犬も栄養不足が原因で体調を崩すケースも少なくありません。栄養不足の背景には、食事の内容や与え方に問題がある場合もあり、早期に原因を特定し適切な対処を行うことが大切です。
本記事では犬の栄養不足の原因や予防法について以下の点を中心にご紹介します。
- 犬の栄養不足の症状とは
- 犬の栄養不足の原因とは
- 犬の栄養不足を予防する方法
犬の栄養不足の原因や予防法について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
犬の栄養不足の症状
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栄養不足というと極端に痩せていたり、体調が著しく悪そうな見た目を想像するかもしれませんが、目に見える変化がなくても栄養不足に陥っている場合があります。
以下は、犬が栄養不足に陥った際に見られる主な症状です。
- 不眠やストレスの増加
栄養が不足すると体温調節やホルモンバランスが乱れ、不眠や落ち着きのなさが目立つようになることがあります。また、心の健康にも影響を与える可能性があります。 - 歯や骨の弱化
カルシウムやリン、マグネシウムなどの栄養素が不足すると、歯が抜けたり欠けたりするほか、骨がもろくなり骨折しやすくなります。 - 皮膚や被毛のトラブル
タンパク質や脂質が不足すると、健康な皮膚や被毛を維持できなくなります。その結果、皮膚が炎症を起こしたり、被毛が抜けたりすることがあります。特に皮膚が弱い犬種では、症状が深刻化する恐れがあります。 - 体温の低下
栄養不足により筋肉量が減少すると、体温を十分に維持できなくなります。体温が1度低下するだけで免疫力が下がり、さまざまな病気のリスクが高まるとされています。 - 内臓機能の低下
適切な栄養が不足することで、内臓の機能が低下しやすくなります。目には見えない部分ですが、一度損傷を受けた内臓は回復が難しい場合があり、命に関わる深刻な問題に発展することもあります。 - 免疫力の低下
免疫を維持するために必要な栄養素が不足すると、ウイルスや病原菌への抵抗力が落ち、感染症にかかりやすくなります。また、栄養代謝に問題が生じるため、全体的な健康状態に悪影響を及ぼします。
体重管理の一環として食事量を減らす場合、適切な栄養が確保されているかを常に確認することが重要です。
犬の栄養不足の原因
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犬の栄養不足には、以下のような原因が挙げられます。
病気の影響
愛犬が栄養失調に陥る原因の一つとして、さまざまな病気の影響が挙げられます。犬の栄養失調の原因として考えられる病気は以下のとおりです。
- 消化・吸収に関連する疾患
消化管閉塞(異物を誤飲した場合)、食道拡張症、慢性的な下痢、肝臓病や腎臓病、消化器関連の腫瘍などの疾患は、犬が栄養をうまく吸収できなくなります。 - 腸炎の影響
腸炎は腸の粘膜に炎症が起きる病気で、栄養不足の原因となることがあります。
腸炎には急性と慢性の2種類があり、急性腸炎では適切な治療を行うことで改善するケースが多いとされていますが、慢性腸炎は軽度な症状が長期間続くため、栄養を十分に吸収できず、徐々に体力が奪われる可能性があります。
腸炎の原因は多岐にわたり、腐敗した食べ物の摂取、アレルギー、ストレス、寄生虫、感染症、遺伝的要因、腫瘍などが挙げられます。急性腸炎が適切に治療されない場合、慢性腸炎へ移行することもあります。
そのため、原因をしっかり特定し、適切な治療を行うことが重要です。
ダイエット
愛犬の健康を守るためには、適切な体重管理が欠かせません。しかし、無理なダイエットは栄養不足を招き、かえって健康を損なう恐れがあります。特に「フードの量を減らせば体重が減る」という考え方には注意が必要です。
肥満は単に体重が増えることではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。極端に食事量を減らすと、必要な栄養が不足し、筋肉量や骨の強度が低下する原因になります。特に、カルシウム・リン・マグネシウムが不足すると、骨が弱くなり、関節や筋肉の支えが不安定になるため要注意です。
愛犬のダイエットは、必要な栄養をしっかり摂りながら脂肪を減らすことがポイントとなるため、獣医師が推奨する療法食や品質のよいドッグフードを活用し、バランスの取れた食事を心がけましょう。また、毎日の散歩や軽い運動を増やすことで、無理なく健康的な体重管理ができます。
消化器官の機能が低下している
高齢の犬は、加齢による体の変化により消化機能が低下し、必要な栄養を十分に摂取できなくなることがあります。年齢とともに消化や吸収の働きが鈍くなり、フードから得られる栄養が不足しがちになります。
