猫の避妊手術を検討する際、適切な時期や費用、手術が猫に与える影響について理解しておくことが大切です。避妊手術には、望まない妊娠を防ぐだけでなく、さまざまなメリットがあります。
本記事では猫の避妊におすすめな時期について以下の点を中心にご紹介します。
- 猫の避妊におすすめな時期
- 猫の避妊手術にかかる費用
- 避妊手術による猫への影響
猫の避妊におすすめな時期について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
猫の避妊手術について
猫の避妊手術を行う理由や手術の流れについて、かかる費用についてを以下に解説します。
猫の避妊手術とは
猫の避妊手術は、繁殖を望まない場合や発情期に特有の行動を軽減するために行われる手術です。
メス猫は春と秋に年に2回発情期を迎え、その期間中に大きな鳴き声でオス猫を呼び寄せる行動を示します。発情期は1週間程度の鳴き声と普段の状態を交互に繰り返し、これが2〜3サイクル続きます。この際に交配が行われると、1回の出産で平均5匹前後の子猫が生まれます。そのため、望まない妊娠を避けるために、避妊手術が推奨されています。
避妊手術は単なる妊娠予防だけでなく、乳腺腫瘍などの病気を予防する効果も期待できます。また、発情期の鳴き声やマーキングといった問題行動も緩和されるため、飼い主と猫の生活の質の向上につながります。
手術には、卵巣のみ、または卵巣と子宮の両方を摘出する方法があり、猫の健康と快適な生活のため、手術を選択する飼い主が多いようです。
猫が避妊手術を行う理由
猫の避妊手術については前項に解説しましたが、健康面、行動面、そして社会的な理由があり、それぞれ重要な役割を果たしています。
健康面では、避妊手術を受けたメス猫は卵巣や子宮に関連する病気のリスクが軽減され、寿命が延びるとされています。さらに、乳腺腫瘍などの深刻な病気の予防にもつながります。また、行動面では、発情期に見られる過剰な鳴き声や尿スプレーなどの行動が減少し、ストレスが軽減されることが期待されます。
一方、社会的な理由として、猫の過剰繁殖問題や飼育放棄が挙げられます。特に日本では、毎年多くの猫が処分されています。避妊手術により無計画な繁殖を防ぐことで、このような問題の解決に貢献できると考えられています。
猫の避妊手術の流れ
猫の避妊手術は予約制が多いとされ、事前検査と術後ケアを含む流れで行われます。
まず、手術を決めたら診察を受け、健康状態を確認するための検査を行います。手術の前夜には食事を制限し、当日は指定の時間に動物病院へ連れて行きます。避妊手術は全身麻酔下で実施され、卵巣や子宮の摘出が行われます。手術中は安全性を高めるために、注射や吸入麻酔が組み合わされ、必要に応じて痛みの管理も行われます。
手術後は、1日程度入院して経過観察を行い、問題がなければ退院となります。傷口の管理や消毒が必要なため、退院後も数日間の自宅ケアが推奨されます。
猫の避妊手術にかかる費用
猫の避妊手術の費用は病院によって異なり、卵巣摘出のみで10,000〜30,000円程度、卵巣と子宮の摘出で10,000〜40,000円程度が相場といわれています。
この費用には、手術そのものに加え、麻酔料、入院料、術後の投薬費用、エリザベスカラーなども含まれる場合がありますが、病院によりこれらの項目が追加費用となるケースもあります。
また、術前の血液検査やレントゲン検査の費用として3,000〜10,000円程度追加料金として発生する場合があります。
特別な技術を用いる腹腔鏡手術は、より費用が高く、10万円前後になることもあります。
また、飼い主のいない猫に対して、避妊手術費用の一部を助成する制度を設けている地域も多いようです。
助成を利用する場合は事前申請が必要なため、住まいの自治体へ早めに確認するのがよいでしょう。
避妊手術におすすめな時期
猫の避妊手術は生後6ヶ月頃が推奨されています。これは、多くの猫が初めての発情を迎える前の時期であり、発情前に手術を行うことで、乳腺腫瘍などの病気の予防効果が高まるためです。
