活発で賢く、美しい被毛を持つボーダーコリーは、その豊かな毛量から 「トリミングが必要なのでは?」と考える飼い主さんも少なくないでしょう。
しかし、ボーダーコリーのトリミングには犬種特有の特徴があり、注意が必要です。 また、トリミングにおける適切なケアに疑問を持つ方に向けて、 ケア方法だけでなく適切なカットスタイルや日常の被毛ケアとあわせて解説します。
愛犬の美しさと健康を長く維持するためには正しい知識を見つけることが不可欠です。 本記事では、ボーダーコリーの被毛の特徴を踏まえたうえで、ケア方法について詳しく紹介します。
ボーダーコリーの被毛の特徴
ボーダーコリーの被毛を理解するために、まずはその特徴を詳しく見ていきましょう。
ボーダーコリーはダブルコート(上毛と下毛の二層構造)を持つ犬種です。
また、ボーダーコリーにはロングコートとスムースコートの2タイプが存在します。日本で一般的に見かけるのはロングコートタイプで、豊かで美しい長毛が特徴的です。
上毛(オーバーコート)は、外部の刺激から身体を守る役割を果たします。水をはじき、紫外線や外傷から皮膚を保護する重要な機能です。
下毛(アンダーコート)は、体温調節を担っています。冬は暖かい空気を閉じ込めて保温し、夏は熱気を遮断して涼しさを保つ断熱効果があります。
換毛期は春と秋の年2回で、この時期には大量の抜け毛が発生し、アンダーコートが生え変わるため、適切なブラッシングによるケアが欠かせません。
正しいブラッシング方法は被毛のもつれを防ぎ、皮膚の健康維持にも重要な役割を果たします。
犬種によって一日にこなすべきケア方法に違いがあります。ケア方法が不適切だと犬の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
ボーダーコリーのトリミングは必要?
ボーダーコリーにトリミングが必要かは、多くの飼い主さんが抱く疑問です。結論からいうと、全身カットは基本的に不要です。
ボーダーコリーは、プードルやマルチーズのように定期的な全身トリミングを必要とする犬種ではありません。むしろ、被毛を短く刈りすぎると健康上のリスクが生じる可能性があります。トリミングが不要な理由は以下のとおりです。
- 被毛の断熱効果が損なわれ体温調節が困難になる
- 紫外線防御効果がなくなり皮膚がんや日焼けのリスクが増加
- 外傷や虫刺されから身体を守る機能が低下
自然な被毛の長さを保つことで、季節の変化にも適応しやすく快適に過ごせます。
一方で、衛生面や健康面から部分カットは必要です。肉球の間の毛は滑り止めの効果を妨げるため、定期的にカットすることが推奨されます。
お尻周りの毛は排泄物が付着しやすく、皮膚トラブルの原因となるため、清潔に保つためのカットが有効です。
耳周りや目の周囲の毛も、必要に応じてカットすることで、外耳炎や目のトラブルを予防できます。
ボーダーコリーのトリミングの基礎知識
ボーダーコリーに部分的なトリミングを行う場合の基礎知識をご紹介します。トリミング前に知っておくべき基本情報は、適切な時期や頻度、費用の目安です。
これらの情報を把握しておくことで、愛犬にとってぴったりなケアプランを立てることができるでしょう。また、ボーダーコリーは大型犬であるため、小型犬とは異なる配慮が必要な場面もあります。
ボーダーコリーのトリミングの時期
ボーダーコリーのトリミング時期は、換毛期に合わせるのが効果的です。春(3~5月)と秋(9~11月)の換毛期は、抜け毛が特に多くなるため、この時期に合わせて部分カットやケアを行うとよいでしょう。
夏場のトリミングは慎重に行いましょう。暑さ対策として毛を短くしたくなりますが、被毛の断熱効果により涼しさを保っているため、過度なカットは逆効果になる可能性があります。
子犬の場合は、生後4~6ヶ月頃からトリミングサロンでのケアを始められます。ただし、ワクチン接種が完了してから行いましょう。
トリミングの頻度
部分トリミングの頻度は、2~3ヶ月に1回程度が目安です。
肉球周りの毛は月1回程度、お尻周りは月1~2回チェックし、汚れが目立つ場合はこまめにカットしましょう。
換毛期は抜け毛処理も兼ねて、やや頻度を増やすとよいでしょう。ただし、愛犬の体調やストレスレベルを考慮して調整することが大切です。
高齢犬や体調不良時は、トリミング自体が負担になるため、無理に行わず獣医師と相談しながら進めましょう。
