大切なペットがケガをしたり病気になったりしたら、動物病院でできる限りの治療を受けさせて治してあげたいと考える方もいるかもしれません。
しかし、動物病院での治療費が想像以上に高額で驚くことも少なくありません。
なぜペットの治療費は、人間よりも高額なのでしょうか。この記事では、動物病院での治療費が高額になる理由や、飼い主の診療費負担を軽くする方法をご紹介します。
ペットの病気を予防する方法についても解説するので、参考にしてもらえると幸いです。
動物病院の治療費は高い?
- 動物病院の治療費が高くなる理由を教えてください。
- 人間には公的な保険制度があるため、実際に窓口で支払う金額は、かかった治療費に対する1〜3割の金額です。一方、動物には公的な保険制度がないため、治療費は全額自己負担になります。そのため、飼い主の治療費負担が高くなります。また、次のような理由からも治療費自体が高額になりやすいです。
- 動物用医薬品が高額
- ペット自身が症状を伝えられないため、検査項目が多くなりやすい
- 人件費や設備の維持費などのコストが高い
動物用医薬品は、開発にかかる費用や時間が人間のものと比較しても多く、人間用より需要が少ないため高額になりやすいです。また、動物病院で検査を受ける際にペットは自分の不調を言葉にできないため、さまざまな病気の可能性を探るために多くの検査が必要となるケースがあります。
動物は人間と比較して病院を受診する機会が少ないため、動物病院の診察数が限られることも一因でしょう。そのため、1件あたりの人件費や設備維持コストの負担が相対的に高くなる場合があります。
- 動物病院は全額自己負担ですか?
- 動物病院での診察や治療は自由診療のため、全額自己負担です。動物には人間のような公的保険制度がないためです。治療費負担を減らすために薬はジェネリック医薬品を選んだりペット保険に加入したりすることで、治療費の負担を軽減できます。
- 同じ診療内容でも動物病院によって値段が違うのはなぜですか?
- 法律により、動物病院の料金を一律にすることは禁止されています。そのため、診察や治療、手術にかかる費用は動物病院ごとで異なります。もし、高度な医療機器を導入している場合は、その分発生する導入・維持コストは高額です。その結果、その病院での治療費全体が高額になるケースがあります。さらに、土地代や人件費も病院によって異なり、治療費に影響を与えることもあります。動物病院によっては、ホームページで料金を公開している場合がありますので、受診前に確認するとよいでしょう。
- 動物病院にかかる診療費の内訳を教えてください。
- 動物病院では、次のような診療費がかかってくるでしょう。
- 初診料
- 再診料
- 時間外診療
- 検査料
- 調剤料
- 入院料
- 注射料
- 麻酔料
初診料は約1,500円、再診料は約750円かかる動物病院が多いです。その他にも診察時間外に受診した場合、時間外診療費としてかかる費用は約2,500円です。例えば、下痢や嘔吐の症状で動物病院を受診してさまざまな検査を実施した場合、糞便検査約500円・血液検査約7,000円・腹部エコー検査約4,000円・薬代約2,000円などで合計で約15,000円かかる可能性があります。
動物病院の診療費負担を軽減する方法
- 動物病院ではジェネリック薬品を選べますか?
