犬種によってしつけ方法が異なる理由やポイント、しつけ教室の選び方を解説します

犬種によってしつけ方法が異なる理由やポイント、しつけ教室の選び方を解説します

犬のしつけ方法はすべて同じではなく、犬種によって効果的なアプローチが異なる場合があります。 犬種ごとに歴史的な役割や性質が異なるため、学習のペースや集中力、動機づけもさまざまです。そこで本記事では「なぜ犬種によってしつけ方法が変わるのか」という理由やポイント、さらに愛犬に合ったしつけ教室を選ぶ際のチェックポイントも解説します。

犬種によってしつけ方法が異なる理由

犬種によってしつけ方法が異なる理由

犬種によって性格や得意分野に違いがあるのは、その犬種がもともと持っている役割や歴史が関係しています。本章では犬種によってしつけ方法が異なる理由について、3つの理由に分けて解説します。

犬種は本来の役割から性格が形成されている

犬は長い年月をかけて、人間の求める役割に合わせて品種改良されてきました。そのため、牧羊犬や猟犬、愛玩犬など犬種ごとの本来の仕事が、そのまま性格や行動の特徴に表れています。

例えば、番犬や護衛の役割を持った犬種は警戒心が強く、見知らぬ人に吠えやすい傾向があります。こうした犬種の歴史を知ることで、なぜその犬がそういう行動をとるのかが理解しやすくなります。しつけの方針を考える際も、まず愛犬の犬種が本来どのような役割を果たしてきたかを踏まえることが重要です。

学習スピードや集中力、運動量の違い

犬種によって知能や学習能力の高さ、集中できる時間、必要な運動量に大きな差があります。例えば、ボーダーコリーのような牧羊犬に比べて、ブルドッグやパグなどはおっとりしていて運動能力も制限があるため、ゆっくり時間をかけて学習する傾向があります。このように、覚える早さや動ける体力・持久力、飽きやすさは犬種によって異なるため、しつけの際の教え方や一回のトレーニング時間も調整するとよいでしょう。集中力が長く続かない犬種には短めのレッスンで区切る、体力のある犬種には十分な運動を取り入れて発散させる、といった工夫が重要です。

遺伝的な傾向や個体差

犬種ごとの性格傾向は遺伝による要素も大きく影響しますが、同時に犬それぞれの個体差も無視できません。遺伝的傾向はしつけ方の目安になりますが、最終的には愛犬一頭一頭の性格や癖を観察し、それに合わせて方法を調整する必要があります。また、育った環境や社会化の状況によっても性格は影響を受けます。犬種の特性と個性を理解し、その犬に合ったしつけをしてあげることが、よい関係を築く近道です。

犬種によって異なるしつけ方法のポイント

犬種によって異なるしつけ方法のポイント

犬のしつけの基本は、褒めて教えるモチベーショントレーニングですが、犬種や個体によって「何を褒められるとうれしいか」「どのような叱り方が響くか」に違いがあります。この章では、犬種ごとに効果的な褒め方と叱り方の違いや、モチベーション(動機づけ)に使えるご褒美の選び方を解説します。

犬種による褒め方と叱り方の違い

すべての犬に共通して効果的なのは、よい行動をしたら褒めるしつけですが、褒め方のトーンや叱り方の強さは犬種によって調整が必要です。例えば、繊細で怖がりな犬種(パピヨンやシェルティーなど)は、優しい声で褒め励まし、叱るときも穏やかな口調で十分でしょう。逆に、自立心が強く頑固な傾向の犬種(柴犬や秋田犬など)では、毅然とした態度で一貫して教えることが重要です。

叱る際も感情的に怒鳴るのではなく、低めの落ち着いた声で短く注意する方が効果的です。また、小型犬は可愛さゆえについ甘やかされがちですが、小さいうちからよいこと悪いことをしっかり教えるメリハリが必要です。どの犬種にもいえることですが、身体的な罰や大声で威圧する叱り方は逆効果になりやすいので避け、あくまで信頼関係を損ねない範囲で注意しましょう。

犬種ごとに効果的な動機づけが異なる

犬をしつける際には何を報酬にするかが大きなポイントです。食いしん坊な犬種はおやつを使ったごほうびが特に効果的です。一方、運動欲求が高い犬種は、おやつよりもおもちゃで遊ぶことやボール投げがごほうびになることがあります。

また、愛玩犬のなかには飼い主さんに褒められること自体が何よりうれしい子も多いです。重要なのは、犬によってモチベーションが上がるものが違うという点です。愛犬が一番喜ぶものを日頃の様子から探り、それをしつけの報酬として活用しましょう。逆に、関心を示しにくい報酬を与えても効果が薄いため、犬種と個性に合ったごほうび選びがしつけ成功の秘訣です。

しつけ教室の基礎知識

しつけ教室の基礎知識

愛犬のしつけに不安を感じたとき、頼りになるのがプロのドッグトレーナーが指導するしつけ教室です。ここでは、しつけ教室にはどのような種類があるのか、子犬を教室に通わせ始める適切な時期や、平均的な費用について基礎知識を解説します。