トリミングの費用相場
トリミング費用の相場は、7,000~8,500円程度です(シャンプー+部分カットの場合)。
ただし、体毛の状態や追加オプションによっては価格が前後します。料金の詳細は、各施設または動物病院の情報を確認するとよいでしょう。
地域やサロンのレベルによって価格は変動しますが、犬種の特性を理解した経験豊富なトリマーがいる店舗を選ぶことが大切です。
ボーダーコリーにおすすめのカットスタイル
ボーダーコリーに適したカットスタイルをご紹介します。前述のとおり、ボーダーコリーには全身カットは推奨されませんが、部分的なカットであれば愛犬の健康と美しさの両立が可能です。
ここでは、効果的なカットスタイルと、それぞれの目的やメリットについて詳しく解説します。
サマーカット
一般的なサマーカット(全身を短く刈り込むスタイル)は、ボーダーコリーには推奨されません。前述のとおり、被毛の重要な機能を損なうリスクがあるためです。
どうしても夏場の暑さ対策を行いたい場合は、軽くすく程度にとどめましょう。被毛の長さは保ちつつ、量を減らして風通しをよくする方法が適しています。
足裏や脇の下など、蒸れやすい部分のみを短くカットすれば、暑さ対策として効果的です。
飾り毛カット
ボーダーコリーの美しさを保ちながら手入れしやすくするのが飾り毛カットです。
耳周りの飾り毛を整えることで、より清潔感のある印象になります。耳のなかに毛が入り込むのを防ぎ、外耳炎の予防にも効果的です。
足先の飾り毛をカットすると、散歩後の汚れが付きにくくなり、手入れが楽になります。また、肉球周りの毛をカットすることで、滑り止め効果も向上します。
おしり周りカット
衛生面で重要なのが、おしり周りのカットです。
肛門周りの毛をカットすることで、排泄物の付着を防げるほか、皮膚トラブルや悪臭の予防にもつながります。
尻尾の裏側の毛も、必要に応じてカットしましょう。特に下痢をしやすい子や、毛量の多い子には効果的です。
このカットは飼い主さんでも行えますが、デリケートな部位のため、初回はプロのトリマーに依頼することをおすすめします。
ボーダーコリーのトリミングをしてもらう際のポイント
トリミングサロンを利用する際の重要なポイントを解説します。プロのトリマーに依頼する場合、事前の準備と適切なコミュニケーションが満足のいく仕上がりの鍵となります。
特にボーダーコリーは犬種特有の注意点があるため、トリマーとの情報共有は欠かせません。また、初めてのサロン利用では愛犬のストレスを抑える工夫も大切です。
事前に愛犬の被毛の状態や気になる部分を具体的にメモしておくと、トリマーとの打ち合わせがスムーズになります。
仕上がりのイメージを具体的に伝える
トリマーとのコミュニケーションは、満足のいく仕上がりのために欠かせません。
写真を活用して、希望するスタイルは、できるだけ具体的に伝えましょう。短くさっぱり、といった曖昧な表現では、意図と異なる仕上がりになる可能性があります。
ボーダーコリーの場合は部分カットのみ希望や「全身は触らないで」といった、やってほしくないことも明確に伝えることが大切です。
過去に気に入ったスタイルがあれば、その写真を保存しておくと便利です。
愛犬の性格や苦手なことを伝える
愛犬の性格や苦手なことを事前に伝えることで、ストレスの少ないトリミングにつながります。
人見知りする子、音に敏感な子、特定の部位を触られるのが苦手な子など個々の特性を詳しく説明しましょう。
初回は、短時間のお試しコースから始めることをおすすめします。本格的なケアに移行する前に、まずは環境に慣れさせることが大切です。
噛み癖や過度な興奮が見られる場合は、必ず事前に伝えておきましょう。
アレルギーや既往歴、体調を共有する
健康面の情報共有は、安全性の高いトリミングのために必須です。
皮膚アレルギーがある場合は、使用可能なシャンプーの種類を具体的に伝えます。獣医師の支持がある場合は、指定されたシャンプーを持参しましょう。
心疾患や関節疾患など、基礎疾患がある場合は必ず申告しましょう。体位の制限や、作業時間の調整が必要になる場合があります。
当日の体調にも注意が必要です。食欲不振や下痢、発熱などがある場合は、トリミングを延期しましょう。
信頼できるトリミングサロンを選ぶ
