多くの飼い主さんが経験する愛犬の心配な症状の一つに、足の震えがあります。
犬の足が震える状況は多岐にわたるため、単なる寒さや興奮によるものなのか、はたまた病気が関連しているのかを見極めることが難しいと感じる方も少なくありません。
本記事では、犬の足が震える理由や原因と対処法、病気が疑われるケースについて解説します。
動物病院を受診するタイミングや、確認しておくべきことについてもお伝えするので、ぜひ参考にしてもらえれば幸いです。
犬の足が震える原因

犬の足が震える原因は大まかに4つあります。
- 寒さ
- ストレスや不安
- ケガや病気
- 興奮
上記の原因をそれぞれ見ていきましょう。
寒さ

まず犬の足が震える身近な原因の一つとして寒さがあります。人間と同じように犬も体温が低下すると、体を震わせることで熱を発生させて寒さをしのぎます。
これは筋肉の伸び縮み(収縮)やたるませる(弛緩)ことによって熱を作り出し、体温を維持しようとする生理的な反応です。
特に小型犬や短毛種、シニア犬やパピー・ジュニア犬などは体温調節機能が未発達であったり低下していたりするため、寒さに弱い傾向にあります。
ほかにも、室内の温度が低い場合や雨やお風呂によって体が濡れて体温が奪われやすい状況でも、犬の足は震えます。
ストレスや不安
人間と同じように、ストレスや不安を抱えると犬の体にもさまざまな症状が現れやすいです。足の震えもその症状の一つです。
恐怖や緊張、不安といった精神的な状態になると足が震えやすくなります。例えば、以下のような状況を苦手とする犬がほとんどです。
- 雷の音
- 慣れない場所への移動
- 来客
- 動物病院の受診
ほかにも分離不安を抱えている犬は、飼い主さんの留守中に激しい震えや破壊行動、無駄吠えなどの問題行動を起こすことがあります。
ケガや病気
犬の足の震えはケガや病気によっても起こります。見た目ではわかりにくい潜在的なケガや病気のサインである可能性も高いです。
ケガや病気による痛みや不快感から足が震えている場合は、食欲不振や嘔吐、下痢や元気がないなどの症状が同時に出ていないか、注意深く観察する必要があります。
興奮

犬は喜びや期待などの強く興奮したときにも足を震わせることがあります。よく見られるのは、散歩に行く前や大好きなおやつをもらうときです。
ほかにも飼い主さんが帰宅したときにも交感神経が活発になり、アドレナリンをはじめとした興奮性のホルモンが分泌されることで筋肉が緊張し、震えとして現れることがあります。
喜びや期待などから足が震えている場合は、興奮が冷めると同時に自然に震えも治まる一時的なものです。若くて活発な犬や、感情表現が豊かな犬によく見られます。
病気が疑われるケース

犬の足が震える原因はさまざまです。
しかし、寒暖差や興奮状態、ストレスや不安が溜まっている状況でもないときに愛犬が震えていると、ケガや病気なのではと不安になる方がほとんどではないでしょうか。
ここからは、足の震えで病気が疑われるケースについてお伝えします。
脳障害による震え
犬の足が震える病気として脳障害が疑われます。脳は体のあらゆる機能を制御する重要な器官です。脳に異常が発生すると、制御機能が低下し、運動機能にも影響をおよぼします。
例えば、日本人では国民病の一つともいわれている脳梗塞は、実は犬にもよく発生する病気です。脳内の血管が破れたり詰まったりすることで、脳の血流が途絶え、脳組織が壊死して発症します。
脳障害が起こると、足の震えや痙攣、麻痺などの神経症状を引き起こすこともあります。特に、足だけでなく震えが全身におよんだ場合や目の焦点が合わない場合は注意が必要です。
早期発見や早期治療が重要で、治療が遅れると同じ方向にグルグル回る旋回運動や意識の低下など危険性が高まります。
もし、足の震えや痙攣、麻痺などの神経症状が見られた場合は一刻も早く動物病院を受診しましょう。
中毒による震え

