ペットと生活していると、やむを得ずホテルに預けなくてはならないこともあります。しかし、大切なペットを預けるとなると、飼い主にとって不安や心配がつきものです。
ペットホテルに預けてトラブルになるようなことは避けたいですが、いつどのようなことが起こるのかはわかりません。まずはペットホテルでよくみられるトラブルを把握し、対処法や回避方法を確認しておきましょう。
この記事では、信頼できるペットホテル選びのチェックポイントや、事前準備についても解説します。
ペットホテルではどのようなトラブルがある?

適切な環境で丁寧な飼育管理を行っているペットホテルがほとんどですが、どうしてもトラブルが起こってしまうことがあります。
トラブルに対して適切な対応をとるために、ペットホテルではどのようなトラブルがあるのかを、あらかじめ把握しておくことが大切です。
ほかのペットに噛まれる
ペットホテルではさまざまなペットが預けられているため、ペット同士の喧嘩でケガをする恐れがあります。
ペットは環境の変化に敏感で、普段おとなしい性格でも興奮しやすくなります。また、興奮状態での喧嘩になると、ケガの程度が重症になりやすい傾向があります。
ほかのペットとのトラブルを避けるためには、個室タイプのペットホテルを選ぶことがおすすめです。
また、ペットホテルによっては施設を事前に見学できることもあるため、実際に足を運んで施設内を見学するのもよいでしょう。
感染症にかかる
ペットホテルでは、ケージの広さ・運動スペース・衛生環境の維持などの基準が定められていますが、どこまで徹底して行っているのかは施設によってさまざまです。
ペットホテルでよくみられる感染症として、ケンネルコフが挙げられます。ケンネルコフは、伝染力の強い犬の呼吸器疾患であり、主に咳やくしゃみなどの飛沫感染で広がるのが特徴です。
そのため、個室タイプではなく犬や猫などが同じ部屋にいる場合、そこにたまたま感染症にかかっているペットがいると自分のペットにも感染してしまう恐れがあります。
ペットホテルから帰ってきた後、乾いた咳をしていたり、気持ち悪そうな様子がみられたりする場合は注意が必要です。
また、鼻水や目やになどの症状が現れることもあるため、普段の様子と比較できるようにしておくとよいでしょう。
散歩中のケガや脱走

ペットホテルの窓やドアの閉め忘れによって、ペットが脱走してしまうということが実際に起こっています。
また、犬の場合は散歩の際にリードやハーネスが外れて逃走してしまい、ケガまたはそのまま行方不明になってしまうこともあります。
ペットホテルに預けられた動物は、ストレス負荷が大きくなり、普段ではしないような行動を起こすことが少なくありません。
そのため、ペットホテル選びの際には二重扉の有無や散歩方法など、逃走・脱走防止対策をどのように行っているのかを確認することが大切です。
また、ペットにとっては周囲の音がストレスになることもあるため、施設周辺の環境も確認しておくとよいでしょう。
トリミング中のケガ
ペットホテルでは、宿泊中にトリミングも行っている施設をよくみかけます。預けているあいだにトリミングをしてもらえるため、飼い主にとってはメリットといえるでしょう。
しかし、ペットにとって慣れない環境でのトリミングはストレスの要因となります。
そのため、ストレス負荷が大きくて暴れてしまい、トリマーの押さえる力が強くなって痣がついてしまうかもしれません。
少しでもペットのストレスを軽減させるために、普段から通い慣れているトリミングサロンや、かかりつけの動物病院に併設されているペットホテルの利用がおすすめです。
ストレスによる体調不良

ペットの性格にもよりますが、犬や猫などのペットは人間よりも環境の変化に敏感な傾向があります。
そのため、ペットホテルで過ごすことはストレス負荷が大きく、環境の変化に適応できずに体調不良になるペットも少なくありません。
一般的な症状として、夜泣き・食欲不振・下痢などが挙げられます。この場合、身体に異常がなければ、自宅で安静に過ごしながら回復を待つことが大切です。
環境の変化に敏感なペットの場合、ペットホテルを利用するとトラブルにつながる恐れがあります。ペットの性格を把握し、体調不良になる恐れがある場合は、ペットホテルの利用を避けるのが望ましいでしょう。
金銭面のトラブル
ペットホテルを利用する際、事前に契約書や確認書などで金額を確認しておくことが大切です。
正式な書類がないまま、口頭のやり取りのみで預けてしまうと金銭面のトラブルにつながる可能性があります。
実際に、正式な契約書の取り交わしがないままペットを預け、支払いの際に想定よりも高い金額を請求されて支払いができないというケースは少なくありません。
また、料金が明確に提示されていないペットホテルを利用すると、イレギュラーな追加料金を請求される恐れがあります。
ペットホテルを利用する際は、1日あたりの料金・キャンセルポリシー・トラブル発生時の対応方法などが明確になっている施設を選び、事前によく確認しておきましょう。
ペットホテルでトラブルにあった場合の対処法

