愛犬に薬を飲ませるシーンは多くあります。そのなかで飼い主を困らせるのが、薬を飲んでくれないときではないでしょうか。大きい錠剤だとうまく飲めない、フードに混ぜたけれど薬だけ残してしまう、嫌がる姿を見ると飲ませるのが心苦しいなど、さまざまな経験があるでしょう。どうして犬は薬を飲まないのか、また薬の種類別の飲ませ方や薬を飲まないときに注意したい点を解説します。犬への投薬について正しい知識を持ち、愛犬にスムーズに薬を飲ませてあげましょう。
犬が薬を飲まない理由
薬の飲みにくさが原因だったり、苦い味に気付いて吐き出してしまったりと、犬が薬を飲んでくれない理由はさまざまです。犬が薬を飲まないときはその理由を把握したうえで、飲みやすくする工夫をするとよいでしょう。
- 犬は薬の量が多いと飲まないことがありますか?
- 人間と同様に、犬であっても薬の量が多いと飲みにくいものです。スムーズに飲んでくれたとしても、内服薬の場合は飲んだ後に薬が食道などに残ってしまう可能性もあります。複数の薬を一気に飲ませるのは避け、内服薬の投薬後は水を飲ませるようにしましょう。
- 薬の味は犬が薬を飲まないことに関係はありますか?
- 犬は苦味など、味に違和感を覚えることで、薬を飲まないことがあります。シロップの場合は飲ませやすさはありますが、味の違和感からひと舐めしただけで残してしまうケースもあるでしょう。好きな食べ物やフードに少量ずつ混ぜるなど、薬の味を隠す工夫が必要です。
- 犬が薬を飲むことを嫌がる理由を教えてください。
- 犬は警戒心が強いため、薬の苦い味や匂いから、飲むことを嫌がるケースが多くあります。初回は問題なく飲めたとしても、一度苦い味を知ってしまったために、薬嫌いになってしまうこともあるでしょう。
また、犬はお口を触られることも苦手です。無理やりお口を開けさせられたり、飼い主の様子がいつもと違うことを察知したりして、警戒心から薬を嫌がることもあります。
犬の薬の種類別の飲ませ方
犬の薬にはさまざまな種類があります。薬の種類ごとに、飲ませ方のポイントは異なるものです。種類別の上手な飲ませ方やコツをご紹介します。
- 犬の薬の種類について教えてください。
- 犬の薬には、粉末タイプ、錠剤やカプセルタイプ、シロップ(液体)タイプがあります。粉末タイプは薬を粉状にしたもの、錠剤タイプは薬を圧縮して固めたもの、カプセルタイプは溶け出す時間の調節が必要な薬を、ゼラチン製のカプセルに入れたもの、シロップタイプは、水に薬の成分を溶かして甘く味付けしたものです。
一般的に処方されることが多いのは錠剤とカプセルタイプ。子犬や老犬でも飲みやすいのは粉末薬やシロップタイプです。
- 粉末薬の上手な飲ませ方について教えてください。
- 粉末薬の場合は、少量のフードに混ぜて与えます。ウェットフードやとろみのあるスープなどに混ぜるのもおすすめです。服薬ゼリーを使用してもよいでしょう。
粉末薬は、ごく少量の水で溶くとペースト状になるため、これを上顎や歯茎に塗って、投薬することもできます。苦味がある場合は、味の濃いものや甘みのあるもの、例えばはちみつやコンデンスミルクなどで薬を溶いたものを使用するとよいでしょう。
フードに混ぜる方法がうまくいかないときは、粉末薬を水で溶いて、スポイトやシリンジを利用して飲ませます。スポイトやシリンジでの投薬では誤嚥の危険がありますので、少量ずつ与えるようにしてください。
- 錠剤やカプセルの薬の上手な飲ませ方について教えてください。
- 錠剤やカプセルは、おやつやフードに混ぜて与えるとよいでしょう。サツマイモ、カボチャ、パン、チーズなど、好きな食べ物で薬を包んで与えるなど、薬に気付かれないようにするのがポイントです。ウェットフードを団子状にして薬を中に詰めるのもおすすめです。食べ物に混ぜる場合は、そのまま飲み込めるサイズで、少量ずつ与えます。また、一口目から薬が入った食べ物を与えると警戒されてしまうことがあるため、フードのみ与えてから、様子を見つつ薬入りのフードを与えるなどの工夫をするとよいでしょう。
食べ物に混ぜることが難しい場合は、服薬ゼリーやオブラートを使うのもおすすめです。薬の匂いや形状がわかりにくくなることで飲みやすくなります。
食べ物や服薬ゼリーでの投薬がうまくいかない場合は、直接錠剤やカプセルをお口に入れます。無理やり飲ませようとすると、怖がって暴れてしまうこともあります。なるべくリラックスした状態で、優しく声をかけながら飲ませましょう。
また、錠剤やカプセルの場合は食道に付着しやすいため、投薬後は水を飲むようにしてください。
- 液体やシロップの薬の上手な飲ませ方ついて教えてください。
- シロップタイプの薬には甘い味がついていることがあるので、嫌がらずに飲む犬も少なくないでしょう。そのままでは飲んでくれない場合は、薬入りのシリンジやスポイトを使用して犬歯の後ろの隙間に差し込み、投薬します。お口を閉じた状態で鼻先をあげて、犬が薬を飲み込むまで待ちましょう。あまり上を向かせすぎるとむせてしまうので注意が必要です。
液体タイプの場合も、少量のフードやとろみのあるスープなどに混ぜて与えてもよいでしょう。服薬ゼリーに混ぜて飲みやすくしてあげるのもおすすめです。
- 犬に薬を飲んでもらうコツはありますか?