また、成長がある程度完了する時期でもあるため、体への負担が少なくなります。早すぎる手術は成長に影響する可能性があるため、3〜4ヶ月での手術は控えられることが多いようです。
成長度合いの目安として、体重の増加が緩やかになり、永久歯が生え揃った段階で避妊手術の適期と判断できます。万一、発情が始まった場合でも手術は可能といわれていますが、猫の体への負担を考慮し、かかりつけの獣医師と時期を相談することが大切です。
避妊手術のメリット
猫の避妊手術のメリットにはどのようなことが挙げられるのでしょうか。以下に解説します。
予定のない妊娠を避けられる
避妊手術を行うことで、飼い主の意図しない妊娠や出産を防ぐことができます。
猫は交尾によって排卵するため、交尾後は高確率で妊娠に至ります。これにより、飼い主が気付かない間に外出して妊娠してしまうケースも少なくありません。
避妊手術により、望まない妊娠を避けることができ、飼い主が新たな命に対して責任を持つ準備がない場合でも心配することなく飼育を続けることができます。
また、計画的でない妊娠によって生まれた猫が適切な飼育環境を見つけられずに野良猫化し、最終的には殺処分となるリスクを減らすことにもつながります。猫の過剰な繁殖を防ぐ観点からも、避妊手術は重要な手段といえます。
病気を予防できる
猫の避妊手術は、妊娠を防ぐだけでなく、さまざまな病気の予防にも効果が期待できます。具体的には、メス猫に多い乳腺腫瘍や子宮蓄膿症、子宮内膜炎、子宮がん、卵巣がんなどの発症リスクが低減します。これらの疾患は発見が遅れると命に関わることもあるため、早期の避妊手術が推奨されています。
特に乳腺腫瘍は、発情を迎える前に手術を行うことで予防効果が高まり、2歳以降の手術ではその効果が低下します。
ストレスを減らせる
猫の避妊手術は、発情期に伴うストレスを減らす効果が期待できます。
発情期のメス猫は、繁殖に関連した行動の変化が顕著になり、高い鳴き声や体を物にこすりつける行動が頻繁に見られるほか、興奮した状態が続くことが多いとされ、食欲が低下したり、体調を崩したりすることもあります。発情によるこれらのストレスは猫自身にとって負担が大きく、日常生活の質も低下します。
避妊手術を行うと、発情がなくなるため、発情に関連する行動や体調の変動がなくなり、猫が穏やかに過ごせるようになります。これは猫の健康管理や飼い主との良好な生活環境の維持にもつながるため、避妊手術は猫と飼い主双方の生活の質を向上させる一つの手段といえるでしょう。
避妊手術のデメリット
猫の避妊手術にはデメリットも存在します。どのようなことが挙げられるのか、以下に解説します。
手術や麻酔による負担
猫の避妊手術は全身麻酔のもとで行われ、手術そのものや麻酔によるリスクがあります。
麻酔には合併症のリスクが含まれ、高齢猫や健康状態が不安定な猫にとってはさらに負担が大きくなる場合もあります。麻酔後に体調を崩したり、感染症や出血、傷口の炎症といった合併症が起こる可能性も稀にあります。
さらに、手術後の管理としてエリザベスカラー(猫が手術後やケガの治療中に患部を舐めたり噛んだりしないようにするために首に取り付ける円錐形の保護具)の装着や傷口のケアが必要となり、猫にとってもストレスがかかることがあります。
太りやすくなる可能性
猫の避妊手術を行うと、ホルモンバランスが変化し、代謝が低下するため、太りやすくなる傾向があります。
肥満が進むと関節への負担や糖尿病などの健康リスクが増えるため、飼い主は手術後に食事量やカロリーに気をつけ、適切な体重管理が必要です。また、積極的に遊びや運動の時間を取り入れることで健康を維持することが推奨されます。
避妊手術後に気をつけたいこと
猫の避妊手術後には、どのようなことに気をつけるとよいのでしょうか。以下に解説します。
術後の痛み
猫の避妊手術後は、術後の痛みが原因でさまざまな行動変化が見られることがあります。