しつけ教室の種類

しつけ教室には、いくつかレッスン形式やサービス形態の種類があります。主なタイプは次のとおりです。

レッスン形式内容
グループレッスン複数の犬と飼い主さんが一緒に受講する形式です。ほかの犬や人のいる環境で練習するため、社会化のトレーニングに役立ちます。
個別レッスントレーナーとマンツーマンで行う形式です。問題行動の矯正や個別の課題に集中できます。
出張トレーニングトレーナーが自宅に訪問して指導を行う形式です。犬が慣れた環境で学べます。
預かり訓練数時間〜数日間、施設に預けてプロにトレーニングしてもらう形式です。

このように、しつけ教室にはさまざまな種類があります。それぞれにメリット・デメリットがありますので、愛犬の性格や直面している課題、飼い主さんのライフスタイルに合わせて選ぶとよいでしょう。

しつけ教室に通い始める適切な時期

しつけ教室はいつから通わせるべきか迷う飼い主さんも多いですが、できるだけ早く、社会化期のうちに始めるのが理想です。犬の社会化期とは、生後3週〜16週頃までの時期を指し、この間に経験したことは成長後も受け入れやすいとされています。そのため、生後2〜3ヶ月を過ぎワクチンプログラムが完了した子犬であれば、できるだけ早めにしつけ教室に参加するとよいでしょう。

しつけ教室ではほかの子犬や人との交流、基本指示や咬み癖、トイレの対処などを学べるため、問題行動の予防につながります。ただし、成犬になってからでもしつけが手遅れなわけではありません。成犬対象のクラスもあり、何歳からでも学べます。ポイントは、困った行動が出てきてから慌てて通うより、困る前に基礎を教える方がスムーズということです。愛犬を迎えたら早めに検討し、無理なく通える時期に開始しましょう。

しつけ教室にかかる費用目安

しつけ教室の料金は、内容や地域によって幅がありますが、一般的な相場を押さえておきましょう。通常、グループレッスンの場合は1回あたり3,000〜5,000円程度、個別レッスンでは1回5,000~10,000円程度が目安です。

また、しつけ教室では入会金初回カウンセリング料が必要になる場合があります。さらに、合宿訓練(預かり訓練)では、1週間で5〜10万円、1ヶ月で20〜30万円程度の費用がかかることもあります。

なお、最近ではオンラインレッスンを低価格で提供する教室も登場しています。費用を抑えたい場合は、自治体主催のしつけ教室や、教室の体験レッスンを利用する方法もあります。いずれにせよ、料金とサービス内容を確認し、無理なく継続できる範囲で選ぶことが大切です。

【犬種別】しつけの特徴と向いているしつけ教室タイプ

【犬種別】しつけの特徴と向いているしつけ教室タイプ

ここでは代表的な犬種グループごとに、しつけの際に知っておきたい特徴と、その犬種に向いている教室タイプやトレーニング内容を解説します。

トイ・プードルやポメラニアンなどの小型犬

小型犬は人間と暮らしやすいよう愛玩用に改良された歴史があり、人懐こく甘えん坊な子が多いです。しかし、体が小さいため怖がりな面もあります。また飼い主さんが過保護になりやすく、ついしつけが甘くなってしまうこともあるでしょう。その結果、無駄吠えやわがままが通りやすくなってしまうこともあります。

これら小型犬には、パピークラスや初心者向けグループレッスンがおすすめです。ほかの犬や人に慣れる機会を与えることで、怖がり克服や社交性につながります。特に、小型犬限定クラスがあれば、体格差の心配なく安心して通えます。また、吠え癖などで困っている場合は個別レッスンで専門的に指導してもらうのもよいでしょう。小型犬は室内で完結しがちなので、教室に通うこと自体がよい刺激と社会化になります。

柴犬やコーギーなど自立心の強い犬種

柴犬は日本犬の典型で、プライドが高く自立心旺盛です。「嫌なものは嫌」と主張する頑固さや、飽きっぽくみえる一面もあります。コーギーももとは牧畜犬で、自分で牛を追っていたため判断力があり負けん気が強い傾向です。こうした犬種は、一度信頼関係を築けば忠実ですが、押し付けには反発する繊細さも併せ持っています。

これらの犬種は少人数制や個別レッスンが向いています。自立心の強い犬種は集団だとマイペースに動いてしまうこともあるため、トレーナーと一対一で集中できる環境が理想です。また、柴犬は他犬に興味が薄い場合も多いので、無理にドッグランで群れに入れるよりも、基本のしつけを家庭内でしっかりする方が有効です。

