急に愛犬が水を飲まなくなると、心配になる飼い主さんも少なくありません。犬も人間と同じで、身体の約60〜80%は水分が占めています。
水を飲むことは、愛犬の健康を維持するうえでも大切なことです。ただの気まぐれなら大丈夫かもしれませんが、もしかすると水を飲まない行動の裏には何か病気が隠れている可能性もあります。
本記事では犬が水を飲まない原因・病気の可能性・解決方法について詳しく解説します。愛犬が水を飲まないことで不安を覚えている飼い主さんは、お目通しいただければ幸いです。
犬の水分摂取量について
- 必要な水分摂取量の測り方を教えてください
- 犬の必要な水分摂取量の測り方は、体重・運動量・食事内容をもとに計算できます。一般的に犬の体重1kgあたり約50〜60mlの水分が必要であるとされています。
例えば、体重5kgの犬の場合、1日に必要な水分摂取量は250ml〜300mlです。フードから摂取する水分量を含む場合は、体重5kgの場合で約370mlの水分量摂取が推奨されています。
この1日に必要な水分量の数値はあくまで目安であり、犬の年齢・健康状態・運動量・季節などによって変動するため、注意が必要です。日常的に愛犬がどの程度水分を摂取しているかをモニタリングし、いつも新鮮で清潔な水を摂取できるよう心がけましょう。
- 季節によって必要な水の量は変わりますか?
- もちろん、季節によって必要な水の量は変わります。特に暑い夏や運動量が増加する時期には、水分摂取量も同様に増やすことが大切です。水の量を増やす際の目安としてほしいのが、温度・湿度・犬のパンティングになります。犬種によって適切な温度・湿度は異なりますが、一般的には温度が15.5〜26.6度、湿度が30〜70%です。温度を24度、湿度を50%で維持した環境を作ることが犬にとって理想的な環境になります。
また、パンティングは犬が舌を出してハァハァと呼吸が速くなっている様子を指します。犬は人間のように汗をかいて体温を下げることができません。そのため、暑いときには汗をかかない代わりに呼吸で体内の空気を循環と蒸発させて対外に放熱します。パンティングをしている場合には、温度・湿度をチェックしていつでも水分が摂取できるよう整えてあげましょう。夏はパンティングで水分が必要だと判断しやすい一方で、冬は乾燥しがちで水分摂取量が減りやすいため注意が必要です。
なぜなら犬は暑さだけでなく、体温調節が苦手なため寒さにも弱い犬種が大半だからです。そのため、暖かい場所から動こうとせずに、気付いたときには水分量が低下していたというケースもあります。冬はなるべくすぐに水分を摂取できるよう水場の位置を変える、水場を増やすなど犬が意図的に水分補給できるよう心がけましょう。
犬が水飲まない原因と病気の関係
- 犬が水を飲まないのは加齢やストレスが関係していますか?
- 犬が水を飲まないのには加齢やストレスも関係していることがあります。特にシニア犬になると嗅覚が鈍くなるため、水を飲む意欲が低下してしまいます。年齢に関係なく環境の変化に敏感な犬であれば、引っ越しや旅行でも水分摂取量に影響が出る可能性も否定できません。
環境によるストレスであれば、使い慣れている水用の容器を使用して、大きな環境の変化とならないよう小さいことから変化に慣れさせることが大切です。子犬はストレスへの耐性が弱く、環境に慣れていない状態であることがほとんどです。
子犬が生活しやすい環境を整えてあげたり、定期的に水分補給やストレス発散のサポートを行ってあげたりするようにしましょう。加齢やストレス以外にも、急に犬が水を飲まなくなった場合には、何かしら健康面に影響が出ている可能性があります。
- 犬が水を飲まないときに考えられる病気を教えてください
- 犬が水を飲まないときに考えられる病気はいくつかあります。代表的な病気は以下のとおりです。
- 腎臓病
- 糖尿病
- 肝臓疾患(肝炎・肝硬変・肝臓腫瘍など)
- 口腔疾患(歯周病や口内炎など)
- 胃拡張・胃捻転症候群
上記の病気は、犬が水分摂取を避ける症状がみられやすいものです。腎臓病や糖尿病には多飲多尿の症状がみられる傾向にありますが、水を飲まない症状も確認されています。どちらの症状が出ていたとしても、普段と違う行動を確認した場合には速やかに獣医師に相談することに留意しましょう。
- 犬が水を飲まないことで病気になる可能性はありますか?
