トリミングを犬が嫌がる理由は?事前対策やリラックスさせる方法を解説

トリミングを犬が嫌がる理由は?事前対策やリラックスさせる方法を解説

トリミングは、犬の見た目を美しく保つだけでなく、健康や衛生の観点からも重要な役割があります。

しかし、いつもと違う環境で飼い主以外に触られるトリミングは、犬にとって大きなストレスとなりかねません。そのため、トリミングを嫌がる犬は少なくありません。

犬がトリミングを嫌がるのにはさまざまな理由があり、原因に応じて適切な対策をとることで、トリミングによるストレスを軽減できます。また、トリミング後に適切なケアを行い、不安や緊張を和らげることも大切です。

トリミングの役割

毛を刈られる犬

トリミングは、見た目をきれいに保つ、健康と衛生を維持するなど2つの役割があります。特に、トリミングで身体を清潔に保つことは、病気や怪我の予防につながる重要な役割であることを理解しておきましょう。

犬は全身を毛で覆われているため、毛が絡まりやすく、肛門周りや尿道周辺の毛に汚物が付着することがよくあります。この不衛生な状態を放置していると、雑菌が繁殖し、怪我をしている場合には傷口に感染してしまうかもしれません。

また、定期的なトリミングはノミ・ダニ対策としても効果的です。ノミ・ダニは予防薬で対策している方がほとんどですが、毛が伸びてくると害虫がつきやすくなるため、定期的なトリミングで害虫がつきにくい状態を維持するようにしましょう。

さらに大切なことが、犬の足裏にある肉球の間から生えてくる毛です。肉球は、滑り止めや衝撃から守るクッションの役割をしており、毛が伸びてくるとその役割を十分に果たせなくなります。

特にフローリングの床は滑りやすく、転んで怪我をする恐れがあるため、飼い主がその危険性を理解しておくことが大切です。

夏場であれば、短くカットすると毛に熱がこもるのを防げるため、熱中症予防にも効果的とされています。ただし、皮膚に直接日光があたるとさらに熱く感じたり毛質が変化したりする可能性があるため、短くカットする際は注意が必要です。

トリミングを犬が嫌がる理由

犬のブラッシングイメージ

トリミングは重要な役割があることを理解していても、嫌がる犬をトリミングするのは、飼い主や犬にとって大きなストレスとなります。トリミングを嫌がる理由は、犬の性格や生活環境などさまざまです。

ここでは、トリミングを犬が嫌がる理由を具体的に解説します。

初めての場所や人に慣れていない

犬は、普段と違う環境になるとストレスを感じることがあります。特に、トリミングサロン独特の音や臭いに強いストレスを感じる犬は少なくありません。

また、慣れていない人々の存在も犬にとってはストレスの要因の一つとなります。その結果、防衛本能が働き、暴れたりトリミングを嫌がったりすることがあるのです。

なかには、飼い主以外に触られることに慣れておらず、トリマーに触られることを警戒するケースもあります。

シャワーやドライヤーが怖い

トリミング前はおとなしくしていても、作業が始まると嫌がる犬もいます。これは、シャワーやドライヤーなど、作業で使用する道具が怖いと感じて嫌がっていることがほとんどです。

犬は水が好きというイメージがあるかもしれませんが、トリミングで使用するシャワーやドライヤーは音が大きく、驚きと恐怖心で震える犬は少なくありません。

音に驚いているのであれば、まずは家のシャワーやドライヤーの音に慣れさせるとよいでしょう。

不快に感じている

タオルにくるまれた犬

犬によっては、後ろ足や尻尾など特定の部位を触られると不快に感じる場合があります。特に不快感を覚えやすい部位として挙げられるのは、足先や尻尾、お顔周りなどです。

また、トリマーに対して不快感があるケースもあります。これは、トリマーとの相性の問題である可能性があるため、トリマーやトリミングサロンを変えることがおすすめです。

トリミングサロンを利用する際は、仕上がりだけでなく、トリマーとコミュニケーションをとって犬との相性を確認するようにしましょう。

トラウマがある

過去の経験は、犬にとって大きな影響を与えます。特に、トリミング中に痛みがあったり不快に感じたりする経験をしたことがある犬は、トリミングがトラウマになることがほとんどです。

そのため、過去のトリミング中に痛みを感じた部位を触られると、反射的に暴れてしまうケースがよく見られます。この場合、無理に作業を行わず、徐々に慣れさせて行くことが大切です。

トラウマ克服のためには、犬が嫌がる部位や作業を確認しながら、焦らず慎重に対応する必要があります。

店に入るのが怖い

犬が店に入るのを怖がる理由の一つとして挙げられるのは、飼い主と離れたくない、飼い主と離れるのが不安という分離不安の状態である可能性です。

分離不安は、飼い主が離れると不安になり強いストレスや苦痛を感じ、問題行動や体調不良を引き起こす状態を指します。特に、飼い主と常に一緒にいる環境で発症しやすい傾向があります。