ボーダーコリーやシェパードなど作業を得意とする犬種


牧羊犬や警察犬など作業犬系の犬種は、高い知能と集中力を持っていますその一方で、頭がよすぎて退屈しやすいという難しさもあります。いずれの犬種も働くことが大好きで、指示を与えないと自分で何か仕事を探し始めるほど旺盛な意欲を持っています。
高度なしつけやドッグスポーツを扱う教室が適しています。このタイプの犬種はアジリティ、フリスビー、オビディエンス競技などを教えてくれるスクールで能力を伸ばします。日常マナー程度であればすぐに習得できてしまうので、むしろ上級クラス競技会を目指すクラスに進むとよいでしょう。

ダックスフンドやビーグルなどの猟犬

ダックスフンドやビーグルは嗅覚を活かした猟犬として発展した犬種です。ダックスはアナグマ猟で巣穴に入るために胴長短足に改良され、ビーグルはウサギ狩りで集団で吠えながら追跡するよう育てられました。また、猟犬であるためよく通る大きな声で吠える傾向もあります。

一般のしつけ教室でも、「まて」や「おいで」などは教えてくれますから、ビーグルなどは特にそこを重点的に練習しましょう。また、ビーグル同士・ダックス同士で遊ぶ機会が持てる犬種別オフ会的な教室があれば理想的です。同じ猟犬気質の仲間と交流することで飼い主さんも情報交換でき、悩みを共有できます。

加えて、ビーグルは嗅覚ゲーム(ノーズワーク)教室に通わせるのもおすすめです。ノーズワークとは嗅覚探知ゲームで、嗅ぐ欲求を満たしつつ集中力も鍛えられるので、一石二鳥のトレーニングです。

ラブラドール、ゴールデンなど中〜大型犬

ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーは、人懐こく従順な大型犬の代表格です。もともとレトリーバーとして改良され、人と協力することを喜びとする友好的で賢い性格が魅力です。

ただし、大型犬ゆえに力が強く、やんちゃな子犬期には手を焼くこともあります。体が大きい分、飛びつきや引っ張りといった行動があると人にケガをさせかねません。また成長も早く、生後半年で20kgを超えることもあるため、子犬のうちに基本マナーを入れておく必要があります。

そのため、成長に合わせてクラスを変えながら継続して学べるスクールが向いています。具体的には、また、大型犬OKのしつけ教室や訓練所を選ぶことも大切です。なかには小型犬専門の教室もあるため、クラス構成を確認しましょう。

しつけ教室を選ぶときのチェックポイント

しつけ教室を選ぶときのチェックポイント

しつけ教室は各地にさまざまありますが、愛犬に合う教室を選ぶ際にはいくつか確認すべきポイントがあります。ここでは、特に、犬種や性格との相性やトレーナーの資質、教室の環境の観点からチェック項目を解説します。

犬種や性格に合わせたトレーニング方法か

まず注目したいのは、その教室やトレーナーが愛犬の犬種や性格に応じた柔軟な指導をしてくれるかという点です。しつけの基本方針は共通でも、先述のように犬種によって効果的なアプローチは異なります。ホームページなどで指導事例に愛犬と同じ犬種が載っているかをみるのも参考になります。犬種特有の問題に詳しい教室だと心強いでしょう。

トレーナーの資格や経験、犬種別の対応が豊富か

教室選びで最も重要ともいえるのがトレーナーの質です。まず、信頼の証として資格の有無を確認しましょう。日本ではJAHA認定家庭犬しつけインストラクターJKC公認訓練士CPDT-KA国際認定トレーナーなどの資格があり、有資格者は最新の犬の行動学に基づいた指導ができると期待できます。

また、資格だけでなく実績や経験年数も大事です。長年多くの犬種を見てきたトレーナーは引き出しが多く、愛犬のちょっとした仕草から性格を読み取って的確に導いてくれるでしょう。

通いやすさや環境、クラス構成が犬種に合っているか

最後に、実際に無理なく通い続けられるかという点も忘れずに検討しましょう。いくら指導内容がよくても、家から遠すぎたり予約が取りにくかったりすると継続が難しくなります。

自宅からの距離や営業時間、予約制かどうか、振替はできるかなどを確認し、生活リズムに合う教室を選びます。また、教室の設備や環境も犬種に合っているかを見ることが大事です。できれば教室の雰囲気を見学させてもらい、犬たちがリラックスして取り組んでいるか、床が滑りにくいか、清潔か、安全対策はされているかなどチェックしましょう。

さらに、クラスの規模犬のサイズ分けも確認すべき点です。愛犬が落ち着いて学べる環境かどうかをイメージし、「この子ならここで楽しめそうだ」と思える教室を選ぶとよいでしょう。

まとめ

まとめ

犬のしつけ方法は犬種ごとの特性や個性に合わせて工夫することで、よりスムーズかつ効果的です。本記事では、犬種によってしつけ方法が異なる理由として、歴史的役割・性格傾向・学習能力の差などを紹介し、それぞれに応じたアプローチのポイントを解説しました。本記事の内容を参考にしていただき、愛犬に合った方法で根気強く、そして愛情を持ってしつけに向き合っていきましょう。

参考文献