甘噛みはしつけ教室で治る?甘噛みする理由や教室の選び方などを詳しく解説します

甘噛みはしつけ教室で治る?甘噛みする理由や教室の選び方などを詳しく解説します

犬の甘噛みは、多くの飼い主さんが直面する悩みの1つです。

  • 甘噛みをやめてくれずに困っている
  • 甘噛みが今後も続くのか心配している
  • どうして甘噛みをするのか、理由を知りたい
  • どうすれば改善するのか、わからない

そんな悩みを持つ方も少なくないでしょう。また、甘噛みは遊びの延長のようにも見え、じゃれているだけ、とそのままにされてしまうことがあります。しかし、放置してしまうと、将来的に攻撃性につながったり、改善しにくくなったりします。

本記事では、犬が甘噛みをする理由や、しつけ教室での対策、その選び方について、詳しく解説します。

犬の甘噛みとは

犬の甘噛みとは、相手を傷つける意図のない、軽く噛む行為を指します。特に子犬の時期にはよく見られる行動で、成長に応じた生理的な反応であったり、遊びやコミュニケーションの一環でもあります。

甘噛みは、犬にとって成長過程の一部であり、本来は異常な行動ではありません。しかし、甘噛みが適切にコントロールされないまま成長すると、成犬になった際に、本格的な噛みつきやトラブルへ発展するなど、攻撃性につながる可能性もあります。

甘噛みの背景にある理由を見極め、犬の気持ちを尊重しつつ、正しい行動を促していくことが大切です。

犬が甘噛みをする理由

犬が甘噛みをする理由はさまざまです。単純に悪い癖として一括りにすることはできません。成長過程の生理的な反応から、個別の理由までいろいろなことが考えられます。

ここでは、犬が甘噛みをしてしまう主な理由を解説します。

歯のムズムズを解消したい

子犬の甘噛みで特に多い理由の一つが、歯の生え変わりに伴うムズムズなどの違和感です。

犬の乳歯は生後3週間頃から生え始め、生後3ヶ月頃に生え揃います。そしてその頃から乳歯が抜け始め、生後7ヶ月頃には永久歯が生え揃います。犬の永久歯は42本と言われています。私たち人間の永久歯は、親知らずを入れて大体32本なので、10本ほど多いのです。

犬の場合、このたくさんの歯が、とても短い期間で生え変わります。このため、歯のムズムズが強く、これを解消しようと甘噛みをしてしまいます。これは生理的な反応で、永久歯が生え揃うと多くの子は落ち着いてきます。しかし、なかにはそのまま甘噛みの癖が残ってしまい、成犬になって苦労することもあります。

遊んで欲しい

犬は本来、兄弟犬とじゃれたり遊んだりするときに甘噛みをします。その遊びのなかで噛み方の程度を学んでいきます。また、子犬の頃は特に、口や歯を使って色んなことを調べる傾向が強く、あいさつの代わりに甘噛みをすることもあります。

じゃれあいのなかで甘噛みをすることは、自然な行動です。しかし、人間を噛んではいけないということを教える必要があります。

運動や遊びが足りないと、欲求不満から噛む行動に走るケースも少なくありません。

噛む理由が遊びなのか、恐怖感などの心理的な要因からなのかを見極めることが重要です。心理的な要因であれば次のような徴候がみられます。

  • 体が硬直する
  • 縮こまる
  • うなり声をあげる
  • そわそわする
  • 尾が垂れ下がる

恐怖やストレスを感じて噛む行動につながっている場合は、適切に管理しないと攻撃性につながる恐れがあり、専門家の助けが必要です。

「ダメ」が伝わっていない

犬にとって、「ダメ」が伝わっていないと、甘噛みなどの好ましくない行動を続けてしまうことがあります。特に、子犬のうちは、噛むという行為が遊びや探索の一環であったり、歯の生え変わりへの生理的な反応であったりします。このため「ダメ」と正確に伝えることが難しいことも多くみられます。

また、犬が噛んだときに、大きな声をあげたり、声を荒げて叱ったりすることは、効果的ではないとされています。むしろ、大きな声をあげると遊んでいると勘違いして、さらに噛むことを助長することさえあります。

犬が甘噛みをしなくなるように、適切に訓練することが重要で、この訓練にはさまざまな方法があります。例えば、噛んだ瞬間に遊びを中断する、無視をする、その場からいなくなる、などです。甘噛みをやめさせるには、きちんとダメなことを理解してもらい、行動につなげる必要があります。

