犬ジステンパーウイルス感染症とは?症状から予防法まで解説します

犬ジステンパーウイルス感染症とは?症状から予防法まで解説します

犬ジステンパーウイルス感染症は、犬の感染症の中でも感染力が強く、致死率も高いといわれています。愛犬を守るためにもきちんとした情報を知っておくのが重要です。

本記事では、犬ジステンパーウイルス感染症の基礎知識から、予防法までをわかりやすく解説します。

  • 犬ジステンパーウイルス感染症とは
  • 犬ジステンパーウイルス感染症の原因
  • 犬ジステンパーウイルス感染症の症状

ぜひ、最後までお読みください。

犬ジステンパーウイルス感染症とは

犬ジステンパーウイルス感染症は、犬やフェレットを含むイヌ科動物などに感染する、非常に感染力が強く、致命的な病気です。特にフェレットにおいてはこのウイルスによる致死率がほぼ100%に達することがあり、重篤な影響を及ぼします。過去には日本を含む多くの地域で広がり、多くの動物の命を奪いましたが、ワクチンの開発と普及により現在では感染数が大幅に減少しています。ワクチンは、感染予防に非常に重要であり、ペットの健康管理において重要な役割を果たしています。

犬ジステンパーウイルス感染症の原因

ウイルスは、感染した犬の鼻水、唾液、尿などの体液に直接接触したり、感染した犬のくしゃみや咳による飛沫を吸い込むことで伝播します。また、感染した犬の分泌物や排泄物に触れた後、それらを介して感染することもあります。

ウイルスは犬のみならず、イヌ科全般に影響を及ぼす可能性がありますが、人への感染は報告されていません。感染した犬は、様々な器官に影響を及ぼすため、呼吸器症状、消化器症状、そして進行すると神経系の障害まで引き起こすことがあります。

特に神経系に影響が及ぶと、治療が困難になり、場合によっては死に至ることもあります。

犬ジステンパーウイルス感染症の症状

犬ジステンパーウイルスに感染したときの症状について、解説します。

呼吸器症状

ジステンパーウイルス感染症では、呼吸器に関連する症状が見られます。

感染した犬は鼻水やくしゃみを示し、時には咳も伴います。これらの症状は、ウイルスが呼吸器の上皮細胞に侵入して炎症を引き起こすために生じます。

さらに、進行すると肺炎を発症することもあり、これはウイルスが下気道へと広がった結果です。このような状況では、胸部のレントゲン検査が診断に役立ちます。

ジステンパーウイルス感染症は非常に感染力が強く、特に免疫力が未発達な若い犬や免疫力が低下している犬にとっては重大なリスクをもたらします。

治療は、症状を緩和する対症療法が中心で、適切な抗生物質の使用により二次感染のリスクを減少させます。

消化器症状

ジステンパーウイルス感染症における消化器関連の症状には、特に下痢と嘔吐が挙げられます。

これらの消化器症状は、ウイルスが消化管の細胞を攻撃し、炎症を引き起こすために発生します。下痢はしばしば水様性で、嘔吐と合わせて脱水を引き起こすリスクがあります。感染症の進行により、時には血便が見られることもあります。

これらの症状が見られた場合、迅速な治療が必要となり、輸液療法や抗生物質を用いた支持療法が行われます。

適切な治療を行うことで、症状の緩和と回復が促進されます。また、予防としてはワクチン接種が良いとされています。その後、定期的な接種を通じて感染リスクを低減することが推奨に値すると思われます。

神経症状

ジステンパーウイルス感染症の神経症状は、感染が進行しウイルスが神経系に影響を及ぼす際に見られます。末期には、ジステンパー脳炎を引き起こすことがあり、これにより様々な神経症状が発現します。

具体的な神経症状には、歩行異常や震え、けいれんが含まれます。これらの症状は、犬の脳や脊髄に炎症が生じることで起こるとされています。症状が進むと、犬はバランスを保つことが難しくなり、異常な歩行や、まるで「チューインガムを噛んでいるかのような」顎の動き(チューインガムフィット)を示すことがあります。

これらの神経症状は、病気の進行がかなり進んでいることを示しており、回復の見込みは厳しいです。

目や皮膚の症状

ジステンパーウイルス感染症における目や皮膚の症状は、感染が進行すると特に顕著に現れます。目に関しては、感染犬が結膜炎を発症しやすく、これは目の赤みや腫れ、そして多量の目ヤニの原因となります。

目の周りの炎症は感染の初期段階で見られることが多く、適切な治療が行われない場合、重度の場合には視力の低下につながる可能性もあります。

皮膚に関しては、ジステンパーウイルス感染症はしばしば皮膚の硬化や脱毛を引き起こします。特に、足のパッドや鼻の部分に硬くて厚い皮膚の形成が見られることがあります。

これは「硬皮症」として知られ、感染犬の免疫系がウイルスに反応して異常をきたすことにより発生します。

動物病院を受診すべき症状

犬が動物病院を受診すべき症状には、いくつかの警告サインがあります。

これらは、犬が重大な健康問題に直面している可能性があることを示し、迅速な医療介入が必要です。以下に、主要な症状を詳しく説明します。

1. 異常な食欲不振や過剰な飲水
犬が突然食べなくなったり、通常よりも明らかに多く水を飲むようになった場合、これは潜在的な健康問題の兆候です。
特に腎臓病、糖尿病、あるいは感染症などが原因の可能性があります。

2. 嘔吐や下痢
たまに嘔吐や下痢をすることは犬にとって普通かもしれませんが、繰り返すか、血が混じる場合は緊急を要します。
これらは消化器系の問題、内部寄生虫、中毒、または感染症の可能性を示しています。

