猫にトリミングが必要な理由|メニューや費用相場、注意点も解説

猫にトリミングが必要な理由|メニューや費用相場、注意点も解説

猫は毎日自分でグルーミング(毛繕い)を行うため、犬のようにトリミングへ通うイメージがないかもしれません。

しかし、実はトリミングが必要になるケースやプロのケアが推奨される場合があります。

本記事では、猫のトリミングが必要とされる理由や、トリミングの内容と費用相場などを詳しく解説します。

きれい好きな猫にとって快適な被毛ケアの方法を理解し、より健康的な生活を送るための参考にしてもらえると幸いです。

猫にトリミングが必要な理由

窓際で毛繕いをする猫

猫はとてもきれい好きな動物であり、自分自身で身体を舐めて被毛を清潔に保つ、セルフグルーミングを行います。

しかし、猫のセルフグルーミングだけでは十分なケアが難しい場合や、人間の手によるトリミングが必要になることがあります。

トリミングは単に見た目を整えるだけでなく、猫の健康維持にも大きく関わってくることを理解しておきましょう。ここでは、猫にトリミングが必要とされる主な理由を解説します。

毛玉ができるのを予防できる

長毛種の被毛は細く絡まりやすいうえ、静電気の影響で結束しやすいのが特徴です。絡まってできた毛玉は皮膚を引っ張り痛みや炎症の原因となります。

また通気性も悪くなるため、湿疹が発生しやすくなるでしょう。放置するとどんどん大きくなり、皮膚に張り付いて猫にとってとても不快感を与えます。

プロによるシャンプーとカットを組み合わせたトリミングは、表面だけでなく下層のアンダーコートまでほぐし毛玉も負担なく取り除くことが可能です。

飼い主と猫にとって負担を少なくするために、定期的なブラッシングや必要に応じたトリミングで毛玉の発生を予防することが大切です。

飲み込む毛の量を減らせる

毛づくろいする猫

猫は毎日時間をかけてセルフグルーミングを行いますが、この際に大量の抜け毛を飲み込んでいます。飲み込んだ毛は消化器官を通過して、便と一緒に排出されることがほとんどです。

しかし、量が多い場合やうまく排出できない場合は、胃のなかで毛が固まって毛球(毛玉)を形成することがあります。

この毛球が大きくなると食欲不振や嘔吐、便秘などの症状を引き起こす毛球症になる可能性があります。

定期的なトリミング(特にブラッシングやシャンプー、カット)は、身体の表面にある抜け毛を効果的に除去し、毛球症のリスクを低減できるでしょう。

病気の早期発見につながる

プロのトリマーや獣医師は被毛だけでなく皮膚や耳、爪、肛門周囲まで一連のチェックを行います。

その過程で赤みや腫脹、外傷、寄生虫の糞など自宅では気付きにくい微細な変化を見つけることが可能です。

早期に異常を認識できれば治療費も抑えられ、猫の負担も小さく済みます。また、定期的に同じ施設を利用すると経過観察が容易になる点もメリットです。

特に慢性疾患を抱える猫では、被毛の艶の減少や皮膚の乾燥がサインになることがあります。これらの異常を早期に発見できれば、病気の進行を抑え迅速な治療につながります。

トリミングが必要な猫の特徴

ドライフラワーと猫

トリミングの必要性は猫の種類や年齢、健康状態、ライフスタイルによって大きく変わります。もし以下の特徴に当てはまる場合は、自宅でのケアに加えプロによるトリミングを検討してみましょう。

  • 長毛種
  • 高齢猫
  • 肥満猫
  • 皮膚病
  • 外によく出る猫

長毛種の代表例にはペルシャやメイクイーン、ヒマラヤン、ラグドールなどで被毛量が多く毛玉ができやすい傾向があります。

高齢の猫や病気の猫は、体力や柔軟性が低下しセルフグルーミングが十分にできなくなることがあります。

また、肥満や皮膚病を抱える猫はセルフグルーミングの効率が下がるため、人の手によるケアが必要です。

外に出る猫は、被毛に汚れや寄生虫がつきやすくなる場合があります。これらの猫は、定期的なブラッシングに加えて、シャンプーやカット、部分的なトリミングが必要になることがあるでしょう。