- 人間のための医薬品ほど種類は多くありませんが、動物用医薬品にもジェネリック薬品があります。ジェネリック薬品は、先発の薬と同等の効果が見込めるにも関わらず、低価格であることが大きなメリットです。
どのような薬にジェネリック医薬品の取り扱いがあるかどうかは動物病院によって異なるため、ジェネリック医薬品を希望する場合は、事前に確認しておきましょう。
- ペット保険の補償内容について教えてください。
- ペット保険は大切なペットに万が一のケガや病気があったときに役立ちます。動物病院での治療費は全額自己負担であるため、高額になりやすいです。そのようなときにペット保険に入っていれば、治療費負担の軽減が可能です。
「手術代が高すぎて、受けさせられない」「お金の心配がなければもっとほかの治療を選択できたかもしれない」とならないよう、ペット保険の加入を考えてみるのもよいでしょう。主な補償内容は次のとおりです。- 通院
- 手術
- 入院
- 賠償責任
基本的な通院、手術や入院への補償に加えて、ペットが他者にケガを負わせたり物を破損したりした場合に適用される賠償責任特約の取り扱いがある保険も存在します。補償割合や加入年齢の上限は、保険会社によって異なります。万が一の際に治療費負担を減らし、治療の選択肢を広げるためにも、ペット保険を検討するのも一つの手です。
- 動物病院の選び方のポイントを教えてください
- 人間と同じようにペットにもかかりつけ病院があると、飼い主さんもペットも不安が少ないうえに、病院側もペットの健康管理がしやすくなります。病院を選ぶ際は、近さや通いやすさは重要です。
病気やケガの際に、車や電車で長時間移動するのは、ペットにとって大きな負担になります。緊急の場合も、近い方がすぐに受診できます。そのため、まずは近隣の動物病院をいくつか候補に挙げ、次のようなポイントを確認しましょう。- 病院の雰囲気や獣医師・看護師の対応
- 獣医師の治療方針や得意分野
- 検査機器の充実度合い
- 診療・治療内容・治療金額の明確な説明
人間のかかりつけ病院を選ぶ際と同様のポイントに注意することが基本です。ただし、動物病院は料金設定が病院ごとに異なるため、治療方針とその金額について事前に説明があるか確認することが重要です。
ペットの病気の予防方法
- ペットの病気を予防するために気を付けるべきことを教えてください。
- ペットの病気を予防するには、人間と同じように食事や運動に気を付けることが基本です。また、ワクチン接種や内服、外用薬などで寄生虫やウイルス、細菌による感染症を予防することも重要です。以下の点に注意し、適切なワクチン接種や内服、外用薬の使用でペットの健康を維持しましょう。
- ノミやダニなどの外部寄生虫
- 消化管内寄生虫
- フィラリア
- ウイルスや細菌による感染症
ウイルスによって引き起こされる代表的な感染症の1つとして、狂犬病があります。狂犬病は発症すると致死率はほぼ100%です。人間を含むすべての哺乳類に感染するといわれていることから、犬の飼い主にはワクチン接種が義務付けられています。
ペットがマダニに刺されることによって、皮膚炎や貧血などを発症することがありますが、稀に重症熱性血小板減少症候群(SFTS)といわれる危険な感染症を引き起こすことがあります。ワクチンがなく重症化すると命に関わるため、ダニに咬まれないように対策することが大切です。
SFTSは、人間から動物、動物から人間に感染する人獣共通感染症の1つです。次の点に注意して人獣共通感染症を予防しましょう。- スキンシップは節度を守る(ペットとキスをしない・一緒に寝ない)
- 動物の身の回りは清潔に保つ(排泄物の処理・爪を切る)
- 触れ合った後は手洗いをする
これらのことに注意して、人間とペットがお互い仲良く健康に過ごせるようにしましょう。
- ペットの病気を予防するには定期検診が必要ですか?
- ペットの病気を予防するには、定期検診で体調不良や何らかの病気が潜んでいないかを確認することが大切です。病気を早期発見・早期治療することで、治療費を抑えられる場合もあります。
半年〜1年に1度の頻度で受けるようにしましょう。ペットの体調や年齢にもよるため、獣医師と相談しながら定期検診を受けましょう。定期検診はペットの健康を守るだけでなく、高額な治療費を防ぐためにも重要です。
編集部まとめ
動物病院での治療費は、想像以上に高額になることが少なくありません。人間には公的な保険制度があるため、かかった治療費の1〜3割負担で済みますが、動物病院での治療は全額自己負担になるためです。人間の治療費も全額自己負担だった場合、動物病院の料金は割安といえます。
動物病院での治療費が心配な方は、薬をジェネリック医薬品にしてもらうことやペット保険に加入することを検討するとよいでしょう。
適切な頻度で定期検診を受けることも大切です。病気の早期発見・早期治療により、結果的に治療費が安く済む可能性があります。
家族の一員であるペットが元気に健康に過ごせるように運動や食事管理、ワクチン接種などを行い、できる限り病気やケガを予防しましょう。
参考文献