この場合、トリミングサロンに預けるときは嫌がりますが、飼い主の姿が見えなくなると落ち着く犬がほとんどです。

しかし、分離不安が強い犬の場合は、下痢や嘔吐などの体調不良を引き起こす可能性があります。そのため、自宅で飼い主の姿が見えない時間を作ったり、短い留守番を練習したりすることがおすすめです。

トリミングを嫌がる犬の事前対策

おとなしくシャンプーするチワワ

トリミングは犬にとって、ストレスの大きい作業です。そのため、ストレスを軽減させるためにもトリミングを嫌がる犬の原因を知り、それぞれにあった対策をする必要があります。

事前対策を行うことで、次第にトリミングを嫌がらなくなるでしょう。

シャワーに慣れさせておく

シャワーが苦手な犬は、散歩後にシャワーで足やお尻を洗う習慣をつけ、普段の生活のなかで慣れさせておくことが効果的です。

シャワーが苦手な犬のほとんどは、水の大きな音を嫌がっています。そのため、日頃からシャワーの音に慣れさせることで、落ち着いてトリミングをできるようになるでしょう。

また、シャワーが完了したらしっかりと褒めながらご褒美をあげることで、シャワーに対してポジティブな感情を持てるようになります。

ブラシやハサミなどの道具に慣れさせておく

獣医さん

トリミングの道具を怖がっている犬に対してもシャワーと同様に、ブラシやハサミに慣れさせておきましょう。

ブラシやハサミを怖がっている犬のほとんどは、道具の動きや大きな音を怖がっています。トリミング用の道具ではなくても、家にあるハサミや日々のお手入れ用のブラシを使用して対策が可能です。

ブラシで触られるのを嫌がる犬であれば、道具を近くに置くことから始め、徐々に慣れさせていきましょう。ハサミを嫌がる場合は、音を出しながら動かし、音や動きに慣れる時間を設けることが効果的です。

道具に慣れさせる際は、おやつや犬の好きな食べ物をご褒美として用意しておき、道具を見ても落ち着いていられたらすぐにあげることが重要です。これにより、道具に対してポジティブな印象が残り、徐々に慣れていくでしょう。

また、定期的なトリミングで道具に慣れる機会を増やすことで、ハサミやブラシに対する恐怖心を軽減できます。

家族以外の人に触れさせる

家族以外に触られることを怖がる犬は、散歩の時間を利用して、友人や近所の方など家族以外の方に触られる機会を作ることがおすすめです。その際、おやつを用意しておき、家族以外の方が触れたらご褒美としてあげるとよいでしょう。

これにより、人に触られることは楽しいことだという印象が残るため、トリミングの事前対策として効果的な方法の一つです。

人見知りの犬の場合は、事前にその情報をトリミングサロンに伝えることをおすすめします。事前情報があることで、いきなりトリミングを始めずに犬とスキンシップをとったりトリマーに慣れさせることから始めたりなど、それぞれにあわせた対策をしてもらえるかもしれません。

ただし、慣れていない方から触られることは、犬にとって大きなストレスとなります。無理に触らせようとせず、徐々に慣れさせることが大切です。

トリミングを嫌がる犬をリラックスさせる方法

ペットサロンでお手入れ

トリミングを嫌がる犬には、リラックスできる環境を整えることが効果的です。トリミングルームの温度や湿度を適温にするのはもちろん、静かな音楽をかけるのもよいでしょう。

環境作り以外で犬をリラックスさせるための方法として、以下のような方法があります。

  • 飼い主に一緒にいてもらう
  • マッサージをする
  • お腹を撫でる

飼い主が近くにいることで落ち着く犬は、トリミング中も飼い主に近くにいてもらい、場合によっては優しく声をかけることもおすすめです。ただし、飼い主が近くにいることで逆に興奮してしまう犬もいるため、それぞれの性格にあわせて対策する必要があります。

犬をマッサージする際は、優しく声をかけながら、指の腹や手のひらでゆっくりと撫でるように触れることがポイントです。また、小型犬は身体の後ろ、中型犬と大型犬は身体の横側からマッサージすることで落ち着きやすくなります。

マッサージは、お腹を撫でることから始めて、慣れてきたら足先を行いましょう。自宅で継続的に行うことで、犬は身体に触られることに慣れ、人に触られた状態でもリラックスできるようになります。

マッサージをしていくなかで、触られるのを嫌がる部位があれば、無理に続ける必要はありません。触られることに慣れてきた段階でもう一度マッサージを行い、徐々に慣れさせていくと次第に落ち着いてくるでしょう。

