ症

パスツレラ症は、犬や猫による咬傷や引っ掻き傷から発生する感染症で、パスツレラ菌が原因です。この病気の典型的な症状には、咬傷部の激しい痛み、腫れ、赤みがあります。
重症化すると肺炎や気管支炎、副鼻腔炎、ときには敗血症や骨髄炎に至ることもあります。

治療には、感染部位の洗浄と抗生物質の投与が行われます。
ペットからの咬傷や引っ掻き傷に注意し、発生した場合には迅速に洗浄と消毒を行うことが重要です。
また、免疫力が低下している場合は特に注意が必要です。

Q熱

Q熱は、コクシエラ・バーネティ菌によって引き起こされる感染症で、動物と人間の両方に影響を及ぼすことがあります。
動物から人へは、主に空気中の塵や分泌物、直接接触を通じて感染します。
症状としては、高熱、頭痛、筋肉痛、ときには肺炎や肝炎を引き起こすこともあります。

治療には抗生物質が使用され、予防には動物との接触を避ける、換気を良くすることなどが挙げられます。

エキノコックス症

エキノコックス症は犬や狐などの糞便に含まれる寄生虫エキノコックスによる感染症です。感染すると初期は症状が現れないこともあります。
長期にわたり感染が進行すると肝臓に嚢胞(のうほう)が形成され、肝機能障害を引き起こす可能性があります。

治療には、嚢胞の外科的除去が必要です。
予防には犬の糞を適切に処理し、不衛生な水を飲まないよう注意することが重要です。

ズーノーシスの予防方法

ズーノーシス(人獣共通感染症)予防は、正しい知識と適切な対策によって予防できます。
ここでは、主要な予防策をいくつか紹介します。

1. 動物との適切な接触

動物との接触は適度に行い、病気の動物との接触を避けましょう。動物との接触後は、必ず手を洗うことが重要です。
手洗いは、石鹸と流水を使用し、少なくとも20秒以上行うようにしましょう。これにより、動物が持つ潜在的な病原体を除去できます。

2. 外傷からの感染予防

ペットからの咬傷や引っ掻き傷は、適切に処理することで感染リスクを減らします。
傷を受けた場合は、すぐに大量の流水と石鹸で傷口を洗浄し、消毒剤を塗布してください。
深い傷や感染が疑われる場合は、迅速に医療機関を受診しましょう。

3. 排泄物の適切な処理

動物の排泄物は病原体を含むことが多く、適切な処理が必要です。
排泄物を触る際は手袋を着用し、処理後は必ず手を洗いましょう。
また、ペットの飼育エリアは定期的に清掃し、消毒することで感染症のリスクを低減します。

これらの予防策を適切に行うことで、ズーノーシスを防ぐことにつながります。

まとめ

ここまで、犬から人に感染する感染症や予防法について解説しました。
要点をまとめると、以下の通りです。

  • 犬の感染症は多岐にわたって、ウイルスや細菌、寄生虫などさまざまな病原体が原因となって発症し、代表的な感染症には、犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬コロナウイルス感染症、犬アデノウイルス2型感染症、犬パラインフルエンザウイルス感染症などがある
  • ズーノーシス(人獣共通感染症)には狂犬病、パスツレラ症、Q熱、エキノコックス症があり、それぞれがバクテリア、ウイルス、寄生虫によるもので、適切な予防措置と迅速な治療が必要
  • ズーノーシスの予防には、適切な接触管理、傷口の速やかな洗浄と消毒、排泄物の適切な処理をすることが重要

愛犬の健康を守るために、定期的に検診へ行き、ワクチンを接種して予防しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献