最近は春先から暑さを感じる日もあり、ペットが快適に過ごせるようトリミングでもサマーカットを検討する飼い主さんもいらっしゃるでしょう。
サマーカットは犬たちを清潔に保てる簡単な方法であり、皮膚疾患も早く見つけられるといったメリットがあります。
一方で、犬種によっては短すぎるカットが負担になる場合もあるため、ペットに悪影響を及ぼさないかどうかを確かめながらやりましょう。
本記事では、トリミングのサマーカットとは何か、メリットや危険といわれる理由、向いていない犬種やサマーカットする際のポイントも解説します。
サマーカットとは
サマーカットとは、犬や猫をトリミングする際、被毛を通常の長さよりも短くカットするやり方のことです。切り方には明確な定義がないため、通常よりも短ければサマーカットと呼んでよいでしょう。
全体を短くする丸刈り状態もあれば、部分的に通常の長さの被毛を残すやり方もあります。
愛犬をより可愛くしながら夏の暑さからも守るトリミング方法の一つです。
サマーカットの手順
サマーカットをおこなう時期は、毛の生え変わるタイミングを考慮し、春から夏にかけてがおすすめです。被毛の長さが1cmになるように手入れしてあげると、紫外線による皮膚への悪影響をできる限り少なくとどめつつ、体温調整もしやすくなるでしょう。
具体的な手順は次のとおりです。
- ブラッシングにて絡まった毛をほぐす
- バリカンやハサミを使って被毛の長さを整える
- 爪や耳のケアもおこなう
紫外線にさらされにくく熱がこもりやすいお腹周りは、サマーカットで短くしてあげると暑さ対策として効果的です。顔周りや手足は、凹凸もあるデリケートな部分のため、バリカンからハサミに切り替えて丁寧に毛を切っていきます。毛量を調整するようなカットも有効です。
バリカンを使うためトリマーの技術が求められる
サマーカットは、バリカンやハサミを使って被毛を短く刈り込みます。犬にとって苦手な音が出るバリカンが自分の皮膚近くに差し迫ってくるため、嫌がって逃げようとしたり、暴れたりする可能性もあるでしょう。
市販のバリカンを購入しセルフでおこなう方法もありますが、極力プロのトリマーに依頼した方が無難でしょう。その理由は、暴れた際に飼い主さんがケガをしてしまったり、カットに失敗して犬が痛い思いをしたりする可能性があるからです。
サマーカットをするメリット

サマーカットをおこなうメリットは、毛が短くなるためにペットと飼い主さんが快適に過ごせる点にあります。
例えば、ご飯を食べる際も長い被毛が食事に触れづらくなるため、清潔感は維持されるでしょう。毛と毛をかき分けずとも日常的に皮膚の状態が確認できるため、皮膚疾患の早期発見につながる可能性もあります。
ここでは、サマーカットをおこなう3つのメリットを解説します。
清潔感の維持
サマーカットは通常よりも毛を短くするカット方法のため、清潔感を維持しやすいです。散歩をしているときの土埃や砂などが足に付着するのを抑制したり、ご飯がお口の周りに付いたりするのを防ぐ役割があります。
こまめにお風呂に入るのが難しい場合はもちろん、毛足の長いペットだとよりメリットとして感じやすいでしょう。また、モジャモジャとした見た目よりも、被毛が短い状態は清潔感も演出します。
手入れの負担軽減
サマーカットは被毛を短く刈り込むスタイルです。被毛はシャンプーやブラッシングをする際に長いと絡まりやすいですが、短ければ絡まりづらく何かと手入れがしやすくなります。乾かす時間も短く済むため、ペットと飼い主さんの双方の負担が軽減されるでしょう。トリミングに連れていく頻度も、被毛が長かった頃に比べると間隔が空くため、時間と手間がかからない点でも負担は軽減されます。
皮膚疾患の早期発見
サマーカットによって被毛が短くなれば、普段あまり目にすることのないペットの地肌が簡単にチェックできるようになります。皮膚疾患は腫れたり乾燥したりというように、目に見えるところから始まるケースもあります。サマーカットによって地肌が見えやすくなればこうした皮膚トラブルの初期症状にすぐ気付けるようになるでしょう。
サマーカットが危険といわれる理由