犬の身体に触れているときに皮膚の異常を発見したり痛がったりする様子が見られる場合は、病気や怪我の可能性があります。早めに病院に行くようにしましょう。

トリミング後の犬のストレスサイン

犬ケージ

犬は、トリミングによるストレスが原因でさまざまな症状が現れることがあります。そのストレスサインとして、どのような症状があるのかを理解しておきましょう。

ここでは、トリミング後のストレスサインとしてよくみられる3つの症状を解説します。

食欲の低下

トリミング後のストレスサインの一つとして、食欲の低下が挙げられます。トリミングで大きなストレスを抱えた犬は、体力や体調を回復するのに時間がかかることも少なくありません。

食欲低下の原因がストレスの場合は、1日程度で回復することがほとんどです。2日以上食欲の低下が見られる場合は、ストレス以外の要因があるかもしれないため、病院に行くことをおすすめします。

嘔吐

犬は、ストレスによって自律神経が乱れると嘔吐することがあります。嘔吐したときは、色と内容物を確認しておくことが重要です。

  • 透明〜白色:空腹やストレスなど
  • 黄色〜緑色:空腹による胆汁の逆流
  • ピンク色〜薄い赤色:血液が混ざっている可能性あり
  • 濃い赤色〜黒色:危険度が高く注意が必要

嘔吐した後でも元気であったり、続けて嘔吐したりする様子がない場合などは安静にして様子を見てもよいといえるでしょう。ただし、嘔吐以外にも異変がある場合やいつもと様子が違うと感じたときは、早めに病院に行くのがおすすめです。

過度な舐め行動

犬は、トリミングによるストレスが原因で、特定の部位を集中的に舐めることがあります。足先や尻尾、お腹など特定の部位を過度に舐め続けていると、楕円形の脱毛や細菌の感染による炎症といった健康問題につながる恐れがあります。

犬の様子を注意深く観察し、コミュニケーションをとって落ち着かせてあげることが大切です。また、舐めている部位を確認し、炎症や外傷がないかもチェックしておきましょう。

トリミング後の犬のケア方法

体調不良の犬

トリミング後の犬は、疲労と不安でストレスが溜まっている状態です。そのため、飼い主が適切なケアを行い、ストレスを軽減させる必要があります。

ここで解説するのは、トリミング後に自宅でできる犬のケア方法は3つです。日頃から犬をよく観察し、不安を和らげる方法を把握しておきましょう。

静かで落ち着ける場所で過ごさせる

トリミング後は、体力回復のためにも静かで落ち着ける環境で過ごさせることがポイントです。犬がいつも過ごしている場所やベッドを用意し、できるだけいつもと同じ環境にすることで、ストレスを軽減できます。

また、家のなかの照明やテレビの音量を控えめにして、犬がリラックスしやすい環境を整えることも効果的です。これには、家族の協力が欠かせないため、それぞれが意識して行うようにしましょう。

お気に入りのおもちゃやタオルなどを与える

寝ている子犬

犬のお気に入りのおもちゃやタオルをそばに置くことで、その臭いが不安を和らげ、落ち着きやすくなります。

犬がいつも過ごしている場所やベッドにお気に入りのおもちゃを事前に用意しておき、落ち着ける空間を整えておきましょう。また、噛むことでリラックスできる犬もいるため、犬用の噛むおもちゃを与えることもおすすめです。

一緒に過ごす

トリミング後は、一緒に過ごす時間を増やすことで、犬が落ち着きやすくなります。疲労や不安でストレスが溜まっている状態のため、自宅で静かにゆっくりと過ごしましょう。

その際、優しく声をかけたり犬が好きな部位を撫でたりするとより効果的です。また、犬は飼い主の感情に敏感なため、飼い主がリラックスすると犬もリラックスしやすくなります。

まとめ

ペットサロンで爪を切る女性

犬にとってトリミングは、見た目をきれいに保つのはもちろん、病気や怪我の予防などの重要な役割があります。

しかし、道具が怖かったりトラウマがあったりなど、さまざまな理由でトリミングを嫌がる犬は少なくありません。また、トリミングによるストレスで嘔吐や食欲不振など、体調に影響が出ることもあります。

そのため、道具や環境に慣れさせたりマッサージをしたりなどの対策を行い、犬のストレスを軽減することが大切です。

トリミング後は、自宅で落ち着ける空間を用意して、一緒に過ごす時間を増やすことで不安を和らげることができます。

犬がトリミングを嫌がる理由を探り、適切な対策と対応をとることで、ストレスが軽減されて落ち着いた状態でトリミングができるようになるでしょう。

参考文献