犬が甘噛みをしやすい時期

犬が甘噛みをしやすい時期としては、生後4ヶ月未満と、そこから7ヶ月くらいまでが多いとされています。ここではその理由を詳しくみていきましょう。

生後4ヶ月未満

子犬は、生まれて間もない頃から口を使って周囲の環境を探索しようとします。

これは、口やその中の感覚がとても早い段階で発達するためであり、子犬にとっては手のような役割を果たすからです。あいさつのつもりで噛みついたり、遊びの一環として甘噛みをしたりします。

したがって生後4ヶ月未満の子犬が、周囲のものを口で確かめるのは自然な行動です。この時期は甘噛みをしやすい期間なのです。

本来であれば、子犬は、母犬や兄弟など周囲の犬達とのやりとりのなかで、どの程度の噛み方が強すぎるか、どのくらいがやりすぎか、といったルールを学んでいきます。

しかし、私たちが子犬を迎え入れる際、すでに母犬や兄弟と離れていることが多いでしょう。このため、重要な学びの機会を得られていないのです。その場合は、私たち人間が口の使い方を学ぶ手助けをする必要があります。

このように、生後4ヶ月までは甘噛みをしやすい時期ではあります。しかし、それが繰り返されたり、痛みを感じるような噛み方に発展したりする場合には、適切に制止することが大切です。

生後3ヶ月から7ヶ月

乳歯が生え変わる時期も、甘噛みが多い時期になります。

乳歯が生え揃うのが大体生後3ヶ月くらいまでで、そこから生後7ヶ月くらいで永久歯に生え変わります。この時期も歯のムズムズ感が強く、ちょうど甘噛みをしやすい時期です。

しつけ教室で行われる甘噛み対策

犬のしつけ教室では、甘噛みを含む問題行動を適切にコントロールし、人と安全に暮らしていくためのトレーニングが行われます。

甘噛み対策としては、犬が噛んでよいものを学んだり、飼い主が正しい対応を身につけたりすることで、解決を目指します。ここでは、しつけ教室で実際に行われている甘噛み対策について、具体的に紹介していきます。

噛んでよいものと悪いものを教える

犬にとって口というのは、幼い頃から色んなことを探索するための主要なツールです。犬は噛むという行動を通じて世界を学びます。そのなかで、噛んでいいものと悪いものを教えることはとても重要です。

危険性のあるものや、いたずらされると困るものなど、噛んではいけないものを教えます。また、人間を噛むことはよくないことであることもしっかりと伝えます。

その一方で、噛んでいいものとして、おもちゃやガムなどを与えます。例えば、噛んでひっぱりっこできるおもちゃも、一緒に遊びながら噛む欲求を解消できるアイテムの一つです。壊れにくい、噛み応えのあるおもちゃは数多く市販されています。それぞれの犬で好きなものも違うので、楽しく遊べる安全なおもちゃを選びましょう。

食欲や性欲があるように、犬にはかじりたいという欲求もあります。
噛んでもいいものを与えることで、エネルギーが発散され、問題行動が減少することもあります。

飼い主にリアクションをレクチャーする

噛まれた際にどのような反応をするかは、とても重要なこととされています。犬が人の手を噛んだ場合に、大きく反応してしまうと、犬は遊びとして認識することがあります。そうすると、犬は遊んでもらえると勘違いしてしまい、かえって噛む行為がエスカレートするのです。

しつけ教室では、こういった動物の行動学に基づいた対応を教えてくれます。例えば以下のような行動が挙げられます。

  • 低い声で「痛い」と一言伝える
  • 遊びをやめてその場を離れる
  • 構うことをやめる

基本的には、噛まれた際には、大きな甲高い声をあげず、静かにすることとされています。人間が一貫して落ち着いた対応をすることが重要なのです。

しかし実際には、犬が噛む理由や、人間が取った行動への反応は、それぞれの犬やそのときの状況で違います。多くの場合は落ち着いた対応をすることで解決につながりますが、そうでないときもあります。そのため、専門家のアドバイスを受けながら、犬の様子に合わせて対応を工夫することが大切です。

噛まずに我慢できたときに褒める

犬が甘噛みをしてきたとき、叱るのはよくないとされています。恐怖心や不信感につながり、人と犬との関係が悪化してしまう可能性があります。また、余計に興奮し、噛みつき行為がエスカレートすることもあります。問題となっている行動を叱るよりも、望ましい行動を強化する、導く、という考え方が効果的です。

例えば一人遊びをしているときや、おもちゃで遊んでいるときに褒めることで、「これはよいこと」と認識させることができます。犬は褒められるとうれしいと感じ、褒められた行動を繰り返そうとします。

