外耳炎のペットはトリミングできる?原因や予防策もあわせて解説

外耳炎のペットはトリミングできる?原因や予防策もあわせて解説

動物を飼っていると、病気の発症は避けて通れません。いくら気をつけていても、細菌やウイルス、寄生虫などを完全に防止することは困難です。

犬の耳の病気の一つに外耳炎があります。外耳炎は発生頻度が高く、原因も多岐に渡ります。

外耳炎があると注意しなくてはいけないことがいくつかありますが、トリミングもその一つです。

トリミングで耳毛や耳周囲の毛を整えたい場合でも、外耳炎があると感染の心配や処置の判断に迷うことがあります。

外耳炎を発症している場合、サロンに行ってもよいか悩む方もいるでしょう。

本記事では、外耳炎の原因や予防策に加え、外耳炎になった犬がトリミング可能かどうかを具体的に解説します。

ペットの健康管理や外耳炎への対応について、参考になれば幸いです。

犬がかかりやすい耳の炎症の種類

診察中のヨークシャテリア
犬がかかりやすい耳の炎症には、いくつかの種類があります。この章では、それぞれの炎症の特徴を具体的に解説します。

犬の耳の病気は外耳炎や中耳炎、内耳炎のほか、外耳炎と併発する耳血腫や耳ダニ症などです。

中耳は鼓膜とその奥の空間であり、細菌が外耳から鼓膜を通って入り込み、炎症を起こした状態が中耳炎です。外耳炎が悪化して生じる場合があります。

内耳炎は、中耳に侵入した細菌感染によって生じます。内耳は音の伝導や平衡感覚を担っており、内耳炎ではぐるぐる回る旋回や黒眼が揺れる眼振のほか、食欲不振や嘔吐などの症状が見られるのが特徴です。

外耳は耳の穴から鼓膜までの耳道を指し、そこに炎症が生じるのが外耳炎です。細菌感染で発症することが少なくありません。詳細については後述します。

耳血腫は、耳介の軟骨内に血液が貯留する病気です。耳介に激しい刺激を繰り返し受けたとき、耳介軟骨の血管から出血して、軟骨と皮膚の間に血液が溜まった状態を指します。

耳血腫は皮膚病や寄生虫などが要因となり、外耳炎や内耳炎を併発しやすい傾向があります。

耳ダニ症はミミヒゼンダニというダニによる感染症で、外耳炎の一種です。0.3〜0.5mmほどの小さなダニが耳内で繁殖し、強いかゆみにより首を振ったり頭を傾けたりする症状が見られます。

犬が外耳炎になる原因

男性医師とクエスチョンマーク
犬の外耳炎は、よく見られる病気の一つです。原因は感染症と思われがちですが、ウイルスや細菌だけではありません。

  • 寄生虫
  • アレルギー
  • 異物が耳に入った
  • 犬種によるもの

これらが原因となり、外耳炎を発症することもあります。

この章では、犬が外耳炎になる原因について具体的に解説します。

ウイルスや細菌によるもの

ウイルスや細菌は、犬が外耳炎を発症する原因の一つです。

特に垂れ耳の犬は外耳道が閉鎖的で通気性が低く、湿気や熱がこもりやすいため、細菌やウイルスが繁殖しやすくなります。

細菌やウイルスによる外耳炎は、慢性的な病気とみなされています。放置していると悪化するため、進行を止めるためにも早めの受診が必要です。

寄生虫

犬の耳に寄生虫が発生することで外耳炎になる場合があります。

そのなかでもミミヒゼンダニによる外耳炎は、たびたび報告されています。

ある研究で1,151頭の犬の耳を調べたところ、3.5%の犬の両耳に寄生虫が確認できたと報告されています。特に、1歳未満や室内犬に多い傾向があります。

寄生虫が見つかる要因には、免疫力の低下や、ほかの犬からの感染も考えられるでしょう。若い犬や子犬がいたり、室内で複数の犬を飼っていたりするときは十分に注意が必要です。