犬の足が震える原因に、毒物の摂取が考えられます。中毒を起こしやすいものは以下のとおりです。
- チョコレート
- キシリトール
- 玉ねぎや青ネギ
- ブドウ
- 殺虫剤
- 除草剤
人間にとっては大丈夫なものでも犬にとっては少量でも毒になります。散歩中に落ちていた毒物を食べたり舐めたりして中毒になる場合もあるため、注意が必要です。
また、家庭用の殺虫剤や殺鼠剤を誤食して中毒になるケースが多く報告されています。中毒症状は足の震え以外に以下の症状が同時に現れることが一般的です。
- 嘔吐
- 下痢
- よだれ過多
- ふらつき
- 呼吸困難
もし、犬が毒物を誤食した疑いがある場合は食べたものやその量、時間を把握して早急に動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。緊急処置が必要なケースがほとんどなため、自己判断せず、助言を求めることが重要です。
痛みによる震え
犬がどこかに痛みを感じている場合も、足の震えが症状として現れることがあります。例えば、骨折や靭帯損傷、関節炎などの一見ではわからない病気である可能性があります。
震えている足を触ると痛がったり、かばうような行動や足を引きずったりする様子が見られた場合は、整形外科的な問題が発生している可能性が高いでしょう。
身体機能不全による震え
犬の足が震える病気には、身体機能不全によるものがあります。身体機能不全を引き起こす病気は以下のとおりです。
- 椎間板ヘルニア
- 腎臓病
- 糖尿病
- 甲状腺機能低下症
- 感染症
- てんかん
ほかにも、腹痛や膀胱炎などでも全身の不快感から足の震えが生じることもあるため、なるべく早めに動物病院を受診することが大切です。
病気とは少し異なりますが、シニア犬の場合は加齢によって筋力や神経伝達などの身体機能が低下したことにより、足が震える(老齢性振戦)が起こることもあります。
これは加齢に伴う生理的な症状ですが、震えがひどくなる場合は病気が隠れていることもあるため、動物病院に相談することが大切です。
犬の足が震えているときの対処法

犬の足が震えていることを確認した場合は、まずは落ち着いて状況を観察しましょう。もし寒さが原因なのであれば、暖かくしてあげることが大切です。
毛布で包んであげたり、室温を上げたりすることで震えが治まるか確認します。ほかにも誤食した形跡がないか、どこか痛がる様子がないか、食欲不振や嘔吐など複数の症状が現れていないかを細かくチェックしましょう。
ストレスや不安から足が震えている場合は、その原因となっているものを取り除くか、犬が落ち着ける環境を整えてあげましょう。話しかけながら優しく撫でてあげると、犬は安心感を持ちやすくなります。
興奮状態にある場合も、とにかく犬を落ち着かせることが大切です。病気の可能性が高い場合は、ただちに動物病院を受診しましょう。
足の震え方別のチェックポイント

足の震えといっても、その程度には3つの違いがあります。
- 震えと痙攣の違い
- 足の震えが軽度
- 足の震えが重度
それぞれ解説していきましょう。
震えと痙攣の違い
まずは足の震えと痙攣の違いです。足の震えは筋肉が細かく小刻みに収縮と弛緩を繰り返す不随意運動です。
足の震えの場合は犬の意識があり、呼びかけに反応します。寒さや興奮状態、ストレスや不安による不快感や軽い痛みなどが原因で起こることがほとんどです。
問題を改善すると震えが治まる一時的なものになります。
一方で痙攣は、筋肉が強く継続的に激しく収縮し、全身または体の一部に症状が現れます。痙攣中は意識が朦朧としていたり、失われたりすることがほとんどです。
ほかにも呼びかけに反応しないことやよだれを垂らす、失禁するなどの症状を伴う場合があります。重度の中毒やてんかん発作、脳障害が原因で起こることがほとんどなため、緊急性が高い状態です。
もし犬が痙攣を起こしている場合は、周囲の危険物を取り除き、速やかに動物病院へ連絡しましょう。痙攣している状況を動画に残しておくと、獣医の診断に役立つためおすすめです。
足の震えが軽度
足の震えが軽度の場合は、一時的な反応である可能性が高いでしょう。寒い日や飼い主さんが帰宅すると興奮して震えているケースが該当します。
犬はいつもどおり元気で食欲もあり、震えている原因がなくなれば自然に治まることが特徴です。
しかし、軽度な足の震えであっても注意しなければならないこともあります。軽度な足の震えが頻繁に起こるようになったり、徐々に震えが強くなったりした場合です。
軽度な足の震えが何かしらの病気の前兆である可能性があります。普段から愛犬の様子をよく観察し、少しでも気になる変化があれば動物病院に相談しましょう。
足の震えが重度
足の震えが止まらなかったり、どんどん全身におよんだりする場合は緊急性の高い状態です。一刻も早く動物病院を受診しましょう。
重度の中毒症状や低血糖、ショック状態に陥っている可能性があります。自己判断で様子を見ることは禁物です。
呼吸が荒くなったり、体が硬直して動けなくなったりした場合は、動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。
足の震えが重度の場合は、早急な対応が愛犬の命を守るうえで重要です。
犬の足の震えを予防する方法