これは正の強化と呼ばれる手法で、アメリカ動物行動学会もこのアプローチを強く推奨しています。叱るのではなく、望ましい行動に報酬を与えて強化することが、犬との信頼関係の構築にもつながります。

グループレッスンで犬の社会性を育てる

しつけ教室で行われる対策の一つに、グループレッスンがあります。これは、ほかの犬との交流を通じて、噛む力の加減や、適切な遊び方を学ぶためです。子犬は本来、ほかの犬との遊びを通じて、噛む力の加減などを学ぶとされています。

他者や、動物、環境などに触れさせることが、社会性を身につけることにつながります。しつけ教室では、安全に管理された環境で、ほかの犬や新しく出会う人と社会的関係を築くことができます。早期にこういった取り組みをすることで、攻撃的な行為につながりにくくなるとされています。

甘噛みでしつけ教室に通う場合のおすすめのタイミング


甘噛みでしつけ教室に通う場合のおすすめのタイミングとして、生後2〜3ヶ月から7〜8ヶ月頃までがひとつの目安とされています。この時期は、以下の2つの時期に相当します。

  • 社会性を身につけるピークの時期
  • 乳歯が生えたのち、永久歯に生え変わる時期

こうした重要な発達段階に合わせて、飼い主さんと犬の双方が、甘噛みへの適切な対応を身に着けることが大切です。これは、将来的な問題行動の予防にもつながると言われています。

また、子犬の時期に限らず、問題行動が見られたタイミングで専門家の指導を受けることが推奨されています。甘噛みがエスカレートしたり、飼い主さんが対応に困るような問題行動が見られた場合には、早めにしつけ教室を受講しましょう。

甘噛み改善のためのしつけ教室の選び方

甘噛み改善のためのしつけ教室を選ぶ際には、いくつかのポイントがあります。適切な教室を選ぶことで、犬も飼い主さんも安心して学び、よりよい関係を築くことができます。

ここでは、教室を見つけるために押さえておきたい3つのポイントについて解説していきます。

甘噛みに特化したコースがあるか

甘噛みを改善するためには、それに特化したコースを提供しているしつけ教室を選ぶことが重要です。

しつけ教室は、一般的に基本的なしつけや、犬の社会性を育むことを目的とした幅広いトレーニングを行っています。しかし、なかには甘噛みや噛み癖に特化したコースを設けている教室もあります。甘噛みの改善をしっかりと目指したい場合は、このような特化コースを持つ教室を選ぶと、より集中的にサポートを受けることができるでしょう。

家での接し方も教えてくれるか

しつけ教室でのトレーニングだけでは、日常生活での甘噛みの改善は難しい場合もあります。家での接し方や対応を適切に行うことが重要です。家での対応方法については、多くの教室でアドバイスが行われています。そのなかで、指導の細やかさや具体性は教室によって異なります。

また、個人レッスンを行っている教室もあります。犬によって、甘噛みをする原因や状況は違い、飼い主さんの普段の行動や考え方も、人それぞれ違います。このため、犬と飼い主さんの状況に応じた個別の対応をしてもらえる個人レッスンも、効果的なアプローチです。

個別の状況に応じたアドバイスを受けられるかどうか、個人レッスンがあるかどうかを確認して、それぞれに合った教室を探しましょう。

犬種や年齢に対応しているか

犬種や年齢に対応しているかも、教室選びの一つのポイントです。

犬にはさまざまな種類がいて、それぞれの犬種によって性格や特徴が異なります。体の大きさ、活動量、学習能力、警戒心などに違いがあります。

年齢に関しては、例えば、歯の生え変わりの時期であれば、甘噛みはある程度生理的な反応です。しかし、成長した後も甘噛みが続くようであれば問題行動となります。

このように、犬の種類やその時期によって、適切なしつけ方法は異なるため、犬種や年齢に対応している教室かどうかも確認するとよいでしょう。

まとめ

多くの方にとって犬の甘噛みは、大きな悩みの一つです。それぞれに甘噛みをする理由があり、それらを専門家の手を借りて、一つずつ丁寧に対応することで改善につながります。

しつけ教室のなかには、見学や体験レッスンを行っているところもあります。初めての教室で不安な点がある方は、実際の雰囲気や指導方法を確認するために、見学や体験レッスンを利用してみるのもよいでしょう。

甘噛みを改善し、適切な社会性を身につけることで、周囲とよりよい関係を築き、安心して過ごせるようになります。しつけは、根気と時間が必要ですが、専門家のサポートを活用しながら、ぜひ取り組んでみましょう。

参考文献