3. 異常なぐったりとした様子や活動性の低下
犬がいつもより明らかに元気がなく、活動的でない場合、これは病気の兆候です。
元気がない状態が長く続く場合は、感染症、心臓病、または代謝疾患などが原因かもしれません。

4. 行動の変化や異常行動
犬が普段と違う行動を見せたり、攻撃的になったり異常なほど恐怖を感じているようであれば、これも病気のサインです。痛みや脳の問題が考えられるので、獣医師の診察が必要です。

5. 体重の急激な増減
体重が急激に減少したり増加するのは、犬にとって警告信号です。
甲状腺の問題、がん、代謝異常が原因の可能性があります。

6. 呼吸の困難
息をするのに苦労しているように見えたり、息が荒くなったりする場合は、直ちに獣医師の診察が必要です。心臓病や肺の問題が潜在的な原因と考えられます。

7. 皮膚や耳の問題
皮膚が赤くなったり、かゆみがあったり、耳が異常に臭ったりする場合は、感染症やアレルギーの可能性があります。これらの症状はしばしば慢性的な問題を示しています。

8. 身体的な変化や痛みの兆候
びっこを引いたり、触ると痛がる場合は、外傷や関節疾患の可能性があります。
また、目が濁ったり、視力に問題があるように見える場合も注意が必要です。

犬ジステンパーウイルス感染症の診断方法

ジステンパーウイルス感染症の診断には、いくつかの方法があります。初期の症状が他の疾患と似ているため、正確な診断が重要となります。

1.臨床症状のチェック:犬ジステンパーは多様な臨床症状を示すため、獣医師は症状(呼吸器症状、消化器症状、神経系症状など)を詳しく調べます。

2.血液検査:血液検査を通じて、白血球数の異常やその他の指標を確認します。犬ジステンパーでは、特にリンパ球数の減少が見られることが多いです。

3.ウイルス検出:RT-PCRなどの分子生物学的手法を用いて、体液や組織サンプルから直接ウイルスの遺伝子を検出する方法です。これは早期発見に対してベストな方法で、感染経路が明らかとなります。

4.イムノフルオレッセンス検査:体液や組織サンプルに含まれるウイルス抗原を特定するために用いられます。検査結果は早く、感染の早期発見に役立つことがありますが、まだ一般的には広く知られていないため、多くの人には馴染みが薄いかもしれません。

これらの診断方法は、それぞれの症例に応じて用いられることが多いです。
特に、病気が進行すると神経に影響が出るため、初期の段階で正確な診断を行い適切な治療を開始することが重要です。

犬ジステンパーウイルス感染症の治療法

犬ジステンパーウイルス感染症の治療は、主に対症療法(病気によって生じている痛みや発熱、せきなどの症状を和らげたり、なくしたりする治療法)に基づいて行われます。

特効薬がないため、症状を管理することが中心となります。

感染した犬には、抗生物質を用いた二次的な細菌感染の予防や治療が適しています。また、脱水状態の管理のために輸液療法(主に経静脈的に水・電解質・糖質・脂質・アミノ酸・ビタミン・微量元素などを投与する治療法)が施されることもあります。重症の場合は、抗炎症剤や抗痙攣薬の使用が必要になることもあります。

さらに、感染症の進行により神経系に影響が出た場合には、症状に応じて追加的な治療が行われることもあります。例えば、神経症状が顕著な場合には、以下のような治療が必要となることがあります。

  • 抗痙攣薬の投与:痙攣や筋肉のけいれんがある場合には、フェノバルビタールやダイアゼパムなどの抗痙攣薬が処方されることがあります。
  • 抗炎症薬の使用:神経組織の炎症を抑えるために、ステロイド(プレドニゾンなど)が使用されることがあります。これは脳腫脹を減少させ、症状を緩和するために使用されます。
  • サポーティブケア:脱水防止のための静脈内輸液や、栄養状態を維持するためのサポートも重要です。
  • 物理療法(フィジカルセラピー):犬のリハビリテーションにおいて広く用いられており、方法としては5つほどあります。まず、水中トレッドミルを利用した運動は、水の浮力が関節への負担を軽減しつつ適切な運動量を確保するため、手術後のリハビリや関節炎を持つ犬が対象となります。また、パッシブレンジオブモーション(PROM)では、専門の獣医が犬の関節を動かすことで可動範囲を保持または改善し、筋肉の硬直や関節の問題を予防します。
  • 他にも、熱や冷却を用いた治療は、炎症を抑えたり筋肉の緊張を和らげます。電気刺激療法は、痛みの軽減や筋肉の活性化に適しており、神経機能のサポートにも役立ちます。レーザー治療は、治癒プロセスを促進し、炎症や痛みを軽減するために低出力のレーザーを使用することで、細胞レベルでの修復をサポートします。

犬ジステンパーウイルス感染症の予防法

犬ジステンパーウイルス感染症は、ワクチンを適切に接種することで予防できる病気なので、動物病院で定期的に接種することと定期検診を受けることがベストな予防法となります。

まとめ

ここまで、犬ジステンパーウイルス感染症の症状や予防法まで解説しました。

要点をまとめると、以下の通りです。

  • 犬ジステンパーウイルス感染症は、犬の感染症の中でも感染力が強く、致死率も高いといわれている
  • 感染経路としては、感染した犬の鼻水、唾液、眼の分泌液、尿などに直接触れること、または飛沫感染によりウイルスを吸い込むことで発症する
  • ウイルスに感染した場合、呼吸器や消化器、神経、目や皮膚に症状が現れる

ジステンパーウイルス感染症は、死亡する恐れがある感染症であり、伝染力もあるウイルスです。愛犬を守るために、ワクチンの接種を徹底しましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献