なかでも、胃腸の炎症や膵臓の機能低下、肝臓や腎臓の働きの衰えが影響し、食べたものをうまく消化・吸収できなくなることがあります。さらに、アレルギーや慢性疾患があると、栄養の取り込みが妨げられ、体調不良を引き起こすこともあります。
例えば、膵臓の働きが弱まると消化酵素が不足し、食べ物の分解が不十分になります。また、肝臓や腎臓の機能が低下すると、代謝や老廃物の排出がスムーズに行われず、身体の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
愛犬に食欲不振や体重減少、被毛のツヤの低下、便の異常が見られる場合、消化機能の低下が原因として考えられるため、消化を助けるフードやサプリメントを取り入れ、栄養吸収をサポートしましょう。また、症状が続く場合は、早めに獣医師に相談し、適切な対応をとることが大切です。
手作り食による栄養の偏り
愛犬に手作り食を与える際は、カロリーやタンパク質、必須脂肪酸、ビタミン、ミネラルなどのバランスを適切に保つことが大切です。
栄養が不足すると、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、ビタミンやミネラル、必須アミノ酸、必須脂肪酸が欠けると、栄養失調を引き起こし、免疫力の低下や成長の遅れ、被毛のトラブルにつながることもあります。
また、栄養の過剰摂取にも注意が必要です。なかでも、リンを多く含む肉を大量に与えると、体内のバランスが崩れ、骨からカルシウムが溶け出し、骨が弱くなる可能性があります。
そのため、手作り食を取り入れる際は、愛犬に必要な栄養をしっかり理解し、適切なバランスを考えた食事を与えることが重要です。
ジェネリックフード症候群
「ジェネリックドッグフード症候群」は、海外で栄養失調の一因とされる問題です。これは、品質の低いドッグフードを長期間与え続けることで、必須栄養素が不足し、健康に悪影響を及ぼす状態を指します。
特に、適切なバランスでビタミンやミネラル、タンパク質が含まれていないフードを与えると、被毛のツヤがなくなったり、免疫力が低下したりするリスクが高まります。
日本ではこの症候群の症例は確認されていませんが、愛犬の健康を守るためにも、信頼できるメーカーの総合栄養食を選ぶことが大切です。フード選びの際は、成分表示を確認し、必要な栄養素が適切に含まれているかチェックする習慣をつけましょう。
栄養不足になりやすい犬種
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特定の犬種が栄養不足になりやすいわけではありませんが、適切な食事管理がされないと、どの犬種でも栄養失調のリスクがあります。なかでも、成長期の子犬や高齢犬は、必要な栄養素をしっかり摂取することが重要です。
また、アイリッシュ・セターは「グルテン感受性下痢」を起こしやすいとされており、小麦などのグルテンを含む食品に対する食事管理が必要です。
小型犬では、チワワやポメラニアン、ヨークシャー・テリアなどの犬種は体重管理が重視されるため、理想体重に合わせて食事量を制限しすぎると、栄養不足に陥る可能性があります。
したがって、成長期に十分な栄養を摂取できないと、骨格や筋肉の発育に影響を及ぼすため、体調や活動量に応じた適切なフード選びが大切です。
犬の栄養不足を予防する方法
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犬の栄養不足を予防するには、どうしたらいいでしょうか。以下で解説します。
フード内容を見直す
犬の栄養不足を防ぐためには、フードの内容を見直し、栄養バランスの取れた食事を提供することが重要です。ドッグフードを選ぶ際は、成分表を確認し、第一原料に肉類が記載されているものを選ぶと、犬に適切な高タンパクなフードを確保しやすくなります。
犬は肉食に近い雑食のため、穀物よりも動物性タンパク質が多く含まれるフードが理想的ですが、市販のフードには穀物が多く含まれているものもあるため、成分表をしっかり確認し、シンプルな原材料のものを選ぶといいでしょう。
また、添加物の少ないナチュラルフードを選ぶことで、消化吸収しやすく、栄養の効率的な摂取が可能になります。食物アレルギーのある犬の場合は、ビーフやチキンに代わり、ラムやカンガルーなど別のタンパク源が含まれたフードを選ぶのがおすすめです。
手作り食を取り入れるのも一つの方法ですが、栄養バランスを整えるのが難しいため、獣医師と相談しながら適切な食事内容を決めることが大切です。
ボディ・コンディション・スコア(BCS)を活用する
犬の適正体重を判断するのは難しいですが、ボディ・コンディション・スコア(BCS)を活用することで、愛犬の健康状態を適切に管理できます。BCSは、犬の体型を視覚と触診で判断し、1〜5または1〜9のスコアで表す方法です。