アレルギー

柴犬・掻く
犬が外耳炎を発症する場合、アレルギーも原因の一つです。アレルギーには、犬アトピー性皮膚炎や食物過敏症、接触性皮膚炎などがあります。

外耳炎が慢性化する背景には、アレルギーが基礎疾患として関与していることがあります。

Farvotらは、慢性的な外耳炎をもつアトピー性皮膚炎の犬のうち、43%がほかの症状より先に外耳炎を発症していると報告しました。

またギリシャの大学病院で行った調査では、外耳炎を発症している100匹のなかで、43匹がアレルギーが原因であると示されています。

室内犬だとハウスダストが原因と考えられる皮膚炎を発症することもあります。アレルギーによる外耳炎は、ほかの原因に比べて多数報告されています。

異物が耳に入る

犬の外耳炎は、異物が耳に入って発症することもあります。異物は綿毛や小枝、葉っぱなどの植物、泥や小石などさまざまです。

ギリシャの大学病院の調査によると、外耳炎を発症した犬100匹のうち、12匹が異物が原因だったと報告されています。

異物が入ったら早急に取り出さなくてはいけませんが、対処してもかゆがるときはほかの原因がないか、調べる必要があります。

犬種

色々な犬
外耳炎を発症しやすいとされる犬種がいますが、大きく分けると以下の3パターンです。

  • 垂れ耳の犬種
  • 遺伝的にアレルギー体質の犬種
  • 耳道に毛が生えやすい犬種

垂れ耳の犬は、外耳道が閉鎖的になるため、細菌やウイルスが原因の外耳炎になりやすい犬種とされています。

例えば、ゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバー、コッカースパニエルやバセットハウンドなどです。

遺伝的にアレルギー体質で、アトピー性皮膚炎にかかりやすい犬種も、外耳炎になりやすいといえます。例えば、シーズーやフレンチブルドッグ、ジャーマン・シェパード・ドッグなどです。

耳道に毛が密に生えやすい犬種は、外耳道の通気性が低くなって耳垢が溜まりやすく、外耳炎を発症しやすくなります。主な犬種はプードルやシュナウザーなどです。

犬が外耳炎になった場合の症状やサイン

気持ち良さそうに後ろ足で耳をかく柴犬
犬の外耳炎にはいくつかの種類がありますが、炎症が起こると共通の症状やサインが現れます。

通常と異なる症状やサインで、犬の異常や体調を判断することが可能です。この章では、犬が外耳炎になった場合の症状やサインについて、解説します。

症状

犬の外耳炎の主な症状は、耳垢の量が増える、耳から異臭がする、耳のかゆみや痛みが生じるなどです。また、耳のなかが黒くなったり赤くなったりします。

外耳炎が進行すると、眼やお口のまわり、顎などお顔にも症状が現れます。悪化すると眼を傷つけてしまう可能性があるため、注意しなくてはいけません。

そのほか耳介に血が溜まってしまう耳血腫も、外耳炎が進行した際に見られることがあります。

外耳炎から、中耳炎や内耳炎と耳の奥に進行していくと、首が傾いたりまぶたの反応が低下したりなど神経症状が出現する場合もあります。

サイン

かゆい
犬は外耳炎にかかっても、人間のように訴えられないため、症状やサインを見逃さないようにしなくてはいけません。

耳がかゆい場合は、耳や首を掻いたり頭を何度も擦り付けたりします。ほかには、後ろ足で脇を掻く場合もあります。

お顔回りを触ろうとすると嫌がったり怒ったりする場合は、耳が痛いときのサインです。頭を振ることもあります。

内耳まで進行して神経症状が出ている場合は、意図しない動きになっているため、異常を感じたら早急に診てもらいましょう。

治療法

外耳炎の治療は、まず飼い主の問診を行った後、検査を実施します。

主な検査は、マイクロスコープによる耳道検査、耳垢を顕微鏡で確認する耳垢検査などです。レントゲン検査や血液検査、超音波検査を行う場合もあります。

治療としては、まず耳を洗浄して、耳垢や老廃物を取り除きます。汚れの除去だけではなく、耳のなかを清潔に保つために重要な過程です。

洗浄するときは耳道洗浄剤を使用することがあります。除去が難しい脂性の耳垢も取り除き、しっかり洗浄する効果があります。

耳の奥の状態を確認したいときは、ビデオオトスコープを使用しながら洗浄します。

耳を洗浄したら、液体やクリームタイプの点耳薬を家庭で使用しましょう。薬は定期的に注入しなくてはいけないため、家庭で点耳できない場合は、病院で耳道に薬を入れることもできます。

抗生剤や抗真菌剤などの内服薬を飲むのも、治療法の一つです。

検査でアレルギーが確認された場合、食物療法を行うことがあります。食物療法だけで改善しないときは、洗浄や薬物治療を併用する場合もあるため、獣医師に確認しましょう。

重度のアトピー性皮膚炎で、症状が治らない場合、外科的治療の適用になることもあります。

外耳炎のペットはトリミングできる?