- 水分摂取量が急激に減ってしまうと脱水症状を引き起こし、痙攣や意識障害に発展する危険性があります。脱水症状が進行してしまうと深刻な健康問題を引き起こすリスクが高まります。体内の水分が不足することは、循環器系や消化器系に悪影響を及ぼし、大きく命に関わる事態を招くということです。
水分摂取量が緩やかに減少している場合には、尿路結石症を招く恐れがあります。これらの健康問題や病気を防ぐためには、水分量のあるフードを与えたり氷をなめさせたりして、水分補給のサポートを行うことが大切です。
犬が水を飲まないときの対処方法
- 水を入れる容器で気をつけることはありますか?
- 水を入れる容器で気を付けてほしいことは、愛犬が水を飲みやすいかと衛生的であるかです。ステンレス製の容器は清潔で衛生的ですが、セラミック製やガラス製の容器を犬が好みやすいというデータもあります。
軽くて扱いやすいプラスチック製の容器は、傷がつきやすいため細菌が繁殖しやすいデメリットがあります。セラミック製やガラス製の容器は衛生的で使いやすく、犬にとっても飲みやすい素材です。また、犬が水を飲みやすいように、容器の高さや形なども愛犬の体格に合ったサイズを選ぶよう心がけましょう。
- 食事で犬に水分を摂らせる方法はありますか?
- 食事で犬に水分を摂らせる有効な方法は、ウェットフードを与えることです。特に缶詰タイプのウェットフードには水分が豊富に含まれています。水分摂取量を保持できても缶詰に抵抗があるという飼い主さんもいらっしゃるでしょう。その場合は、手作りご飯を水分が豊富なもので作ってあげるのも効果的です。
スープやだし汁等のゼリー・氷を与えると積極的に水分摂取してくれる犬もいます。犬は嗅覚が優れているため、ご飯を少し温めてあげると、匂いが強くなって食事に興味を持ってくれる傾向があります。
温めるといっても、手でご飯に触れられる38〜40度くらいの温度になるよう注意が必要です。ただし、急に食事内容を変えてしまうと消化不良を引き起こしたり、もとのご飯を食べなくなったりすることもあります。少しずつ食事に水分が豊富なものを加えて、慎重に愛犬の健康管理を行うように留意しましょう。
- 病院に連れていくべきタイミングを教えてください
- 犬が水を飲まない状態が続く場合や急に水分摂取量が減少した場合には、早急に動物病院で診察を受けるべきです。ほかにも、元気がない・食欲がない・嘔吐や下痢がある場合には、脱水の兆候がないかを確認しましょう。
- パンティングしている
- 口や鼻が乾いている
- 皮膚の弾力が低下している
- 目や口などの粘膜が赤くなっている
上記の脱水症状が見られる場合は、すぐに動物病院を受診することが重要です。水分量の低下は、健康状態が悪化するだけでなく、生命にまで危険を及ぼす可能性があります。早期に対応できるよう、普段から愛犬の様子を把握しておくことが求められています。
編集部まとめ
今回は犬が水を飲まない原因・病気の可能性・解決方法について詳しく解説しました。
犬は野生の名残で身体に不調が出ても、人間に悟られないよう隠す習性があります。そのため、普段から愛犬の様子を観察してどのくらい水分を摂取しているのか把握しておくことが大切です。
犬も人間と同じで身体の約60〜80%を水分が占めています。水分量の低下は生命を脅かす、とても危険性の高い状態です。
少しでも水分摂取量が減っていると感じたら、迷わず動物病院を受診しましょう。動物病院へ連れていくタイミングで迷っている飼い主さんが、少しでも早急な対応ができるきっかけになれれば幸いです。
参考文献