信頼しているペットホテルであったとしても、トラブルが起こる可能性はあります。そのため、もしものときにスムーズな対応ができるように、トラブルがあった場合の対処法を確認しておくことが大切です。
ここでは、トラブルが起こった場合の対処法を3つご紹介します。
同意書や誓約書を確認する
ほとんどのペットホテルでは、事前に同意書や誓約書に記入して契約を交わすため、預ける際はしっかりと確認しておくことが大切です。
また、トラブルが起きた際に適切な対処が行えるように、同意書や誓約書にトラブル時の対処法が記載されているペットホテルを選ぶようにしましょう。
特に、ペットホテルでケガをした場合の治療費負担の条件や緊急時の対応策などを確認しておくことで、もしもの場合にスムーズな対応が可能となります。
ペット同士のトラブルの場合は飼い主同士で話し合う
ペットホテルでは、自分のペットがほかのペットに噛まれた、逆に自分のペットが噛んでしまったなどペット同士のトラブルが発生することがあります。
この場合、ペットホテルとではなく、飼い主同士の話し合いになることも少なくありません。
話し合いでお互いに納得ができれば解決となりますが、収まりがつかないと裁判に発展する可能性もあります。
このようなトラブルを防ぐためにも、自分のペットの性格にあわせて、適切なペットホテルを選ぶようにしましょう。
弁護士や法律相談所に相談する
ペットホテルでトラブルが起こった際、ホテル側が治療費やホテル代を負担して和解することがほとんどです。しかし、なかには適切な対応が行われず、トラブルがスムーズに解決しないこともあります。
そのような状態の場合、個人で原因を調べることは困難かもしれません。どうしても和解できないときは、ペットに関するトラブルに強い弁護士や法律相談所を利用するのも一つの方法です。
ただし、裁判になるとそれなりの費用がかかるため、まずは初回の相談が無料の法律相談所や弁護士に相談してみるとよいでしょう。
信頼できるペットホテルを選ぶチェックポイント

ペットホテルを利用する際は、ペットが健康で快適に過ごせる施設を選ぶことが大切です。そこで、ここでは信頼できるペットホテルを選ぶ5つのチェックポイントをご紹介します。
ペットにあったペットホテルを選ぶことで、トラブルが起こるリスクの軽減にもつながります。
清潔な環境か
ペットホテルの清潔感は、ペットが健康で快適に過ごすために重要なポイントです。また、感染症のリスクを軽減させるためにも、消臭や殺菌対策がしっかりとされているペットホテルが望ましいでしょう。
事前に施設の見学ができるペットホテルであれば、トイレ周り・ケージ内・運動スペースなどが清潔に保たれているか、確認しておくことがおすすめです。
また、ペットがストレスを感じることなく過ごせる環境かどうかの判断材料として、施設内の空調管理も確認しておくとよいでしょう。
預かり同意書や誓約書はあるか
ペットを預ける際には、同意書や誓約書で契約内容を確認しておくことが大切です。
料金内容やキャンセルポリシーにくわえて、トラブルがあった際の保証・対処法の記載があるかも確認しておきましょう。
また、預かり条件の緩いペットホテルでは、感染症予防が不十分なペットと近距離で接することになる恐れがあります。
そのため、混合ワクチンや狂犬病予防接種証明書の提示が必要か、ノミ・マダニ予防やフィラリア予防が預かり条件に入っているのかなどもペットホテルを選ぶ際のチェックポイントのひとつです。
同意書や誓約書では、契約内容の確認とあわせてペットの健康状態や持病、アレルギーなどの情報提供も行っておくとよいでしょう。
ケージの広さはどのくらいか