サマーカットは危険、やらない方がよいといわれている理由があります。なぜならペットの被毛は基本的に身体を守るために必要なものであり、トリミングで必要以上に刈り込んでしまうとその機能性が損なわれるからです。もちろん、手入れとしてやる分には問題ないため、注意すべき点と限度を把握できていれば問題ありません。
ここでは、サマーカットがよくない、危険といわれる理由を解説します。
皮膚にダメージ受ける可能性がある
サマーカットは、必要以上に刈り込んでしまうと皮膚がダメージを受けやすいため注意してください。特に、普段フワフワの毛で覆われているペット程、皮膚が紫外線の刺激に慣れていません。
トリミングで被毛を短くしても、ある程度の長さを確保する方がよいでしょう。特に、初めてのサマーカットなら毛を長めに残して徐々に皮膚を日光に慣らしていくといった工夫が必要です。
体温調節機能が低下する
被毛はペットの生活環境に合わせた長さを維持しておくのがおすすめです。サマーカットで被毛を短くしすぎると、体温調節機能を阻害してしまう恐れがあります。ペットの被毛には体温を調節してくれる役割があり、私たちが思っている以上に大事な部分です。
つまり、クーラーで温度管理が徹底された室内で飼う場合は、必要以上に被毛を短くする必要はありません。
毛質が変化する
サマーカットによって被毛を短くし続けると、毛質が変わってしまったり生えなくなってしまうケースがあります。これは、バリカン後脱毛症や毛刈り後脱毛症と呼ばれ、詳しい原因はわかっていません。
トリミングで短く毛を刈り込んだ後に発症しやすいといわれています。ペットの大事な身体と被毛を守るためにも、短くしすぎるのには注意しましょう。
ストレスや不安につながる可能性がある
サマーカットは、厳密な長さの決まりこそないものの、ペットの被毛を普段の長さよりも短い長さに整えることです。つまり、犬によっては被毛が慣れない長さになることでストレスや不安を感じやすくなるでしょう。
また、いわゆるトリミングが苦手な犬もおり、バリカンの音や飼い主さん以外のスタッフに触れられる事自体が、ペットにとって大きなストレスや不安につながる可能性もあります。必要以上に短くしたり、嫌がっているのに無理やりトリミングに連れて行ったりするのはやめておいた方がよいでしょう。
虫に刺されやすくなる
今まで被毛に覆われていた部分がむき出しになってしまうため、サマーカットはペットが虫に刺されやすくなるといわれています。毛足が1cm前後とかなり短くなるため、小さなサイズの虫でも害を及ぼす危険性があるため厄介です。
サマーカットが向いていない犬種

犬のなかにはサマーカット自体が向いていない犬種が存在するので注意しましょう。日頃の世話をする観点から考えると、トリミング種とグルーミング種の2種類に分けられます。
それぞれの特徴を比較すると以下のとおりです。
- トリミング種:ほおっておくと被毛が伸び続ける
- グルーミング種:被毛は一定の長さに達すると伸びない
つまり、トリミング種に該当する犬についてはサマーカットが向いていますが、グルーミング種の犬には不向きです。無理にやってしまうと、バリカン後脱毛症や毛刈り後脱毛症といって短くした毛が生えてこない、長さが不揃いなままになってしまう症状を発症する可能性があります。
具体的な犬種名は次のとおりです。
【サマーカット向きの犬種】
- トイプードル / プードル
- シーズー
- コッカースパニエル
- マルチーズ
- テリア
- シュナウザー
【サマーカットが不向きな犬種】
- ポメラニアン
- アラスカン・マラミュート
ほかにも、サマーカットを検討する要素に犬の個性があります。ブラッシングが嫌いでこまめに被毛をとかせない、毛玉ができやすい長毛種や暑さに弱く夏バテを起こしやすい犬なら、思い切ってサマーカットですっきりしてあげた方がいいでしょう。
サマーカット以外の暑さ対策