- 薬を飲ませるときは、愛犬が警戒心を抱かないように注意してあげましょう。飼い主が緊張していると、犬はすぐに異変に気付いて警戒してしまいます。不安感を与えないように、できるだけリラックスした状態で投薬を行いましょう。
愛犬が薬を飲めたらよく褒めてあげてください。おやつなどのご褒美をあげるのもおすすめ。愛犬が投薬を嫌がらないように工夫するのがポイントです。
直接投薬する場合は、無理やり飲ませようとするとケガをしたり愛犬にとってトラウマになってしまったりするリスクがあります。普段からスキンシップを多くとり、お口に触れることに慣れさせておくとよいでしょう。
犬が薬を飲まないときの注意点
愛犬がスムーズに薬を飲んでくれればよいのですが、嫌がってしまったり、薬の存在に気付いて吐き出してしまったりと、飼い主としては困ってしまうこともあるでしょう。工夫して飲ませるのは大切ですが、投薬の際には注意が必要なこともあります。犬が薬を飲まないときに注意すべきポイントをご紹介します。
- 犬が嫌がっているときは薬を飲ませなくてもよいですか?
- 犬が嫌がっているときに無理やり飲ませようとすると、ケガやトラウマにつながってしまうこともあります。投薬に対して警戒心を抱き、次回以降の投薬をさらに嫌がることにもなってしまうので、嫌がる際に無理やり飲ませようとすることは避けましょう。
ただし、嫌がるからといって薬を飲ませないのは良くありません。薬はしかるべきタイミングで与えることで効果を発揮しますので、嫌がるからと避けたり後回しにしたりせず、獣医から指示されたとおりに投薬しましょう。嫌がることをしたくない気持ちはありますが、愛犬のためには必要なことと理解して、きちんと薬を飲ませてあげましょう。
- 錠剤やカプセルは細かく砕くなどしてもよいですか?
- 錠剤やカプセルのサイズが大きく、犬が薬の存在に気付いて飲んでくれない場合もあるでしょう。ただし、錠剤を砕いたりカプセルの中身を出したりすることで、薬の効果が下がってしまうこともあります。処方された薬は形状を変えずにそのまま与えるのが基本です。
どうしても薬が飲みにくいという場合は、別の形状の薬に変更してくれることもありますので、まずはかかりつけの獣医に相談しましょう。
- 薬はどのような食べ物と組み合わせてもよいですか?
- 食べ物と一緒に薬を与える場合は、飲み合わせに注意が必要です。食べ物のなかには、薬と一緒に飲むことで薬の効果を弱めてしまったり、逆に強めてしまったりするものがあります。食べ物と一緒に投薬する場合は、かかりつけの獣医に相談してから与えるようにしましょう。
編集部まとめ
犬は警戒心が強いため、薬を飲ませようとしても苦味や飼い主の異変から薬を飲むのを嫌がることが多くあります。犬に薬を飲ませるときのポイントは、飼い主自身もリラックスした状態で、できるだけ安心させてやりながら、ストレスなく与えること。食べ物に混ぜたり服薬ゼリーを使ったりなど、愛犬が薬を嫌がらないように工夫することが大切です。上手に飲めたら思いっきり褒めてあげましょう。なお、投薬方法については、事前にかかりつけの獣医に相談して、薬の種類や食べ物との組み合わせ相性について確認しておくことをおすすめします。