なかでも、5段階評価の場合であればスコア3、9段階評価の場合はスコア4〜5の評価が理想的な体型とされており、この状態を基準にすると、10〜15%の体重増減が肥満や痩せ傾向の目安になります。
愛犬の体重測定だけでなく、肋骨や背骨、腰骨の触診を行い、肉眼で骨が浮き出て見える程痩せていないか、または過剰に脂肪がついていないかをチェックすることが重要です。
老犬の栄養不足について
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老犬は栄養不足になりやすいのでしょうか?ここでは、食事管理方法も併せて解説します。
11歳以降の犬は栄養不足なりやすい
11歳を超えた老犬は、加齢による代謝の低下や消化吸収機能の衰えにより、栄養不足に陥りやすくなります。特に、食欲の減退や消化不良が続くと、必要な栄養素を十分に摂取できず、筋肉量の減少や免疫力の低下を招くことがあります。
また、老犬は噛む力が弱まり、硬いフードを食べにくくなることで、食事量が減る傾向があります。さらに、嗅覚や味覚の衰えによって食欲が落ちることも、栄養不足の要因となります。そのため、シニア犬用の消化しやすいフードや、嗜好性の高い食事を取り入れる工夫が必要です。
タンパク質や必須脂肪酸、ビタミン・ミネラルをバランスよく摂取できるよう、フードの種類や給餌方法を見直し、愛犬の健康状態に合わせた食事管理を心がけ、栄養状態をチェックすることが重要となります。
老犬の食事管理のポイント
老犬が栄養不足にならないために、以下の4つのポイントを把握しておきましょう。
①消化のよいフードがおすすめ
高齢の犬は消化吸収機能が低下しやすく、適切なフード選びが重要です。老犬用フードは消化しやすい成分を含み、必要な栄養素がバランスよく調整されています。
消化のよいフードとしては、良質な動物性タンパク質を主成分としたものや、やわらかく加工されたウェットフード、またはふやかして食べやすくしたドライフードがおすすめです。
一方で、穀物が多く含まれるフードや、固く噛み砕きにくいフードは消化しにくく、胃腸に負担をかける可能性があるため注意が必要です。
②食事の回数を増やす
高齢の犬は代謝の低下や食欲の変化により、一度に食事を摂ることが難しくなることがあります。また、水分を多く含む食事は満腹感を得やすく、1回の食事量が減りがちです。
そのため、1日の食事回数を3〜4回に分けて与えることで、消化の負担を軽減しながら必要な栄養をしっかり摂取できます。なかでも、食間の時間を均等に調整すると、血糖値の急激な変動を防ぎ、消化吸収をスムーズに進められます。
③フードの高さを工夫する
老犬が快適に食事を摂れるように、フードの高さを工夫することが重要です。首を下げる姿勢は、頸椎や関節に負担をかけるため、食器の位置を適切な高さに調整しましょう。食事台を使用すると、無理のない姿勢で食べやすくなります。
また、寝たきりの犬の場合は、寝かせたまま食事を与えるのは厳禁です。誤嚥(ごえん)のリスクが高まるため、抱きかかえて上半身を起こした状態で食べさせるのが理想です。抱きかかえが難しい場合は、クッションなどで頭の位置を高くし、飲み込みやすい姿勢を確保してあげましょう。
④水分摂取
高齢になると喉の渇きを感じにくくなり、水分摂取が不足しがちですが、脱水を防ぐため、意識的に水分を摂らせることが重要です。まず、常に新鮮な水を用意し、飲みやすい高さに配置しましょう。
また、水分補給が苦手な老犬には、ドライフードをぬるま湯でふやかす、ウェットフードを取り入れる、スープやヤギミルクを活用するなどの工夫がおすすめです。特に腎機能が低下しやすい老犬では、水分不足が病気を悪化させる原因にもなるため、毎日の水分摂取をしっかり管理することが大切です。
まとめ
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ここまで犬の栄養不足の原因や予防法についてお伝えしてきました。犬の栄養不足の原因や予防法の要点をまとめると以下のとおりです。
- 犬の栄養不足は、不眠やストレスの増加、歯や骨の弱化、皮膚や被毛のトラブル、体温や免疫力の低下などの症状が現れる
- 犬の栄養不足の原因には、病気の影響、ダイエット、消化器官の機能が低下している、手作り食による栄養の偏り、ジェネリックフード症候群などが挙げられる
- 犬の栄養不足を予防するには、フード内容を見直したり、ボディ・コンディション・スコア(BCS)を活用することが大切
栄養不足を防ぐために、日々の食事内容や与え方を見直し、愛犬の年齢や体調に合った食事を提供することが大切です。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。