ペットホテルでは、2022年6月の動物愛護法の改正によって犬猫のケージの広さが定められています。
- 犬:タテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の1.5倍以上)×高さ(体高の2倍以上)
- 猫:タテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の1.5倍以上)×高さ(体高の3倍以上)
中型犬や大型犬になると、かなりのスペースが必要になることがわかります。そのためペットホテルを選ぶ際は、十分なケージの広さが確保されているか、事前に確認しておきましょう。
食事の管理は行き届いているか
環境の変化で食欲が落ちるペットも多くいます。そのため、ペットの健康を保つためにも、食事の管理がどのように行われているのかの確認することが大切です。
ペットホテルのなかには、普段の食事が持参できる施設もあります。環境の変化で体調を崩さないようにするためにも、普段の食事を持参できるホテルを選ぶのも一つの方法です。
特に、アレルギーや持病、環境の変化に敏感なペットの場合は食事が持参できる施設がおすすめです。
食事の持ち込みが不可の場合は、普段の食事の内容やスケジュールをメモに記して、スタッフに渡しておきましょう。
メモに記して渡しておくことで、口頭よりも伝わりやすく、後のトラブルに発展しにくくなります。
動物病院との連携はあるか
ペットホテルでは、ケガや病気などさまざまなトラブルが起こる可能性があります。同意書や誓約書で緊急時の対応方法をチェックする際には、提携している動物病院の有無についても確認しておきましょう。
また、動物病院に併設されているペットホテルであれば、緊急時でもすぐに医療対応を行ってもらえます。動物病院併設のペットホテルは、持病や体調に不安のあるペットを預ける際におすすめです。
ただし、動物病院の環境に緊張するペットもいるため、性格に合った施設を選びましょう。
ペットホテルでのトラブルを回避する方法

ペットホテルでは、トラブルが起こらないようにさまざまな工夫がされています。
ただし、トラブルを回避するためには、ペットホテル側だけでなく飼い主側でもケアや工夫を行うことが大切です。特に、ペットのストレスを軽減することが効果的といえます。
飼い主ができるペットホテルでのトラブルを回避するポイントは、以下の3つです。
- GWやお盆などの繁忙期は避ける
- 時間預かりを利用する
- ハウストレーニング
時間預かりの利用は、滞在する施設の環境にペットを慣れさせることが目的です。
ペットホテルの環境に慣れさせておくことで、実際に利用するときにペットが感じるストレスを軽減することができます。
また、ペットホテルでは、運動や散歩の時間以外はケージまたはクレートで過ごすことがほとんどです。
そのため、自宅でハウストレーニングができていないと、預け先でのストレス負荷が大きくなる恐れがあります。
ペットホテルを安心して利用するための工夫

ペットホテルを利用するにあたって、飼い主もペットもお互いに気持ちのよい時間を過ごすために、以下の4つをチェックしておきましょう。
- ペットの健康状態
- 各種予防接種・ノミ・マダニ・フィラリアの予防
- ストレス軽減アイテムの準備
- 緊急連絡先の登録
ペットの健康状態が優れないままペットホテルを利用すると、体調の悪化やトラブルを招く恐れがあります。
ペットホテルを利用する際は、自宅での健康状態のチェックはもちろん、事前に健康診断を受けておくとよいでしょう。
おもちゃや散歩用品などはペットホテルで用意されていることもありますが、ペットのストレスを軽減させるためにも、普段から愛用しているものを持参することがおすすめです。
どれだけ信頼しているペットホテルでも、いつどのようなトラブルが起こるのかはわかりません。
万が一のときにスムーズな連絡が取れるように、緊急連絡先の登録を忘れずに行いましょう。
ペットホテルを利用する際の事前準備

ペットホテルを利用する際の流れや事前準備を理解しておくことで、ペットのストレス軽減と飼い主の不安解消につながります。
また、後のトラブルを回避するためにも、事前準備は欠かせません。
- 施設の清潔さやスタッフの対応を確認する
- オプションサービスを確認する
- 普段のペットの情報をメモに記す
- 疑問点や心配事をリストアップする
ペットホテルを利用するにあたって、スタッフとのコミュニケーションはとても重要です。
預ける際には、普段のペットの性格・苦手なこと・クセなど、些細なことでも伝えておきましょう。
また、飼育管理するにあたって重要なことや特に気をつけてほしいことなどがある場合は、メモに記して渡すことをおすすめします。
まとめ

ペットホテルでは、ほかのペットに噛まれる・感染症にかかる・脱走など、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。
その要因の一つとしてあげられるのが、普段とは違う環境はペットにとってストレス負荷が大きい、ということです。
ペットホテルでのトラブルを回避するためには、新しい環境に慣れさせたり普段使用しているおもちゃを持参したりするなど、ペットのストレスを軽減させることが効果的といえます。
また、ペットホテルを選ぶ際には、同意書や誓約書の内容・施設内の飼育環境・緊急時の対処法などの確認を忘れずに行いましょう。
適切なペットホテル選びと利用する際の事前準備が、トラブルのリスク軽減につながります。
飼い主もペットもお互いに快適な時間を過ごすためにも、ペットの性格にあった信頼のできるペットホテルを利用しましょう。
参考文献
呼吸器系の病気について|公益社団法人 日本動物臨床医学会 動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針(平成29年10月)補足資料|環境省