ボーダーコリーの特性を理解した経験豊富なトリマーのいるサロンを選ぶことが重要です。
大型犬の扱いに慣れているか、ダブルコートの犬種の経験があるかを確認しましょう。
衛生管理がしっかりしているか、スタッフの対応が丁寧かなども重要なポイントです。見学が可能であれば、事前に施設の雰囲気や衛生状況を確認しておきましょう。
また、トリマーがケアに関するアドバイスやフィードバックを提供してくれると自宅でのケアにつながります。そのため、見学に行った際にほかの飼い主さんとコミュニケーションを取っているか確認しましょう。
ボーダーコリーの被毛ケアのポイント
日常的な被毛ケアこそが、ボーダーコリーの美しさと健康を保つ鍵となります。プロによるトリミングも大切ですが、日々の家庭でのケアこそが愛犬の被毛状態を左右します。
ボーダーコリーのダブルコートは適切なケアを行うことで、本来の美しさを保ち続けることができるでしょう。ここでは、季節ごとの注意点や効果的なケア方法について詳しく解説します。
抜け毛が多いのでブラッシングは頻繁に行う
ボーダーコリーの被毛ケアで重要なのがブラッシングです。
通常時は週2~3回、換毛期は1日2回のブラッシングを毎日行うことが理想的です。スリッカーブラシやコームを使い、アンダーコートの抜け毛をしっかりと取り除きます。
ブラッシングの手順は、まず全体をスリッカーブラシでとかし、その後コームで仕上げます。毛玉ができやすい耳の後ろ、脇の下、内股などは特に丁寧に行いましょう。
無理に引っ張らず、毛玉がある場合は少しずつほぐすか、必要に応じてカットします。
ブラッシングを怠ると、ハウスダストやノミ、散歩時の汚れが蓄積し、皮膚炎などのトラブルを引き起こすおそれがあります。
季節に合わせた被毛ケアを行う
季節ごとの適切なケアで、愛犬の快適さを保ちましょう。
春の換毛期は、冬毛が抜け落ちるため抜け毛が多くなります。この時期はアンダーコート用のブラシを活用し、徹底的に抜け毛を除去しましょう。
夏場は、ブラッシング後に身体を冷やすクールダウンが効果的です。直射日光を避け、風通しのよい場所でケアを行います。
秋の換毛期は、夏毛から冬毛への生え変わりが起こります。新しく生えてくる毛を傷めないよう、優しくブラッシングすることが大切です。
冬場は乾燥による静電気や皮膚トラブルに注意し、保湿効果のあるスプレーの使用も視野に入れるとよいでしょう。
被毛ケアを通して愛犬とのコミュニケーションを深める
被毛ケアは、愛犬との大切なふれあいの時間にもなります。
ブラッシング中は愛犬の様子をよく観察し、皮膚の異常や体調の変化を早期発見できます。いつもと違う匂いや、皮膚の赤み、できものなどがあれば早めに獣医師に相談しましょう。
声をかけながら優しくブラッシングすることで、愛犬との信頼関係がより深まります。嫌がる場合は無理をせず、時間をかけて慣らしていくことが大切です。
ブラッシング後のご褒美タイムを作ることで、愛犬にとって楽しい時間にしていきましょう。
バランスのよい食事で脱毛トラブルを予防する
健康な被毛を保つには、内側からのケアも欠かせません。良質なタンパク質は被毛の主成分となるため、適切な量を摂取することが必要です。
オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸は、被毛の艶や皮膚の健康維持に効果があります。ビタミンEやビタミンAといった抗酸化作用のある栄養素も、被毛の健康維持に役立ちます。
栄養バランスの偏りは脱毛や皮膚トラブルの原因となるため、総合栄養食を基本とし、必要に応じて獣医師に相談しながらサプリメントの使用を検討しましょう。
水分不足も被毛や皮膚の乾燥を招くため、新鮮な水をいつでも飲めるようにしておくことも大切です。
まとめ
ボーダーコリーは頭のよい美しい犬種ですが、被毛ケアを怠ってしまうと皮膚トラブルや毛玉ができる可能性があるので注意が必要です。 子犬の頃から適切なケアを続けることで、健康な被毛の維持とトラブルの予防につながります。
また、定期的なブラッシングは愛犬とのスキンシップの時間としても大切な役割を果たします。
一方、トリミングサロンではケアの知識やスキルを学べるため、 自宅でのケアに活かすことができるのも大きなメリットです。
犬と飼い主さんだけでなく、家族全員で美しい被毛を保つために 適切なケア方法を身につけていきましょう。
参考文献