トリミングをする女性 カット
外耳炎の犬でもトリミングは可能です。ただし、状態によっては注意が必要で、場合によってはサロンで断られることもあります。

この章では、トリミングの効果と、外耳炎の犬に施す際の注意点について解説します。

トリミングとは、ハサミやバリカンで犬の毛を切って短くしたり、シャンプーで汚れを落として清潔さを保ったりする施術です。

トリミングは、清潔感や審美的な効果だけでなく、ペットの健康管理にも有効です。外耳炎をはじめとする耳の病気やアレルギーの対応にも効果が期待できます。

犬の毛や耳垢は外耳炎の原因になるため、耳のなかに入り込んでいる毛を切ったり耳の掃除をしたりすることは、病気の対策として重要です。

外耳炎の基礎疾患になりうる犬アトピー性皮膚炎のようなアレルギーや、細菌性の皮膚炎にはシャンプーが有効です。

ただし、シャンプーや水が耳に入ると外耳炎を悪化させる可能性があります。また、菌や寄生虫が存在する耳垢の処理にはリスクが伴います。

獣医師にしっかり相談したうえで、外耳炎をもっていてもトリミングが可能か、サロンに事前に確認するようにしましょう。

外耳炎の犬に対してのトリミングサロンの対応

はてなマークを思い浮かべる犬(チワワ)
外耳炎の犬でもトリミングは可能ですが、症状によっては対応が困難で、サロンに断られることも少なくありません。

しかし外耳炎予防のために、カットや耳掃除を行うサロンもあります。この章では、外耳炎の犬に対するトリミングサロンの対応について解説します。

耳毛を抜く工程は対応してもらえない

外耳炎の犬に対して、耳毛を抜く工程は対応してもらえないことがあります。耳毛を抜くことで、炎症が悪化する恐れがあるためです。

以前は、耳毛を抜く方が通気性がよくなると考えられていました。

近年は無理に耳毛を抜くと皮膚を傷め、感染症や外耳炎を引き起こす、あるいは悪化させる可能性があるとされています。

むしろ耳毛は細菌やウイルス、水分やホコリから耳のなかを保護する役割があります。

耳毛が長くなりすぎたり身体の毛が耳に入ってしまったりすると、外耳炎の原因になる恐れがあるため、適度な長さに切り揃える対応は必要です。

耳の炎症やにおいがある際は、耳毛は自己判断で抜かずに獣医師に相談しましょう。

薬を使用している場合は断られやすい

バツのプラカードを持つ若いエプロンの女性
外耳炎の薬を使用している場合は、トリミングサロンに断られることがあります。シャンプーの際に薬が流れたり、耳のなかに水が入ってしまったりするリスクがあるからです。

治療中にトリミングを行うと治癒が遅れる可能性があるため、サロンでは施術を控えることがあります。

外耳炎の治療中でもトリミングを行いたいときは、獣医師に相談して病院でトリミングをするか、トリミングサロンに問い合わせてみましょう。

予防でのカットや掃除を行うサロンもある

トリミングサロンでは外耳炎予防のためのカットや、耳掃除を行うサロンもあります。

犬の耳には自浄作用があり、耳の汚れは自然に排出される仕組みになっています。しかし、その機能が十分に働かない犬種がいるため、注意が必要です。

垂れ耳や耳が閉じやすい犬種は耳垢や汚れが溜まりやすいため、定期的に掃除をすると炎症予防になります。

プロに任せることで、犬のストレス軽減になるだけでなく、耳のなかの異常に気付きやすくなります。

外耳炎を予防するために耳毛や耳周囲の毛をカットするときは、犬種や皮膚の状態を考慮することが重要です。

長毛種は1ヶ月に1回、短毛種は様子を見てカットします。皮膚の敏感な犬やアレルギーをもつ犬は、獣医師やトリマーと相談しながら対応します。

まとめ

獣医さんと飼い主

犬がかかる耳の病気には、外耳炎と中耳炎、内耳炎などがあります。そのうち外耳炎は、耳の穴から鼓膜までの耳道に炎症が起きますが、原因は細菌やウイルスだけではありません。

寄生虫や異物、アレルギーなど、外耳炎の原因はさまざまです。耳のかゆみや痛みだけでなく、神経症状が見られる場合もあります。

治療法は耳洗浄から薬の治療、必要であれば外科的治療を行うこともあり、アレルギーには食物療法を実施します。

外耳炎予防にはトリミングが有効です。耳掃除で耳垢や汚れを除去し、毛が耳道に入り込まないようカットすることで、炎症リスクを軽減できます。

自己判断で耳垢や耳毛の除去を行うと、犬の耳を傷つけて病気の原因になる場合があります。耳の衛生状態が気になるときは、プロに任せることが大切です。

また、外耳炎の原因の一つである犬アトピー性皮膚炎には、定期的にシャンプーを行うと効果があります。

犬の皮膚状態をしっかり観察するためにも、トリマーのようなプロの視点は重要です。

しかし、外耳炎を発症した後のトリミングには注意が必要です。シャンプーや水が耳に入ると炎症を悪化させたり、耳につけた薬を流してしまったりするリスクがあります。

外耳炎でもトリミングは可能ですが、リスクを考慮して施術を断るサロンもあります。獣医師に相談し、病院で実施するか、獣医師やトリマーと対応を協議することが必要です。愛犬にとって何が適切か、十分に検討するようにしましょう。

参考文献