手術は開腹が必要なため、体への負担が大きく、痛みを感じやすくなります。猫が痛みを感じている兆候には、傷口を頻繁に舐めようとしたり、体を丸めてじっとしている、食欲が減退する、触れられると怒るなどがあります。これらの兆候が強く現れる場合には、早めに獣医師に相談することが推奨されます。
術後はできるだけ静かで快適な環境を整え、猫が安静に過ごせるよう配慮することが大切です。また、痛み止めが処方される場合が多いようですが、指示にしたがって投薬し、傷口を守るためのエリザベスカラーや術後服も適切に使用しましょう。
術後に嘔吐する可能性
避妊手術後の猫は、麻酔や痛み止めの影響で胃腸が弱っていることが多いといわれ、術後に嘔吐することがあります。麻酔が覚めた直後は消化機能が回復していないため、急に食べ物や水を与えると嘔吐しやすくなります。猫が術後に舌なめずりや唸り声、よだれ、丸まってじっとしている様子が見られる場合、気分が悪くなっている可能性があるため注意が必要です。
術後に嘔吐が続く、元気がないといった場合は、無理に食事を与えず、獣医師に相談するのが望ましいでしょう。また、術後の安静と徐々に食事を再開させることで、体の回復を促すことが大切です。
傷口を舐めてしまう
猫の避妊手術後、違和感や痛みにより、傷口を舐めてしまうことが多いとされ、傷が開いたり感染のリスクが高まることがあります。そのため、術後は傷口の保護としてエリザベスカラーや術後服の装着が推奨されます。エリザベスカラーは舐めを防ぐための方法ですが、初めての装着に猫が戸惑うことも多いといわれ、動きが制限されるためにストレスを感じやすい場合もあります。
術後服は、傷口周辺を覆い、エリザベスカラーよりも動きやすいため、猫にとって負担が少ない選択肢です。ただし、猫によっては服の装着も嫌がる場合があるため、どちらの方法が合っているかは猫の様子を見ながら判断し、必要に応じて獣医師に相談するとよいでしょう。
避妊手術を受ける動物病院の選び方
猫の避妊手術を受ける際は、信頼できる動物病院を選ぶことが重要です。まず、事前にレントゲンや血液検査など、猫の体調を確認する術前検査が整っているか確認しましょう。また、手術後のフォローが充実している病院を選ぶと、万が一術後に体調が悪化した場合にも対応してもらうことができます。
普段から通っている病院であれば、猫の性格や健康状態をよく把握しているため、術後のケアや相談もしやすくなります。また、糸を使用しない縫合方法や短時間での手術を取り入れている病院もあり、猫の負担をできる限り抑える選択ができるでしょう。
まとめ
ここまで猫の避妊におすすめな時期についてお伝えしてきました。
猫の避妊におすすめな時期の要点をまとめると以下のとおりです。
- 猫の避妊手術は生後6ヶ月頃が推奨され、初めての発情前に行うことで乳腺腫瘍などの病気予防が期待できる。発情後でも可能とされているが、獣医師と相談が大切である
- 猫の避妊手術費用は、卵巣摘出で10,000〜30,000円程度、卵巣と子宮摘出で10,000〜40,000円程度が相場で、麻酔や検査費用は追加の場合があり、腹腔鏡手術は10万円程度になることもある。助成制度がある自治体もあるため、確認が必要である
- 猫の避妊手術は、妊娠を防ぐだけでなく病気予防やストレス軽減の効果が期待できるが、体への負担も伴う。手術後は麻酔や痛みで、舐めたり噛んだりして感染リスクが高まることもあるため、エリザベスカラーや術後服で保護し、痛み止めの投薬を行うとよいとされる
猫の避妊手術は、健康管理や飼い主と猫の快適な生活を支える重要な選択となり、手術の適切な時期や費用、術後のケアについて理解しておくことが大切です。飼い主としての責任を果たしながら、愛猫が健やかに過ごせるよう、かかりつけの獣医師に相談しながら対応していきましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。