犬の足の震えを予防する方法はさまざまですが、ここでは足の震えが重度にならないようにするための対策をお伝えします。
まずは栄養バランスの取れた食事です。健康な体作りと免疫力を高めるうえで、栄養バランスの取れた食事は必要不可欠になります。
年齢や活動量に合わせて、適切な食事量を心がけましょう。特にシニア犬の場合は、筋力を維持するためにも良質なタンパク質を与えることが大切です。
適度な運動や犬種や犬のサイズに合った寒暖差対策や、生活環境を整えてあげることも、ストレスや不安を軽減させる効果があります。
また、誤飲や誤食対策も大切です。チョコレートや殺虫剤などは、犬が届かない場所に保管するように心がけましょう。
もちろん、定期的な健康診断は欠かせません。ケガや病気の早期発見と早期治療のためにも、日常的に愛犬の様子を観察し、変化を見逃さないことが重要です。
健康診断を年に1~2回受診し、日常生活の様子を獣医に相談することで、愛犬に合った生活習慣を整えやすくなります。
獣医と定期的にコミュニケーションを取ることで、愛犬の生活環境や習慣をよりよいものに整えていきましょう。
犬の足の震えで動物病院を受診するにあたって

犬の足の震えで動物病院を受診するにあたって知っておきたいことについて解説します。受診するタイミングや確認事項について迷う方がほとんどです。
知識を身につけてすぐに行動できるよう心がけましょう。
動物病院を受診するタイミング
動物病院を受診するタイミングは、飼い主さんが愛犬の様子がおかしいと気付いたときです。愛犬と一緒に過ごす時間が長い飼い主さんだからこそ、少しの違和感にもすぐに気付けることがほとんどです。
ちょっとした変化であっても、「まだ大丈夫だよね」と自己判断せず、動物病院を受診しましょう。足の震えが軽度で動物病院を受診するか判断に迷う場合は、震え以外の症状が出ていないかチェックしましょう。
- 元気がない
- 食欲不振
- 咳
- くしゃみ
- ふらつき
- 排尿や排便の異常
嘔吐や下痢などの明らかな不調ではなくても、足の震えと同時に症状が確認できた場合は、ただちに動物病院を受診することが大切です。
動物病院を受診する前に確認しておくこと
動物病院を受診する場合は、足の震えがいつから始まったのか、具体的な日時を把握しておきましょう。一時的なものなのか、継続的もしくは断続的なのかも記録します。
どのようなときに足の震えが起こりやすく程度や範囲なども記録しましょう。スマートフォンで動画に残しておくと、獣医に視覚情報を着実に提供できるためおすすめです。
震え以外の症状や日常生活の変化、直近の食事量や排泄量も把握しておきましょう。人間と同じように、既往歴や現在服用中の薬、ワクチン接種歴と寄生虫予防の状況を愛犬手帳に記載しておくことも重要です。
詳細な情報をまとめて持参することで、診察をスムーズにし、より的確な治療につなげられます。愛犬の健康を守るためにも、飼い主さんができる準備をしっかりと行いましょう。
また、飼い主さんだけでなく、家族や周囲に情報を共有しておくことも大切です。
まとめ

今回は、犬の足が震える理由や原因と対処法、病気が疑われるケースについて解説しました。犬の足が震える理由は多岐にわたります。
そして、犬の足が震えるといってもその程度は軽度なものから痙攣になる重度まで、また犬の大きさや年齢によって大きく異なります。
重要なことは、愛犬の生活スペースにチョコレートや除草剤などの中毒物を置かないよう徹底したり、栄養バランスの取れた食事や定期的な健康診断を受けたりすることです。
定期的に動物病院とコミュニケーションを取ることで、愛犬の健康状態や生活習慣、行動の癖などを共有できます。
また、ワクチン接種や寄生虫予防の状況も把握できるため、よりケガや病気の症状が現れたときでも的確な診断と治療につながりやすくなるでしょう。
愛犬の健康を守るためにも、元気なときからしっかり準備しておくことが大切です。
参考文献