猫のトリミングをしてもらえる場所

動物病院で獣医師に診察を受ける猫

猫のトリミングをしてもらう場所として、動物病院とトリミングサロンがあります。それぞれの場所には特徴があり、猫の状態や飼い主の希望に応じて選ぶことが重要です。

以下で主な特徴をご紹介します。猫が落ち着ける環境を選びましょう。

動物病院

動物病院では、獣医師や動物看護師がトリミングを行います。そのためトリミング中に猫の健康状態をチェックしてもらえるのは大きなメリットです。

皮膚の状態や身体にしこりがないかなど、医療的な視点から猫の身体を確認してもらえる点は、特に高齢の猫や持病のある猫にとって心強いでしょう。

また猫が極度に興奮してしまう場合は、安全性の高いトリミングを行うため鎮静処置が必要な場合があります。

そのような場合でも、獣医師の判断のもとで行うことが可能です。

ただし、美容目的専門のトリミングサロンに比べると、カットのスタイルなどは限定的になる場合があります。

トリミングサロン

トリマーがシャンプーやカット、爪切りなど全身のお手入れを行うところで、病気に関する治療は行えません。一方で、トリミング専門のスタッフがいるため、皮膚や被毛のケアに関する専門知識や技術が豊富です。

さまざまなカットスタイルに対応していたり、被毛の質に合わせたシャンプーを選べたりするなど、美容的な観点からのケアに特化している点も魅力でしょう。

猫は犬と違いじっとしているのが苦手な動物のため、性格によってはトリミングが難しい場合もあります。猫にとってストレスや負担にならないよう相談するとよいでしょう。

猫のトリミングを動物病院やサロンでしてもらうメリット

爪切りを我慢する猫

プロに依頼する大きな利点は、短時間で的確にケアが完了することでしょう。自宅でのシャンプーは準備や後片付けを含め長時間になりがちですが、施設では専用浴槽や高速ドライヤーを使って効率的に行うことができます。

また、爪切りや耳掃除、肛門腺絞りなど自宅で嫌がりやすい作業を一括して行えるため、猫が感じるストレスを少なく抑えられます。

万が一、体調に変化が起きた場合も専門スタッフが迅速に対応でき、飼い主にとっても安心感が持てるでしょう。

さらに、定期的に通うことで毛質や皮膚状態の経年変化を記録でき、健康管理の面でも活用できます。

猫のトリミングの一般的なメニューと費用相場

トリミング道具

ここでは動物病院やサロンで実際に提供される代表的なメニューと、おおよその費用相場をご紹介します。

依頼する場所(動物病院かトリミングサロンか)や猫種、被毛の状態によって価格は変動するため、予約時に確認できるとよいでしょう。

ブラッシング

ブラッシングはコームやスリッカーブラシで被毛のもつれを解き、浮いた抜け毛を取り除く基本ケアです。自宅では難しい奥の毛までしっかりと梳かしたり、プロの道具を使って浮いた毛を除去したりします。

また定期的なブラッシングは、セルフグルーミングで飲み込む毛の量を減らすことが可能です。

短毛種でも換毛期には大量の抜け毛が発生するため、自宅でのブラッシングや毛の掃除の負担が大幅に減ります。

所要時間は15分ほどで、費用は1,000円〜3,000円(税込)程度が一般的です。単体のメニューとして提供されることもありますが、シャンプーやカットコースに含まれていることがほとんどです。

爪切り

伸びすぎた爪は肉球に食い込み、痛みや感染を引き起こす要因です。プロの爪切りは血管の位置をライトで確認しながら数ミリ単位で切除するため、深爪のリスクを大幅に減らせます。

さらに切断面をヤスリで整えることで布製品への引っかかりも予防できます。施術時間は10分ほどで、料金は500〜2,000円(税込)程度です。

自宅で切る際の方法を教えてもらうと今後のケアがスムーズに進みます。爪切りを嫌がる猫や切り始めに猫が驚かないよう、足先を触られることへ慣らす練習を並行して行うと効果的でしょう。

深爪時の止血法も学んでおくと落ち着いて対処できます。

カット・シャンプー

体を洗われている猫

全身シャンプーは皮脂汚れや古い被毛を除去し、カットでは長さを整えてもつれを防ぎます。カットはバリカンやハサミで行われ、サマーカットやライオンカットなどのデザインカットにすることも可能です。

サマーカットは熱がこもりやすい長毛種の暑さ対策として利用されますが、皮膚が露出しすぎると紫外線や冷房の風で乾燥しやすくなる原因となるため注意が必要です。

シャンプー剤は、低刺激性のもので猫の皮膚や被毛に合ったものを使用します。尿や便が付着しやすい下腹部やお尻周りを洗浄することで衛生状態を維持できます。

施術時間は60分ほどで、料金は短毛種で3,000円〜5,000円(税込)、長毛種で5,000円〜8,000円(税込)が一般的です。

耳掃除

猫の耳のなかは構造が複雑で汚れが溜まりやすい部分です。耳掃除を怠ると耳垢が溜まって炎症を起こしたり、外耳炎などの病気につながったりする可能性があります。

プロの耳掃除では綿棒を使用せず専用のイヤーローションを注入、コットンや耳鏡を用いて汚れを優しく取り除くため鼓膜を傷つける心配がありません。

猫は耳を触られるのを嫌がることが多いため、自宅でのケアが難しい場合があります。耳垢が多い場合や、耳の臭いが気になる場合は、動物病院で獣医師に相談するのがおすすめです。