ペットにできる暑さ対策は、サマーカットのほかにも4つあります。サマーカットができない犬種である、サマーカットをしたいのに犬が嫌がってトリミングできない場合など、ここでは、サマーカット以外の暑さ対策を4つ解説します。
ブラッシング
ブラッシングには、通気性を良くして熱を逃がす暑さ対策として効果的です。ブラッシングは、抜け落ちたにも関わらず、ほかの被毛にくっついて落ちない抜け毛をきれいさっぱり取り除くためにおこないます。
特に、定期的なトリミングが不向きな犬種にはこまめなブラッシングがおすすめですが、トリミングに通うのがおすすめの犬種でも、熱がこもらないための対策としてブラッシングは有効です。
適度な水分補給
犬は、汗腺が限られているため熱中症になりやすいです。水分補給は失われた水分を補うだけではなく、体温を下げる効果もあるため、こまめに与えるとよいでしょう。水分が枯渇してからでは手遅れとなるため、渇きを感じる前に与えるのが大事です。
ペットは喉の渇きを自分で訴えられないため、飼い主さんが責任をもって状態を見極めてあげましょう。時間で管理するのはもちろん、外で遊ばせているときは常に水が飲めるようにしてください。
エアコンや扇風機による室温調整
空調をコントロールして室温を管理するのも、暑さ対策として有効です。ブラッシングや水分補給による暑さ対策にも限界があるため、ペットのいるご家庭は迷わず空調を活用して室温を管理しましょう。
ペットにとって快適な室温は25〜28℃、湿度は45〜65%です。人間にとっても快適な室温と湿度はペットにとってもよいものなので、エアコンを入れてしっかりコントロールしましょう。
散歩時間の工夫
暑さ対策には、散歩時間の工夫も欠かせません。夏場は特にアスファルトが熱を吸収するため、熱いだけではなく歩くだけでも足裏が痛いです。日差しが出てくる朝7時くらいまでに散歩を済ませ、夕方は日が沈んで時間が経ってから、19時頃にアスファルトの温度を確かめてから連れて行ってあげましょう。
時間はあくまでも目安であり、重要なのは道路の温度が犬たちが素足で歩いても熱くないかどうかです。外でトイレをするペットもいるため、夏場だけは用を足すのと散歩をわけてあげるとよいでしょう。
体重管理
体重の重い犬はそれだけで体温が高く、暑さも余計感じてしまいます。皮下脂肪が増えると熱がこもりやすいためです。犬のように全身が毛で覆われた動物は、より暑いのではないかと懸念されがちですが、実際は、毛の量は暑さをそこまで左右しません。
それより肥満度の高さの方が暑さに影響を及ぼすため、暑さ対策としてやれることを検討するなら、きちんと運動させて適正体重をキープできるようにしましょう。
トリミングサロンでサマーカットする際のポイント

サマーカットは、犬種によってはやらない方がよいトリミング方法です。実際にやってみようと考えるなら、長さやスタイルをどのようにするか、無理に全体を刈り込むのではなく、一部分だけ短くカットするようにすれば、ペットへの負担も少なく失敗も減らせるでしょう。
ここでは、トリミングサロンでサマーカットする際のポイントを解説します。
長さやスタイルをしっかり相談する
初めてサマーカットに挑戦する場合は、トリマーに任せっきりにするのではなく、飼い主さんも一緒に長さやスタイルを決めておくと安心です。もし、長さが合わなかった場合も、オーダーを控えておけば次のトリミングに活かせます。被毛の長さがどのくらいでどう影響するかは以下のとおりです。
- 2~3mm:皮膚が露出しているように見える長さ
- 5mm程度:被毛が生えているものの地肌は見える長さ
- 8mm程度:地肌が見えづらい長さ
- 10~13mm:被毛の毛質によっては少しだけボリュームが出る長さ
初めてサマーカットにチャレンジするなら、8〜13mm程度の長さで様子を見てみましょう。皮膚に異常が起きず、ペットもトリミングを嫌がらないようであれば必要に応じてさらに短くしてもかまいません。
部分カットも検討する
サマーカットは、やるからといって必ず丸刈りにしなくてもよいです。被毛が長い方がよい部分は今ある毛を残し、わきの下など体温が上がりやすい部分だけを短く刈り込む方法もあります。ほかにも、耳の周辺やお尻周り、足の裏は熱がこもりやすい部分です。暑さ対策にもなり、短くすれば清潔感がキープできる部位でもあるので、その部分だけ短くする方法を検討してみるのもよいでしょう。
まとめ

サマーカットは、手軽にペットを清潔に保ちながら暑さから守れるトリミング方法です。ただし、やりすぎは禁物でいきなり皮膚を紫外線にさらすリスクや、短く刈り込むトリミング自体を好まないペットがいるのを忘れてはなりません。
初めてサマーカットに挑戦するなら、長さを短くしすぎず10mm前後の長さに整えるところからはじめてみましょう。もし、犬が嫌がる場合は無理強いをせず、ほかの方法で暑さ対策をしてあげてください。