所要時間は10分ほどで、施術料金は1,000円〜2,000円(税込)程度です。

毛玉・抜け毛処理

すでにできてしまった毛玉を除去したり、換毛期などに大量に発生した抜け毛を効率的に除去したりする処置です。

毛玉がひどい場合は、ハサミやバリカンを使って慎重に毛玉の周りの被毛をカットする必要があります。無理に引っ張ると猫が痛みを感じたり、皮膚を傷つけたりする可能性があるためプロに依頼するのがよいでしょう。

基本的な抜け毛処理であればブラッシングの費用に含まれることが一般的です。毛玉の量が多い場合は追加料金がかかることもあります。

肛門腺絞り

肛門腺は、肛門左右にありマーキングなどに使う分泌物が溜まる小さな袋です。健康な猫の場合、排便時に自然と排出されますが、高齢の猫や体質によってはうまく排出できません。

これが溜まっていると、便の臭いがきつくなったり炎症や破裂を起こしたりする可能性があります。臭いが強い作業のため自宅で行うより施設に任せた方が衛生的です。

所要時間は数分で、施術料金は500円(税込)程度で対応している施設が多いようです。

猫をトリミングに連れていくときの注意点

猫の毛並みを整えるトリマーの女性

猫は環境の変化や見慣れない場所や人に敏感な動物です。体調や環境を整えることで、猫への負担を軽減でき、トリミングをスムーズに進められるでしょう。

ストレスなく安全性の高い方法でトリミングを行うためのポイントを以下にご紹介します。

健康状態がよいときに行く

猫をトリミングに連れていく際は、猫の体調が万全であることがとても重要です。体調が悪いときや免疫力が低下しているときにトリミングをすると、猫に大きな負担をかけてしまい、症状が悪化する可能性があります。

前日までの食事量や排泄状況を観察しておくとよいでしょう。また施術前にキャリー内で十分に休ませ、体温の上昇を避ける工夫も忘れないようにしましょう。

猫のトリミングに慣れているところに依頼する

猫のトリミングは、犬のトリミングとは異なる専門知識や技術が必要です。

猫は犬に比べて身体を触られることや拘束されることを嫌がる傾向が強く、無理に行うと猫がパニックになったり攻撃的になったりする可能性があります。

そのため、猫の扱いに慣れており猫の特性を理解しているトリマーやスタッフがいる場所を選ぶとよいでしょう。

猫の皮膚トラブルに注意する

トリミング前には、猫の皮膚に異常(赤み、湿疹、かさぶた、傷など)がないか自宅で確認しておくことが大切です。

もし皮膚トラブルがある場合は、トリミングを受ける前に必ずトリマーや動物病院のスタッフに伝えましょう。

皮膚トラブルがある部位は、トリミングの刺激で悪化したり傷口から感染したりするリスクがあります。

皮膚に異常が見られた場合は、すぐにトリマーや動物病院に相談しましょう。トリミングは清潔を保つうえで有効ですが、皮膚の状態を悪化させないよう十分な配慮が必要です。

猫のトリミングに行く頻度の目安

猫を診察する獣医の手

猫種や被毛の長さ、生活環境、年齢、健康状態、飼い主の自宅でのケアの頻度やスキルによって適切な頻度は異なります。

短毛種の場合、基本的にはカットの必要はありません。一方で、長毛種は毛のもつれ具合や毛玉の有無などを見て、適宜判断することが大切です。

シャンプーは、短毛種では3ヶ月〜半年に一回、長毛種で数ヶ月に1回程度が目安となります。猫の様子をよく観察し、毛玉のできやすさや皮膚の状態、抜け毛の量などを考慮して判断することが重要です。

高齢の猫や持病がある猫は体力を見ながら、獣医師やトリマーと連携して頻度を調整しましょう。

まとめ

寝顔

トリミングは、単に見た目を整えるだけでなく毛玉の予防や皮膚疾患の早期発見など、猫の健康維持に重要な役割を果たします。

自宅でのケアに加えて、必要に応じて動物病院やトリミングサロンなどプロの力を借りることで、より快適で健康的な状態に保つことができます。

トリミングの場所やメニュー、頻度は猫にあわせた判断が必要です。この記事で得た情報を参考に、猫と飼い主にとって適切なケアの方法を見つけてもらえれば幸いです。

参考文献